表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

蒼の百合姫-蒼天に願うは-

!一言!⇒IF自害ネタです。

嫌悪感を持たれる御方は退場ください。

残酷な描写……って、よりは残念な描写です。

R13を付ける程の物ではありません。



 連れて来られたのは城内の一室。

見知らぬ内部構造が私の不安を煽る。

人々が話す言葉は遠く離れた関西域のソレ、馴染まぬ気配と空気。

酷く落ち着ぬ場所に捕らわれ囲われていた。


「伊達の姫君は随分と御立腹な様子。

 御招待方法が酷く気に召さなかったと見えますね……」


「誘拐犯が何を世迷言を申す」


「やれやれ、随分と気が強い御方だ」


 強張り動けぬ四肢で誘拐犯を睨めつけた。

峻烈気丈な面は一族譲り、黒い瞳が憤るほど波紋が強く波打つ。

誇り高き奥州覇者の一門たる矜持が助力と支えなのだ。


「人質に選ばれた理由、御理解していましょうか?」


 検分する眼差しと蔑む口調で面前に立つ男性。

冷徹な声音で伊達軍の降伏を暗に示唆する人。

亡き太閤殿下より最も信頼されたとされる人物は、感情の起伏無く淡々と意を語る。

酷く冷酷な印象を与える声音と、策謀孕む抑揚なき言葉。

豊臣政権下における五奉行が一の実力者にして、幼い頃より秀吉に仕える義将。

家督を相続した若き秀頼公、淀の方様の擁護により、絶大な権力を握りて無双の才覚と揶揄されている。

吏僚として積み重ねた功績は大きが、対立する秀吉子飼いの武闘派との溝は深いと聞いた……。

そうか、史実に添っての対立ならば徳川殿を挟み会津攻めが起きているか。

私は石田三成を一瞥して嬌笑を口辺に乗せてみた。

 

「豊臣は有利に交渉を運べましょうね。

 私が大阪城へ囚われた事で、伊達は迂闊に手が出せぬので御座いましょう?」


「ほう、世間知らずの姫君かと思っていましたが……これは、意外な答え」


 喉を震わせて嘲る笑いが傲慢さを滲ませる。

非力で無知な小娘と侮る様が癇に触れ、私は苛立ちを強くして睨めつけた。

城下の屋敷より誘拐した手法は賞賛に値する。

さしずめ、上杉の軒猿か真田配下の忍びでも使ったのだろう。

でもなくば我が伊達家が誇る黒脛巾を凌ぐ事など出来よう筈がない。

我が身分と立場を熟知し、戦へ交渉の道具と表に出す心算に嘲って。


「時間の無駄は省くべきだと思いませぬか?

 姫君が頷くだけで、無駄な争いが避けられ命は救われるのです。

 伊達家の安寧と所領も、この私が豊臣が代理として保証致しましょう」


「……私には難しい話ですね。

 少しばかり思案の御時間を下さいませぬか?」


「まぁ、辿り着く答えは一つでしょう。

 御決断は早目にお願いしたく思いますが……宜しいでしょう」


 笑いを残し彼の義将は部屋から去る。

緊張と不安を煽る気配が遠くのを、私は静かに待った。

 豊臣の居城、大阪城は難攻不落と耳にしている。

此処から脱出するなど私には到底無理。

入り口の見張り番に気を配り、潜む存在を再度確認する。

安堵の念と吐息が漏れた、私は周囲を見渡して黒脛巾組の名を低く呼ぶ。

伊達の情報機関、忍びの一員たる臣の名を静かに。


「其処に居るのは柳原戸兵衛か、それとも世瀬蔵人だろうか?」


「私は……太宰金助と申します」


「ならば太宰、早速で申し訳ない。

 我が言葉を一字一句間違う事なく政宗様が元へ伝え届けてくれぬか」


「御意に御座います、お駒の方さま」


 其の返事に満足し私は頷く。

伊達の一門に育った我が矜持、養子だからこそ芽生えた高い自我。

誇らしい一族のため、生き恥曝すなど考えられぬ。

人質として我が身柄を交渉に利用するならば先手を打つ。

奥州筆頭たる政宗様が室たる我が身、従妹としての気位。

東国一の美貌と称された身を利用する。

幸いにも拘束されず自由のまま、胸元へ隠した懐刀も気取られてはいない。


「“罪を斬る 弥陀の剣にかかる身の なにか五つの さわりあるべき” と」


「姫さま、なっ何を申されのです!!」


「此れが、此れが私の決断と答えなのです」


 天井裏にて息呑む気配。

言い放った言葉への当然の反応、私は苦笑いを浮べた。

呟いたは辞世の句である。

此処とは異なる歴史の流れ、最上公の愛娘“駒姫”が辞世和歌と同じ詠。

この状況下では、気の利いた歌など詠めず要させてもらった。


「我は豊臣の手に落ちたる事を恥じ、自ら命を絶った。

 ならば、仇打ちするに十分たる大義名分が伊達には生まれよう。

 この期に乗じて天下太平の足がかりを……と、私は此所で祈り願う」


「うっ、受け賜りました……」


「隻眼の竜が逆鱗に触れた報いを、豊臣は然り受けるがよい」


 淡々と告げる決意と放つ言葉は震えていた。

心残りは、父上と母上に最期の別れが言えぬ事。

政宗様が側にて生涯を支えると誓った言葉を違える事。

偽りに罪を重ねる事を何卒御許しください。

不甲斐無い身上を侘びて決断した。


「我が頭髪を届けてくれ、政宗様が元へ御願いだ」


 この世界で政宗様より賜った愛称は“駒姫”だった。

明かす事の出来ぬ異なる世界の史実、悲劇の佳人の名と同じ。

偶然なのか、其の名前は必然なのだろうか。

要らぬ知識から得た心構えと予見が先にあった。

漠然とした心構えは因果応報と天の戯れから。

震える指先で胸元より懐刀を取り出す。


「介錯を頼みたい」


 私は高い天窓から微かに覗く遠い空を仰いだ。

雲間から僅かに覗く蒼穹を瞳に焼付け、硬く瞳を閉じる。

両手を添え逆手に懐刀を持つ、手先震えるは死への本能的な恐れ。

自らの喉に刃を向け、我が最期の願いは唯一つと詠唱する。

政宗様の、伊達一門の武運長久と天下太平の世へ道標。

皆が望む天下泰平の世、我が力で購えるなら惜しむ命ではない。

零れ落ちたは涙が先か血潮であったか、霞む意識の先に私は夢を見る。






 

*黒脛巾組の実名は調べております。

-罪を斬る 弥陀の剣にかかる身の なにか五つの さわりあるべき- 

罪を切り払ってくださる慈悲深い阿弥陀様、其の刃に掛かる身ならば、極楽へ向かうに五つの妨げ(五常=仁・義・礼・智・信)など有りはしせません。

多分そんな意味、指摘在りましたら御教授下さい。

 東国一の美少女と名高い駒姫の姿絵はガチで可愛いです……。最上殿が愛娘を失った悲しみで、徳川方に付いたは納得でございますよ。正妻の大崎夫人はコレが原因で病死。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