70話 うさぎさん達、外海旅行! その前に港で時間潰しです
【待ち時間は非常に長く感じるものである】
潮風が吹く。
空を仰ぐと渡り鳥達の声が聞こえてくる。海からは波がゆらりと動きながら海面を踊らせていた。
並大陸東南。
そこには海沿いの港があり、乗船がたくさん並んでいた。
船の造りは、中世らしい木製建造となっている。
乗員が声を張り上げながら。
目下の者に指示を出しているが、あれ大丈夫かな今でも海に落ちそう。
船の知識がにわかな私にとっては、未知の領域だが楽しいのかねあれって。
漁業やっていたらサメに食われたとか、そんなの洒落にならないから私はこういうのやりたくないからな。
3日が経ち。
予定通り券に書かれてあった港へとやってきた。
埠頭とは別に併設される形で、バザールも設けられている。
人も大勢とおり。
他愛もない話や、魚を大きな宣伝で売っているおっちゃん達もちらほら。
なんかあれだ。
築地かどっかを思い浮かべる景観。
ここマグロってとれるのかな?久々に食ってみたくなった。
「それにしても、広いわね」
「……時間が有り余ってますしどうしましょうか」
「魚釣りとかどうです? 向こう側に数本設置されていますがやってみます?」
なんでセルフ釣りがあるんだよ。
海沿いの一部の桟橋に、数本の釣りが固定されるように設置されている。
エサとかどうしているんだって話だが、シホさんによればエサが付いていなくとも食いついてくる魚もいるそうだ。
まさかの乱獲フラグかこれ。
しかも都合がいいように、自由に持ち帰りできるとのこと。
美味しい魚も釣れるらしいので、1回やってみようかな目指すは100匹! なんて叶いもしない夢を考えてみる。……はい妄想乙。
「暇だし行ってみようかな」
シホさんの勧めでみんなと船着き場に向かい魚釣りをすることに。
ご丁寧なことに近くには係員が釣り餌を提供してくれている。料金は無料セルフとか神じゃん!
釣り道具一式と釣りのエサを受け取るといざ戦地へ。
ぽつんと釣り竿を振る。
竿は木で作った昔懐かしい物であり、上品な作りようになっていた。……釣りとかなついわ昔友達と一緒に近くの池でザリガニ釣りしたな。……管理人さんか誰かに見つかってすげえ怒鳴られたけど。
あの日同様に簡単に釣れるかしらないけど、まあ似たもんだろう。
ぱきっとかいかないか心配だが、品質がいいと願うしかない。頼む折れるなよ。
できれば変な物が釣れるなんてこと起きないでくれ。
例えば、イカの格好をした女の子が釣れるとかな。
~げそ。
とか言ってきそう。
あ、これ私が昔読んでいた、好きな漫画に出てくるキャラだったわ。
そんな変な物出てくるはずが。
「ふん、大物でもなんでも来やがれ」
「……愛理さんなんと? まぁいいです負けませんよ。 ……因みに私魔法は一切使わないんでご安心を」
隣に座るスーちゃんが私の小声に反応し、きょろっとこちらを振り向く。
愛嬌のある眼差しが眩しい。
ってこれスーちゃんにディスられているの? それとも舐めプされているの?
どっちだ?
