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殺し屋の過ち学  作者: ニムゲ総長
1章/とびきり不幸なラッキーガール
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10.不幸なラッキーガール(上)

「こちらロングタイム、ターゲットは駅前のイレブンイレブンに入った。どうぞ」


「はいはい、こちらサマー確認したよ。どうぞ」


「こちらプリンセス、もう疲れましたわ、どうぞ」


あれから二日、私の提案で響也君を尾行することにした。

真剣な私と、無駄にやる気のある千夏、いやいややってるのが丸わかりな姫野。

三者三様であったが、残念ながらこれといった証拠は手に入れれなかった。


今日も彼が住む、伊達駅から徒歩20分くらいのぼろいアパートに入るのを確認して、

反省会をするため近くのスタバに入った。

っていうか、彼一人暮らししてるのね。ちょっとえらいと思ってしまう自分がいる。


「ねえ、千代さん。私そろそろ一抜けしたいのですけれど、だめでしょうか」


「だめだよ、姫野ちゃん。今いいところなんだよ」


と、なぜかやる気を見せている千夏が姫野に力説している。

なぜ、こんなにやる気があるのかまったくわからなかったが、まあ人数が減るのは心細いので千夏を応援した。

とはいえ、ここ二日はなんの進捗も無いもはたしか。明日は日曜日、前に約束した三人で駅前で買い物をする日だ。

これ以上二人を巻き込むのは悪いか。


「わかった、わかったわよ。二人とも今日までありがとう。来週からは私一人でやるわ」


「えー、何で千代ちゃん。私も手伝うよ」


「あのーやる気が無かった私が言うのも、なんですが、やはり一人というのは危険ですわ」


二人が反対の意思を表明するが、そこは丁寧に断る。

そもそも、やっぱり私の勘違いという可能性もあるのだ。

それに二人をいつまでも付き合わせるわけに行かない。

千夏には文句を言われ、姫野には心配されたが、やっぱり私はもう少しだけ、一人で続けてみたかった。

今にして思えば、やっぱり私は迂闊だった。




次の日の日曜日、お昼に二人と待合わせをして、買い物をしたり、甘いものを食べたり、ボーリングをしたり

なんとなく歩いたり、普通の休日を楽しんだ。

駅前は相変わらず、人が多く皆笑顔で、時間を過ごしている。


気がつけばもう6時。

帰ろうと二人に言われたが、なんとなく、彼のことが気になる。

二人を巻き込むのも悪いと思い、理由をつけて分かれた後に来たのは

彼の住むアパート、目の前の公園でなんとなくぶらぶらして、空を見る。


なんで、私こんなことしてるんだろう。

仮に彼が、本当にJキラーを殺した犯人だとして、なんと言うのか、何をするのか。

人を殺すことは悪いことです。やめましょうなんて説教でもするのか。

もちろん、一般論としては間違っていない。

殺人は立派な犯罪だし、法律に詳しくは無いが、それ相応の罰が待っている。

とはいえ、Jキラーが死んだことで、言い方は悪いが喜ぶ人もいる。

例えば、マスコミ、警察がJキラー死亡の発表をしてから、

警察は無能だの、税金の無駄遣いだの、好き勝手報道している。


また、被害者の家族の方のインタビューコメントが心に残っている。


「娘を強姦し、殺したJキラーには、死という罰がもっともふさわしい。

私は警察よりも、Jキラーを殺したJキラーキラーに感謝している」


という、過激なコメントが物議を醸した。

私だったら、どうだろうか、姫野や千夏が同じ目にあったら、きっとJキラーを殺してやりたいと

思うのだろうか。

答えの無い、疑問が出口の無い輪の中で永遠と回り続ける。

ふと空を見ると、曇り空に掛かった夕焼け空に、烏が鳴いている。

気が付けが、もう7時過ぎ。


さて、そろそろ帰ろうかと考えたとき、彼の家の玄関が空いた。

見ると制服を着た彼が、すたすたと階段を下りてきた。

この日のために、尾行していたのに、いざその時になると足が震える。


その彼はどこかへ向かう。

着いていこうと思い、日が暮れる街に消える彼をつける。

大通りを抜け、公園を抜け、彼は歩き続ける。

そして、私は気がついた。


「学校じゃない」


どうして?忘れ物?


