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活字拾いの少女、活字を拾う

 私は転生者である。

 でも転生者につきものであるチートはない。

 しかも赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられていたから両親もいない。

 両親は何故私を捨てたのか? そんなことは知らない。

 この世界では子供を捨てるなんてことは珍しくない。殺されなかっただけマシだと思っている。だから私は両親を恨んだりしたことはない。

 転生者と言っても、他の孤児となんら変わらない。

 ただ前世、日本で暮らしていた記憶があるだけだ。

 そんな記憶はこの世界でなんの役にも立たない。美味しい料理の記憶は、固いパンと味の薄いスープを食べている自分が惨めになるだけだ。

 この世界にラーメンがあるのか、カレーがあるのか知らないけど、どちらも孤児である私には食べることができない。もしあったとしても、買うお金を持っていないのだからない方が良いような気もしてくる。

 この世界の人は、貴族だろうと平民だろうとそして孤児だろうと7歳になる年に、『祝福の儀』というのを受けなければならない。もちろん私も7歳になる皆と一緒に受けた。実はその時少しだけ気体した。転生前の記憶がある私には何かこの『祝福の儀』で授かるのではないかって。全く何もなかった。そもそもこの『祝服の儀』は何かを授かる儀式ではなかった。ラノベの読み過ぎだった。この世界は日本とは違う。いや日本でも少し前の時代では同じようなものだったのかもしれない。子供が死にやすいと言うことだ。病気にかかれば抵抗力(免疫力)のない子供はあっという間に死んでしまう。だから7歳まで生きれた子供をお祝いする意味で『祝福の儀』があるようだった。


 

 孤児である私たちは十四歳になると孤児院から追い出される。それまでに働き口を見つけなければ未来はない。

 力のあるものは冒険者になり、頭の良いものは商家に雇ってもらい、器量の良いものは身なりの良い男に引き取られていった。その後彼女たち彼らたちがどうなったのかは知らない。孤児院から出て行った子供たちは二度とこの孤児院を訪れることがないからだ。私も2度とこの孤児院を訪ねることはないだろう。

 孤児院の先生たちは私たちを人間としては扱ってくれていたけど、愛情というのは与えてくれない。親の愛情を知らない子供たちには酷なことだけど、前世を知っている私は仕方のないことだと達観していた。

 給金も安いのに騒がしだけの子供をたくさん育てなければならないのだから、効率的になる先生たちの態度も仕方のないことなんだけど、孤児院に愛着のようなものを感じる事はないし、懐かしく思うこともない。

 さて孤児院を追い出される事は仕方のない事だとしても、十四歳になるまで引き取り手のなかった私の就職先は難航した。

 私は転生者であるから計算は得意だった。でも商家で働きたがっているボルトに頼まれて、その席を譲った。ボルトとはそれほど仲が良かったわけではないけど、彼はここに就職できなければ他に行く当てがなかった。そしてその就職先の社長というのが成金趣味のキンキラしたヤツだったこともあって、私も敬遠したかったから丁度良かったのだ。

 器量は良くもないけど悪くもなかったので身なりの良い男からも声がかかったけど『一緒に来れば美味しいお菓子が食べれますよ』という言葉に、前世を思い出しこの男に危険を感じたので頷かなかった。前世の私は知らない人にはお菓子をくれると言ってもついていっては駄目だってお母さんに注意されていたからね。

 結局、孤児である私を雇ってくれたのはガッテン活字工房だけだった。

 この世界の文字は漢字とひらがなとカタカナだった。そう日本語だ。孤児院では文字を習うけどひらがなとカタカナだけだ。そう平民ではひらがなさえ読めれば生きていける。漢字が読める人は貴族、商人、研究者、神殿で働く人たちだけらしい。

 

 私は漢字が読めることを隠して生きることにした。孤児院では目立つことをしないほうが良いと転生者である私は知っていた。おかげでいじめられることもなく無事に成人まで暮らすことができた。そう私の目指すものは、とにかく平穏に暮らすこと。この世界は前世で暮らした日本とは違う。弱肉強食の世界だ。弱いものは生きていけない。

 ひらがなが読めて書けることでなんとか就職先が決まった私は活字拾いでなんとか生きている。

 ガッテン活字工房での仕事は渡された紙に書かれた文字の活字を拾うこと。最初は戸惑ったけど、今では慣れてどこにその文字があるか覚えているので短時間で拾うことができるようになった。この仕事は時給ではない歩合制だ。

 頑張れば頑張るだけお金がもらえるなんて、本当に良い職場だ。

 

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