振り返り 【第四章 英雄の資格編~第六章 王者と愚者の邂逅編】
振り返りあらすじは本日まで。
次回更新は8月17日(金)です。
【episode-04
英雄の資格編】
世界最弱・零能力者に敗北した集結は最強の称号を失い、また自身を最強の先へと導く計画も失われた。
路地裏で荒れていた彼の前に――ピンク色の毛玉が落ちてくる。
滅多に使わない集結の魔法、《神上の敗》の奇跡を使ってピンク毛玉を救う。しかし毛玉の中から出てきたピンク髪美少女のうなじには、《神上》の魔法陣が刻まれていた。
「おいテメェ、うなじの魔法陣それは何だ?」
「へ? えーと、これはデスね……」
「ソイツは例えば――《神上》とか、呼ばれてンじゃねェか?」
集結は彼女――クライに朝食を奢ることを強要される。その途中で機嫌を損ねた彼は一旦席を離れるものの、《神上》を生み出した【天皇家】の天皇夕日と偶然遭遇。
《神上》所有者を探している、という夕日にこれまた強要されてクライの下へ行かされる集結。夕日を案内したところで、突如大きな警報。街中に大量発生した謎のパワードスーツの襲撃だった。
集結は襲われる人々を、そしてクライを守るために力を振るう。
――しかし、時に圧倒的な力は憧れを通り越して恐怖を与えてしまう。
ダメだダメだと一人後悔するクライへ、集結は伝える。
『テメェは……いや、テメェも、俺が恐いんだろ? だったら俺を見なけりゃイイ。なァに、同じ《神上》への特別サービスだ。テメェを連れて天皇夕日が逃げるまでの時間くれェ稼いでやる。全力でテメェを守ってやるよ』
街中でパワードスーツを破壊し続けていた集結は、【ウラヌス】に協力してパワードスーツ撃退に臨んでいた零能力者・天堂佑真と出会い、勝負を仕掛ける。
佑真と激突するが、集結はしぶとい佑真に苛立っていく。
ぶつかり合う互いの信念。
犠牲の果てに『絶対の力』を掴もうとした集結。
犠牲を一人たりとも出したくない佑真。
最強と最弱の末路は――最弱の勝利だった。
集結は、佑真に自分の過去を明かす。
――――――集結はアメリカに住んでいた子供の頃、アニメや漫画に出てくる『正義の味方』を目指していた。
しかしある日、公園に暴走能力者が現れる。集結は皆を守るために超能力を使って暴走能力者を撃退するが、吹っ飛ばされた暴走能力者が偶然通りかかった車に轢かれて死亡。
それをなぜか『集結が殺害した』と認識され、彼は迫害された。
傷つけてくる相手から自分を守っているうちに、気がつけば軍隊をも退ける怪物になり。
集結は『正義の味方』とは程遠い場所に行きついていた。
「んじゃさ、集結」
その言葉を、認めざるを得ない『正義の味方』が受け止めてくれたから。
「もう一回でいいから、立ち上がってみようぜ」
集結は、ふたたび『正義の味方』を目指し始める。
クライの持つ《神上の勝》を悪用しようと、クライの保護者であったはずの神父が暗躍する。自身の制御下に置くべく、魔術での儀式を行う神父。
その現場に集結は駆けつけるが、自身の超能力では打開策が見えない。結局自分は『正義の味方』を目指す資格もないのか――心が折れかけた集結を、クライが支える。
「――――――諦めないで。
アナタにしか、できないんデス……! 大丈夫……アナタの能力は、最強、デスから!」
集結は魔術に利用されていた波動を己の制御下に置き、儀式をそのシステムから破壊する。
そして神父を打ちのめし――クライを救い出した。
/
同日。
佑真は【ウラヌス】第『〇』番大隊の隊長にして波瑠の母親・天皇真希と面会する。
彼女から持ち掛けられた提案は『波瑠の守護者になること』。結局は波瑠のために戦うのだから、デメリットもない。一応保留だが前向きに検討する――と告げた矢先に、街中にパワードスーツが大量発生する事件が発生した。
