64話 うさぎさん達、地下眠る財宝を探し求める
【ダンジョン探索は計画的にしようぜ】
大部屋をくまなく探す私達。
ボルト・ラビットパーカーによる能力によって、照明が明るくなり先ほどよりかはとても見やすい。
あれから数十分。進展があったかというとそうでもなく。
「古ぼけた家具などを色々漁りましたが、これといって気になる物は1つもありませんね」
「……棚、机どこもガラクタばかりで大した物は……ってミヤリーさんそれは?」
スーちゃんの隣にいる、ミヤリーがなにやら異色の物を手に持っていた。
これどう見ても悪趣味だろ。
「え? 骸骨だけど。いかにもこれからとんでもない力が眠ってそうじゃない? ねっね?」
また私に同意を求めてくるミヤリー。誰がどう見たらそんな見解になるんだよ。不気味さ極まりない意匠。というかこれガチの骸骨じゃね。……つまり人骨。理科室の人体模型で見たことはあるけど実物は所見。気色悪いから徐々に私の方に前へ突き出すのやめてくれないかな。
何かしらの呪いでもあったらどうするんだよ。装備したら外せない品物だったら余計な回り道をするはめになりそうだし……だからやめとけよ? 私絶対責任とらないから。
「呪われてもしらねぇぞ? それでもいいなら持っておけ」
「の、呪い? ……た、確かにそれもそうねなら……」
ぽいっと。
適当な場所にその骸骨を放り投げた。
投げた骸骨の頭部は、途中で割れ崩れることもなく部屋の隅へと転がっていく。あっさりだなおい!
案外。頑丈なんだな骸骨って。
すると反対の隅に古ぼけた扉が立っていた。
上には蜘蛛の巣がいくつも張り巡らされており、なおかつ埃まみれだった。
年代物な感じがするが、いつ頃のものだろうか。
「あの扉なんだろうな」
みんなにその扉方向を指さした。
すると一同。視線がそちらの方へと傾いた。
「あの扉は……。随分と古い感じですけどなんでしょうかこれ?」
「お化けが出てきたりしてね」
縁起でもないことをミヤリーが言う。
シホさんはそれを真に受けて鳥肌立つ様子を見せる。
「ひぃぃ! もうミヤリーさんったらやめてくださいよ、そういう冗談は」
そこまで真に受ける必要ないと思うんだけどな。
でもこいつ言うことのいちいちが、フラグの塊みたいなものだし一概にも。
知らん合間のDQN展開は死んでもご免だが。ふじきゅーに昔両親に連れて行ってもらったことあるが、あれは心臓に悪かったくらいだし。当時幼かったこともあるが、今なら大丈夫…………とはとても言い難いんだなこれが。
「おい、ミヤリー余計な口とかは慎めよ? しないと痛い目みるかもよ」
「わ、わかってるから。……で、ここ入るの?」
言い出しっぺの本人も妙にビビっているのだが、こいつもなんだかんだでチキンじゃねえか。
「……では参りましょうか。……凄い物音です」
スーちゃんがその扉を開けようとすると、扉から古めかしい木の軋む音が木霊した。
うわぁ。この音、地味に嫌いなんだよね。
中はベッドのたくさんある部屋だった。
寝室だったのかな? 金目のあるものは……ってそんな欲張るのはよくねえぞ愛理。
「愛理今日からここで暮らさない? このベッド心地良いわよ?」
無策にベッドへと横たわり、その場でバウンドして跳ねてみせる彼女。
よくもまあ抵抗なしにそんなことできるな。こいつやっぱ警戒心なさすぎじゃね。
