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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第7章 うさぎさん達、外海旅行に赴きます
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74話 うさぎさん達道中にて その1

【道中イベントは避けられないんじゃね】


 港を出発してから数分。

 辺りは自然豊かな草原が広がっていた。向こうの側を凝視すると山々や森が見える。

 大陸の形は、Y字を横にしたような少々湾曲とした地形になっており、道は3方向に枝分かれしている感じであった。


「……もう少しでお昼ですね、村の宿屋に行けば食事摂れるのでそれまでもう少しの辛抱ですよ」


 それ本当かな。

 進んでも進んでも何も変わらない、無限の道を突き進んでいるのではないか。

 そのように錯覚してしまうが。私が元運動音痴だからこのようなことを口にしているのかもしれないが、長い道のりが非常に長い。都内の中央通りを数時間ひたすら歩き続けるより苦だよこれは。


「ねえやっぱ移動魔法使ってくれないの?」

「……愛理さん私の持つ、お役立ちノートにはこう書かれています」


 なにそれ。名前から察するに初心者用に備えてある説明書……マニュアルみたいな?


「……その798ページ目に、冒険者たる者冒険は自分自ら楽しむものであって気安く相手に楽させないと書いてあります。ので今は使いません」

「そうなんか。わ、わかったよ」


 数字エグいな。ていうか何ページあるのさその本。

 要するにずるはよくないってことか。私がよく言ういざというときの補助的な役割で使えそんな意味があったりするのかね。

 マジレスするけどさ、そもそも魔法って存在自体がチートだよね。だからそんなこと言われても今更感あるけど。んまあそこは大目に見るとして。


「あ、愛理なんか拾ったわよ!」


 ミヤリーが立ち止まって何やら拾う。


【ミヤリーは宝くじ一等レプリカを手に入れた!】

【ミヤリーは『合法的な手に入れたい物ならなんでも手に入れてやる!』の称号を手に入れた】


 なんちゅー物手に入れているんだこいつは。

 しかも見た感じのデザイン……いやこれスクラッチじゃねーか。しかも随分前にやっていた、私も大好きな某アニメじゃねえか。……因みに全部剥がれています。(多分外れ引いてヤケクソになったんだと思う恐らく二者の人)

 偽造は駄目だろ。


「言っとくけどそれなんも使えねえぞ?」

「え、だってほら強そうな人が強力そうな光弾? みたいな物を出しているわよ持ってなきゃ損よ」

「いやそれ作り物。フィクションってやつ」


 それをシホさんがのぞき見るように物色し始める。はい気になって便乗して見るやつ。


「闘着をきていますけど、伝説の人ですかねこの人」

「だ・か・ら作り物だって言ってるでしょ。いいからミヤリー捨てろ使っても何もおこらねえよ」

「ふーんあんたがそいうのなら……ぽい!


【ミヤリーは宝くじ一等レプリカを捨てた】


 おいもうちょっと地球大事にしろよ! エコは大事って言うだろ!?

 不要だと認識したのか後ろの方に放り投げ捨てるミヤリー。


「ミヤリー、一言いっておくぞ。ちゃんと正当方で入手しような」

「あ……うん。わかったごめん」


 頭の上に疑問符を浮かべながら首を傾げ納得する彼女。……分からなくていいよ。こいつ間違った方面いくと色々やらかしそうだし、こういうのは捨てさせるべき。ていうかするな。

 よくわからない物拾い能力があるけど、これは一体何だろうとそれは一旦おいておき。


「おや、人がおられますよ」


 ほんとだ。2人居立ってなにやらグチグチ喧嘩してるぞ。

 話の内容は聞こえはしないのだがなんの案件?


「なんか深刻そうな様子だけど愛理行ってみる?」


 年相応いかない布服を着た男性。

 少し間入りさせてもらおう。柄の悪い連中の話なら聞きたくもないのだが。


「……愛理さん困ってそうなんで行ってみましょうよ」

「あ、スーちゃん!?」


 私のことなんぞ気にも留めず、スーちゃんは先走るように2人の元へと近づく。

 彼女に続くように、私達も2人の方へと詰め寄り耳を傾ける。あの主人公を置いていかないでください。


「……あのすみません」


 ごちゃごちゃ。

 ごちゃごちゃ。


「……あのすみません!」


 彼女の声は2人には届かず、見向きにもされない。

 声は大きいはずなんだけど何でだろう。

 やはり彼女の影が薄い呪いが影響して、あまり気がついてもらえていないとかそんな感じだろうか。


 仕方なしに私はスーちゃんの思いを受け継いで。


 2人に声をかけた。

 まあ一応この作品の主人公だし、主人公が活躍しなくてどうするって感じ。やらないといけないでしょこの場面は。


「すんません、ちょっといいすっか?」


「むむ」

「むむ」


 こちらの存在に気づいたのか振り向く2人。

 まじまじと私達の方を見るが、非常に恥ずかしく感じる。

 やめろコミュ障強めな私をそんなしかめ顔で見るな。ゲームだったら。


愛理のイメージ


「貴様俺を汚い目で見やがったな! 俺達2人とラビット・バトルだ!」

(対戦する曲が流れながら)


