34話 うさぎさん達、お使いイベントを頼まれる その3
【強力プレイする際は、よく見てみんなで観察し合うこと】
猛然と迫り来る著大。
巨大な棍棒を振りながら怒濤の叫び声をあげるモンスター。
交戦中。
2人でゴリマッチョ君を対処中だが、未だに敵の穴という穴を掴めないままでいる。
いや、図体でかい敵相手と戦うとかまじで面倒くさい。
拳を弾丸の如く間を開けずに打ち込む。手応えはあるものの、相手も中々しぶとい。……殴って転倒まではいたるものの再度何事もなかったかのようにすぐ立ち上がるのだ。ふりおろされるその極太な武器に私は腹部を打たれ。
「うげぇ」
木をなぎ倒すように体は吹っ飛ぶ。……壁に叩きつけらた私は文句を1つ零しながら。
「ちっめんどくせ相手だな」
顔に付いた汚れを拭い、元いた場所へと駆けていく。
戦地である緑地へと再び赴くと、そこには果敢に目前の敵と対峙するミヤリーの姿があった。
2本の長剣を駆使して攻防面において対処し、襲いかかる敵と戦う。
叩きつけられそうになったら、2本の剣で受け止めはじき返して足で蹴って対抗。攻撃面においては、大きい体の逆手をとるように周りに生えている木を足場にしながら斬撃で応戦する。
ほう。とても巧みな動きだな。……改めて思うけどミヤリーってHPが低くなかったら相当な冒険者になっていたのでは?
スーちゃんの魔法による加護があり、今は自由自在に戦っているがあれが本来の彼女の実力なのだろうか。
瞬時、木に飛び移るミヤリーをゴリマッチョ君は腕で捕まえ行動を縛る。
「あぶ、しまった愛理!」
融通を利かせるように周囲を高速で駆け回り助走をつける。
ミヤリーに気を取られている隙に、気づかれないように間合いを詰めた。
背後から控え、音を殺し拍子を合わせて一蹴。
「おっとこれはいけねえ、サンドバッグなんてごめんだろっつーの!」
スパーーん。
力のこもった拳が、敵の背後を叩き込むと体制を崩した。
ミヤリーを捕らえていた、力が緩むと寸秒の合間に脱し私の隣へと立つ。
安堵した様子で私の方を見て言った。
「ふう、愛理助かったわ。危うく野獣の餌食に」
ご託を遮り敵の情報を聞く。
「どうミヤリーなんかアイツの弱点わかった?」
「ううん、とりあえずある程度対処はできはするけど、力量が違いすぎて向こうに押し出すのが精一杯だわ」
「あれでやせ我慢していたの? そうは見えなかったけど」
互角に張り合っているのかと思いきや、我慢強く戦っていたと言うミヤリー。
体格差が違えども、遠巻きから見ていた私からすればブレも感じなかったが、こいつ無茶しやがって。
うん、まずったなあ。
ひとまず。ミヤリーと顔を見合わせ小声で作戦会議。
「じゃあさ、私とおまえで挟み撃ちでもしない? そうしたら多少は弱らせられるかもよ」
確証はないんですがそれは。
半信半疑に詰問してくるのではないかと、頭で予想していたが。
「おぉ。さすが愛理。……さすが私のベストフレンドよ。そうとなれば」
……いつ私がミヤリーと切れない絆となる関係となったのか、問いたいところ。
だが今さら感あるで、いいかげん友と認めてあげよう。
ためらうことなく、即座に受け入れるとはさすがミヤリー。
低脳な頭もここぞってときに切れる。逆手に取るとはこういうことだろうか。
敵の視覚外。
横暴としながら、周囲に立つ木をなぎ倒し私たちを探しているようだが、少し離れた所にある、茂みの裏にいるだなんてなかなか思うまい。
大声でなにやら叫び声が、うるせぇぞおい。
「んじゃ頼むよ」
「任せなさい! この黒剣魔装究極覇紋が全てを消し去ってあげるわ!」
なんじゃその厨二、あるいは『ぼくが考えた最強武器』みたいなクソださネーミングセンス皆無な固有名詞は。あーもう1回言ってくれ。
「ん、今なんて? まあいい。そんじゃ始めるぞ」
作戦があらましまとまると、二手に分かれ木を外周を駆け回り近づく。
走っている間、いつでも拳を放てるように力を蓄えて。
距離は大体10メートルぐらいだろうか。ゴリマッチョ君がここからだと大粒ぐらいのスケールに見える。
至近距離に近づけば近づくほど、それはとてもそびえ立つような高さで、私の体が彼の影にはみ出すように覆われるくらいの大きさだった。
「あらためて見るとやっぱでけぇよ」
敵の急所はどこかだろう。
やっぱ股間辺りがいいのか。
「タイミング……タイミング」
中距離に近づいた頃合い。
すぐそばの茂みへ隠れ待機。
すると。
木の上にある樹頭がゆさゆさと揺れる。
ゴリマッチョ君はそちらのほうへと近づく。
木からは鋭い刄。
自ら躍り出るように飛び出したのは。
「かかったわね! 食らいなさい」
……そう潜んでいたのはミヤリー。
タイミングを見計らって、挟み撃ちを狙った彼女は今このタイミングで攻撃を仕掛けたのだ。
敵の視覚外を見計らい、力ませた拳を片手に私は跳躍しつつ飛びかかった。
「おらぁ! こういうのを伏兵って言うんだろ!」
交差する2つの物陰。俊敏に駆けていくその2つは、一点の体を攻撃させる。
ごおおおおおおおおおお!
