39話 うさぎさんは、そろそろ衣食住を整えたい その3
【足場が悪くとも度胸があれば大丈夫】
湿り気のある湿地草原。
草木が沈む場所も多数見受けられ、進むのがとても困難な場所であった。
足を踏み出す度に、服が汚れていき洗いたくなるような見た目に。
はぁ早く帰って洗濯したい。
一応この世界では、コイランに変わる施設が各場所に設けられている。
安直過ぎる名前だが洗濯屋。
なんでも魔法使いが魔法で、洗剤となる成分を生成し衣服を洗うんだとか。
それならスーちゃんにでもできそうな案件だが、少女によると種類が違う魔法のため自分にはできないと言っていた。
あれか、一般的な魔法と特殊な魔法があるのかな。
そんな話はさておき。
洗えることが約束されていてもだ。
こんな汚らしい格好を、街中のみんなに晒しながら歩いて帰れと。
めっちゃはずいんだけど。
もう既に大粒の泥跡が何か所もパーカーについているが。
目立つよ非常に。
すると私が気まずそうに思いふけっていると間隣から。
「愛理さん、どうしたんですか?」
表情を気にしているせいか心配してくるシホさん。やめて。こういう時、どう対応するべきか非常に困る。
さて言うべきか。……でも仲間の間柄だ。
少々言いづらいことだが、仲間だし言って損はないと思う。
なので大人しくここは正直に私は白状する。
「汚れ過ぎたせいか、ちょっと気持ち悪くてさ。できればもうちょっと安全な道を辿りたかったんだけど」
「……仕方ないじゃないですか。だってあのようなおまじないで愛理さんがこちらの方に行くとか言ったから」
それは確かに正論。
でもこんなに足場悪いとか聞いてなかったんだけど! もうちょっと足場がいいところがよかった。
だが終わったことをいつまでも悔いていてはいけないような。
地形。
その踏み場としていいのかというと。
愚痴がでる。 最初踏み出した足場よりますます難易度は上がるばかりで、先ほどよりより一層進みづらく感じる。
「愛理少しは辛抱しなさいよあと少しなんだから」
粘度の強い泥。
だからね、こんな鬱陶しいやつをあと何分奮闘すればいいんだよ。
……道路整備の人みたいに固めることさえできれば、ワンチャン進みやすくはなるかもしれないが今私の手元にそんな役に立ちそうな素材は一切ない。
改めて思う。
刈りゲーの素材集めって大変なんだなと。
念入り素材は予めたくさん取るべきだね。
歩みを進めてから数分。ようやく陸地が見えてきた。
しかし一歩一歩がとても遠く感じる。
雨もぽつんぽつんと、俄雨。
大丈夫かな。急に大雨になったりしない? 大丈夫?
一時は、泥沼に引きずり込まれるかと思ったぐらい。
こけそうになるわ、溺れそうになるわで散々な目に。仲間の助けがなかったら今頃どうなっていただろうか。
チクショー! こんなクエスト受けるぐらいだったら別のクエストにするべきだった。
まあこれ達成すれば念願の家が手に入る事だし……いいか。
これでもしも某ゲームで出てくるような豆腐ハウスだったら、依頼主をぶっ飛ばしてやろう。
いや待てよそうする場合、爆発するアイツを捕まえてこよう。
いるか分からんけど。
して陸地に上がり奥にある森へと侵入する私達。
「結構広々としていますね。だいぶ泥路も減ってきましたし……先ほどよりはだいぶ楽になりそうですね」
進んだ周囲の足場は、ドロドロとした感じではなく普通の固めの足場に戻っていた。
ようやくほっと一息つく私。
でもこの先また、足場の悪い泥道があるじゃないかと正直心配。
果たして大丈夫か。
いいや。汚れ過ぎたら洗えばいいし気にしないでおこうっと。
☾ ☾ ☾
【人の話はちゃんと聞くべきだろう】
進んでいると数匹のモンスターが。
数はちょうど5匹ぐらい。
私達と同じぐらいの大きさをした……ちょい大きめの図体をしたカエルだった。
ええとこいつらは。
【ベチャガエル 説明:湿地帯に住むカエル型のモンスター。攻撃力はそんなに高くないが、口から出す長い舌には注意が必要】
ほうほう。
対して強くはない模様。
ベチャガエルって。ベチャベチャするカエルでこのネーミングかい。
もっとまともな候補名はなかったのか。
というかこの世界にいるモンスターの名前、誰が決めているんだろう。
ノーマルパーカーで私達を取り囲むベチャガエル達相手に、私達は身構える。
「いいみんな? あのカエルは…………ってミヤリー!?」
私が舌には注意しろよと伝えようとしたのだが。
1人。 またまた先走って指示を聞かず突っ込むアホが1人。 あの団体行動って知ってます?
