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第1話 糞の世界

【注意書き・必読】


・極めてダークな世界観です。希望・優しさ・救いは極端に少なく、裏切り・絶望・非情な現実がメインになります。人の感情をメインに表現してます。

・残酷描写・暴力描写・鬱展開がかなり多めです。(人身売買、奴隷、裏切り、即処刑など容赦ありません)

・R15相当のグロ・不快表現あり。心が弱い方、ポジティブな話が読みたい方はブラウザバック推奨です。

・ハッピーエンドを期待しないでください。(作者の気分次第で地獄が続く可能性大)

・「クソみたいな世界でどう生き延びるか、人の救いとは何か」がテーマなので、甘い展開は一切ありません。


それでも「このクソ世界で主人公がどう足掻くのか見たい」と思える方だけ、どうぞお付き合いください。

(初回投稿なので、感想・評価・励まし大歓迎です! 作者のメンタルが持つかどうかは……祈ってください。

完走は必ずします。裏切りません!

腐った魚と糞と汗の匂いが鼻を突いた。

体が重い。

腕を動かそうとして、肋骨が浮き出たガリガリの腕を見る。

服はボロ布同然で、足は泥だらけ。

周りは狭い路地裏。

頭上には何重にも干された洗濯物が光を遮り、薄暗い。

「……ここ、どこだよ」

体を起こそうとして視界が揺れる。

手足が短い。体が小さい。

十二〜一三歳くらいの子供の体だ。

腹が鳴った。

痛いくらいに空っぽで、頭がくらくらする。

とりあえず這うようにして路地を出た。

そこはもっと酷い場所だった。

石畳の通り。

人がごちゃごちゃと行き交い、鎖の音が響く。

子供も大人も、鎖につながれて立っている。

誰もが目を伏せているか、

値踏みするような目で他人を見ている。

それが普通の風景のように。

意味がわからない。

でも腹が減って死にそうだった。

路地の隅に、パンが並んだ屋台が見えた。

誰も見てない……と思った瞬間。

「泥鼠が!」

後頭部に衝撃。

地面に叩きつけられて息が詰まる。

大男の商人が足で俺の背中を踏みつけた。

「盗人には指を一本ずつ切り落とすんだよ、この街じゃ」

周りの野次馬が笑う。

誰も助けない。誰も止めない。

男がナイフを抜いた。

俺は必死で叫んだ。

「待て! 金払う! あとで払うから!」

「……金? お前みたいなガキに何の金があんだよ」

男が笑ってナイフを振り上げた。

その瞬間、誰かが男の腕を掴んだ。

「……やめなよ。こんなガキ殺して何になるの」

声は低くて、疲れている。

振り向くと、フードを被った小柄な女が立っていた。

歳は十五か十六くらい。髪は乱れ、頬に古い痣。

目が死んでいる。でも、どこかでまだ何かを探しているような、微かな光があった。

女は商人に小銭を数枚投げた。

「これでチャラでいいでしょ」

男は舌打ちしてナイフを収めた。

「次やったら殺すからな、泥鼠」

去っていく。

女は俺を見下ろした。

一瞬、目が合う。

「……立てる?」

俺は頷くこともできず、ただ見上げた。

女はため息をついて、俺の腕を掴んで引き起こした。

触れられた瞬間、反射的に身を引きたくなったけど……我慢した。