 いやいやラビット・バトルってなによ。絶対相手6匹いるだろ。

 でもこの可能性は大いにあr…………いやねえよ。


「その何ごちゃごちゃ話していたんすか?」


 赤い衣服を着た旅人が言う。


「どこの人なのか知らないが聞いてくれようさぎさん」


 一瞬私を気になる視線で見た気がするがスルー。


「北に行くか西の街に行くか、弟と揉めていたんだ」


 指差す隣のお方。

 青い衣服を着たその人は、どうやら兄弟分の関係らしい。


「北の方が絶対いいって。そこまでモンスターは強くないし楽ちんだって」

「いいや、張り合いがないからそう言うのは柄じゃない。強いやつがいる方面が俺たちにとってちょうどいいだろう?」


 どうやら赤のお方は、ひたすら強さを追い求めて修羅の道を進みたいご様子。

 というかこの中大陸って西の方が強いモンスターいるのか。

 うーんこの。


「うさぎさん、なんかいい方法ないかね。俺はひたすら強いモンスターと戦いたいと思っているのだが」


 もう片方の赤いお兄さんが問いかけてくる。


「ずるいぞ! 兄さん自分のことだから自分で解決しろよ!」

「いいや、むしろ助けてもらうべきだ。もうかれこれ始めて5時間。このままではいたちごっこになるからそろそろ決着つけようぜ」


 5時間ってお前らどれぐらい張り合っていたんだよ。

 30分アニメ10本見られるぞ。それでよく喉が渇かないものだはい関心関心。

 よくそこまで張り合えるね君たち。


 困ったなあどうするべきか。


「愛理さんどうします? なんか策ありますか」


 横からシホさんが耳打ち。

 すげえ期待されているような口ぶりだけどノープランよ愛理さんは。


「いや、全然ないんだけど! 向こうからは過度な期待されちゃっているけどめちゃくちゃ断りづらいよ!」


 聞こえない程度の大きな声でシホさんに耳打ち。私はなんでもできる神様じゃねえよこういうのどうしろというんだよ。

 さてどうしたものか。


(待てよ、あれならワンチャンじゃね)


 ふとある方法を思いつく。

 その方法は誰しもやるあの手段であった。


 2人に拳を見せ。


「じゃあこれで」

「戦うのか? よし!」


 赤い人が剣を構え。

 いやちっがーう! 戦う事しか考えられない脳筋かよおめえらは。どうしてそうなる。

 こいつらは戦うことしか、脳みそないのか。少しは戦うこと以外の方法の1つや2つ考えろ頭の中で。


「違う違う。じゃんけん」

「そうかじゃんけんか。その手があったかよし弟決めるぞ。……ジャーンケーン」


 すると弟さんも拳を差し出して2人の勝負が始まった。

ていうかこの世界じゃんけんの概念があったのか。説明も入れて持ち込もうとしたけど、する必要はなかったのか。なら安心。

 勝負を見学し、成り行きを見届ける。……のはずだったが。


 出しても。

 出しても。

 決着はつかずあいこ、あいこ。


 と続いて。

 どんな確率だよ、乱数調整でもされているのこの世界。


「おっとうさぎさん俺達の勝負はしばらく続きそうだ。でも先にお礼だけはしておかないとな」


 あるものを手渡してくる。


【愛理はムゲンダイセキ×10個手に入れた!】


「……強欲ですね愛理さん」

「何その顔。……狙ってるわけじゃないからね?」


 スーちゃんが私の持つムゲンダイセキをじろじろと薄目で見下ろす。ジーと。

 嫉妬する視線がなにやらキツい感じに……。ので私はこれをすっと無限バッグへと即座に移動させ。


「……あ、逃げた」

「に、逃げてねえから」


 それにしても対価がおかしいだろ!!

 この間手に入れたばかりじゃんこれ。こういうのって苦労して手に入れられる超レアアイテムではなかったのか? ひょっとして大陸によって価値が違うとか……んな設定あるわけ。


「いいのこんなのもらって」

「俺達はレベル上げには興味ないんだ、なのでそれは我々にとっては不要なものだからやる」


 お2人さん縛りプレイでもやっているんですかね。果たしてあと何戦腕を互いに振り下ろすグダグダプレイをすることやら。うさぎさんでも想像もできない案件だなこれは。

 kwsk(くわしく)

 あ、でも勝負の邪魔しちゃ悪いし、ここでお暇しとこうかな。


「ん、んじゃあね。強く生きろよ」


 そう告げ、私達は2人の勝負をする姿を見ながら目的地に向けその場をあとにした。

 通り過ぎてから数分後。もらったムゲンダイセキを1つ取り出してじろじろ見る。


「こんなのもらっちゃったけどいいのかな?」

「あっさり入手しちゃいましたね。とても高級なものなので落とされないように注意してくださいね」

「ムゲンダイセキかぁ。私達まだ誰も100いっていないしとりあえず愛理保留しといて」

「あいよ」


 歩きながら、入手した物を無限バッグへと収納する。

 まあな。

 未だ、レベル誰1人100もいってないし宝の持ち腐れだよねこれ。つまり私達からすればこれは……ただの虹色に光る見物用の石。売却不可とのことらしいから、無限金稼ぎも不可これは謎のバランス調整かな。


「……ムゲンダイセキが10個も。……羨ましいです」

「大丈夫ときが来たらみんなで小分けして使おうね」

「……なら安心です。早くレベルを100まであげないとですね」

「スーさん大丈夫です、必要に応じて愛理さんがくれますから」


 私って補充要員にされてない大丈夫?

 すると。

 何もない草原にてぽつんと立ち塞がる物体を目撃する。

 なんぞあれ。


「扉ですね何かの」


 私達の目の前に立っていたのは。

 なんの変哲もない、ごく普通の扉だった。

 こういう物に限って碌な物じゃないパターンが多いのだが。


「もう嫌な予感しかしない」


 そこに暫しの沈黙が生まれ、謎扉を見回すのだった。

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