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旅人剣士の異世界冒険記   作者: うみの ふかひれ
第二章 魔法の国ロクターン
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第六十話『終幕』

 修也たちはロクターン公国の城下町に入った後、真っ直ぐに城の方に向かった。今代のロクターン公に、ユリアの件が解決した事を伝えに行く為である。


 そしてそのまま執務室に入り、今はロクターン公と対談しているところだ。


「では、ユリアの件はこれにて解決、ということで良いのかな?」


 リリーはそれを聞いてユリアを見た後、答える。 

 

「そうですね。ロクターンの五大迷宮はもう攻略してしまったので、モンスターが出現しないという問題もありますが、取り敢えず今回の事件はこれで解決です」


「ふむ……そこの君たち、何か褒美をやろう。何かほしいものはないかね?」


 リリー以外の六人に問いかけたロクターン公。最初に答えたのはテラルだった。


「では、俺は新しい槍を」


「うむ、すぐに用意させよう」


 次に答えたのはヘリヤ。


「私は、何か特別な魔道具を。戦闘に使えるものを所望します」


「難しいが……それもなんとかしよう」


 そしてゾーン。


「僕は魔法の杖を」


「分かった」


 意外な事に、次にキサイが言った。


「わ、私は新しい剣がほしいです」


「用意させる」


 最後に残ったのは、修也とユリア。なんとなく察せられるが、ユリアに褒美なんて与えられないだろう。


 少し考えた修也は、


「僕は特にありません、欲しいものなんて」


 そう言って、ロクターン公を見つめた。


 ロクターン公はそれを聞いて目を見開いたものの、すぐに気を取り直して口を開く。


「そうか――では、今日の所は帰るといい。褒美が欲しいと言った者は、明日またここに来い」


 全員が、頷いた。


 ★★★


 その後、修也たちは城の医務室に取り残されたエンジュを連れて城を出た。城門から真っ直ぐに道を歩いていても、ロクターンの五大迷宮が攻略された事を話題にしている人の声は聞こえない。


 それは、ロクターンの五大迷宮がその程度の物だったということで、今後ユリアが全ての記憶と力を取り戻す事は無かったかもしれないということでもある。


 エンジュは、すでにロクターンの五大迷宮が攻略されたということを聞いて驚いていたのと当時に、修也の隣にいたユリアの姿を見て萎縮していたのは印象的であった。


 屋台からは食べ物の匂いが漂ってきている。朝なのに仕事に精が出ているのは良いことだ。腹も空いていたので食べ物を頼みたいと思っていたが――その前にある事をしなくてはばならない。


「そんでシュウヤ、お前はこれからどうする」


 テラルの声と共に、修也は我に返った。


 やらなければならない事。それはこのパーティーに所属し続けるか、抜けるかということを決める事だ。どうしようか少し迷う程に、このパーティは魅力的である。


「俺は……どうしようかな」


 すると、なぜかここまでついてきていたリリーが口を開く。


「私はもう、このパーティーを抜けるわ。あなた達は探索者で、世界中を旅しなきゃいけないんでしょ? 私はこの国の公女だから、ついていくわけには行かないわよ」


「そうだよなぁ……いや、そうですよね、か。ヘリヤはどうする」


 テラルがヘリヤに話しかけると、彼女もまた言う。


「私も抜ける事にする。一人の方が気楽だし、もっと強くならなければならないからな」


「あー……シュウヤ、改めて聞こう、お前はどうする?」


 答えようと思ったが、その前に確認しておくことがある。


「その前にリリーさん、元々は魔の力を得るために僕らと行動を共にしていたあなたは、こんな結末に満足しているんですか?」


「ええ、魔の力なんてもういらないわ。仲間たちとの大切な時間を手に入れることができたんだから、それ以外は何もいらない」 


「……そうですか」


 そして、修也はテラルに返事をした。


「俺はパーティーを抜けるよ、テラル」


「そうか……そうかぁ……またこの四人か」


 テラルはそう言った後、立ち止まる。見るとここは、テラルたち四人が泊まっている宿屋の前だった。ここでお別れ、ということだろう。


「じゃ――またどこかで」


「おう」


 リリーとヘリヤはそれを聞いて、それぞれ別の方向に歩いていく。


 ――結成して間もなかったこのパーティーが崩壊した瞬間だった。


「さて、これからどうしようかな」


 そう呟いた修也に、隣にいたユリアが答える。


「ねぇ、知ってる? エルフが住んでいるっていう森って」


「いや知らない。そんな所があるのか? カミュが不老不死の力を授かったとか言ってたし、少し興味があるな。で、その森ってどこにあるんだ?」


「なんだっけな……前にカミュが自慢げに話してたんだけどね? エルフについて質問して答えてくれたんだ。なんか、この国から少し離れた所にある森で、今はもう迷宮化してるらしいよ? 名前は『カラカトの樹海』」


「そうか……じゃあ行こうぜ、そのカラカトの樹海ってのにさ」


「その前に、お腹が空いたからご飯が食べたいな」


「じゃあ適当な所で食べるか……ついてこい。俺の奢りだ」


「えへへっ、ありがと」


 ――そんな会話をしながら、二人は街の人混みの中に消えていった。 


 

 

と、これでこの物語は一旦完結です。

「旅人剣士の異世界冒険記 〜異世界に転移した俺は、生きるために迷宮の探索者になることにしました〜」を書き始めて2ヶ月と少し、正直エタるかな〜とか思ってましたが、完結できて何よりです。

正直プロットもふわふわした物だったし、完結させることができないかもしれないとか思ってましたが、収まる所に収まったといいますか、まあとにかく、ここまで読んでくれた読者の皆様、ありがとうございます。

これ以降は、新作を書き始めて、完結させた所でまた書き始めようと思っております。

『カラカトの樹海』編では、この世界の魔法について、詳しく掘り下げていくつもりでしたが、新作を書きたくなってしまったので、一旦延期にすることになります。


では改めて……読んで下さって、本当にありがとうございます!

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