35話 うさぎさんの頼りがいのある頼もしい仲間 (シホさん視点)
【なんとかできるか分かりませんけど頑張って戦います】
ようやく体力補給できました。
とはいうものの愛理さんは気絶してしまいましたが。
後ろでスーさんは愛理さんの手当てをしていますけど大丈夫なんでしょうか彼女。
「……し、シホ大丈夫なの?」
茂みから。
隠れていたミヤリーさんが出てきました。
非力で自分は無力だと悟った上で身を潜めていたのでしょうが、相手はそれほどの強者だったのでしょう。
「えぇ。ミヤリーさん一緒に戦ってくれますか?」
「悪いけど、私は敵と張り合えるほどの強さはないわ。もうちょっとレベルが高ければ対等に戦えるかもしれないけど」
彼女の本来の実力。
非常に興味深い内容ではありますが、今はそういう考えよくありませんよね。
先ほど、倒れ込んでいたモンスターは再び起き上がり、再び体制を立て直します。
「ミヤリーさん。スーさんと交代で愛理さんの傍にいてもらえませんか? 正直彼女の力がないときつそうです」
「了解。でも無理はするなよ」
そうしてミヤリーさんはスーさんと入れ替わりで彼女の方に駆け寄り。
☾ ☾ ☾
【仲間はかけがえのない存在ですね】
「…………なるほどです。丁度ある程度回復はさせました時期にお目覚めになりますよ。……ではお願いしますね」
と一言告げ、私のすぐ隣に立ちます。
「……大丈夫ですかね愛理さん」
「えぇ大丈夫ですよ」
彼女がこの程度で死ぬわけがありません。
いつも私に面白おかしいことばかり言っていますけど、やる時はちゃんとやってくれる心の優しい方です。
荒い口調のお方ですけど、決して悪い人ではないのです。
「さあいきますよスーさん」
「……はい!」
大声を上げ、こちらに向かうモンスターは巨大な拳で攻撃してきます。
私は避けることなくそのまま受け止め。
「くっ傷だらけなのにやりますね」
引力に押され気味になりつつも余裕で笑みを浮かべます。
この状況下。
一見私が劣勢にもみえますが、決して押されているわけではないそういうことを理解してもらいたいです。
私の剣士としての技量は、平均より大幅差が開いており非常に攻撃、防御、素早さ……どの面においても抜け目がありません。
自分でもそんな自信全くありませんが、まわりからそう言われているんですから素直にそれは認めます。
それで。
今は10割中5割くらいの力を出しているわけで、全力ではありません。
どれくらいの塩梅で戦闘にのぞむべきかでとても加減が難しいものです。
するとスーさんが戦う私に。
「……シホさん頑張って下さい」
そう言いながらなにやら魔法を私に。
徐々に体から力がみなぎってきます。どうやら力を底上げする魔法のようですね。
……これならある程度、被害を出さずに戦闘を行えます。
私は、受け止めている剣で敵の腕を剛力で突き飛ばし、交差させる2連撃を仕掛けます。隙が非常に見えやすく剣を振る隙もなん場面もありました。その敵の弱点となる箇所のタイミングで攻撃をし、敵にダメージを与え。
「…………っ」
隣のスーさんは、巨大な火の弾をいくつも連射して魔法を撃ちます。
と思いきやそれだけではありませんでした。さすが天才魔法使いと言ったところでしょうか。
「この大きさをした敵は、これぐらいの強力な魔法で対処しないと大きな傷を負わせることができませんからね」
魔方陣から生成される、2つの魔法。
1つは水、もう一つは火の魔法です。それを結合させ、1つの魔法として完成させます。聞いたことがあります。異なる属性を組み合わせて放つ強力な魔法が存在すると。
習得難易度はそれなりらしく、数年掛けてようやく習得できる魔法のようです。
魔法は初級から上級までの段階がありますが、今彼女が使っている魔法はその上級魔法同士を組み合わせた……混合魔法です。
螺旋状に組み合わさった火水は、四方に散けそのモンスター目がけて攻撃します。轟音が鳴り響き命中するとモンスターは荒れ狂うような悲鳴を上げ、苦しみ藻掻きます。
そしてモンスターの近くに寄って、次の魔法を撃つ準備を行いますが。
「…………」
