第四十八話 忍びの神髄
パルザンの鋭い手刀が容赦なく急所を貫いてくる。
「いやいやいや、避けなかったら死んでるからね?」
「ゲイツなら避けるでしょう」
「よく言うよ、初日防げると思って死にかけたのは忘れてねーからな」
「ホッホッホ、ジジイはすぐに物を忘れるのです……」
我慢できずにパルザンと組手をしている。
徒手空拳でガチの訓練が出来るのはありがたいが、結構死にかける。
こんなのはババアと組手をしていらいだ……
パルザンは完全に素手での戦闘に特化している。
それに暗器、魔法とは異なる忍術を用いる。
やべーじーさんだった。
5人の忍びの弟子ごと、うちの商会の預かりとなった。
ジーンの諜報部隊の実働指揮を完全に任せられる頼もしい仲間となる。
店はいいのか聞いたら、表の世界での弟子に預けて引退したとさらっと言われた。
趣味みたいなものだったらしい。
本当は一時的に共闘くらいのつもりだったが、俺との組手の後、同行を打診され、喜んで受け入れた。ロカやジルバのように同年代で競える物がいたほうがパルザンの弟子たちの刺激にもなるし、自分自身も眠っていた何かに火が着いたらしい……
弟子はフォクシ族の朧、霞、ピープ族の幻、フッコ族の焔、一番弟子であるガルラ族、巖全員一騎当千の強者だ。
俺とも、ロカ、ジルバをはじめ俺たちの戦闘員たちと手合わせしてみたが、巖はロカ、ジルバよりも格上、朧と霞は互角、幻と焔はこの戦闘よりも補助や撹乱を得意とする事がわかった。
良いライバルが出来て、お互いに燃えている。
「ところで、忍術は秘匿すべき技術じゃないのか?」
「ゲイツ殿の気、あの領域に到れるものなら、隠しても仕方がありません。
とくにジルバ殿は良い線行くと思いますな」
「そうか……せっかく仲間になったんだ、皆で足りない部分を補っていこう!」
「ホッホッホ、本当に不思議なお方だ、強さを求めるものは自らの力を秘匿しようとしますし、他者に簡単に教えたりしないものだと思っていました」
「そうだな、俺は俺に関わって着いてくる奴らが生き残る可能性が上がるなら、出来ることは何でもしてやりたいし、するつもりだ。そこに変な意地はねーな」
「なるほど、多くの人が従う意味がわかりました」
「それに……」
「それに?」
「全部教えて強くなったやつと戦うのは楽しいし、そいつに勝つのが楽しーんだよ!」
「く……くっくっく……ファーッハッハッハ!!
いや、愉快愉快! 私もゲイツが気に入った!
全ての手を使ってお相手いたす!」
「俺の記憶が正しければ、忍者たちとの戦闘、えぐいんだよなぁ……
余計なこと言ったかな」
「もう遅いですぞ! さぁ! もう一手お願いいたす!」
なんか、パルザンのキャラが変わっている。
どちらかというと、こっちが本物なんだろう……
結局、お互いそれなりの重症を追って、周囲の人間をドン引きさせた……