そういうのは修学旅行でやりなさい。この世界に修学旅行ってあるのかな。
「絶対嫌だからな! するならお前を1人ここに置いていく」
「「あぁやめてぇ愛理私が悪かったから! もうそんなふざけたこと言わないからだから私を見捨てないでぇ!」」
子供のように泣きじゃくり、私につかみかかるミヤリー。
はぁ子供かよ。冗談で言ったつもりが、そこまで外道なことをする人間に見えるのか私は。うんわからん。
「いいから! それよりも宝はなんか……宝」
部屋の周りを見て気になる物を探す。できれば大きな宝箱あったらいいな。
そんなことを思いふけっていると。
オブジェクトが予めあったかのように、少し先の中央に大ぐらいのサイズ感をした宝箱が置いてあった。
「都合よすぎじゃね。どうして堂々と目立つ場所に宝箱があるんだよ」
「さあ。あまり置く場所がないからひっそりとかくしていたのかも。……なんででしょう」
シホさんが肩をくすめ言い放つと、気になる顔をしながらその宝箱を熟視する。
私達はその宝箱の方へと赴いて調べる。
なんちゃら鑑定団じゃあるまいし、私には価値感なんて全然分からないんだが。
「でもこういうのってさ鍵がないと開かないやつが多いよね?」
スーちゃんがこくりと。
「……ですね。でももしそうだとすると、城はもう焼け崩れているので鍵の手がかりとなる場所はなさそうですよね?」
「まあいいや、とりま開けてみるね」
先に進まないと何も始まらないとも言うが、まずは開封してみよう。
鍵は……。
鍵……。
……。
ガタン。
へ?
【愛理達は金目な宝石類(年代物)一杯を見つけた!】
宝箱はあっさりと開いた。
古ぼけていたから、空きやすかったとかそんな感覚ではなく。
違和感も何もない感じでストレートに開いた。
なにこのガバガバセキュリティー。
よくもまあ今まで取られなかったものだ。
中身はある。
金でできた宝石やら色んな、金目のあるものが一杯。
よしなんか1つ手に……に?
……。
「タチサレタチサレ……」
すると後ろからなにやら視線を感じた。
「ひ!?」
シホさんに続いて、悲鳴を上げる私の仲間達。
瞠目して後ろをゆっくりと振り返ろうとし。
「し、シホ? な、なにか言った?」
いつになく、ビビる様子をするミヤリー。
シホさんがそんなことするはずがねえだろ。
「タチサレタチサレ……」
次第に声は大きくなっていく。反響する低音がまた不気味さMAXで、仲間の何名かは鳥肌立つご様子でバイブレーションモードになっていますた。
やめろ。こっちまで便乗して怖くなってくるじゃないか。
「……愛理さん。私達触れてはいけないものに触ってしまったんじゃ」
私達は一同に後ろ側をゆっくりと振り返ってみると。
そこには。
「タチサレタチサレ!」
全身に高貴なローブを身に纏い、頭に古い金の王冠をつけた骸骨さんの姿がそこにあった。
下は半透明でまるでお化けのような見た目をしており、完全に幽霊ではないかと察しがつく。
「ひいいいいいいいいいいいい!」
一同そこに整列し、ははあと正座。
して首を上げ下げしながら怒りを沈むよう、そのアンデッドモンスターに頭をさげるが。
「あの? すみませんそこまで驚いちゃいました?」
「へ?」
そのアンデッドモンスターさんは私に語りかけてくる。
なんか驚いた様子で。
顎をカタカタと震わせながら、申し訳なさそうな感じにしているけど。
悪いのはこっちだから!