「ついてきな。動けるなら」

俺はよろよろとついていった。

足がもつれて転びそうになるたび、

女は無言で肩を貸してくれた。

路地を抜けて、市場の裏側。

廃墟みたいな建物が並ぶ場所。

女は迷わず一軒の崩れかけた扉を開けた。

中は薄暗い。

テーブルが二つ、椅子が三脚。

隅に鍋があって、かすかに湯気が立っている。

「座って」

言われて、俺は床にへたり込んだ。

女は鍋からスープを椀に注いで、俺の前に置いた。

「……これ、食べて」

薄いスープに野菜の切れ端と、怪しい肉片が浮いている。

匂いは悪くない。腹が鳴った。

「これ……タダ?」

女は目を細めた。

「タダなわけないでしょ。後で働いて返す」

「……働くって、何を?」

「決まってるじゃん。ここじゃ何でもありよ。

荷物運びでも、掃除でも……まあ、嫌なら今すぐ出てけ」

俺は黙ってスープをすする。

味は薄い。塩気もほとんどない。

でも熱くて、腹の底に染みて、涙が出そうになった。

「……美味い」

ぽつりと言ったら、女が一瞬だけ目を丸くした。

「……バカじゃないの。こんなの、底辺の底辺の味だよ」

「それでも……美味いよ」

女は黙って自分の椀を見つめた。

やがて、ぽつりと呟いた。

「……私はミラ。あんた、名前は?」

「……レン」

適当に答えた。

本当の名前を言う気にはなれなかった。

ミラは小さく頷いて、椀を置いた。

「レンか。いい名前じゃん。

……とりあえず、ここにいなよ。

一晩だけでも。明日の朝まで生き延びられる確率、上がるから」

俺は警戒した。

でも選択肢がなかった。

その夜、俺たちは廃墟の隅で並んで寝た。

背中合わせで。

お互い、相手がいつ逃げるか、襲い奪うか警戒しながら。

でも、奇妙なことに――

ミラの背中は、ほんの少しだけ温かかった。

翌朝、目が覚めたらミラがいた。

椀が二つ、きちんと洗って置いてある。

その横に、硬くなったパンの欠片が一つ。

「……起きた?」

ミラが鍋をかき回しながら言った。

「ああ……」

「じゃあ、今日から少し働こうか。

簡単なのから。市場のゴミ集めとか、荷物の運び屋の下請けとか」

俺は頷いた。

まだ体は弱っているけど、昨日よりは動けそうだった。

それから三日間、俺たちは一緒にいた。

ミラは意外と口が達者で、

市場の裏の連中と交渉するのが上手かった。

俺はただ黙って荷物を持ったり、ゴミを運んだりした。

報酬はたいていパンとスープの残り、

たまに銅貨一、二枚。

ミラは俺に色々教えてくれた。

「この街じゃ、約束なんて紙切れより軽い」

「強い奴が正義」

「信じたら負け」

でも話すときの目はどこか優しくて、

俺は少しずつ……心の壁が薄くなっていった。

四日目の夜。

いつもの廃墟で、ミラがぽつりと言った。

「……レン。あんた、いい奴だね」

俺はびっくりして顔を上げた。

「は? 何だよ急に」

「だってさ。

私みたいな奴に、疑いながらもついてきてくれるじゃん。

普通なら、初日に逃げてるよ」

「……お前だって、俺を助けてくれただろ」

ミラは小さく笑った。

初めて見る、柔らかい笑顔だった。

「そうだね。

……だからさ。

明日、ちょっと大きい仕事があるの。

一緒にやらない?

