第四十六話 関係性
部屋にも大きなベランダがあり、目の前に湖と町並み、そして城が全て自分一人で独り占めだ。
ホテルクイーンズサイドの最上階の部屋をあてがわれた……
「おお、コレは……いいな……」
部屋に置かれた鈴を鳴らすと直ぐにホテルマンが要件を聞きに来る。
よく冷えた酒とグラスを頼むと、直ぐに用意される。
それをベランダに運んでもらい、満天の星空と最高の景色をつまみに露天風呂を楽しむことにする。
「かーーーーーーっ!! 最高だな!」
広々とした湯船に浸かりながら、輝く景色を独り占め、そして最高の酒、言うことなしだ。
「いや、この世界……はじめはどうかと思ったが……最高だな……」
「それは良かったです」
「砂漠に放り出された時は正直死ぬかと思ったからなぁ……」
「ロカも死ぬところを助けてもらったのだ」
「アレは本当に偶然だったけど……ん?」
「私も偶然師匠に逢えてよかったです」
「勇者と出会えた奇跡なのだ」
いつの間にか二人が、しかもタオルだけで俺の横に……!
「な、え? いや、気配……」
「ふっふっふ、ロカ達も成長しているのだ!」
「そもそもどこから!?」
「ちょっとうちの部屋からヒョイッと登ってきました」
「……まぁ確かに登って来れるけど、なんて格好してるんだ!?」
「先輩と話しましたの、もういい加減白黒つけてもらおうかと思いまして」
「ろ、ロカはそこまで言ってないぞ!」
「じゃあ先輩は帰ってください。私は今日決めますから」
「だーめなのだー! ジルバには渡さないのだ!」
「素直になれば良いんですよ先輩は、はじめは譲りますよ理解はあるので」
「そ、そ、そういうわけで……ゲイツ師匠オネガイシマスなのです!」
「まてまてまて、いやいや、近い近いくっついてるくっついてる!」
「当ててるんですよー」
「あ、当てているのだ!」
「だいたい二人とかおかしいだろ、ひ、一人なら良いって話でもないし、二人はで、弟子だし、そういうことは、そのあれだ!」
「強い男の子を成すのはガルラ族の誉れ」
「強い男の子を成すのはフォクシ族の誉れ」
「いやいや、そういう事は好きな男とだなぁ!」
「大好きなのだ! 尊敬しているのだ! あ、愛しているのだ!
ロカは……貧相なガルラ……ゲイツ師匠にはふさわしくないかも知れないのだ……
それでも! 哀れに思うなら……一度で良いのだ!」
「私も同じですわ。
師匠、いえ、ゲイツさん……我らに少しでの情があるのなら……
抱いてくださいませ……」
よく見れば二人共震えている……
バゴンっ!!
俺は自分の顔をぶん殴った。
ここまでさせてしまった俺の不甲斐なさが許せなかった……
「師匠!?」「な、何を……!?」
「……すまん、お前らの気持ち……女にそこまで言わせるなんてな……
俺なんかでいいのか? っていうのも野暮だな……
俺もお前らが魅力的すぎて我慢するのも大変だった!
弟子として、女として二人を愛そう!
よっしゃ! そうと決まれば、もう我慢はしねぇ!
眠れると思うなよ!!」
おれは二人を抱きかかえて立ち上がり……意識を失った。
本気で殴りすぎた……
(お風呂での飲酒も大変危険なので真似しないようにしましょう)
二人に介抱されて……開放された。
朝、心地よい感触に後ろ髪を引かれるが、そっとベッドを離れて朝からひとっ風呂を浴びる。
朝日も素晴らしい。キラキラと煌く水面、照明ではなく太陽の光に輝く王城……
「……やったな……俺……」
いや、後悔しているわけじゃないよ。最高だったし。
違うそうじゃない。
弟子にそういうことして……いや、でも二人は弟子としてではなく女性としてだな……
なんか、あんなに真面目に恋われた事が……ないから、どうにも……
ど、どうすればいいんだ? なんか急に恥ずかしくなってきたぞ。
今日からどう接すれば良いんだ?
恋人的な? それとも今まで通り?
……そう言えば多種族とも子をなせるんだっけ?
いや、今はそんな話じゃない!
変に態度を変えたらおかしいし、変えなければそれもおかしいし……
「あー、ゲイツ師匠ずるいのだ! 私も入るのだ!」
「先輩飛び込まないでくださいね、師匠、お隣失礼します」
「お、オハヨウ、二人共」
「どうしたのだ? 変な声出して?」
「嫌ですわ師匠。童貞の子供でもないのですから、あまりあからさまに態度を変えられると戸惑ってしまいます」
「ぬぐっ……あのなぁ、俺だって少しは悩むんだぞ」
「良いんですよ、今まで通りで、たまに二人のときだけ……優しくしてくだされば」
「ロカもそれでいいぞ! ゲイツ師匠は師匠なのだ!」
「そ、そうか……」
「さ、お背中流しますわ」
「ロカは前を洗うのだ!」
「いや、ちょ、前は自分で……あーーーーーーー……」
美味しくいただかれた。
こうして俺は、あっさりと落とされた。
なんか、吹っ切れると、こんないい女二人に好かれているって凄くね? って調子に乗った。
日常では普通に師匠と弟子、一切手は抜かない、一回立ち会いで緩んだらめちゃくちゃ怒られた。
どうにも俺はそういうところが駄目だなと気を入れ直した。
補給や商売、久しぶりの休暇にスタッフの皆が英気を養い、いざ出発するという話が出た時に、大事件が起きた。
クイーンパレスに帝国軍の大群が攻め寄せたのであった。




