62話 うさぎさん達と、ちょっと難関ダンジョン? その2
【しらみつぶしにダンジョン探索しよう】
先に進む私達。
辺りには荒廃した建物が佇む。
というかやはり廃墟だけあって毒の沼多いんだが。あぶね無策に歩数稼いだら棺桶行きだこれ。まあ私は随分前に毒耐性を習得しているため問題はないが。
いや、ズルじゃないから。言っておくけど、私はチート能力の使用に関してはいざという時にしか使わないから。正しい使い方のチートならまだ許容……いいね?
そんなことはさておき。
「で、愛理さっき拾った腐肉なにに使うの? まさかそんなゴミみたいなものを使って新しい色の服を作ろう……なんて考えているわけじゃないでしょうね?」
偉そうに腕を組みながら、私の方を薄目で見るミヤリー。
コイツエスパーか? ちょうど今試しにそうやろうかなと思っていたところなんだけど。
勝手に人の心覗かないでくれるかなミヤリーさん。
「何よその目は?」
「おいミヤリー、人の心読むの禁止な」
「え、そんな! 別に悪気があったわけじゃ……って本当に使おうとしていたの!? 冗談で言ったつもりなんだけど」
ただの当てずっぽうなんかい!
全く紛らわしいことしか頭にないのかコイツは。ブラフもいいところだ。丁度いい今度こいつには敵の精神を内側から粉々にするメンタルクラッシャーにでも転職するよう呼びかけようかな(あるかは私シラネ)
「でも愛理さん、その腐肉本当に使うんですか?」
反対からシホさんが。……そのお料理クッキングを毎週楽しみにしているリスナーみたいな目で見られてもなぁ。こんな真剣な眼差しで見られたら後引けない。
「いやだってさ、なんでも物は試しって言うじゃん」
「……私には嫌な予感しかしませんが」
んなん知っているよ! 危険な物は触るなってせんこーに学校で言われたことある。でも案外使ってみれば良品だったりするかもよ。
まあ結局は乱数=運の案件だが。
そこで一旦立ち止まって。
仲間達にやめときなと言われながらも、私はまた新たなパーカーを生成することにした。
腐肉からして、仲間が言うようにもう嫌な予感がプンプン。
大丈夫! 案外上出来なパーカーができるかもしれない!
と。
私がそう思っていた時期がありました。
☾ ☾ ☾
「……」
「……」
「……」
「なにさ、3人で黙り込んじゃってさ」
腐肉を使って試しにパーカーを作った。
そのパーカーの色は、暗い緑がかったちょいとダークな感じなパーカーだった。
まだ、能力は確認していないのだがよし確認。
ゾンビ・ラビットパーカー
【固】あらゆるダメージを受けず状態異常にならない
【固】地に眠るゾンビを呼び出し操ることが可能
ほか私の言った通りじゃん!
しかも無敵能力に操る能力までと来た。
ゾンビと言えども、これで私も念願のス〇〇ド使いになれるぜ。
裁くのは私のゾンビだぁ! なんてね図に乗って言いたかっただけサーセン。
すると目の前にモンスターにエンカウント。
【アシッド・ワーム 説明:毒の沼に潜むおおみみず。牙には最悪即死まで至る猛毒があるので要注意】
10メートルくらいの大きさをしたおおみみず。
大きな蛇体が特徴的な紫色のみみずである。
なんか見た目がアレ。
触手〇〇イのある、薄い本に出てきそうな生物みたいなんだけど。
あ、みんな大丈夫。
この小説そんな性的な描写は一切ないからね! いや本当本当。
え、なんで私がそんなこと知っているかって? そりゃ都内で年に数回開催される即売会とかよく行っていたし知らないわけなかろう。因みに私は健全な非エロ派なのでよろしく。
「ちょっと愛理さん! 前にでちゃあぶないですよ!」
「大丈夫だよシホさん。こんなヤツ私が消し去ってあげるからさ」
仲間達より前に、アシッド・ワームのすぐ前に立つ。よだれがかかり、服がヌメヌメとなる。……きしょ。
まあ状態異常に完全耐性ついているんで大丈夫なんですが、においは対象外みたいです。
「くさっ。吐き気してきた」
やっば。
リバースしそう。
なら悪いけど、早く先に進みたいから倒させていただく!
