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限界社畜プログラマー、自分が作った『管理者用チート』で異世界無双する  作者: kanatoka


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限界社畜の夜、終わりの始まり

「……はは、またエラーかよ」



 午前2時15分。誰もいないオフィスのフロアに、俺――中村 大輔(26歳)の乾いた笑い声が響いた。



パソコンの画面には、禍々しい赤文字で『システムエラー:サーバー応答なし』の文字。


明日――いや、もう今日か。朝9時リリースの新作スマホゲームの最終デバッグ中に、致命的なバグが見つかった。



「マジで勘弁してくれ……。これで3日連続徹夜だぞ……」



俺の役職は、メインプログラマー兼デバッグチーフ。



 要するに、上司が無理なスケジュールで取ってきた仕事を、現場でひたすらケツ拭きする「限界社畜」だ。



 目の下にどす黒いクマをこしらえ、冷めきった缶コーヒーを胃袋に流し込む。カフェインの過剰摂取で、心臓がさっきからドクドクと不快なリズムを刻んでいる。



 だが、ここで諦めるわけにはいかない。

この『ファンタジー・クロニクル』は、俺が仕様策定からプログラムの根幹まで、文字通り血と汗と涙を流して作り上げたゲームだ。

画面のコードを睨みつける。



 このゲームには、開発段階で俺が「デバッグ用」として仕込み、あまりのバランス崩壊ぶりに本実装を見送った『管理者専用(チート)コード』が存在する。

一つは、あらゆるモンスターのデータ、隠しパラメータ、裏技的な弱点を一瞬で表示する【全知の鑑定】。


 一つは、デバッグ中に敵に見つからないよう、自分の全ステータスを一般NPC以下に偽装する【完璧な隠蔽】。

そして、デバッグ作業で魔法を無限にテストするための、【全属性魔法の解放】と【MP(魔力)消費無限化(インフィニティ)】。



「よし……。この管理者コードの消し忘れがバグの原因か? ちょっと内部データを覗いてみるか……」



 キーボードを叩く。カタカタカタ、と深夜のオフィスに小気味よい音が響く。


 慣れ親しんだ俺だけの最強コード。ゲームバランスを木っ端微塵に破壊する、神の領域のステータス。



「……あれ?」




急に、視界がぐにゃりと歪んだ。

キーボードを叩く指先に、力が入らない。

心臓が、ドクン、と大きく跳ね上がった。

冷や汗が全身から噴き出し、信じられないほどの激痛が胸に走る



「がはっ……、あ、れ……息が……」



 椅子から崩れ落ち、冷たいリノリウムの床に倒れ込む。 


手から離れた缶コーヒーが床を転がり、茶色い液体が広がっていく。


かすむ視界の中で、パソコンの画面だけが白く光っていた。



(嘘だろ……。俺、ここで死ぬのか? 26年、ろくに恋愛もせず、毎日終電までコードを叩いて……こんな床の上で……)



理不尽だ。


せめて、自分が作ったあのゲームの世界みたいに、魔法があって、もっと自由に、自分のために生きられる人生がよかった。


視界が完全に真っ暗になる。


オフィスの環境音も、自分の心臓の音も、何も聞こえなくなった。


――その時。

脳内に、システムボイスのような、どこか神聖で無機質な声が響いた。



『――魂の願いを確認しました。個体名:中村 大輔の要望を承認します――』



『世界管理者権限を移行。魂のコアにデバッグ用スキルを定着させます』



『――【鑑定】を獲得しました。上位統合により【全知の鑑定】へ進化』



『――【隠蔽】を獲得しました。上位統合により【完璧な隠蔽】へ進化』



『――【魔力増強】を獲得しました。限界突破により【魔力無限】へ進化』



『――【魔術適正:全】を獲得しました。システム仕様に基づき【全属性魔法】へ進化』



(あぁ、死ぬ間際の、ただの幻聴か……。最後に、自分が作ったシステムメッセージを聞くなんて、どんだけ職業病なんだよ、俺……)



『――初期化(リブート)を実行します。転生先を選定中――』



その声を最後に、俺の意識は完全に消失した。

――これが、後に世界を震撼させる「名もなき最強の冒険者」となる男の、前世の終わりだった。

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