おかしいと思って、ついていくも校舎に入ったあたりで見失ってしまった。

いつもは日曜日でも部活帰りの生徒がいるが、今は部活禁止のため、誰もいない。

ふと、教室に響也君がいるのではないかと思って、足を向ける。

下駄箱を通り過ぎ、階段を上がり、廊下を左に曲がる。窓の外はすっかり夜空が広がっていた。

人のいない、学校というのは不気味だ。

少しだけ来てしまったことを後悔し、早足で教室に向かう。

教室の前で立ち止まり、扉に耳をゆっくりとつける。

中で何かががさごぞと動く音が聞こえる。

もちろん教室の明かりはついていない。


「ひゃ」


私は恐ろしくなって、体を扉から離す。

後ろの壁に体をぶつけるのと同時に、携帯の着メロが無音の校内に鳴り響く。

ヤバイ、すぐにポケットに手を突っ込み、音を切る。

しかし、時既に遅し。

教室の中の人影は、音に気がついたのか、どんどん扉に近づいてくる。

この前はあんなに走れたのに、今度は恐怖で足が動かない。


ガラリと扉が勢い良く開き、中から人影が飛び出る。

暗くて、顔は見えないが手に懐中電灯を持っていて、私の顔を照らす。


「ひゃあ」


情けない声を上げて、頭を抱える私。


「なにやってんだ?千代」


「へ?」


聞いたことのある声に安堵しながら、ゆっくりとその顔をみる。

良く見ると、いつもの茶色のスーツを着た、灰堂先生だった。


「な、なんでこんな時間に?」


「それはこっちの台詞だ。千代こそなんでこんな時間に学校にいるんだ」


「えーっと、あのー、忘れ物をとりに」


とっさに思いついた言い訳を口から滑らせる。

話を聞くと、灰堂先生は忘れ物をして取りに来ていたらしい。

その証拠に、手にノートを持っていた。

私も、適当に忘れ物を捜すふりをして、教室から出た。


「一応、校門まで送ろう」


そういって、手を握られた。

顔が引きつったが、しかたない我慢だ、おとなしく従おう。

校門まで下駄箱まで来たところで、灰堂先生の足がひたと止まる。


「そういえば、千代の家は架城だったな」


「そうですが、何か」


「いや、俺も同じ方向だ。最近物騒だし。車で送っていこう」


突如送るといわれ、困惑する。

真剣な顔の灰堂先生を見て、どうやって断ろうか悩む。


「いやいや、いいですよ。灰堂先生。子供じゃないんですから」


「いや、例の事件のこともある。遅らせてくれ」


掴む手をさらに強く握る。

い、痛い。

しかし、断る理由も思いつかない。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


「よし、じゃあ車の鍵を取りに行くから、少し部室棟に寄り道するぞ」


そういって、下駄箱から部室棟へ向かう。

相変わらず手は離してくれない。

電気のつかない暗い廊下を二人で歩く。

先生は何も喋らない。気まずくなって、私は話しかけるが、先生の反応は薄い。

何か考え事でもしてるのか。


そうこうしている間に、部室棟についた。

ゆっくりと玄関を開け、中に入る。


「そういえば千代、例の事件の被害者について知っているか」


何を突然、言い出すのか不思議に思ったが、さっきまでの沈黙よりは

ましかと思い、話をあわせた。


「被害者ですか、いいえ?特に。全員市内の女子高校生ということくらいです。」


登山部のある部室は三階の端。

そこに向かっているのだろう、さっきまでと比べ物にならない位歩みを緩める。


「正確にはウチ以外の女子生徒だな。なぜだと思う?」


変な質問をしてくる、言うようにこれまでの事件はウチ意外の女子生徒が被害者になっている。

その理由?

そういえば、今まで三人でJキラー関連の話をしてきたが、結局なぜウチ以外の生徒が

被害にあっているかの結論は出ていなかったことを思い出した。


「偶然じゃないんですか?Jキラーみたいな猟奇殺人犯の思考なんてわかりませんよ」


私の答えを聞いて不気味に笑う先生。

気づけば三階についていた。

先生は部室に向かい歩き続け、私はそれに引っ張られる。


「それに、犯人は死んだって聞きましたよ」


「まあそうだな。・・・・・・。」


なぜかそこで会話が途切れてしまった。

ずんずん足は進み、登山部の部室の前についた。


「鍵を取ってくるから、ちょっと待っててくれ。」


そういって、先生は暗い部室の中に消えていく。

後ろを向いて、窓から夜空を眺める。

今週は相変わらず、曇り空でなんとなく不気味だ。

遠くに見える、道路では家路につく車がヘッドライトを光らせ一縷の線を描いている。

数分して、ドアが開いたかと思うと、ぬるりと先生がドアから出てきた。


「鍵を取るだけなのに、いやに時間掛かりましたね」


「なに、ちょっと他の準備もしていたんだよ」


「そうですか、では帰りましょうか」


嫌な予感がした私は、先生の言葉を待たず、部室に背を向け歩き出す。

姫野にも言われたが、私は勘がいいのかも知れない。


「まちなさい。」


呼び止められ、振り向いた私は先生の顔を見る前に、わき腹に衝撃を受け、言葉を発するまもなく倒れた。

先生の手に握られていたのは、スタンガンだった。

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