ぺちゃんこになり、押しつぶされるゴリマッチョ君。
おお。なんか小学校でやった図工の事業を思い出すなこれ。
よく油粘土使って、のっぺらしたもの作ったなあ。
……2人の合わさった力が、ゴリマッチョ君の体に傷をいれていく。
どうだと息を切らす私。
「……ざ……ざまぁ」
「……はぁ……はぁどんなものよ」
いくら息切れにはならないとはいえ、長時間の戦闘にでも及ぶと疲労感が出てくるみたいだ。……力の使いすぎはよくないとそんなところだろうか。
「いいかげん仕留めたんじゃない」
私が安心して……前のゴリマッチョ君の方をみると。
ボロボロになりながらもなお、体をピンピンさせる彼の姿が。
「はぁキッツ」
「いけたと思ったのに」
おめえの体力は化け物かよ。いろいろ策を練りまくりはしたが、もう詰みだろこれは。
諦めるのはまだ早いって? そうだ、隣にいるこいつを……もう1人戦ってくれるヤツが傍にいるじゃないか!
だが、期待はすぐさま打ち砕かれる。
「……わ、私もう無理なんだけど。愛理後お願いね」
「お、おま。こんな時に! このチキン野郎ぉぉぉぉぉおぉ!」
お、おいお前。
ズズっと。
引き下がるようにチキるミヤリーは、近くにあった木へと隠れた。
おいずるいぞお前。1人だけにげるっていうのは。
逃げるが勝ちって言葉を誰かが言っていたような気がするが、最後まで戦うのが真の冒険者なのでは?
伊達に昔有名なパーティに入っていた人物とは思えない臆病っぷりだが。……というか最後まで戦え。
取り残された私。さあどう戦う。
棍棒を片手に至近距離に立ちはだかるゴリマッチョ君。
「後のことは任せたみたいな感じになったけどどうしろと」
眉を寄せながらこちらに威圧感を送る。
いやこっち見んなよだから。
何かないかと私は考えを巡らせた。
「これでどうしろと。万策つき……」
……。
……。
……。
ささっ。
すると風によって吹かれた、1枚の葉が私の手の平に落ちてきた。
「? これは」
小さくて、かわいげのある葉。
目を凝らして、私は考えた。……して思いついたのだ。ある方法を。
その場に一旦距離を取り、違う体制をとりだす私。
まだ勝算はゼロではないようだな。
「……? 愛理は一体何をする気なのかしら」
☾ ☾ ☾
【伝家の宝刀は最後の最後のとっておきで取っておこう】
ひょこっと顔を出すミヤリーはさておき。
さて生成の時間といこうか。と言っても一か八かの賭けにはなるが。
画面を開いて、ノーマルパーカーを複製。そして合成のボタンを押す。
「草だけに草というしょうもないダジャレはさておき……やってみるか」
手に持つ葉を振りかざして、合成素材の画面に重ねる。
パソコンでいう、ドラッグ&ドロップの操作をできるんじゃねと試してみたが、はたしてどうだ。
「頼む、いってくれよ!」
渾身の願い。
微かな望みだが、賽は投げられた。よって今はこれに賭けるしか道は残されていない。
数秒。
私の願いが届いたのかそのウインドウが光り出し、合成のボタンが点灯。
戸惑いを見せず押すと、体が光り出し。
「ラビット・パーカーチェンジ」
だから恥ずかしいよ。もっとこうかっこいい口上とかなかったのかな。……でもいいや大人の事情ってやつがありそうだしね。
パーカーの色が次第に変化。
着色を変え……今度は。
緑だ。
自然豊かな緑色に身を包む新たなラビット・パーカー。
【リーフ・ラビットパーカー】
【固】引力関係なしで攻撃できる
【固】強力な葉からなる盾を生成し、
その盾からは巨大な敵相手であ
っても攻撃を塞ぐ長いツタを作ることができる。
(手で意のまま操ることが可能)
【固】風のエネルギーから作り出す、迅速の刃を飛ばす
ことができる。ものに触れた瞬間刃を四方に分裂
させて無限の刃へと変化させることができる
また無数回巡回攻撃にすることも可能。
体中からは、自然の香りと風のそよぐ感じが耳を伝う。
……というか今回、武器がないけど……大丈夫なのかな。
変身しおわると再び、ゴリマッチョ君に対峙してガン付けする。
どれぐらいの力があるか試してみようじゃないか。
震えながらこちらを見下ろす、ゴリマッチョ君はなんだか怯えている様子。
……ちょっと煽ってみるか。
にやりと口を歪ませ私は。
「おうおうさっきの威勢はどこにいったんだよ? あぁん? その図太い武器で殴って見ろよ」