でもスーちゃんのことだし、真剣勝負すると言っているのだろう。
ならば彼女の期待に応えるべく、大物を釣らないとな。
「むむ……。…………………………つれないなあ」
間隣には釣りを始めてから数時間、未だ何も釣れず。
奮闘し続けるミヤリーの姿がそこにあった。
歯を食いしばりながら、なにやら意地を張っているご様子。
「お前どうしたのさ? そんなガチな顔……真剣な顔して」
「べ、別に釣れないから悔しがってるとかそんなんじゃないから!」
はいはいツンデレ乙。
こういうのを顔に書いてあるとか言うんだっけ。……というかミヤリーわかりやっす! 顔から冷や汗流しているけど隠すのお前下手だな。
「ふっ」
鼻で笑ってやった。
「わ、笑わないで!」
たく魚じゃなくて、自分が釣られてどうする。
さらっとうまいような言い方したような気がするが。
まあいいや。
と2人の隣のシホさんはというと。
「愛理さんこれどうですか?」
「げっ」
私達3人は、彼女の方を見て言葉を失う。
シホさんの後ろには。
ふんだんに盛られた魚の山が。
なに? 幸運アップの効力でも付いているの彼女には。
先に越されてなんか悔しい。
決して嫉妬ではない。単に負けていられるかと思っただけ。
同じことだろって? 別にいいじゃん。
「お、愛理が負けまいと竿に力入れ始めたわよスーちゃん」
「……まああの数を見たら誰でも驚きますよね」
「2人共、シホさんにこのまま負けたままじゃ悔しいでしょ? 頑張ってたくさん釣るよ」
何私マジになっているんだ私らしくもない。
だが、このままじゃへっぽことか言われそうだし、釣ってやらぁ!
それから数分。
あまり進展はなかったが。
暫くして私の竿になにやら引っかかった感覚が!
「はいktkr! おりゃああああああああ!」
「こ、これは大物なの!? めっちゃ勢いあるけれど!」
「…………」
私の糸を垂らしている水面には、波を立て襲ってくる物体が1つ。
スーちゃんの反応はどうしたのだろう。
驚いて言葉もでないのかな。
まあいいや引き上げよう。
引力のかかった、竿を思いっきり引き上げ。
獲物を確認する。
だが。
それはぬか喜びに終わりを告げる。
スカ。
それを見た瞬間、私の表情は沈んだ顔となる。いやねぇよあれだけ期待させておいて。
かかっていたのは、見知らぬ長靴が2つ。
【愛理はゴミ長靴を手に入れた!】
「……誰がどう見ても使い終わって捨てた長靴ですね」
「「いや物は大切にしろよぉぉぉぉぉぉ!?」」
いらねえええええええええええ!
というか自然の為にもこういう物捨てるなよ。……だれだこんなことしたヤツ怒らないから出てきなさい!
【解説:どこにでも落ちている汚い長靴。物をポイ捨てするのはやめよう!】
……ざけんな。
おまけに塩臭いし耐えがたいぞこの臭いは。
「うぇ。吐きそう」
思わず鼻をつまんで臭いを塞ぐ。海水ってこんなにも臭いきつかったっけ?
すると隣から。
「ぷっ。ふーははははははははははは! ちょーうけるぅぅぅぅぅ! 長靴って(げらげら)」
腹立つなこいつ。
自分も1匹釣れてない癖に、他人事のように笑うとは良い度胸だな。
「あ、え愛理? どうしたの拳なんか向けて? ちょやめなさいって! 謝る謝るから!」
拳を差し出すと怯えて降伏。
このチキン野郎が。スーちゃんがなんで冷たい反応だったのか、今になってようやく理解。
初めから分かっていたなら教えてくれればいいのに。
「スーちゃんはわかってたの? なんかめっちゃ無反応だったけど」
さてどうだ?
「……はい。……でもいい感じに盛り上がっていたので言うのも悪いかなと思ったので慎みました」
空気読める子で安心した。
☾ ☾ ☾
【物は大切にしようリサイクルは大事だからな】
「……それでどうします? その長靴」
「うーんそうだなあ」
地球の為にも、ここでポイ捨てするのもどうかと思うし。
「ちゃちゃっとまたなんか力で作れば?」
「ゴミを再利用する……か。悪くはない提案だけど」
ミヤリーがなんか提案してくる。
……つまり。
能力を使って何かの素材にしてしまえと。
そう言っているのか。まあそれが一環のリサイクルにもなるけど、汚物色々ついていて臭いので多少抵抗はあるのだが。
「うし、やってみるよ」
まあエコっていいしやって損はないか。
でもこの前のようなゾンビラビットパーカー。あのような廃産物はもう勘弁。
できれば、もうちょっと汎用性の高い品物を作るとしよう。
とりあえず。
手始めに能力で長靴の汚れを完全に洗い流して、新品同様にして。
長靴が瞬く間に光り綺麗になる。同時に腐臭もなくなり、できたてほやほやな長靴になる。
チート能力の正しい使い方なのだろうかこれが。
「見てよスーちゃん、愛理の釣った長靴が一瞬で綺麗になったわよ」
「……ぶっ飛んだ魔法ですね」
ちょいと違うような気もするが。
次に。
長靴に、私の魔力を注入させる。
パーカーを生成できるなら、パーカー以外の物も可能なんじゃない?
