第八話 霜月詠夜の常識
うへぇ、見事に進んでない……。
楓「それはさておき、詠夜が未来人ってさらっとでたね」
ま、詠夜の世界では2100年前後で科学の進歩が止まってるから、ほぼ僕たちの世界と変わってないんだよな。
楓「2100年で火星に行けるようになる? 馬鹿言っちゃいけない。火星に住めるように環境を変える事も含めると100年じゃ少なすぎる。星を変える難しさ、よく理解できてるはずだよね?」
……だったな。 あくまで星は生命体の一つ、そう認識しているはずなのに、よく100年で足りるなんて思ったものだ。
楓「ちなみに私たちは予言なんかしないよ。出来もしないしね。だけど、予想位はするよ。私たちは50年後位には食料戦争で滅亡寸前は行くんじゃないかな」
それが外れるのを望みながら、だがな。
うってかわって常識の話。個人的にそれは押し付け以外の何でもないと思うけど、どう君は思う?
少年は大草原の中で目が覚める。
夢から醒めもう記憶もないのになんだか気にかかってもう一度寝たい欲求にかられる。
しかしその欲求を振り払い、目の前にある「異常な光景」について考えてみよう。
まわりは一面大草原。まああるかもしれない。つい最近自然が少なすぎてこんな場所が世界遺産に登録されるなどというありえないことがおきたが、2377年の戦争で核が使われたと言っても始めに核を使った国が集中攻撃を受けたことでその始め以外に核は使われていないと習った。だからやりすぎと僕は思う。
それはさておき、そんな中一軒だけ建っている木造の家。これは平凡と考えようとしたらそう思える。地平線ギリギリに山が見えるから木材はあるし、建てた人も住んでる人が四、五年かけて建てたとすれば強引だが納得できる。
そんなものより常軌を逸するものがある。
天をも貫く大樹だ。
自然物な訳が無いし、人工物でもこんな大きなものなど建設不可能だ。多くの人が暮らしているのなら先ほどのような家は多くあるだろうがそれが一つしか無い。つまり、この場所には少数の人しか住んでいない事になる。だから、あれほどの建物は建築不可能なのだ。
自然物ならばあれほど上空で光合成と呼吸ができるのかという疑問がある。それに見た目では大気圏をぶち抜いて宇宙空間まで伸びているのではと思うほど高い。それで焼けないのかという疑問もある。
それで混乱している僕に話しかけてくる人がいた。
「ちょっとそこのきみ~、僕と話しをしようよ~」
というかなり怪しい声のかけ方でだったが。
「えっと、どちら様ですか?」
そう後ろを振り向くと、そこにはボサボサの髪と、眠たそうに閉じかけている目が特徴的な少年がいた。
「その質問どう答えればいいんだろ。とりあえずあちら様?」
そう言うと少年はたった一つの家を指差す。
っと、それ以前の問題だ。今聞くことは一つしか無い。
「ここ、どこですか?」
そんな切実な疑問に少年は答える。
「君にとっては別世界かな。とりあえず、立ち話もなんだから家に入らない」
なんて声をかけてくれるけど、僕の理解できない領域まで踏み込んだそれは僕の足りない頭をフリーズさせるには十分な威力だった。
そんなこんなで家に入れてもらった。が、フリーズしているというのに現状理解に努める僕の頭はパンクして真っ暗になる途中だった。