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厄介な

「まぁ、お陰で人類は魔族達へ抵抗する手段を手に入れる事が出来た。俺達の世代で四種族を人類へと仕向けた『黒幕』も討伐する事が出来た程だからな」


「なんや『魔王』みたいな存在がおったっちゅう事かいな」


「そうだ。他人事の様に言っておいてなんだが、その『魔王』を倒したのが……俺と俺の幼馴染達の四人なんだがな。信じなくてもいいが」


「いーや。可能性はあると思っとったで。なんとなくあんさんなら『やりそう』やなって思えんねん」


「格好つけて言った所で、『この世界』に来てる時点で本当に勝ったと言えるかどうかは微妙なところだがな。とどめを差せた事だけは間違いねぇが」


つまりケヴィンが言っている事は、このデスゲームに参加している時点で現世では『死んだ』事が証明されていると言う事。


だから魔王を『倒した』と言うよりは『相打ちになった』と言う方が正しいのでは無いかと言いたいのであろう。


「ええやんけ。例え死んでもうても、あんたが……いや、あんさん等が魔王を倒したんは事実やねんから、そのお陰で人類は救われたんやで。めっちゃヒーローやないかい。胸張ったらええねん」


「……そう言う考えも有るかもしれねぇな」


エリルと話している最中も常に不機嫌そうな表情を見せていたケヴィンだが、この時に限って一瞬だけふわりとした優しい笑みを見せたのだった。


やっぱりムカつく程イケメンやんけ。


とエリルは胸中で思うのだった。


誰かに言い訳する事でも無いが別に自分は男性が好きな訳では無い。


一連の流れでジェシカやカーラと言った女性陣を一切褒めず、周りに居る男性ばかり褒めているが決してそんな訳では無い。


嫉妬さえも湧かないくらいに同姓だとしても褒められる部分が有れば褒めているだけである。


ケヴィンの壮大な人生と比べれば、自分は無形影棍流しか誇れる物が無いなと思いながらも、ケヴィンと世間話を重ねていく。


何が面白いのかその流派の有り方をケヴィンは事細かく質問してくるのだが、職業と言う概念は存在していても武術や流派と言ったそれが存在していない世界だからか興味津々なのだろうか。


それともやはり彼は生まれながらの戦士である為か、自分の戦い方に取り入れる事でも考えているのか。


会話の途中途中で現れる魔物をケヴィンが狩りながら話を募らせていた時、二人の目の前にシステムボードが出現する。


十中八九『ボス』の出現を知らせるシステムメッセージの表示なのだろう。


『ボスモンスター:スケルトンジェネラル出現』


何となくだが、名称から人骨の化け物を想像するエリル。


ゴブリンの様に人型の魔物がボスとして登場か、等と楽観視していたのだが、ケヴィンへと視線を向けた際、彼が険しい表情をしている事に一抹の不安を覚える。


「どしたんや。厄介な敵なんか?」


「……結論から言えばそうだ。グランと情報のすり合わせした訳じゃねぇが、この世界に出て来る魔物の強さは大体俺の世界に出て来るそれと強さに際はねぇ。オールガイアとやらに出て来る魔物も多分そうなんだろうが、だとすればこのスケルトンジェネラルは今の俺達のレベルでは少々手に余る敵だと言える」


ケヴィンの示す『レベル』と言う言葉が実力を差しているのか、それとも自分達の現段階をゲームの指し示すレベルとして表現しているのか。


彼の出身世界であるクロイツェルの有り様が正にゲームの様な世界である事から、そう言った感覚をエリルは持ってしまった。


「『ジェネラル』は直訳すると『将軍』とかそう言った意味の言葉やねんな。下手したら前のフォレストウルフみたいに取り巻きがおるかもしれへん」


「その通りだろうな。大量の『スケルトンナイト』を従えて襲い掛かって来んのが俺達の世界でのスケルトンジェネラルの戦い方だ。個体の能力も非常に高いが、指揮されたスケルトンナイトの大群の攻撃力も非常に厄介だ……兎に角急ぐぞ」


自分は戦力になれない……そう言う言葉が喉元まで出かけるが、何か出来る事は有るかもしれない。


相手が大群であるのならば、単純な頭数としてもその場にいるだけで役に立つ可能性だってある。


マップをのぞき込み、ボスが出現したエリアへ二人は急いだ。


と同時に、マップを見なければ良かったとこの時後悔した。


ケヴィンの懸念通り、ボスを表記する赤い丸の周辺の、その取り巻きであろう小さめの赤い丸が無数に存在している事を確認してしまったからだ。


二人が戦地へ辿り着いた時、最悪な状態は避けられては居たが、どう見てもこちら側が防戦を強いられる状態となっている。


こちらの数が現在29人である事に対し、ざっと確認しただけだがスケルトンナイトは50体居る様に見える。


更にはこちらは現地の近くまでは来たが、恐怖からか元非戦闘組の者達の殆どが怖気づいて戦いに参加していない状況が目立っている。


ケヴィンとエリルを含めても戦う意思を持った者は半数の15人程度だろうか。


ライアンはまだしも、カーラや先日エリルに突っかかった上に食事を恵んだ男さえもここに残って戦っているのは驚きであったが。


ケヴィンが左手を翳す。


その瞬間に様々な自然現象がスケルトンナイト達に襲い掛かり、一部の存在が大きく怯んだ状況を確認した。


ケヴィンを危険視したのか、数体のスケルトンナイトがこちらに向かって駆け出してくる。


『サーベル』と呼ばれる弧を描いた片刃の剣をそれぞれが所持しており、錆びていたり欠けていたりと武器としては鈍らに見えるそれらを振り回しながら不気味に見える動きで迫って来る。


体を動かす『筋肉』が存在していないのに、どうやって人の様な動きが出来るのかが不思議でたまらない。


非現実的なスライムやゴブリンを見てきたが、ここに来てエリルは漸くファンタジーらしさを感じてしまうエリルであった。


ただ、相手が人型で有るのならエリルにも出来る事はある。


ダメージは与えられないがこの様に……。


「そこや」


手に持った木の棒で足払いを掛けるエリル。


踏み込もうとした前足の踵側に棒を引っかけて手前に引く事で、スケルトンナイトのバランスを大きく崩したのであった。


魔法で動いているのだろうが、やはり重心と言うものは存在しているらしい。


それが分かればいくらかやり様はあるとエリルは考えた。


こうやって隙を作ればケヴィンが確実に止めを刺してくれる。


振り下ろされる刃には最大限の警戒をしつつも、迫りくるスケルトンへ対処を行っていくエリル。


ケヴィンが参戦した事で余裕が出来始めたか、こちら側の巻き返しが起き始める空気感が漂い始めた。

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