イサークとリアナ
「2人ともわざわざ来てくれてありがとう」
僕とアーシャは王都を発つ前にリアナの元へとやって来ていた。
この前話していた2人でリアナの様子を見にいこうと言っていたのを行動に移したのだ。
「しかしどうしたの? 2人揃って神妙な顔をしちゃって。空気が重いなあ」
明るく笑い飛ばすリアナ、しかしいつものはきはきとした彼女に比べて覇気がないように感じる。
「リアナ、その……イサーク様のことは……」
アーシャが遠慮がちに切り出す。やっぱり聞き辛いよなあ。
「ああ、兄さんのことで私のことを心配してきてくれたの? ふふ、ありがとう」
リアナはアーシャの言葉から僕達の来た理由を察してアーシャにお礼を言った。
「でも私は大丈夫よ。イサーク兄さんの件ならなんとも思ってないわ」
「……またそうやって強がりを」
アーシャがリアナに強い口調で迫る。リアナはゆっくりとした動作で彼女を止め、語りかける。
「本当にいいのよ、アーシャ。私のために怒ってくれてありがとう」
「……ねえ、リアナ。僕とアーシャしかこの場にはいないんだ。少しぐらい弱音を吐いてもいいと思う」
「……」
リアナは僕の言葉を聞いて少し黙っていたけど、やがてため息をついた。
「正直疲れちゃったのが本音。あの人が私のことを憎んでいたのは知ってた。けれどね、あそこまでとは思わなくってさ、ちょっと辛かったなあ」
そう言ったリアナの顔には僕達の前で隠さなくて良くなった疲労が滲み出ていた。やっぱり無理をしていたな。
「……イサーク兄さんには本当になにも感じないと思ってた。仲が良かったのなんてそれこそ凄く幼い時くらい。物心ついてお互いの力量とかがはっきりしてからは本当に疎遠になっちゃったからね。だから兄さんにあんなこと言われて辛いって感じる心がまだ私にもあったんだなって」
彼女が言葉を詰まらせる。アーシャがそっとリアナの側に行き、手を握った。側にいるとの無言の意思表示だ。
「……血が繋がった兄弟から恨まれたら傷つくのは当たり前だと思うよ」
「ふふ、ラナ、あなたって本当にお人好しね。アーシャもありがとう、あの時兄さんと戦ったことを後悔はしていないわ。多くの人を守ることも出来たし。でもね、一人の人間として傷ついていたのも私の一面なの。こんなことここでしか言えないから今日は話を聞いてくれてありがとう」
くすくすとどこか憂いを帯びた表情で笑うリアナ。その表情には一人の人間としての感情が滲み出ていた。アーシャがリアナを慰めようとゆっくりと彼女の背中を優しく撫でる。
「……こうならない未来ってあったのかしら。ねえ、イサーク兄さん……」
ここにいない兄に問いかけたリアナの言葉は誰の耳にも届くことなくかき消えた。
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