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名も無い物語  作者: 天駆真龍
第二章 人神戦争
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第三話 天界突入

 見事に進んでな~い。

楓「セクハラ詠夜がいると聞いて」

 や、だってえっちぃシーン好きですし。でもこれは下手すると胸ちぎれるからセーフ。ノーセクハラ、オーケー?

楓「……めんどくさいなぁ。ってか王華はなんか冷静だね。初心な乙女みたく顔真っ赤っかにして箒ちゃんと座れるようにしてセクハラやめさせりゃあ良かったのに」

 王華さんですし? あの人が箒の先を進行方向に向けずに飛ぶ様子なんて想像できない。

楓「何の利点があるのさ……」

 曰く、「箒を揺らしてバランス崩されると飛べなくなるし、自分が打たれたら元も子もないから、なるべく箒と重なって的を小さくした」らしい。

楓「まさからしい答えが帰ってくるなんて……」

 雑談はここまで。


 圧倒的強者は時として強者がわからない。特にその強者が自他共に弱いと思う時は。

『常人とは違う才能』

 それを聞いて詠夜は冷や汗が出た。

 呪術、正確には違うが家でその訓練を受けてそれを発現したのだ。

……いや、それは求められたものとは違ったのだろう。唯一使えた『アレ』は大人たちですら声を出せないほど危険で得体の知れないものだった。

 怖かった。あんなものが使える自分自身が。

 紅我が発現した『常人とは違う才能』が『アレ』を指すのならアテにはならないだろう。

 確かに『アレ』は、神様すら殺せる。だけどそれを使う者が恐れていてはどうにもならない。

 戦闘はあの二人に任せよう。

 詠夜はそう思った。


 ☆


 私は今空高く舞い上がっている。

 比喩ではない。実際に空を飛び駆けている。

 上へ、上へと昇る。紅我は能力で既に天界に行ったはずだ。

 私の速さなら雲の上など時間はかからない。

 ただ──


「ちょっと待ってこれ以上速くなったら死ぬ!?」


──私にしがみついている詠夜がその速度に耐えられる訳がない。

 箒に乗った私の速度は封印のかかった今でも音速に近い。更に向かう方向は空、上方向なのだ。

 音速で上昇する時の風圧を遮る物などなくモロに受けて無事な人間など居るわけがない。

 だからそこそこの速さなのだが、箒に乗る時は紅我の模擬戦だけで、その時ついた癖で出来るだけ速く動こうとしてしまうのだ。

 彼は無我夢中で私にしがみついてるので、肩やら胸やら掴んだり、首に手をまわしてしがみついたり、場違いの感想だが大胆な行動をしていた。

 いや、これはいつもの感覚で地面と垂直に向け上昇させている箒を掴む形で飛ぶ私が悪い。

 そんな飛行に無理矢理同席させられたら、いくら飛べる私とて今の詠夜のようになるだろう。

 不老不死の私でも好き好んで死ぬはずがない。恥も外聞もかなぐり捨てそんな飛行を始めた人物にしがみつくだろう。

 だからこれは私が悪い。

 肩を掴んで落ちなかったのも良かったし、首にしがみついて手が滑って落下、ということもなくなった。


 だけど胸はいるか?


 確かに詠夜はパニック状態だ。そりゃあそういう所も触るだろうし、全体的に筋肉がある他より掴みやすいだろう。

 しがみつくので必死で思いっきり手を握りしめやがるので胸がかなり痛い、精神的ではなく肉体的に痛いがやらしい気持ちでやっているのではないと判る。

 けどこの飛行を始めた、覚悟していた私はいつもと変わらないのだ。

 そんな状態で異性にくっつかれると少なからずどぎまぎもしてしまう。……胸を引きちぎられるような感覚で怒りもこみあげるが。

 まあ、それが首に手をまわされるだけじゃなくて良かったと思おう。そんなことされたら首が折れるか窒息する。

 その不快感やら恥ずかしさも終わり。

 雲の中に入る。かなり高く上りこの雲より高い雲はなかったのでこれを越えれば天界だろう。

 突き抜ける。

 そこ 雲に建物が作られ、雲に人が立ち、雲から植物が生える、空の世界だった。

 とりあえず詠夜を地面へと下ろす。勿論先に私が雲に乗れるか確かめた後でだ。

「し、死ぬかと思った……! ていうか殺す気か!?」

「あー、悪気はなかったのよ? ほら! ついいつもの調子で、ってやつ」

「それで僕は死にかけたんだけど!?」

「頑張ったわね、うん、えらいえらい」

「バカにしてんのか!? ああ、もう帰りたい」

 ここまで言葉を交わして詠夜が無事であると判断する。特にさっきの事以外に文句や異常を訴えないので怪我はないだろう。

 王華は痛みや不快感から解放されたため、そしていつもの行為だったため疑問と感じる事が出来なかった。


 一般人のはずの詠夜が王華の普段の速度、音速に迫る速度で動く箒に掴む王華にしがみつき、振り落とされず風圧で体が痛くならなかったり、いきなり酸素の薄い上空に来て高山病にならなかったり、何よりも、ずっと王華にしがみついていたのに息切れもなく疲れた様子すらない事を。

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