第五章 第五話
高季は十三福島城へ入った。藤原秀栄は嫌な予感がしていたが、出迎えないわけにはいかない。
高季は決意していた。開口直後、このようにのたまった。目線はいつも以上に鋭かった。
「義父上、縁を切りませぬか。」
何を言い出すのか、この男は。
「皆々の迷惑にならぬように努めまする。私の所領は、裏切り者の二藤次にくれてやればよい。」
“北の兵”を連れて、船団で鎌倉を襲う。
白鬚公は思った。お前は馬鹿だと。苦笑した。本気なのかそれは。口を開く。
「なら、私の、娘は、どうなる。」
「二藤次に嫁がせればよいではありませぬか。鎌倉へ真っ先に従った男。東日流はさぞや、安泰でしょう。」
高季はさらりと言いきった。
「しばし、……待て。東日流は……常に、共に……ある。皆の……意見を……まとめて……からでも……遅くは……ない。冬は……まだ長い。」
「そう申しているうちに、結局は鎌倉へ従う魂胆でしょう。わかっております。」
そのまま、屋敷をあとにして船に乗り込んだ。藤崎へ別れを渡す必要があるのだ。
……入れ違いに、鎌倉の使いが城へ入った。参陣の命令である。
「反乱軍がいくら持ちこたえようとも、春になればこちらが勝つ。“北の兵”などという得体も知れない夢物語に頼ってもよいが、その時はわかっているな。」
気品ある姿だが、そいつは猛獣の目を持っている。羊はだまって伏するしかない。
いつしか工藤は白髭公の腕を掴み、右の衣に刃を向けた。老いぼれはなすすべなく、衣は引き裂かれた。
おそれのあまり、小便を流す。見て笑う工藤。その後ろには無言の二藤次。
そして、獣は言った。
「本来なら、秀衡の弟であるお主の命はないのだぞ。ありがたく思え。」