【ウラヌス】は市民を守るために、即座に街へ出向く。
――が、パワードスーツと戦うのは【ウラヌス】だけではない。
誠や秋奈。岩谷、鈴木、神崎、そして古谷といった一般人も。
清水優子や瀬田七海といった超能力者育成高校のエリート達――次代の英雄たちも。
そして、佑真の師匠である火道寛政も。
誰も彼もが『誰か』を守るために戦っていく。
そんな『正義の味方』の姿を目の当たりにして、佑真は改めて誓う。
自分は『零能力者』だ。まだまだ弱い。救えない命はたくさんある。
だからこそ、今人々を救う『正義の味方』達のように、どこまでも強くならなければいけない――と。
☆ ☆ ☆
【episode-05
水晶の魔眼編】
太陽七家に属する子女、通称『超能力適合世代』の才能を開花させるために、波瑠と秋奈には国立の超能力者育成機関、盟星学園高校への進学が義務付けられる。
進学したのは波瑠、秋奈、誠、キャリバンにクラスが違うが佑真も同じだ。
波瑠達はクラス分けで早々、春休みに知り合った眼鏡の少女・戸井千花と再会を果たす。
「久しぶりー!」
「はいー! 一人だったんで、無事に会えてよかったですー!」
「千花ちゃん同じクラスだよー。三年間よろしくねー」
千花を交えた学校生活を、波瑠は満喫する。まともな学生生活を送れなかったからこその幸せな日常は――突然、揺らぎをみせる。
千花の胸元に刻まれた魔法陣。彼女は十二種類の《神上》のうち一つの持ち主だったが、戦火はそれを自覚していなかった。
動揺する波瑠だったが、息つく間もなしに波瑠を狙う敵が現れる。
月影一歩と月影百歩。天皇劫一籠の部下がいる【月夜】からの刺客を相手にして、佑真達は《神上》がいつだって狙われていることを再認識する。
「オレは全力で『普通の日常』を守ってやる。……そもそもオレは、あいつを心の底から笑っていられる日常に連れていきたくて『助ける』って決めたんだ。たとえ敵が人外の手先だろうと外国の怪物だろうと、一年近くかけてようやく手に入れた『日常』をそう簡単にぶち壊させてたまるかよ」
異変無く日常を過ごし、数日後。波瑠達新入生は盟星学園の恒例行事、『新入生合同演習』に臨む。
敵役の上級生たちに苦戦を強いられる一年生たち。波瑠・秋奈・キャリバン・千花の四人は生徒会長かつランクⅩ《静動重力》の清水優子の足止めを喰らう。
「そろそろ私に傷をつけてみろ。でないと、物足りない私はこの山を跡形もなく消し去るぞ」
そんな演習会場、高尾山に突如、四本足や巨体といった異形の『人間』が多数出現する。
【月夜】鉄先恒貴が送り込んだ刺客――かつて日本で行われた人体実験『強化兵創造計画・能力付与実験』の失敗作たちだった。
狙いは波瑠と千花、二人の《神上》と天堂佑真。
月影一歩と百歩の画作によって、背中を刺された千花は《神上の力》と化してしまう。
猛威を振るう《神上の力》と異形の『人間』達。特に『異形』の中には、あの《集結》を付与された男が大暴れして生徒達を苦しめる。
波瑠や秋奈が追い詰められた時、火道寛政の力を借り、天堂佑真が戦場に到着。波瑠とともに、混乱を解決すべく《零能力》を発動する。
「テメェの相手はオレがする。たとえテメェが偽者の集結であろうとな」
「千花ちゃん、今すぐあなたを救い出す」
偽物の集結を足止めする佑真。
波瑠は《神上の力》から千花を救い出そうと奮闘するも、やはり神様に匹敵する力に敗戦。そこで波瑠は同じ『神の力』を呼び起こす。
(それでも、今の私には《神上》が必要なんだよ! 私の身体はどうなったって構わないから――――友達を助ける力を貸して!)