うまく行けば、銅貨じゃなくて銀貨がもらえるかも」

俺の胸がざわついた。

でもミラの目を見て、頷いてしまった。

「いいよ。何でもやる」

ミラは嬉しそうに頷いた。

翌日。

ミラに連れられて、街の外れの倉庫へ。

そこには二人の男たちが待っていた。

顔に傷がある。目が冷たい。

「ミラ、例のガキ連れてきたか」

「ああ。こいつなら大丈夫」

男の一人が俺を値踏みするように見た。

「仕事は簡単だ。

この荷物を、街の北門まで運ぶだけ。

途中で誰にも見つからずにな」

荷物は重い木箱。

紐がついていて、俺の背中に背負わされた。

中身はわからない。

でも匂いがした。血の匂いみたいな、鉄臭い何か。

俺は嫌な予感がした。

でもミラが隣で小さく頷くのを見て、口を閉じた。

運び始めた。

路地を抜け、裏道を進む。

ミラと俺が前、薬の箱を背負った俺がリード。

後ろに一人の男が俺たちを見張るようにくっついている。

もう一人は先行して路地を警戒。

北門が近づいた時――

突然、先行していた男が戻ってきて、低い声で報告した。

「衛兵がいる。検問張ってるぞ」

「見つからずに抜けれるか?」

男が即座に思考を巡らせた。

「…囮がいる」

後ろの男が舌打ちし、ミラに目配せした。

ミラの表情が一瞬で変わった。

さっきまでの柔らかい目が、完全に死んだ魚の目になる。

「よし、ガキから箱を回収しろ。」

男が素早く動いた。

俺の背中から箱を外し、蓋を空け

そして、一本だけ――小さな瓶を俺のポケットに押し込んだ。

「これだけ持って、先に行け。北門を通れ」

俺は嫌な予感がした。

「……何だよ、これ。どうして俺だけ?」

後ろの男が俺の胸ぐらを掴み、顔を近づけた。

息が臭い。目が血走っている。

「黙って行けよ、ガキ。生き延びたけりゃな。

わかったら、さっさと行け」

恫喝されて、突き飛ばされる。

体が震える。

その時、ミラが小さく、ぽつりと呟いた。

「……ごめん」

声は低くて、ほとんど聞こえなかった。

でも確かに聞こえた。

俺はミラを見た。

その目に、ほんの少し――揺らぎみたいなものが浮かんだ気がした。

でもすぐに目を逸らされた。

選択肢がない。

俺は一人で先に進むしかなかった。

北門の検問が近づく。

衛兵が五、六人、槍と剣を構えて立っている。

街の治安維持を名目にした、領主直属の武装集団。

顔は無表情で、目が冷たい。

俺が近づくと、衛兵の一人が手を挙げて止めた。

「ガキ、何だそのポケットの膨らみ。怪しいな。見せろ」

俺は必死で首を振った。

「なんでもない……ただの、物だよ」

ごまかせる言葉も思いつかない。

衛兵は鼻で笑い、俺のポケットに手を突っ込んだ。

瓶が出てくる。

透明な液体が街灯に反射して不気味に光った。

憲兵が瓶の蓋をとり匂う。

「これは……奴隷薬か! 運び屋のガキだな、一つだけか妙だな」

俺は慌てて逃げようとした。

体を振りほどき、後ろへ走り出そうとする。

でも衛兵の拳が飛んできた。

腹に重い衝撃。

息が止まり、地面に崩れ落ちる。

「逃がすかよ」

衛兵たちが俺を縄で縛り、引きずるように連行し始めた。

北門近くの衛兵詰所へ向かう道。

道行く人々が俺を冷ややかに見る。

誰も助けない。誰も声をかけない。

(……クソ。クソクソクソ……!)

頭の中で霞んだ家族の顔が浮かんだ。

あの温かさが、今は遠すぎて涙が出そうになる。

衛兵の一人が俺の頭を小突いた。

「泣くなよ、ガキ。みっともない」

俺は歯を食いしばった。

「……このあと、どうなるんだよ」

衛兵は鼻で笑った。

「どうなるって?決まってるだろ。

薬の運び屋は、即日処刑だ。

明日の朝には首が飛ぶ。

領主様の命令でな」

俺の体が凍りついた。

「……即日?」

「ああ。

溜め込んでおいてもすぐにお前みたいな汚いガキが増えるからな。だから捕まえたらすぐ片付ける」

笑いながら衛兵が答える。

俺は震えが止まらなくなった。

死ぬ。

本当に、死ぬんだ。

(逃げなきゃ……)

縄のきつさを確かめながら隙を探した。

衛兵は四人。

俺を真ん中に挟んで歩いている。

後ろの二人は少し油断しているように、少し離れている。

でも手は縛られ、足も縄で繋がれて大きく動けない。

(どうすれば……)

