第四十七話 パリザン
「どういう状態だマーチ?」
「クイーンパレスから1kmほどのところに帝国軍が布陣していますね。
簡単に言えば隷属化しろと一方的に要求してます……
猶予は5日だそうです」
「帝国はこんなに活発に動くのか?」
「それが、最近得た情報なんですが、王国内でクーデターというか、複数の内戦が起きたようです」
「なるほど、その隙に帝国が周囲に手を伸ばしているのか……その内戦……」
「ええ、帝国から援助を受けている集団がいますね」
「わかりやすい策略に引っかかるものだな……」
「どうやら王が病になったタイミングで起ったようですね」
「それも怪しいな……」
「何にせよ、帝国が今まで蒔いていた種が一気に芽吹いたんでしょう。
そして、それに巻き込まれている……と、しかも、最前線で、最も帝国が力を入れている場所で」
「巻き込まれ体質なのは自覚しているが……」
「どうしますか?」
「聞くまでもないだろ、俺達のバカンスを邪魔したんだぞ?
許せねぇよな?」
「従業員一同支持します」
「よし、4日後、仕掛けるぞそれまでに出来る限りの準備を、それと女王陛下に助力する事を伝えたほうが良いか?」
「いえ、それは止めておきましょう。
ジーンの調べでクイーンの周囲にも帝国の影がちらついています。
それらを抑えるのと同時に帝国兵に当たるのがベストだと思います」
「諜報部隊も形になってるんだな」
「情報戦は私よりもジーンの方が上ですよ、本当に良い子と出会いました」
にやぁと笑うマーチな顔が怖い。
それぐらい優秀なんだろう。
「俺達も気配を消して街に紛れるとするか……ロカもジルバもわかってるな」
「ロカはトレーラー側に戻ってそっちを指揮するのだ」
「私は直前に街から出て、外で遊軍を指揮して撹乱するお手伝いをします」
「おう、俺は正面から当たれば良いんだな。
帝国は完全に敵だ。もう容赦はしない」
「ゲイツ師匠は全員やっちゃ駄目だぞ?」
「そうですよ、一人で全て終えられると部下に実戦を経験させられません」
「約束はしないが、配慮はする。
こちらの犠牲はなるべく出すなよ、お前ら二人もな」
「ふへへ、ゲイツ師匠の愛を感じるのだ」
「ご心配なく師匠、日頃の稽古よりは楽ですよ」
「ああ、そういう感じですか。おめでとうございます」
「は? いや、なにマーチ、な、何の話か……」
「ありがとうなのだマーチ! やっぱり師匠は攻めに弱かったのだ!」
「ご配慮感謝します」
マーチ……恐ろしい子……
「な、何にせよしっかりと準備しろ、4日間しかねーぞ!」
「「「はっ!」」」
それからそれぞれ戦に向けての準備にかかる。
そんな中、俺のもとに来客があった。
「ゲイツ様よろしいですか?」
「どうした?」
「ゲイツ様にお客様が……パリザンという者ですが?」
「ああ、たしかに俺の客だ。粗相の無いように通してくれ」
「ご無沙汰しておりますゲイツ様」
「いや、あの時は助かった。本当は直ぐに礼に上がりたかったのだが、色々とね……」
「単刀直入に言います。ゲイツ様の助けが欲しいのです」
「ああ、いいだろう」
「よろしいのですか? まだ要件を言っておりませんが」
「パリザンには借りがある。頼みは聞くと決めている。
それに、貴方の頼みなら、問題ない」
「かたじけない……それでは、こちらの女性を守っていただきたいのです」
「!? ……これは驚いた……俺が気配を読み違えるとは……」
パリザンの背後から女性が現れた。
ピープ族の女性……普通のピープ族とは違う不思議な雰囲気を持っている。
パリザンがすぐに横にひざまずいたことで、その女性が誰なのかを示していた。
「……女王陛下か……驚いた」
俺は無礼の無いように椅子から降りて膝を付き礼を示したが、女王陛下は言い方は悪いが、ぽーっと立ったままだ。
「ゲイツ殿、女王陛下を亡き者にしようとする輩からお守りしたが、某には女王陛下を守り続けることは出来ない……どうか、お力をお貸しいただきたい」
「ああ、それは大丈夫だ。マーチ、女王陛下をお守りするぞ」
「はい、司令室がベストだと思います。手はずは整えます」
「かたじけない」
「しかし、パリザンさんは何者なんですか? 簡単に女王陛下を連れてくる……
それに先程の技……忍び……ですか?」
忍びの言葉と同時にパリザンから一瞬殺気が発せられる。
隣の部屋にいたロカとジルバが飛び込んで俺の前に構える。
「ロカ、ジルバ、大丈夫だ待っててくれ」
「し、しかし……」
「殺気が……」
二人の方が細かく震えている。
そう、二人が束になってもパリザンには傷一つつけられないだろう。
俺だって、必死になって、全てをかけて、勝てるか、刺し違えるか……読みきれない。
「これほどとは……平時なら、お手合わせを願うとこだ」
「ゲイツ殿も、なぜ我らの闇を知っておられる?
本当に何者なのですか?」
「俺は異世界からの迷人だ、その世界には忍術や忍びがいたんだ。
それで説明になるか?」
「……我らの一族の元は異世界からというのは本当だったのか……
大きな恩がある女王陛下を陰ながら守り続けてきた一族、その長が私です」
「なるほど、忍びのマスターか……
一人で守りきれるんじゃないのか?」
「いえ、女王陛下は……世話するものがいなければ生きられないお体です。
ただ敵を倒せばいいというものではないのです。
安心してお世話を任せられる人間……私の力では無理なのです」
「ははっ、敵を倒すのは出来るってことだな。
わかった、このゲイツ約束は守る。
ところでパリザン、不敬な輩と喧嘩するんだが、混ざらないか?」
「……そうですね、我が主に向けた刃をお返ししなければいけませんから……ご一緒しましょう」
「よろしく頼む。ゲイツでいいぜパリザン」
「よろしく頼む、ゲイツ」
がっしりと掴んだ手、うーん、やり合いたいという気持ちを抑えるのが大変だ。
ジジイやババア、それに届きそうな強者だった。