神的象徴〝世界に仇為す黎明の翼〟を発現した波瑠は、同じく神的象徴〝小神族の宝物庫〟を展開する千花と激突。
自殺覚悟の突貫で千花を救おうとするも――誠と秋奈が、波瑠の自殺を妨害。力を貸して千花を救おうと持ち掛ける。
「大丈夫だよ、波瑠」
「………大丈夫、波瑠ちゃん」
「「だってあの娘は、僕達の友達なんだから」」
キャリバンは、月影一歩・百歩と彼らの使役する異形の『人間』達と、交戦。
そこで異形の『人間』達を、佑真の《零能力》を使えば救い出せるのだと推測し、キャリバンの期待に応えた佑真は実際に《零能力》を使い、まずは偽物の《集結》を救い出して見せた。
「…………長い長い、悪夢を見ていたようだったよ」
「寝覚めはどんな気分だ?」
「…………そうだな。凪いだ海のように静かで、幾分か心地よいな」
誠、秋奈の力を借り、波瑠は暴れ続ける《神上の力》を足止めするに至る。
《神上》が次段階である《神上の力》発現に至るのは、所有者の感情が振り切れることが条件だ。
確かに背中を刺された千花は、一瞬感情が振りきれたかもしれない。
けれど、と佑真は告げる。
「戸井ちゃんの心は、そう簡単に『負』になんて染まらない。普通の女の子を舐めんなよ」
そして、混乱の高尾山には【ウラヌス】第『〇』番大隊の兵士達が救援活動に就いていた。全く被害者を出さなかったワケではないが――『正義の味方』の尽力は、高尾山での悲劇を覆すに至った。
そんな事件を指揮していた月影一歩・百歩は佑真達の同級生、九十九颯によって拘束される。
言葉だけで相手の動きを自在に制御する九十九は、波瑠と千花に、舌に刻まれた魔法陣を見せつける。彼もまた《神上》所有者の一人なのだった。
「国家防衛陸海空軍独立師団【ウラヌス】の陸軍第『一』番大隊所属であり。
盟星学園高校の一年A組であり。
実はもう十六歳で、お前らの一つ上だったりする。
九十九颯だ。改めてよろしくな、天皇家のご令嬢さん」
事件の後。
盟星学園に向かった佑真は、生徒達から敵意を向けられる。
「俺達はこの耳でハッキリと聞いてんだよ。この前の事件の原因が、お前と天皇波瑠にあるってことを、あのバケモノ連中から、この耳で! ハッキリと! 聞いてんだよッ!」
そうして佑真と波瑠は、盟星学園へ退学届けを出したのだった。
☆ ☆ ☆
天堂佑真の肉体に異変が訪れていた。髪が蒼くなり、肌が脱色し――謎の異変の原因を、佑真は《零能力》のせいだろう、と簡単に推測していた。
佑真と波瑠を退学させたくない火道寛政は、力づくで佑真を引き留めようとする。
真っ向勝負の末に、弟子が師匠を打ち倒すに至った。
「……オレはあの日から、二度と負けないって誓ったんだよ」
【episode-06
王者と愚者の邂逅編】
【ウラヌス】の総大将・天皇涼介に呼び出され、佑真は盟星学園を訪れる。涼介に《零能力》の調査を申し出られた佑真は、その直後、不思議な能力者に襲撃される。
性欲を操る佐々木消を打倒した佑真の前に、長門憂と名乗る大男が出現。
「貴様ら、俺様の配下とならないか?」
彼は波瑠と佑真に、とんでもない宣言をした。
「明朝、貴様らは俺様の配下となる。『首を横に振る』などという愚行たる、そして無能たる判断を下した場合は請け負った『任務』を遂行させてもらうが、賢明たる貴様らの返答を楽しみに待っている」
――天堂佑真暗殺任務。
金城家の当主、金城仏が計画した任務に選ばれし十二人の刺客が、明朝までに佑真を殺しに来る。
「貴様達は天堂佑真を殺し、天皇波瑠を捕えろ。俺様が征く明朝まで生き残れんなら、所詮天堂佑真はその程度の価値しかない凡百だったということだろうよ」