必死で考えた。

でもいい案なんて浮かばない。

体はガリガリで力もない。

ただ、死にたくない、という思いだけが胸を焼く。

詰所に近づいた。

もう門が見える。

詰所に到着した。

薄暗い部屋に引きずり込まれ、粗末な椅子に叩きつけられる。

衛兵の一人が俺の前に立ち、瓶をテーブルに置いた。

「さて、ガキ。吐けよ。

誰の指示だ? 仲間はどこだ?」

俺は首を振った。

「知らない……俺は、ただ……騙されて」

衛兵の拳が飛んできた。

頬に熱い衝撃。

口の中に血の味が広がる。

「嘘つくなよ。

薬一本だけ持ってるガキが、ただの通りすがりかよ。

全部吐け。仲間を売れ。

さもないと、もっと痛い目にあうぞ」

もう一発、腹に拳が入る。

息が詰まり、吐き気がする。

「うっ……ぐあっ……!」

視界が揺れる。

縄で縛られた手が痛い。

(クソ……ミラ……お前……)

ミラの顔が浮かぶ。

あの小さな「ごめん」が頭の中で繰り返す。

でも今はそんなこと考えてる場合じゃない。

生き延びなきゃ。

衛兵がナイフを抜いた。

「指一本ずつ切って、吐かせるか?」

俺の心臓が止まりそうになった。

その時――

外から、轟音のような咆哮が響いた。

建物が揺れる。

衛兵たちが一瞬固まった。

「何だ!?」

「魔物か!? 詰所近くに魔獣が!?」

窓から見える外――

巨大な熊のような魔物が詰所付近を徘徊し、

衛兵の一人を爪で薙ぎ払う。

血が飛び散る。悲鳴が上がる。

「え…援軍を呼べ!全員で討て!」

衛兵たちが慌てて外へ飛び出していく。

部屋に残ったのは一人だけ。

俺を見張る衛兵。

でもその衛兵も外の様子に気を取られている。

今しかない…今しかない…

俺は体を低くして、椅子の脚に縄をこすりつけた。

皮膚が擦り切れて血が出る。

痛みが走るが、止まらない。

やっと、縄が少し緩み手首が抜けた。

その時、衛兵が気づいて振り向く。

「お、おい、ガキ!」

俺は必死で立ち上がり、近くの窓から飛び出した。

足の縄はまだ残ってるが、転がるように地面に落ちる。

「クソ、ガキが逃げたぞ!」

外は混乱の渦。

魔物が衛兵たちを襲い、盾と爪がぶつかり合う。

誰も俺に気づかない。

(今しかない、逃げろ……逃げろ……!)

俺は這うようにして詰所の裏側へ。森が見えた。

そこから街の外れの森へ向かう道。

木々が密集した暗い森へ、転がるように逃げ込んだ。

枝が体を切り、歩幅を制限された足の縄が絡まりがもつれ転ぶ。早くは走れない。

でも止まらない。

森の奥へ、奥へ。(止まれば死ぬ…止まれば死ぬ…)

後ろから衛兵の叫び声が遠ざかる。

魔物の咆哮が、まだ響いている。

どれだけ走ったかわからない。

木の根元に体を隠し、ようやく止まった。

息が上がる。

体中が痛い。

手首は血まみれ。

頬は腫れて、目が半分しか開かない。

「……生きてる」

独り言を呟いた。

声が震える。

ミラの顔が浮かんだ。

あの最後の、揺れた目。

あれは……何だったんだ?

(……知るかよ。

もう、誰も信じねえ。ぜってい許さねぇ)

でも心のどこかで、まだ小さな火が消えていない。

家族の記憶。

あの優しさだけが、俺の支えだ。

「……次は、騙されねぇ」

小さく呟いて、俺は目を閉じた。

まだ、朝までは時間がある。

生き延びるために、休まむ。

このクソみたいな世界でもとの世界に帰るために――

そして、ミラにあいつらに……後悔させてやる。


数刻

レンは森の奥で目を覚ました。

体中が痛かった。

手首の縄擦れは血が固まって黒く変色し、

頬の腫れはまだ熱を持っていた。

腹が鳴る。喉が渇く、空っぽで、胃が内側から食い破られる感覚だ。

頭上は灰色の空。

湿った風が肌を撫でる。雨が降りそうだ。

遠くから、低い咆哮が響いてきた。魔物の声か。

レンは体を起こそうとしてよろめいた。

(……生きてる)

