65話 うさぎさん達と、諦めの悪い侵略者 その1
【しつこいヤツは嫌われやすいってかーちゃんかせんこーに習わなかった?】
今日は時間を持て余していたので、外へ出てモンスター狩りに専念していた。
と言ってもいつものごとく街のすぐ外なんだけれど。だってここの方が近くっていいし。
いちいち遠出して、帰りに遠回りするくらいだったら近場が断然お得だろう。
みんなに例えればそう。
わざわざ家から遠いコンビニ往復なんてしないでしょ? 私なら絶対近くの店選ぶからすぐ帰られる場所がいいの。
知らんがな? あ、そですか。
まあ、そんなこんなで今モンスター狩りしているわけだけど。
平野の前方に3匹のモンスターが立ち塞がる。
【カマッチョ 説明:大きな釜を持った小悪魔モンスター。小さな翼があるが滑空速度は滅茶苦茶鈍足だ】
【テジナン 説明:宙に浮かぶ2本の手だけついた大きなハットが特徴的なモンスター。帽子からは多芸に及ぶ魔法を使用する】
【ラット 説明:人並の大きさをした巨大ネズミ。素早しっこく家の支え柱を数分経たない内に食い尽くす害のあるネズミ】
何この組み合わせ。
「変な組み合わせねぇ」
「……とりあえず魔法で縛っておきますか」
スーちゃんは束縛の魔法で、3匹のモンスターの動きを封じ込めようとする。
「あれ、スーさんあの宙に浮いたモンスターは全然効いていませんよ?」
テジナンと言われるモンスター。
やつは宙に浮いているせいか、全く束縛魔法が効いていなかった。
むしろピンピン動いている。
「宙に浮いているからじゃね? 足ないから無意味なんじゃ」
「……眼中にありませんでした。ですが他2匹は仕留められますよね?」
前の両隣にいる敵は、魔法から出てきた縄で動きを止められている。
よし、これなら心置きなくフルボッコにできるな。
「ではミヤリーさん参りましょう!」
「え、えぇ。……と愛理はあの帽子モンスターを頼める?」
ちょっと面倒くさそうな相手だけど、ミヤリーからの頼みを引き受けることにする。
「おーけー牧場」
そうして二手に分かれ私とスーちゃんは、空を飛ぶテジナンの方を追いかけ前進。
全速力で追いかけ寄り添う。こら高く上昇すんな飛べるからっていい気になりやがってこん畜生。
「……では愛理さん。あの帽子モンスター空高く上昇してしまいましたがどうしましょうか」
「うーん。魔法で撃ち落としてくれないかな? あんな高く飛ばれたんじゃいくら私でも攻撃できないよ」
もしも空とか飛べたらいいんだけどね。
それに代わるような素材もないし私にとっては詰み要素。
「……では撃ち落としますね……はぁ!」
「いやあるんかい!!」
スーちゃんは魔法を唱え始めると、中ぐらいの魔法陣の中から鋭い氷の刃が数本放出された。
その氷の刃を魔法陣の外へと出し、そのまま固定させて。
投げ撃つように、1本ずつテジナンの方へと勢いよく飛ばした。
氷の刃は彼女が狙い通りに軌道を変えず、湾曲を描きながら飛びテジナンへと接近。テジナンは透かさず飛ばした1本を上昇して回避するが。
「かかりましたね」
スーちゃんがパチンと指を鳴らすと、テジナンの上がった宙の四方に氷の刃が待ち構えていた。スーちゃんは手を握り潰すように手の平を閉じる動作をさせると、それと同調するように凍りの刃がテジナンを挟み込むように襲いかかった。
避ける合間もなく、テジナンはそのまま諸に攻撃を受け地面へと落下。
おし、チャンスだなこれは。
「んじゃ行ってくるね」
落下する拍子に私は猛ダッシュで、アサルトラビットパーカーで距離を詰め拳に力を込める。
さてとぶん殴って仕留めるとするか。
「ラビット・パンチッ!」
小さな物体を捉え、そのままテジナンの方へと当たり地面へと叩きつける。抵抗もなく徐々に力尽きる様子を見届けると、大きな帽子を残してそのまま消失した。
「銃で仕留めようと思ったのに根気ねえなこいつ」
落としていった帽子を片手に拾う。
また何かしらラビットパーカーの素材になりそうなのでバッグへと収納。
こいつを使ったら、一体どんなパーカーになるかまた楽しみだが、過度な期待はあまりしないでおく。
なんかさあ死亡フラグ立ちそうだし嫌。
スーちゃんの元へと帰り。
「……お2人の方へと行きましょう。……もう決着はついていると思いますが」
「マジ?」
「……えぇ。だってあの魔法1度かけられると脱出は難しいくらいに強力ですよ?」