魔方陣を作り撃とうとした時です。手で払いのけスーさんは向こうにある木の大木へと叩きつけら強打してしまいました。
「いったい……ですね。油断しました」
今度は距離をとって魔法を唱えようとしますが。
「…………な」
木をふりまされ唱えるタイミングを失ってしまいます。
……私の方に詰め寄り背中を合わせ。
「困りましたね……シホさん何か良い案ありませんか?」
あるには何候補かありますけど。
恐る恐る私は答えてみます。
「一応あるにはあります」
私が何か隠していることに気がついた彼女は言います。
「シホさん何か隠している力がありますね? 別に隠さなくてもいいのですよ。……この広い地ならいくら広範囲の技や能力を使っても問題ないはずです」
「な、なるほどお見通しでしたか。……さてならどうしましょう」
得意の高速斬撃を仕掛けるのもいいんですが、とっておきの"アレ"を使うのも……。
いえ。
あれは昔禁止にした、禁断の力です。
それに愛理さん達に、迷惑はかけたくないのでこれは今は使わないでおくことにします。
あれはいざという時。
且つ、本当に私が心の底からどうしても守りたい人のために使う技ですから。
どんな力なのかって? それは見せる機会がありましたら言おうと思います。中々そんなタイミングは作れなさそうですが。
なににせよ、その力は父から窮地に陥る状況以外で使うのはダメと言われているくらいの禁術なのです。
さてならばどうするかですが。
「なら、得意の剣術を仕掛けます。隙を狙って2人で撃ち一気に仕留めましょう」
「確かに。……見てみれば非常に弱り切っていますね。あと1発強力な技か魔法を撃てば倒せるくらいには。……いいでしょう試してみましょうか」
私が反対方向に散ける際に彼女は。
「シホさんこれを。……素早さも高いんでしたらこの力もお使いください」
風の補助魔法。
体中から風の通るような感じがして、体の動きが速くなったと感じました。
「ありがとうございますスーさん」
私は駆けていき。
モンスター目がけて攻撃します。
2連撃攻撃のつもりが4連撃になりました。その斬撃はまるで目で追いきれぬかまいたちのような高速でした。
どうやら単に素早さを上げる補助魔法ではなかったんですね。
かつ、攻撃回数をも増やせる魔法とは。さすがスーさんです。
敵の目前に接触した瞬間。得意の瞬間移動で背後に回り込み、剣を斜め向かえで斬り裂くように一振りします。2つの刃が敵の背中を見事切り裂き阿鼻叫喚の声をあげました。
その隙に剣を下から上に振り敵を突き上げ、スーさんに合図の声を送ります。
スーさんの間隣に立って、双方攻撃の体制をして。
「今です!」
「はい! ……いきますよシホさん」
拍子を合わせ、私の大技とスーさんの強大な風の魔法が炸裂します。
私は両腕に力を、スーさんは強大な魔方陣を作りながらそれぞれの持ち前の技を。
「エクスターミネーション!」
「ウィングロスター!」
2人の同時攻撃によって、その強大な敵をようやく倒すことができました。
☾ ☾ ☾
【たまにはお役に立てましたかね?】
「愛理さん?」
戦い終了後、気絶する愛理さんの元へ。
抱き起こす彼女をみながら咄嗟に声が出ます。
「大丈夫、寝息かいているから大丈夫」
ぽんぽんと彼女の体を叩くミヤリーさん。
その様子はとても気持ちよさそうな眠り具合でした。
愛理さんってこんな顔で寝ているんですね。とても気持ちよさそうでなによりです。
「……まずは報告しにいきませんとね。狂政さんがお待ちかねでしょう」
「ですね。ですがもうちょっと休んでいきませんか? 愛理さんに悪そうですし」
「ふふ。そうね一理あるわねそれ。……数分だけよ」
それから、ほんの一時の休息を多少取った後、オタクシティへと戻るのでした。
読んでくださりありがとうございます。
今回はシホさん視点になります。腹ぺこでよく倒れてしまう彼女ですが、優しく頼りがいのあるお姉さんポジの女性といった感じです。他にも彼女は隠された禁忌の力が眠っており……それはまた違う話で掘り下げるとして。次回ようやく愛理が目を覚ましますが結果は如何に。一体どんな力をもらうのか。
では皆様明日またお会いしましょうではでは。




