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見つからない効果


「ジェシカ、ちなみにあんたは遠くにある自分の武器は回収できるんか?」


「出来ると思います!」


言いながらジェシカがスライムの残骸の中に転がっているナイフの方向へと手を差し伸べると、先程槍を消した時と同じ様に一瞬にしてナイフが消え去り、再び彼女が具現化したのであろう、彼女の手には再び四本目のナイフが具現化した。


「それやったら人に奪われたままあんたの異能が持ち逃げされるなんて事は避けられそうやな。後さっき槍なら一本で剣なら二本出来る言うてたな? 多分質量によって一度に作り出せるキャパが決まっとるんやろ。さっきあんさんも『リソース』言うてたしな」


「あ……はい! 心配して頂きありがとうございます! でも……『奪われる』って……誰にですか?」


「誰かは分からへん、もしの話や。異能が発揮できてへん俺でも、あんたの武器を持ったらすぐに戦えるくらい強力な異能なんや。俺がわるもんやったらそう言う行動取ってたかもあらへんで」


「それはないだろう」


ジェシカに忠告していた時、グランがそれを否定する様の口を挟んできた。


「あんた冗談で自分を悪く言ってるんだろうが、あんたのお陰で今こうやって俺とジェシカは助かっている。昨日の件で俺は自分に自信を無くしていたが、そんな俺にあんたは解決法があるって直ぐに言葉をかけてくれていた。シアンが全員をまとめ上げようとリーダーとして存在している分、あんたはそうやって個人個人のフォローをしているサブリーダーみたいなもんなんだ。そんなあんたが人の物を奪うなんて事をやる筈が無い。人は外面だけじゃ分からない事もあるし、確かにジェシカの武器を奪おうと考える者も居るかも知れないが……あんたは絶対に違うと断言出来るよ」


「そうです!」


まるでグランに全部言われてしまったと言わんばかりに、必死に首を縦に振るジェシカ。


「いやいや、あんたら人を簡単に信用し過ぎやで」


「エリルだから信じてるだけさ」


「そうです!」


相槌マシーンになったジェシカの発言が多少面白かったのと、真っすぐな信頼を向けられたエリルは少し恥ずかしくなった為か、視線をずらして明後日の方向を見だした。


偶然にもその先には、木陰に佇んでいたケヴィンの姿が見え、腕を組みながら気にもたれ掛かってこちらの様子を見ていた。


軽く右手を上げ彼に挨拶を送ったのだが、軽く左眉を上げながら睨み付けられただけで、彼はそのまま何処かへと行ってしまった。


態度が悪く見えるが、恐らくこちらの事を見守っていたのだろうとエリルは何故か思った。


昨日のミッションと打って変って今の様に異能の練習が出来る程の余裕があるのは、ミッションエリアが昨日と比べて格段に大きくなったからだ。


そもそも今回のミッションクリアの目的がクロウラビットとスライムの全滅では無く、『ボスモンスターの討伐』なっている事。


このボスモンスターが出現する条件は、広いエリアに散らばっている魔物を一定数以上倒す事で出現すると言う物だった。


昨日の様に魔物が一斉に襲い掛かって来る訳では無く、敢えてこちらから敵を探しに行かなければならない為に、エリル達は何人かでチームを組んで散らばっているのである。


一斉に襲い掛かられないのであれば、まだ戦う意思はあると言い出した者達が数人存在し、エリル達はこの三人で、シアンが他の数人を連れて周囲の探索を始めた状況であった。


ケヴィンは誰とも組む気が無いらしく、一人で遊撃部隊の様にエリアの至る所を散策していたのだ。


ただ、エリアが広くなった分魔物の数はかなり増えた為に、既にこの三人だけでも合計50体は倒している程だ。


その分時間は結構経過しているのだが、お陰で経験が積めた事でこうやって異能の使い方も考察出来るくらいになっているのである。


「さて、それじゃあ次はエリルの異能の効果も確認していかないとな。いつまでも俺達ばかり助けられてる訳には行かないし」


「俺のは別に……後でええねん。ほんま意味分からへん異能やしな」


とエリルはどうでも良さそうに手をひらひらとさせる。


実際に本当に異能の効果が分からない為、困っているも事実なのだが……。


「いや良くないだろう。あんたは人間性だけじゃなく戦力としても確実に今後必要となる人物の筈だ。そんなあんたがポイントを手に入れられなくて能力を強化出来ないなんてあっちゃダメだ。一早く異能の効果を発見して強くなる事が大事だ。だから俺にも手伝わせてくれ!」


「わ……私も!」


「……グランならまだしもジェシカのはもう助けて貰ってるやろ」


実際に彼女が武器を貸し与えてくれているだけでも、今は十分に生き残る事が出来ている。


これは助けられていると言うのではないだろうか。


「私が……怖くてまだ戦えない所を、エリルさんが代わりに戦ってくれているのですから、これは私が助けられてる側になってるので私はまだお返し出来てないんです!」


「でもポイントやって……」


「あれは元々あんたの物だろう。シアンだってそう言ってた筈だ」


こいつらのシアンに対する信頼は一体何なのだろうか。


自分もそうだが、たった一日しか経過していないにも関わらず、殆どの奴らはシアンの言う事を正しく聞き入れている。


別段あいつが何か間違った事を言っている訳でも、その行動がおかしいと言うつもりでも無いのだが、少し他人に依存し過ぎでは無いかとエリルは考えてしまう。


だがまぁ……命が奪われる危険がある所で、自分の代わりに魔物を倒してくれた上に食事まで恵んでくれる様な奴を、この様な命に危険がある場所で信頼するなと言う方が無理があるかもしれないのは確かだ。


「分かった……せやったら頼らせてもらうわ」


「おうとも!」


こちらの言葉に嬉しく思ったのか、グランは熱い胸板を右手で力強く叩いていた。


その後で軽く咽ていた。


「せやな……まずは異能自体の使い方はどんな感じで使っとるんや? そもそも俺自身色々倍化出来ないか試したみたんやけど、異能が発動している感覚が分からんから失敗しているかどうかも理解出来へんねん」


「うーん……いきなり難しい質問が来たな。実は俺も異能の使い方は良く分かって無いんだ。異能の欄に投擲と掛かれていたから適当に意思を投げた事が始まりで、特に異能を使おう! なんて意識を持ってやってる訳じゃないんだ。ただ……正しく使えた時に関しては、何か補正が掛かった様な、どうすれば良いか体が勝手に無駄な部分を補強してくれる様な、そんな感じはある」


「私も……武器を思い浮かべて、例えば剣を思い浮かべた時に、自然に手を翳す事が正解だと体が分かっている様に動いて、気付けば手に求めていた武器が出現するって言うイメージです。消す時も具現化している剣を思い浮かべて、脳内でパッと消える様なイメージをしたら勝手に消えている感じが近いですね」


二人の意見を纏めれば、異能は正しい使い方をすれば自然と行動等は保全される様な効果が発動する。


使い方が自然と分かる……と言った様な状況だと言う事。


となるとつまり……。


「……俺はまだこの100倍の正しい使い方を発見出来ていない様やな……」


「ちなみにどんな形で試してみたんだ?」


「あんさんみたいに物を投げた時に、威力が上がるかやったり、槍を振るった時に速度が倍増しないかと考えてみたり、身体操作的にも走ったりジャンプしてみたり、一通り自分だけで出来る物はやってんみたんやけどな」

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