第三十一話『屋敷襲撃③』
修也は、ワーリング=ナイトの足を狙って剣を振り下ろす。魔力を込めた剣は、その刃をあっさり沈み込ませて、ワーリング=ナイトの足を切断した。
そのままもう片方の足も切断すると、ワーリング=ナイトは体制を崩す。仰向けに倒れたので、修也は更にワーリング=ナイトの首を切断した。今ので先程全快した魔力が一割ほど削れる。
ワーリング=ナイトの体が地面をのたうち回り、剣でひび割れた地面から土埃が舞った。
「ッ! くっそ!」
ワーリング=ナイトが暴れ回るせいで、修也はワーリング=ナイトに近づけなくなっていた。そのままワーリング=ナイトは体を再生させて、また立ち上がる。
修也は剣に魔力を込めて、今度は青白い光の剣を出現させた。そのまま剣を振り下ろすとワーリング=ナイトの右腕が千切れかかり、再び振り下ろすと、ワーリング=ナイトの腕が千切れた。
光の剣が消える。修也は再び剣に魔力を込めて光の剣を出すと、ワーリング=ナイトの左肩から右脇腹にかけて、逆袈裟に剣を振るう。強引に力を込めて、ワーリング=ナイトを斜めに切断した。
今ので、ワーリング=ナイトの心臓部分にある魔石が露出した。そこに光の剣を突き刺そうとしたが、視界の外からワーリング=ナイトの右腕が現れる。ワーリング=ナイトの持つ剣が、修也に振り下ろされた。
ズンッ! と音を立てて、ワーリング=ナイトの振るった剣が地面にめり込む。何とか避けたのは良いものの、光の剣が消えてしまった。
「…………」
修也のやろうとしていることは至極単純。心臓部分を外部に露出させて、そこにある魔石を壊すこと。ワーリング=ナイトの様々な部分に邪魔されて、それができないのが現状である。
厄介なのは、ワーリング=ナイトの来ている鎧に、その筋肉。《魔力物質化》を用いないと切断できない上に、いちいち邪魔をされるので魔力を無駄に消費してしまう。
再生能力も折り紙つきで、今も斬り落とした右腕と上半身を再生している。心臓部分はとっくに隠れてしまった。やっている事が無茶な証拠だ。
「……よし」
そんな事を考えつつ、修也は剣に魔力を込める。再び光の剣を出現させて、立ち上がったワーリング=ナイトに向かって剣を振るった。
まず最初に狙うのは、剣を持つ右腕。ワーリング=ナイトが剣を振るった直後が狙い目だ。剣を振り下ろして手首を斬り、そのまま斬り上げて、右腕の付け根から切断する。
次は心臓部分を露出させる。そのためには強引に心臓部分の周りの肉を斬り落とすしかない。直接心臓部分を狙うと、筋肉に刃を阻まれて剣が当たらないのだ。
「ッ!」
水平に振った剣があっさりと鎧を壊し、そのままワーリング=ナイトの体内に剣をめり込ませる。何故か鎧よりも体内の筋肉の方が硬い。手応えを感じながら、修也はひたすら剣に力を込める。
ズシュッ! と音を立てて、心臓部分の少し前に剣を届かせた。だが、それ以上はどれだけ力を込めても刃を届かせることができない。やむを得ず、修也はそこから剣を斬り上げた。頭から光の剣が出てきて、思わずギョッとする。
結果、ワーリング=ナイトはその場で倒れ、体を痙攣させていた。
魔石が、少しだけ露出している。
「おおッ!」
光の剣を、そこに振り下ろす。
だが、ワーリング=ナイトの左腕が修也の剣を受け止め、そこで剣に込めた魔力が消失する。光の剣が消えて、攻撃手段が無くなった。
「…………」
周囲の魔力を取り込みながら、思考を巡らせる。
今は、剣の軌道が少しずれたのが駄目だった。心臓部分の少し上。狙うのはそこだけでいい。心臓部分を露出させた後の流れを、もう一度想起した。
光の剣でワーリング=ナイトの上半身を半分ほど切断した後、光の剣を魔石に刺して、剣に込めた魔力を放出する。爆発のような現象が起きて、魔石は消失するはずだ。
