8話・よりにもよってあの女性ですか?
そしてそれから数日後。その晩の王家主催の夜会に参加すべく、王宮の女官達の手で綺麗に装ってもらった私は、「ユノ。迎えに来たぞ」と、颯爽と迎えに来た彼の手を取り、エスコートされて会場まで向かった。
会場となる広間では、皆の好奇な視線に晒された。わたしは不本意ながら、王宮側の(陛下の)勝手な思惑で、第1王子フィルマンの、婚約者候補の中で本命と見なされていたようで、皆が思わずと言ったように、
「えっ? 王宮魔術師長? 王子は?」
「王子のお相手はどうなっているの?」
と、ギョッとしたような声を上げていた。今夜の夜会では、第1王子フィルマン殿下の婚約者発表があると聞いていたが、わたしもノルベールも相手については、フィルマンから知らされていなかった。昼間は三人でよく会って話をしていたけど、婚約者について訊ねると「ま、当日のお楽しみということで」なんて笑ってはぐらかされてきた。
フィルマンは、恋人になったばかりの私達に遠慮してか「じゃあ、僕はお先に……」と、言って長居することはなく、そのサッサとその場からいなくなる。どこか怪しい。それはノルベールも同じく感じていたらしい。
「あいつ、何か俺達に隠しているな」
とは言っても、彼にもそれが何か全く分からなかったらしい。いよいよ、迎えた当日。私達も皆と一緒に大広間で王族の方々が登場するまで待っていた。
しばらくして両陛下達のおなりの知らせが入り、王族の方々が登場する壇上を注目していると、まずは陛下が王妃と共に登場し、その後に第1王子、第2王子達が続いた。第1王子のフィルマンは女性をエスコートしていた。
「あれは……!?」
フィルマンのエスコートしている女性を見て驚いた。グリモード公爵令嬢だった。何で? よりにもよってあの女性?
「あいつ、よほど結婚したくないんだな」
理由を悟ったようにノルベールは呟く。周囲では歓声が上がっていた。その歓声に背を押されるように、陛下が、フィルマンとグリモード公爵令嬢エリサの婚約が決まったと発表していた。
目が点になる私を壇上で見つけたのだろう。グリモード公爵令嬢エリサと目が合うと、フフンっと、こちらを馬鹿にしたような笑みを向けられた。別に良いけどさ。私はフィルマンより、ノルベール推しだから。