昨夜の記憶がフラッシュバックする。

詰所の混乱、熊魔獣の襲撃、必死の逃走。

街の衛兵たちはきっと追ってくるかもしれない。

レンは警戒した。

街につながる詰所付近には近寄れない。

万一、衛兵の巡回があれば終わりだ。顔はばれてる。

足の縄がまだ残っていた。足の縄を縛っている場所がどす黒く内出血している。

レンは周囲を見回し、鋭い石を探した。

森は深い。木々が密集し、陽光がほとんど届かない。

地面は苔と落ち葉で覆われ、足音を吸い込む。

這うようにして石を掴み、縄をこすりつけた。

皮膚がまた切れ、血がにじむ。

苦痛に顔が歪んだ。

ようやく縄が切れた。

(水…武器になるものも……)

喉の空きが限界だった。

レンはよろよろと立ち上がり、森の周りを探索し始めた。

数刻過ぎ

川の音が聞こえた。

水は透明、手で一口すくって飲む。


途中、折れて先端が尖った太い木の棒をみつけた。

武器になるかもと思いレンは拾う。

森は静かだったが、静かすぎて不気味だ。

時折、枝が折れる音がする。動物か、魔物か。

レンは体を低くして進んだ。

偶然、木々の隙間から石造りのものが見えた。

小さな祠らしき遺跡。苔に覆われ、古い。

食べ物はなさそうだが、隠れ家になるかも。

近づいて中を覗く。

埃っぽい。石の祭壇に、何か彫刻がある。

レンは手を伸ばし、触れた。冷たい。

その瞬間、指先がピリッとし、手の甲が痛んだ。

(……ぶつけたか?)

手を見ても何もない。

でも手の甲に小さな痣ができていた。

レンは気にも留めず祠を後にし、さらに探索を続けた。

近くの木に生えた果実らしき物を試しにかじる。

苦い。吐き気がする。すぐに吐き出す。

腹の空きに耐えかね、さらに奥へ。

木の実をいくつか集めた。

黒い実を少しかじる。甘酸っぱい。

雨が降り始めた。

冷たい雨粒が体を濡らす。

レンは震えながら、岩の重なりを見つけた。

岩と岩の隙間が穴のように空いている。

葉っぱと枝で覆えば隠れ家になる。

魔物に襲われても奥に逃げ込めば安全だ。

レンはそこを拠点に決めた。

枝を集め、入り口を塞ぐ。

雨が叩きつける中、中で縮こまる。

体が冷える。傷口が痛む。

夜が来た。

森は暗く、魔物の咆哮が近づく。

レンは眠れなかった。

ミラの顔が浮かぶ。あの「ごめん」の言葉。

信じていたのに。

翌朝。

雨は止んだが地面は泥だらけ。

レンは再び探索。

食べ物を探す。

川で石を投げて魚を気絶させようとするがうまくいかない

腹が鳴る(腹へった何か食べたい…)

森を歩いていると、突然茂みから音がした。

狼のような魔物――灰色の毛、赤い目。

体長1メートルくらい。レンに向かって唸る。

息が詰まる

(……!)

レンは逃げようとしたが足がもつれる。

魔物が飛びかかるため体制を低くする。


レンは叫びながら

手に持っていた先の尖った木の棒を振り回す。


魔物がレンめがけ飛びついてくる

(助けて…)

その時、手の甲が熱くなった。

視界が揺れ、影が――レンの影が突然伸びて、

一瞬魔物の足を絡めた。

影は一瞬だけ実体を持ち、絡みつける。

魔物がバランスを崩し、前に倒れ込む。

絡まった影に引きずられるように魔物が倒れ込み、

木の棒が喉から首にかけて突き刺さる。

だが掠っただけだった。

魔物は血を噴きながらもまだ生きていて、

弱々しく唸る。牙を剥き、レンに噛みつこうとする。

レンは息を切らし、何かの力が消えるのを感じた。

魔物が這い上がろうとする。

レンは木の棒を振り上げたが、先が折れて使えなくなっていた。

石を拾い、両手で握りしめる。

魔物の頭に叩きつけた。

一撃、二撃。骨の砕ける音が響く。

三撃目で、魔物の動きが止まった。

レンは息を荒げて倒れ込んだ。

手の甲を見ると、黒い渦のような痣が浮かんでいた。

さっきの祠で触れた時からか。

痣が少し大きくなっている。ズキズキと痛む。

魔物を殺した時、何かを吸い取った気がした。

空腹で魔物の死体をみる

(無理だ…)