「なにその結束プレイ大好きな人が喜びそうなやりたい放題な仕様はさ!?」
「……どういう意味かは存知上げませんが、そうですね要はやりたい放題ですはい」
なんだろう。
スーちゃんは分からない言葉を言っても、すぐ理解してくれるから非常に助かる。
バカなミヤリーと違ってこの子めっちゃ物分かりがよくて頼りがいがある。
そんな走りながら仲間の方へと近づくと。
☾ ☾ ☾
「ふうおわったおわった」
「たあああああ! 片付きましたね」
ちょうどその2匹を討伐し終えた直後だった。
2人の前には倒れ込み息絶えたモンスターが。
「2人共今おわったところ?」
この数分なんでそんなにかかったか問いたい。
2人の実力なら、すぐにおわらせても問題ない強さのはず。
それは私がよーく知っているから。
「すぐ片付かなかったの?」
念入りに2人にそう聞くと。
お互いに目を見つめ合って少々の沈黙が生まれる。
なにさ。私に言いづらいことでもあんの? 怒らねえから言ってみ私に。
「……」
「……」
しーん。
いやなんかしゃべれよ。
まさかと思うけど、フリーズなんてことはないよねお2人さん。
まじまじと2人を見つめていると、ようやくこちらの方を振り向きミヤリーが答えてきた。
「じゃんけんでどちらを倒すか決めていたの。なかなか勝負が決まらなくて今に至るってわけ」
あーなる。
どっちを先にやっつけるかじゃんけんで決めていたのか。
って。
凄くどうでもいいことだった!!
そこは2人で一緒にやっつけるとかが妥当じゃないの?
プライド的な何かがあるんだろうけど、一緒に倒すっていうスタンスには至らなかったか。
「じゃんけんってそんなにかかるものなの?」
そんなどうでもいいことを2人に聞いてみると。
「ずっとあいこが連発しちゃったんですよねこれが」
頭の後ろで頭を手で撫でながらにこにこするシホさん。
連チャンであいこが何回も出るものなのかなあ。おかしいよその確率。ある意味奇跡なのでは。
「……とりあえずもうすぐお昼ですし、帰って昼食でも……って」
スーちゃんが何かに反応した。
瞠目する彼女の視線側を私達は振り返ると。
街と正反対の平原。
草木が風によってそよぎ踊っていた。
そんな自然豊かな平原から突如大きな物体が空から姿を現す。
あぁ。
またこの展開ね。
よく分からん、宇宙人が乗っていそうな円盤が無事着地すると。
「はあまたかよ」
素肌が黒い異星人さんが姿を現した。
はい案の定ナメップ星人さんです。
「我が名はナメップ星人のワロッサ! お前が倒した兄の弟のさらにイクメンナメップ星人のいとこに当たる者だ! 単刀直入に言おううさぎよ俺と勝負しろ!」
このこりもしねえアホ共が。どうも要領が悪い輩らしいこいつらは。
大きくため息をついて深呼吸。
「どうするの? 愛理」
「あぁめんどくせ。あいつらまだ諦めていなかったのかよ。……どうせ追い返しても素直に帰ってくれるかどうか」
「……では戦うというのですか?」
「もちろんだよ。一応この章のタイトル変なヤツらが登場する話になっているし、ここは空気を読んで戦うよみんな」
メタ発言する私。
ちょいと章にあわないヤツらが出没しちゃったせいで、コイツらの出番が減っちゃったみたいなんだけど。
ま、そこは大目に見てねおなしゃす。
「分かったよ。もうすぐこの章おわるらしいから期待通り戦ってやるよ。……でもそれなりの大敵用意してくれたんだろうね」
するとワロッサは拳に力を入れ力説。
「俺は待っていたんだぞ! ずっとこの章で出られる日をな! なのに随分先送りにされちゃって」
されちゃってで草。
相当空気になりかけな感じが嫌だったんだな。まあずっと出たかったってことは私でもギリギリ理解出来る範疇。でもナメップ星人さん、あまり作者を悪く言わないであげて。
「それもこれもうさぎ! お前のせいだぞアニキ達の仇ここでこの俺が打たせてもらう! 覚悟しろ!」
なんで私に罪があるみたいな展開になっているのさ。……アニメやマンガでよくある王道展開だけど勝手に罪着せるのやめてもらえます? じゃないとうさぎさんちょいとガチ切れ寸前になりそうだから。イミフ。
そうしてナメップ星人さん3人目の戦いに私達は各々身構えた。
ほんとどうしようもないいたちごっこが、また始まろうとしているそんな現実に嫌気をさしながら。
帰っていいかなあくびでそうやわ。