「え、えーと?」
図鑑でチェック
【王様アンデッドさん 説明:心優しい王様の魂が亡骸に宿りアンデッド化した姿。アンデッドではあるが人には危害を与えないフレンドリーなアンデッドさん。滅びた城を佇まいとして来る冒険者をいつも脅かしている】
……。
温厚なアンデッドとか、聞いたことねえぞ。
つうか脅かすとかもうお化け屋敷かよ。
「み、みんな頭あげなって。悪いモンスターさんじゃないみたいだよ?」
「へ、そうなんですか」
「こ、こんな敵っぽい見た目で? ……なんてこった」
それはこっちのセリフだ。
「……それでアンデッドさんはどうしてこのような場所に留まっていたんですか?」
スーちゃんが聞く。
「あぁ。私この世界にもうちょっといたいと死ぬ直前思っていたんですが、そうしたら私の願いが叶ったのかしりませんが、この世とあの世を自由に行き来できるようになったんです」
なんだよそのガバガバ設定。
それ生死の概念に囚われねえじゃんか。
「あ、でも定期的にあの世に出向いて、貴族のみなさんにはちゃんと顔は出していますよ?」
同窓会じゃあるまいし。
フリーすぎじゃないかこの世界。幽霊って生人にしか見えないかと思っていたが、生きている私達に見えているだけでもすごく変な感じがする。これなら心霊写真とかだいぶ克服できそうだと思う。(確信はない)
「あの世のみんなには怒られないの? いい加減こっち来いとか言われたりして」
「もちろん言われていますよ。でもどうしても嫌で嫌で。何にせよこの国は思い出がたくさんありますから」
「死人でも抱えている事情たくさんあるんだね。つうかそんなん成仏いらねえじゃん」
ひとまずそのアンデッドさんに話を聞き、少々時間を費やすこととなった。
☾ ☾ ☾
【死人でも心残りがたくさんあるらしい】
「じゃああれか。あなた人が来る度にこうやって驚かして宝を守っていたとかそんな感じか?」
大方話は聞いた。
どうもこの宝箱。鍵を掛ける前にその鍵自体をなくし、大事な宝を取られるわけにはいかないと鍵代わりにアンデッドさんがこうして一芝居打ったそうだ。
で。
逃げ出さなかったらそのままあげるように考えていたらしく、今まで人に危害は1度も与えてなかった模様。
要は景品感覚でその宝箱を置いていたみたいだなこれ。
「私はてっきり怒りに触れ殺される羽目になるかもって思った。……損したわ」
「すいません。愛理さんお宝は全部さしあげますのでどうぞお好きに持っていってください」
「それマジで言ってんの!? 景品なくなっちゃうよ!??」
唐突に太っ腹なことを言うこのアンデッドさん。
ここは精々1つあげるとかそんな立ちじゃないの?
「いえいえ大丈夫ですから。売るなりなんなりとお使いください」
宝箱の中身を全て魔法かなんかで、私達の足下へと移動させてドンとおく。
金の神々しい山が私達の前に。
ま、眩しい。古いとは一体。ここで断れば、私が空気読めないキャラ扱いされかねないので仕方なしにもらうことにした。
「あ、ありがとう」
「そ、それでアンデッドさんあなたはこれからどうするんですか?」
「あぁ。新しい景品を用意してまた驚かせますよ」
まだやるの? この人
「……ところであなたのお仲間の中にいられる金髪のお方……どこかで見覚えが」
その視線はミヤリーに向けられていた。
「ミヤリーだけど」
「あぁあの勇者ご一行の。消息不明となったと聞いておりましたが無事でしたか」
なんか行方を暗ましたとか、そんな始末にされちゃっているよこの子。
「ま、まあね辛うじて生き長らえたとかそんな感じよ」
「そうでしたかそうでしたか。いやぁ懐かしいですな。あなたとは街で来る日もカジノで勝負する毎日をしておりましたからな」
「あ、あの!? 王様!? それやめて欲しいんだけど」
こ、こいつ。
ミヤリーの胸ぐらを掴み私は一発。
「愛理話せば分かるわ! 私は私はあああああああああああ」
ゴツンと一発。
「すみませんねアンデッドさん、コイツには色々言い聞かせておきますので」
「は、はあ。……あのミヤリーさんとても痛そうに見えますが」
たんこぶのできたミヤリーを見下ろすアンデッドさん。
「いえいえ大丈夫ですから、では私達はこれで失礼しますからではでは」
とミヤリーを引きずりながらその場を離れた。
他に当てもなかったので街へと帰還。
その夜。
ギャンブルのことに関してミヤリーに説教をしてその日を終えた。
どうやらミヤリーは今も昔もギャンブル中毒だったらしい。