彼女は勇敢にも……いや無謀にも、1人で周りのベチャガエル達に得意の二本剣で疾走し攻撃をしかけた。
「こんな雑魚相手にやられる私じゃないわ! 狂政さんにもらった力もあるしね!」
ここで分からない人達に向けて私が説明しよう。
彼女がこの前、狂政からHPを300ほどあげてもらった。
そうそうドーピング的なアレ。
最初彼女は、今より強い武器が欲しいとかほざいていたが、私はそれに対して断固拒否した。
泣きじゃくる彼女の説得に何分時間を要したか、思い出したくはないな。
お前は好きな玩具をおねだりする子供か! と思っていたのだが私の意思は固かった。
……私の意向で狂政に、ミヤリーのHPを300ほど上げてもらうよう頼んで直ぐさま上げて貰ったのだ。
理由は簡単。
勝手に死ぬ、HPが低い、迂闊な人だから余計心配。
はいこの3拍子。
だってただでさえHP低いし、どうやって対処してもらえと。
すぐ死んだんじゃ話にならない。
ならばとHPを今より高くしてもらうよう叶えてもらったのが彼女。
……。
……そう。
彼女がもらったのはタダそれだけ。
特別なチート能力付きましたとか、そんな進展は一切ありません。
期待していた方々に向けてここで詫びておく。
そして今、HPのあがったミヤリーが敵相手に立ち向かっていく。手を開いて斬り払う体制を取る。
さて今度こそは期待を裏切らないでくれよいやまじで。
「へへーん。もうHPは低くないしすぐ死ぬ事なんてないわ……さあ忌々しいカエル達! このミヤリー様の餌食になりなさい。……はああああああ!」
助走をつけ、接近するミヤリー。競争でも行っているようなその速さをみて私は少し彼女を見直した。
おぉこれなら今回はいけんじゃね……と。両手に携える漆黒の長剣。図体の大きい蛙向けてその剣を横切るように飛び上がって振り払…………おうとした。
はい、振り払おうとしたんです。
「ぐが!」
5匹のカエルは、口から何やら紫のブレスをミヤリー目がけて吐いてきた。斬り払おうとしたミヤリーの体は膠着したようにその場で止まり静止した。して目を見開いた状態でそのまま後方に倒れ込みそのまま。
これはなんぞや?
一体何が起こったのか見当がつかず困惑する私。今日こそはかっこよく決めてくれるだろうなと期待を寄せていたが。
いつもの棺桶が出現。
はぁ。
再び暗黒空間に閉じ込められたミヤリーは、棺桶の蓋をパンパンと叩きながら。
「なんでよおおおおおおおおお!」
うるせえから叩くんじゃねえ! 悔しいのはわかったから。
蓋で。
声はこもっているにも関わらず、遠くにいる私達にもよく聞こえる大声が反響。
なんでやああああああああ!! はこっちのセリフだっつーの。
そうはならんやろと言わんばかり。というか今度はなんだ。
「……あぁそのベチャガエルの即死ブレスですね」
なぬ。
「聞いたことありますよそれ。 そのモンスター即死攻撃が得意だって」
「それ早くいってよ。お陰で……あぁ苦しいというか死んでいるから……」
以下略。
カエルごときが、即死攻撃を持ち合わせているとかクソ要素ありすぎ。
しくじれば私達全滅じゃんガメオベラ一直線。
その試験体にミヤリーが犠牲となったわけで。
おぉミヤリーこんなところで死んでしまうとは情けない。
ぺぺぺ……。
おっと癖で、レトロゲの復活の魔法を心の中で言ってしまったじゃねえか。
こういう能力を持ったモンスターは、ラスダンのモンスターに限る。
明らかに場違い。
これちゃんとした、正当なモンスターかな。
まさかとは思うけど、この世界に改造厨がいたり……。
いや、ありえないか。
……それを早く言えと、仲間に訴えるミヤリー。
いや、無防備に突っ込むお前が悪いだろうと、染み染み心の中で呆れるこの私。
さてどのように対処するべきか考えようか。
金曜日投稿ができなかったので、土曜日の投稿になりますこんばんは。
カエル型のモンスターの回であり、ちょいと即死攻撃を持った厄介モンスターですが、ご一行は果たして攻略できるのでしょうか。
明日もう少し付け足しとして、この話を再度編集し直すつもりですので把握よろしくです。
とりあえず目標としてクエスト達成するまで書くのを目標としています。まあ長くなりそうでしたら区切って来週に回しますが。
ではみなさん読んでくださりありがとうございました。来週もよろしくです。