やること自体は単純だが、最終的な目標にたどり着くまでには邪魔が多すぎる。
「……はぁ」
体内に取り込める魔力が限界に達した所で、修也は魔力を取り込むのを止めた。修也が魔力を取り込んでいる間にワーリング=ナイトは既にその体を再生させていて、無言で修也の事を見つめていた。
「よし」
剣に魔力を込めて、再びワーリング=ナイトに斬りかかろうとした。
だが、そこでワーリング=ナイトの体が変化する。
「は?」
手に持つ剣が消失して、代わりにワーリング=ナイトの全身の鎧が更に大きく、分厚くなっている。拳に金属が集中しているのか、拳が先ほどより大きくなっていた。
更に驚いたことに、心臓部分にあるはずの魔石が、露出している。
「何考えてんだ?」
突然のワーリング=ナイトの奇行に驚いていると――凄まじい速さで、こちらに走って来た。
「ッ! おいおいおい!」
その巨大な拳を振り下ろして、地面に亀裂が入る。何とか避けたのは良いものの、地響きが起こり、修也はその場で体制を崩した。
ワーリング=ナイトが数歩で距離を詰めて、その拳を振り下ろしてきた。二度、三度と連続して、髪の毛に拳が掠ったが、何とか避け続ける。
今の変化で変わったのはその速さ。明らかに剣よりも大きいはずの拳を生成したのにも関わらず、その速さは劇的な変化を遂げた。
原因はすぐに思い当たった。おそらく、露出した魔石が原因だろう。周りの魔力があれに吸収されているのを感じる。修也と同じく、魔力で全身を強化しているのだ。そうでないと、この異常な速さの説明がつかない。
「ッ!」
剣で受けると、凄まじい衝撃が修也の右腕を襲った。続けて隕石のように放たれるワーリング=ナイトの拳を受け続ける。魔力を込めてもなおこの衝撃。キツいなんてものじゃない。
修也はどんどんと後退していく。庭にある高級そうな像が壊れ、草木が倒れていく様は、さながら暴風にでも当たったのかと思うほど。拳と剣。どちらが有利なのかは明らかなのに、修也は押されていた。
「ぐっ!」
拳の先が修也の体を捉えた。衝撃が胴体を襲って受け止める剣の速度がワンテンポ遅れる。
そこをワーリング=ナイトに狙われて、胴体に思い一撃を喰らった。
「ぐあっ!」
その場から吹き飛ばされて、修也は高い塀にぶつかった。塀にヒビが入り、そのまま地面に倒れる。
まずい、今ので何箇所か骨が折れたかもしれない。口に血の味が入ったと思ったら、いつの間にか血を吐いていた。
「…………」
足音を立てて、ワーリング=ナイトが近づいてくる。鎧は今ので砕けてしまった。こうなったら、これはもう重しだ。修也は鎧を脱ぎ捨てて、足に魔力を流し始めた。
ここまでくると、もう満身創痍と言ってもいいかもしれない。だが、ここで倒れるわけにはいかないのだ。剣と足に、体内の半分の魔力を流し込む。
剣を矢のように引き絞る。左足を前に出して、ワーリング=ナイトの心臓部分に標準を合わせた。
「ふぅ……」
剣が青白く光り始める。足にも青白い光りが灯り、全身に鳥肌が立つ。
ワーリング=ナイトは今、歩いてこちらに向かってきている。もちろん、心臓部分を守ってはいない。防御する暇もないほど速く懐に入り込んで、剣を突き刺してやる。
「ッ!」
足に力を込めて、魔力を放出する。修也はその勢いで跳んだ。さながらそれは弾丸の如く、修也の体はワーリング=ナイトの心臓部分に向かっていく。
「オォォォォォォッ!!」
そんな声を上げて、ワーリング=ナイトは心臓部分を守ろうとした。
たがもう遅い。
修也の剣は、ワーリング=ナイトの魔石に突き刺さって、そのままワーリング=ナイトの胸を突き破り――魔石が砕けた。
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