生成の画面を出してその長靴を素材として、アサルトの力を少し素材として使用。
【可能です。パーカー以外の物も生成できます】
AIさんやりますねぇ。
安全性が確保されたことらしいので。
生成開始。
☾ ☾ ☾
「変わりすぎじゃね。……能力が」
作るには成功した。
はい成功した。
できあがったは、赤紫の長靴。
その詳細はというと。
・ラビット・ブーツ
【固】パーカーの色によって着色が変化する。
【固】跳躍力・走る速度が大幅上昇する。
【固】地面を蹴ると反発力が倍になり跳躍力が伸びる。
どうしてこうなった。
ここまで魔改造しろと誰が言ったんだよ。あ、主犯は私です。さーせんでしたぁ!
ってまーた加減間違えたよ。いくらなんでもやりすぎぃどうせなら日常面に使える機能がよかったなぁ。
というわけで。
とんでもないインチキ靴が完成しました。まあ強いことは確かなので、それに私は履き替える。
そんなに普通のブーツとそんなに差はない。長靴なんて小学生以来履いていないけどこんなものだったっけ? 体が忘れているだけかもしれないけど……いいやよし履き替え完了。
というか感覚的には普通。いけるなこれ。
ならこれからは、このラビット・ブーツを履くことにしよう。なんか足が速くなるとかいう優れ物みたいだし。
思いっきり蹴ったら宇宙の果てまで飛んだりしないかな。今まで履いていたシューズは、無限バッグへと転送。
「履き替えるのね」
「うん、なんか以外と気に入ってさ」
「……なるほどそれは興味引かれますねって」
シホさんが私達の元へとやってくる。
「そろそろ時間ですね。あれ? 1匹も釣れなかったんですか?」
出航の時間が近くなっているとシホさんが教えてくれる。
確か、昼前くらいだったかな。
時間はそう待ってくれないみたいだ。そうなると、私達の収穫ゼロかよ。
負けた。
そっぽを向いて答え。
「あ……う、うん。なんか本調子じゃなかったみたい。魚が寄りつかなかったっていうか」
「そうなんですね」
長靴は釣れたけど。
食いもんじゃねぇ。
「でもご安心を。たくさん取れたので当分は食料に困らないかと」
「…………あいよ」
なんだろうこの敗北感。
この屈辱はいつか必ず果たそう。(確定ではない)
シホさんの釣ってくれた、大量の魚は私が全て無限バッグへとしまい収納。
そして出航する船へと早足でむかうのだった。
こんばんはです。
ネタを少し挟みつつ今日はのんびりマイペースに、釣りをするうさぎさん一向です。
どうしてゴミから新品の最強長靴ができるかって? そのツッコミはなしで。
因みに今まで履いていたのはシューズですね。
言及があまりというか全然なかったですが普通の靴です。
でもRPGっぽい靴に履き替えた方がいいかなと思い、このラビット・ブーツを装備させることにしました。
ぶっ壊れと言ってはいますが、雲泥の差が付いてくる物かと言われれば一概にそうとも言い切れませんが。
まあ敵もこれからはそれなりにインフレした数値を持ったバケもんを導入するよていですので問題はないです(確証はありませんが)
次回は外海にようやく出ます。愛理達の行き先は果たしてどこなのか。
それではみなさん、本日もありがとうございました。
ブクマ等はお任せするので、もし宜しければお願いしますではでは。