ふといつものように拳を前に。
そして拳を後ろに引いてぶんなぐ……。
る。
ぶんなぐ……。
る。
ぼよーん。
軽く揺れる音。いつもの感触じゃない。
手応えが全くない感じ。
上を見るとそこには、口を開けたまま「?」な様子を浮かべるアシッド・ワームの姿が。
あれ。
どういうこと?
ミスったのかな。
ワンモアで殴る。
しかし結果は同じ。……数回繰り返したものの結果は変わらずで敵は吹っ飛びもしなかった。
後ろの呆然とする仲間の中でミヤリーが。
「だからやめとけって言ったのに」
なんか心配された。
手応えなし。……だからなんでよ。
とりあえず、状況把握のため今1度能力をチェック。
そこに補正能力に合点いった。
ゾンビ・ラビットパーカー 補正:全能力0
は?
ステータスを見る。
そこに書いてあった数値は全て0表記だった。
……クソ雑魚パーカーじゃねえか。
なにその、無敵になった代わりに高いデメリットを乗せました的なやつは。やはり何かを得るには何かを犠牲にするという説もあながち間違ってはいなかったようだ。
持ちかけるべきだったかこの話題。
むむ。無力じゃん私。やむを得ん。
「に、逃げる!」
仲間の方へとダッシュ。
「あの……愛理さん?」
「……すまんどうやら外れを引いてしまったらしい」
「? 何のことか分かりませんが戦えばいいんですかね」
「いや、それには及ばないよ。いいから見てて」
拳を地面に叩きつける。
すると。
地面から這い出るようにゾンビがたくさん出てくる。
ゾンビは私の命令で。
「よしお前ら! あのミミズ野郎をとっちめてやりなさい!」
すると拳を空に突き出し、アシッド・ワームに一直線に走って行った。
ゾンビ達はアシッド・ワームの体あちこちに張り付いて離れようとしない。
アシッド・ワームは暴れ出してもがき苦しみ始める。身をかじられながらなんだか可哀想に見えるがどうでもいいや。
だが全く進まない。
なににせよ、捕食スピードが遅いため非常に時間がかかると察しがついた。
「遅すぎだろ」
私は後ろにいるシホさんを名指しして。
「……あのさシホさん」
「はいなんでしょう?」
「悪いけどさ、あいつぶっ倒してくれない? なんかこの服じゃ手に負えなさそうだから」
「なら最初っから着なければよかったじゃない」
正論過ぎて泣ける。
「……まあ自業自得ですね。……ここはシホさんに任せるのは良案だと思いますよ」
スーちゃんさぁ。
頼むから空気嫁。
「なら愛理さん、行って参りますね! とお!」
渇が入ったシホさんは、アシッド・ワームの方へと駆けていき。
鞘から剣を抜いて、真剣モードに入る。
してシホさんは。
風の如く疾走し、アシッド・ワームの体を一瞬にして輪切りする。
容赦ない剣裁きは一端の戦士そのもののであり、斬った部位の破片がぽろぽろと空から降り注ぐ。
はえええ。
RTA並にはええええ。
私がぎゅっと手を握ると、ゾンビ達はその場から姿を消し自然消滅。
「まぢで? 消えたんだけど」
まさかの処理機能つきかい。
無意識に握ったけど、そんな機能あるんだね。始末が便利ってどういうことよ。
そして帰ってくるシホさん。
「あっさりだったね」
かたごとになる私。
すると、後ろに控える仲間達に首を突っ込まれた。
「……ところで愛理さん」
「いつまで」
「その服着ているの?」
「……その服着ているんですか?」
言葉を繋ぐように語りかける。……やっぱデクかだよね! こんなんじゃまともに戦えないよな。
「も、もういつもの服に戻すから。だからこの服のことは忘れてくれると嬉しいな」
私の不注意で生み出した通称53パーカー。
いや、だからこいつの需要性どこにあるんだよ。
パーカーの中にも外れがあるんだと。
染み染みと考えた私は、仲間と共にさらに歩みを進めるのだった。
ていうかもうこのパーカー、お蔵入りのパーカーでいいんじゃね?
みんな物の説明書は必ず読もうなこれ愛理さんとの約束。