「では、長門憂を除く十名の皆さん。
私の『任務』、くれぐれも成功させてくださいね? 長門憂が動けばことは済むでしょうが、早いに越した事はありません……必ず、天堂佑真の首を取ってきてください」
佑真と波瑠は古泉激、朝比奈驚といった刺客を撃退。しかし結城文字の企みによって窮地に至る――そんな彼らを、誠と秋奈が救援。結城文字、瀬戸和美を倒した。
秋奈はユイを連れている都合上ついていけないが、誠は佑真に同行を志願する。なぜなら、《零能力》を酷使していた佑真は外見はおろか、声まで変化をきたしてしまっていたからだ。
「死ぬなよ」
「努力する」
逃亡劇を再開した佑真達だったが、即座に眼意足繕火――佑真・誠と深い因縁を持つ誠の義姉が襲撃。佑真は《零能力》を酷使した末に、『天堂佑真』の外見と記憶を失う。
全く違う容姿になっても尚、波瑠を守ろうとする『佑真』の姿を目の当たりにした誠は眼意足繕火を引き連れて、ひとまず窮地から彼らを救い出した。
「コイツらのことは任せて」
「誠くん……」
「大丈夫だよ波瑠。キミの愛した天堂佑真は、そんなに弱いやつじゃない」
しかし間もなくして、五十嵐龍神・行橋このえが強襲。『佑真』は肉弾戦に長けた龍神と戦った末に、自我を崩壊させて停止してしまう。
一方、このえと戦う波瑠は、このえが動物の心を読める《絶対親和》という能力で苦しみ、また心を読めてしまうことから人間に失望してきた過去を悟る。波瑠は自傷覚悟でこのえの攻撃を受け止め――。
「このえちゃん、もう一人で頑張ろうとしないで。
もしも世界中で、誰もあなたの味方になってくれなかったとしても――私は。
私は絶対に、あなたの手を放さないから」
タイムリミットを迎え、波瑠達の前に長門憂が現れる。長門は波瑠に心を許したこのえを許さず、彼女の脳を握りつぶす。
長門憂の超能力は《能力捕食》。相手の才能(超能力)を強奪することができる能力で、これまで佑真と波瑠が打ち破ってきた朝比奈、結城、瀬戸の超能力を自らのものとしたうえでこの場に現れたのだ。
長門は波瑠を圧倒すると『佑真』の下へ。自暴自棄になっている『佑真』に興味はない、と即座に殺そうとした、その時。
「何してやがんだクソッタレ。テメェはこんな雑魚に負けるタマじゃねェだろうが」
集結が、恩を返すために駆けつける。
集結の持つ《神上の敗》の奇跡――『形象を理想的な姿へ修正する』奇跡を利用し、壊れかけの『佑真』は修正されていく。
その奇跡の中で『佑真』は蒼髪の少年と出会い、お前らしさとは何か、を問い詰められる。
思い出されるのは、不良だった頃。
荒れ果てた自分を救おうと足掻いてくれた誠、秋奈、寮長。
路地裏で死にかけた自分を救い出してくれた、全く関係のない『赤の他人』の善意。
そして『正義の味方』という夢を目指し始めた、自分の原点だった。
「――――――答え合わせは済んだか」
『天堂佑真』として再起した佑真は、長門憂と対峙。
「王者に叛逆する愚か者よ! 貴様の名を名乗るが良いッ!」
「オレの名は天堂佑真! 正義の味方を目指す男だ!」
激しい交戦の中で、佑真は〝零能力〟を完璧に制御下へ置く。
火道寛政より受け継いだ体術、路地裏にいた頃から養われていた動体視力、そして絶対に諦めない根性で長門憂を撃退した。
「オレの勝ちだ、歯ァ喰いしばれよ愚か者!!!」
☆ ☆ ☆
――――――『正義の味方』。
困っている人や苦しんでいる人がいたら、真っ先に手を差し伸べて。
強敵を前にしても、決して屈することなく立ちむかい。
どれだけ傷つこうとも、諦めず、真っ直ぐに前を向いて。
誰かを救う者。
さあ。
史上最悪の英雄譚を続けよう。




