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ケヴィンの現世

「俺はクロイツェルと言う世界からやって来た事は覚えているか? 俺の出身国と言った『セントラルアース』と言う国は、クロイツェルで唯一『人間が住む国』となっている」


エリルはケヴィンの言葉に引っ掛かりを覚える。


唯一人間が暮らす国。


地球出身のエリルからすれば、世界中の至る所に人が暮らしている事は当然の認識である。


しかし、今のこの世界の様に『魔物』と呼ばれる存在と共存している世界では、人類は暮らす場所を制限される可能性が有る事に気づけて居なかったのだ。


「俺達の世界は基本的には『一つの大陸』しか存在していない。俺達が生まれるもっと前にはいくつか別の大陸が存在していたらしいが、何れも長く続く『戦い』の影響で海の底へと沈んでいったらしい。お前達の世界でも『地動説』が一般的か?」


ケヴィンはエリルが持っていた棒切れに手を伸ばしながら、こちらへ質問を投げかけて来た。


「せやな。未だに天動説を唱えてる馬鹿もほんの一握りはおるけど、俺らの世界は丸い惑星で一つの恒星の周りをグルグル回っとる言うんが一般常識やな」


「やっぱりそう言う陰謀論を唱える奴は何処の世界にも一定数はいるんだな。俺の世界も同じ様に丸い惑星で、『焔星』と呼ばれる光輝く恒星の周りを回ってるんだ。そして俺達の星の世界地図を描くとしたらこう言う大陸の形になる」


言いながらケヴィンはエリルから受け取った木の棒で地面へと大きな大陸を模した『十字架』を描いていた。


普通ではあり得ない大陸の形をしているのだが、これがケヴィンの住んでいる世界……クロイツェルに存在する大陸の形なのだろう。


翻訳の問題かもしれないが、先程ケヴィンが言った『ほむらぼし』とは恐らく太陽の事なのだろう。


「俺達人間が暮らしている国、『セントラルアース』はここだ」


「……クロイツェルがどれだけの規模の星かは知らへんけども……それを踏まえても『狭すぎ』へんか?」


ケヴィンが大陸を模した幅の有る十字架のど真ん中をまるで囲った時、エリルは率直にそう言う言葉が出て来た。


十字架の大きさからすれば面積的に100分の1程度の大きさの丸を描いたケヴィン。


この十字架が世界大陸の全てと言うのなら、相対的に日本よりは遥かに大きい国土だろうが、それでも人類の全てが暮らしているのであれば小さいとエリルは感じてしまった。


「そうだな。だがこれだけが人類に許された唯一の生存エリアだ。総人口は5000万程度だったか。昔は十倍程度には人は居たらしいんだが、長い戦いの連続で人間の住処も人口も徐々に徐々に減って行った」


総人口が5000万……何でもかんでも地球規模で考えてはいけないと痛感するエリル。


日本より大きな国であっても、その国に全人類が集約されているのだとしても、総人口は日本人の半分にも満たない。


……これが戦が齎す結果なのだろうか。


「分かり切った事聞くかも知れへんが……あんさんらは『魔物』と戦ってるんよな?」


「勿論魔物との戦いが主流だが、大きな括りで言えば人類は『魔族』と呼ばれる存在と戦っている。お前らは魔物を知らなかったんだから魔族の事も知らねぇよな?」


「いや、ある程度は想像はついてんで。俺達の世界には創作された物語がいくつも有るねんけど、そう言った疑似的な世界には魔族と称される存在が当たり前に存在すんねん。本物の魔族と戦っとるあんたらからしたら一緒にすんなと思うかもしれへんけどな」


「いやいい。ある程度説明は省けるならそれに越した事はねぇ。クロイツェルは本来なら五つの種族によって均等に大陸が分けられ、それぞれの種族がそれぞれの大陸を統治していた。俺達人間が支配するセントラルアースを始め、龍族が支配する北の大陸ドラグーンアース。西のオーガアースを鬼人族が支配し、南を無機物から発生した機械人形が統治をするマキナアース。そして多種多様な魔物達が共存する東のビーストアースの五つだ。各国は互いに持ちつ持たれつの間柄で共存を送っていた。勿論大なり小なり小競り合いは有ったし種族間での戦争は昔からあった。だが世界大戦と呼ばれる様な大きな戦は起こらなかったんだが、ある日を境に一時的に人族の衰退が顕著になった時があった。その瞬間、まるで事前に決められていたかの様に他の四種族が一斉に人類へ牙を向けたらしい。それが現在まで続く人類対魔族の戦争の始まりだった」


ケヴィンは十字方向に書いた大きな丸から矢印を伸ばし、四本の矢印が中央のセントラルアースに向く様に記載した。


「俺達人間は他の魔族達と比べると明らかに弱すぎたからな。例えるなら身体強化も持ってねぇ、異能も持ってねぇこの世界に来た初期の俺達の様な状態が当時の人間の強さだったんだ。だからあっと言う間に人類は衰退の一途を辿った。そもそも五つの種族の内の一種族として扱われていた人間だが、そもそもが種族の力として他の四種族に勝てる筈が無かったんだ。その為他の四種族が協力して人類を滅ぼそうとするんなら、人間には対抗する手段が無かった。しかし人類の総人口が半分以下になり、やがて数年も経たない内に人類は滅亡するだろうと思われた時だった。ふざけた話と言うべきか遅すぎる救済とでも言うのか……」


「何やねん、ありがたーい神様仏様が現れたとでも言うんかい」


話を聞いても簡単には想像出来ない様な世界観であり、だとしても絶望的で重苦しい雰囲気だけは感じ取れた事で、言葉を詰まらせたケヴィンを和ませようと適当な言葉を連ねるエリル。


「……本当にふざけてると思うかもしれないが『その通り』だ」


しかし、まさかの正解をエリルは踏み抜いてしまったのである。


「正に神が現れたらしい。俺がふざけていると感じたのは、一応は人類の味方サイドには立っている様には感じられる存在とされているが『名前』がな……『ジョブ神』だとか良く分からん名前で昔から呼ばれてるんだ」


「そらぁほんまふざけとると思うわな。なんやねんそれ、人々にも職業でも与えるんかいな。剣士やら魔法使いやら、そうやったらまるで『ゲーム』やんけ」


「……」


「……いやその反応やめーや。……嘘やろ?」


「本当だ……」


ケヴィンは腕を組みながらそう返答してきた。


エリルは二回連続で正解を口にしてしまった様だ。


「そう言う事かいな……それであんさんはなんちゅーか……戦い慣れしとる上に与えられた異能も違和感なく扱えとったっちゅう訳か」


言った通り、本当にそのジョブ神とやらが人々の職業を与える神であるのならば、エリルが例えで出した『魔法使い』の様な某RPGに出て来る様な職業だってあった事だろう。


ケヴィンが元の世界でそう言った職業に関連した戦い方をしていたのなら、このデスゲームでの適応能力の高さも頷けると言うものだ。


それにしても、ケヴィンが居た世界は本当にゲームの様な世界だとエリルは思った。


現代にもそう言った設定の多人数同時参加型のゲームなら存在しそうな物だと言う率直な感想が生まれた程だ。


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