辺りから血の匂い

遠吠えが響く


レンは息を整えながら立ち上がった。

まだ腹は空いている。

力もほとんど残っていない。

でも生き延びるために、動かなければ。


数刻

森の奥で煙が見えた。

細い煙の柱。人の気配だ。

でも普通の人間の匂いではない。

獣のような、野性的な臭いが混じっている。

レンは木陰に身を隠しながら近づいた。

小さな集落が見えた。

テントと粗末な小屋が数軒。

火を囲んで十人ほどの影が動いている。

耳が尖った者、尻尾のある者、角の生えた者……

亜人の集団だ。

火のそばから肉の焼ける匂いが漂ってきて、

腹が激しく鳴った。


見つかれば殺される。

今の体では戦えない。

それでも生きるためにはやるしかない。


夜になるのを待って、集落の端を観察する。

一つのテントに火打石が見えた。


泥にまみれて這うように近づいた。

心臓が破裂しそうだった。

足音を殺し、テントの隙間から手を伸ばす。

火打石と小さな火口箱を掴んだ。

指先が震える。

誰かが寝返りを打って、息を止めた。

ゆっくり引き抜き、逃げた。

隠れ家に戻って試す。

カチカチと火花を散らすと、枯れ葉に火がついた。

初めての火。

その温かさに、涙が出そうになった。


翌日からまた集落を狙う。

隠れながら観察を続ける。

亜人たちは狩りに出たり、森で実を集めたりしている。

昼間に数人が不在になるのを待って、

集落の端の小屋に忍び込む。

干し肉、果物、袋に入った硬いパンらしきものがある。

息を殺して、少しだけ盗む。

見つかりそうになった瞬間、

手の痣が熱くなり、影が伸びて物陰を濃くした。

まるで自然に溶け込むような隠蔽。手の甲が痛む。

亜人たちが通り過ぎても気づかれなかった。

盗んだ干し肉をかじる。

塩辛くて固いが、信じられないほど美味い。

腹が満たされ、少しずつ力が戻る。

果物は甘酸っぱく、水分も補給できる。

毎日、少しずつ盗む。

場所と時間を変えて、見つからないように。

亜人たちの生活を観察しながら学ぶ。


狩りの仕方。

罠の張り方。

安全な食べ物。


森で小動物を捕まえる方法も覚えた。

石を投げて気絶させ、牙のナイフで捌く。

火で焼いて食べる。

生臭い

影の力も、少しずつ思い通りに動かせるようになる。

生き物を殺すと少し痣が広がる、そして痣が痛む。そのたびに力が強くなる気がした。

魔物を殺した時、何かを吸い取ったような感覚

祠の遺跡が関係しているのか

でも今は深く考えない。

生き延びることが最優先だ。

亜人たちは時々森を巡回する。

隠れ家近くまで来ることもあった。

そのたび息を殺して隠れる。

ミラの裏切りを思い出すたび、胸が締めつけられる。

もう誰も信じない。

絶対に。


森で狩りを試す。

小さな兎のような魔物を、影で絡めて捕まえた。

捌いて焼く。

味は悪いが、腹は満たされる。

この生活が続く。

隠れながら、学びながら。

影の力が日ごとに少し、また少し強くなる。

(…後悔…させてやる…)

まだ、諦めない。

今はただ、生きる。

森の奥で、影のように。

次回は——

レンがこの地獄の底からどう這い上がるか、

いや、這い上がれるのかすらわからないけど……

それでも、諦めずに足掻く姿を描いていきます。


もし少しでも「次が見たい」と思ってくれたら、

評価・感想・ブックマーク、なんでもいいから残してくれると作者のメンタルが少し回復します……!

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