懐古②
王女殿下が僕に話していた祭りの当日がついにやってきた。
横にいる今の彼女は簡素な服装で僕の隣を歩いている、王族らしからぬ服をどこで手に入れたのかと興味本位で尋ねたらにこりと笑って誤魔化されてしまった。
多分これは過去にも抜け出したりしているな……その時は誰が強力したのだろう? 王女がこんなことをしていてこの国は大丈夫なのかと護衛の身で僕はこの国の未来をちょっと心配してしまった。
服はどうにか出来るかもしれないが顔がばれてしまうかも知れないのはどうするのかと尋ねると闇属性の魔力操作で認識阻害しますと答えられた。ちなみに王女殿下の魔力属性の適正は全属性だ。
お祭りの会場についた僕と王女殿下はお店を見て回る。決して派手ではないが活気に満ちあふれていた。何個か食べ物を買って歩きながら食べる。買い物をしていない時も王女殿下とは言われなかったから本当に認識阻害をしているらしい。
「……おいしい!?」
王女殿下は買った食べ物を上品に咀嚼しながら満足そうに食べている、見る人がみたら卒倒しそうな光景だ。
「お口に合いますか?」
僕は何気なく尋ねてみる、王族である彼女が一庶民の食べているものを食して本当に美味しいと思っているのか疑問に思ったのだ。
「美味しいですよ、とても」
王女殿下は迷いなく即答する。
「王宮の料理人が作ってくれる料理もおいしいですけど、これはまた別方向のおいしさです。なんというか……洗練されてはいないけど刺激的な味がするんですよ」
目をきらきらさせて力説してくる王女殿下、普段王宮で一級品を食べているからこそかえって刺激的だということだろうか。
「はい、あなたもどうぞ」
王女殿下が僕にも食べ物を渡してくる。僕はそれを受け取ると口に入れた。
「おいしい」
「でしょう」
彼女から渡されたものはなにかの串焼きだったがとてもおいしかった、作った人間の味付けの腕がよかったのだろう。
「もう少し見て回りましょうか」
この少女は本当に心の底からこのお祭りを楽しんでいる。
(本当に変わった王族だ)
だけど彼女に対する不快感はなかった、むしろ自分が彼女にだんだん惹かれていっていると感じている。
「あっ……!」
ふと彼女が声をあげてある方向を見ていた。そこには泣いている子供がいた。
「あっ……! 待ってください……!」
僕が止める間もなく、彼女はその子供に駆け寄っていった。慌てて僕も後を追いかける。
子供の様子を確認するとどうやらこけたりでもしたのか足をすりむいていた。王女殿下は子供の傷口に手をかざす、暖かい光が彼女の傷を包み混み、あっという間に傷は塞がった。
治療を受けた子供はお礼を言ってその場を去っていった。彼女はそれを手を振って見送っている。
「本当に変わった御方です、あなたは」
僕の言葉に王女殿下は一瞬目を見開き、そして苦笑した。
「自覚はあります。貴族階級が平民階級を見下していてこういうことをしているのはおかしいと思われることも理解しています。でも……それは間違っていると思うのです。彼らも私が守るべき同じ国に住んでいる民なのですから」
そういう彼女の瞳は真剣だった、今言ったことを彼女は本気で思っているのだろう。
「……あなたの言っていることを僕はおかしいとは思いませんよ」
「えっ?」
僕はそう言って食べ物を咀嚼しながら再び歩き出した。王女殿下は僕の言葉に一瞬あっけにとられていたようだけど言葉の意味を理解したのか嬉しそうにしながら僕の後を追いかけてきた。
*
「……」
思えばあの時から僕はアリス様に決定的に惹かれるようになったのだろう。祭りの様子を見てついあの時のことを思い出してしまった。
どんどん。
しばらく僕が過去のことを思い返して物思いにふけっているとドアを叩く音が聞こえた。僕がどうぞと声をかけるとアーシャが部屋へと入室してくる。
「今日は珍しいですね、こんなに早く目を覚ますなんて」
「うん、アーシャとお祭りを回れるのが楽しみで目が覚めちゃった」
僕の言葉を聞いた彼女は顔を赤らめる。
「さ、さっさとお祭りにいく準備をしますよ。ほら、早く!」
「はいはい、分かったよ」
照れ隠しで僕の腕を強く掴んできた彼女の様子を微笑ましく思いながら僕は大人しく彼女に従った。
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