その頃、元の世界では...
気付くと聖来は自分の部屋のベッドに横たわっていた。
部屋の中は薄暗く、夕方なのか明け方なのか分からない。
起き上がると、少し身体がダルい。でも、あちらの世界に行った時みたいに熱は出ていないようだ。ゆっくりと起き上がると、机の上に置かれていた教科書とノートに気付いた。ノートに書かれた日付を確認すると、異世界で過ごした分と同じ日数が経過しているようだった。
さらにスマホ置きに置かれたスマホを取り上げて日付を確認してみれば、やはりあちらの世界にいた時間と同じ量の時間が過ぎていた。時間は午後16時半を指している。
(夢じゃなかったのね…)
記憶を持ったままこちらの世界に無事に戻って来たんだと実感する。あの体験は夢じゃなかった。
セイリーンはあちらの世界に戻る前に学校の課題にでも取り組んでいたのだろうか、課題として指示されたのであろう印のついた問題を全て解ききっている。
良く見ると、ノートの最後にポツンと"お疲れ様”と書かれていた。
(これは私へのセイリーンから私へのメッセージ?)
セイリーンはもしかして私が記憶を持って戻ってくることを想定していたのだろうか。
(私が行ったあちらの世界には何もメッセージを残していなかったくせに......)
課題にきちんと取り組んでいたところなどを見ると、セイリーンもこちらの世界で頑張っていたようだ。
同志みたいな気持ちにナゼかなれた。
妙にアッサリとしたセイリーンのメッセージに苦笑しつつも、こちらの家族の様子が気になった私は帰宅しているであろう弟の様子を見にリビングに向かった。
「あ、姉ちゃん!今日もこのゲームやろうぜ!今日は絶対勝つ!」
ゲーム?"対戦ゲームなんて操作が難しいから私はやらないわよ”と、言いかけてふと気付いた。弟は“今日も”と言った。入れ替わっていたセイリーンが弟と一緒に遊んでたってこと?
「えーと、やってもいいけどお姉ちゃん、今日は調子悪くて激ヨワだよ?」
「マジ?丁度いいじゃん。ハメ技やらないでよね」
セイリーンは私の行動パターンを読み取って自動で操作していたと言っていたけど、ちゃっかり聖来としての生活を楽しんでいたようだ。他にも何かしていないか急に心配になってきた......。
「ねえ、あんたから見てお姉ちゃん、最近変じゃなかった?」
「別に。いつも通りだけど。いつもよりちょっと勉強を多くやっていて、ゲームでオレとも遊んでたくらいだよ。何で?」
「そうか。ならいいの」
こちらの世界にしかないゲームにセイリーンは食いついただけなのかもしれない。直接話したことは無いけど、オタク気質を持つセイリーンはゲームの中毒性にハマッてしまいそうな気がする。きっと興味深いことにはのめり込んでしまうタイプだろうから。多分だけど。
(そんな天才なら、また近いうちにこちらの世界に調査しに来るかもしれないわね)
あちらの世界のことが気になった。私が記憶を保ったままこちらの世界に戻ってきたことについて、うまくセイリーンを説得できるだろうか。ノートに残されたメッセージを考えると、説得は上手くいくと考えたい。
こうしてこちらの世界に帰って来たら来たで、あちらの世界のことが色々と気になってくる。セイリーンはアンダンティーノ殿下と上手くやっているだろうかとか、プレスト殿下とも仲良くできるだろうかとか。1番気になるのはスワロウ様のことだ。今度は良い兄妹関係を築けているだろうか。
スワロウ様を想うと、彼に無性に会いたくなった。短い期間ながら毎日同じ屋敷で過ごした思い出が多すぎて......。視界が滲む。
「姉ちゃん!ちゃんと操作してよ。メチャクチャやられてんじゃん」
「あ、ゴメン。ちょっと考え事してたわ」
「何で鼻声?もう花粉症?」
「そうかも。今年は早くから薬飲まなきゃね」
「大丈夫かよ」
いつも通りの日常が戻って来てることを感じた。
そしてある日、元の世界での生活に馴染んだ頃、思わぬギフトに気付いた。自分の部屋で本を読んでいると、停電で電気が突然消えた。
(ああ、こんな時に"ライト魔法”が使えればいいのに)
異世界で魔法の勉強をしていた時に、スワロウ様から一般的な生活魔法として最初にライト魔法を習ったのだ。手の平に明るい丸をイメージするだけで使える初級の魔法。異世界ではセイリーンの身体に蓄えられていた魔力のおかげで魔法が使えていたようだが、こちらでは魔力の無い私が魔法を使うことはできない。
(手の平で包むように丸のイメージをするのよね)
あちらの世界で散々練習した魔法のイメージを思い出して手の平に集中する。
(......やっぱりダメね)
こちらの世界に戻って来て何度かトライしてみたものの、異世界のように魔法が使えず諦めていた。だが、この時はナゼかもう少し根気よくイメージしてみようと思ったのだ。すると、しばらくすると手のひらがじんわりと暖かくなり、ついに光の玉が浮き上がった。
「え!何で!?」
確かにライト魔法が目の前で展開できている。何度も頬をつねったりしてみたが、光の玉は消えずに浮かび上がっているではないか。
もしかして、セイリーンに操作されていたことで魔力が残った状態になっているのだろうか。いずれにせよ、これは私一人のヒミツにしなくてはならない。だけど、異世界とのつながりがまだあると感じて嬉しかった。
また彼等に会う時の約束の証だと思って大切にしようと思ったのだった。
セイリーンは去る前にセイラの中に少し魔力を残してきました。多少自分の魔力が残っているだけでも次回、身体の中に入る時に便利だからです。セイラのためではありませんでしたσ( ̄∇ ̄; ) いよいよ次回、最終話になります。
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