挑発。
人語が通用する相手なのかは、分からないけど仕草で察しろ。
震えながらもゴリマッチョ君は、手に力を込めて渾身の一撃を私目がけて再び振り下ろす。
さて、試運転といきますか。
手を振りかざし、自然の力を念じる。
……目の前に葉の束が1枚の盾を作るように出現。しかしその盾はただの脆い葉を重ねただけの盾ではなく。
葉の1枚1枚が、ツタを作って伸びていく。
ゴリマッチョ君の腕を抑制。
身に任せるがまま、私は手でなぎ払うように操作する。
ツタは私の動きに連動し、なぎ払うようにゴリマッチョ君を壁の方へ。
敵の力量を気にせず、大いなる力で巨体を向こうへと飛ばす。
おぉ、これなら引力に逆らい安易に攻撃をはじき返すことができるわけだ。側の観客ミヤリーはその私の戦う様子を見ながら。
「す、凄いわね。……あの攻撃をあっさりと」
どうやらこの装備は、引力に逆らって攻撃ができるようだ。
共有能力が他にもあり葉の刃を生成して、それを相手にぶつけることができるらしい。
ではこのゴリマッチョ君にはその実験台になってもらうとしよう。
飛び上がり、彼との距離を詰める。
振り払うように指で操作すると光り輝く葉の刃が出現。
「リーフ・ウインド!」
目に止まらぬ風の刃が出現し、ゴリマッチョ君の身に斜めの傷を入れた。
2回目以降の刃に、ゴリマッチョ君は跳ね返すように応戦する。
っておいキャッチボールしているんじゃねえぞ。
ならばと、刃を二の腕に生やそうと念じる。
両腕から光り輝く刃が生える。
接近して、ゴリマッチョ君の足をズサズサと切り込む。
痛みに震え出す彼は棍棒で払おうとするが、私はその刃で棍棒をまっ2つに切断した。
その切れ味は程よい感じで、薪割りで垂直切りしたかのようないい具合だった。
自分のメイン武器を失うゴリマッチョ君。自棄になり巨大な拳で私に襲いかかるが、見え見えな攻撃に避けるのは差ほど難しくはなくむしろとても容易だった。
「どこ狙ってんだよ! ふむ」
嫌気がさして、振り腕をかかと落としで踏みつけると、巨大な地のクレーターを作りながらその場に倒れ込んだ。
背後についでと、傷を切り刻む。
気がついた時には、ゴリマッチョ君の体は無数の傷で覆われていた。
これほど威力があるとは予想外だな。
起き上がるゴリマッチョ君。
叫喚の声を上げ苦しむ様子を見せながら、私と拳で張り合おうと向かってくる。
「へ、これだけじゃおわらないよ」
1、2、3払い、風の刃を増やす。
今度はその刃を分裂させて無数回にも及ぶ攻撃を食らわせてやる。
止めどなくとまらない、刃の嵐は数秒足らずでゴリマッチョ君の体をズタボロにさせる。
その場で這いつくばる彼の後ろに私は立つ。
「ふん、うさぎ舐めんなよ」
もはやこれは決めセリフになりそうな一言。
勝負に決着はついたと私は勝利を確認し、その場を去ろうと。
したその時。
ミヤリーからの一声。
それは明らかに私に危険を促す大声であった。
「愛理後ろ!」
「! なに!?」
【死亡フラグを回避するには、余計な言及を避けるのが一番】
眼前に立ち塞がっていた、ゴリマッチョ君は微かに意識があったらしい。
不覚にも私の後ろにいた彼を見た瞬間、巨大な手で全身を掴まれ体を固定されてしまう。
「くっ体に力がはいらねえ」
どうやらこのパーカー。素のままだと非力だという事がわかった。
指も上手く操作できないし困った困った。
「くそ。……私は焼き肉にしても美味しくねえぞ!」
「……愛理ヤキニクってなに? ……って今はそうじゃなくて呑気なこといっていないで脱出しなさい」
なら観戦しているお前が助けろよと、大声で言おうとしたがそれも無理だった。口も力強く締め付けられ……力が。
(もう……終わりか)
と私は諦めかけた。
勝利が敗北に変わるその瞬間を私は味わう。
ふ。……自ら死亡フラグ立てるなんて、私も油断しすぎたかも知れない。
そんな最期のセリフを考えていると。
「エクス・ターミネーション!」
広大な斬撃。大声によって放たれた斬撃が、ゴリマッチョ君を一瞬にして遠くに飛ばす。
引力から解放され私は宙を舞う。だが痛みが相当だったのか。
「……く。がっちがっちに締め付けやがって…………こん畜生が」
重心を安定させようと、体に指示を送って動かそうとするが、非力となった私にはもう少しの力も残されていなかった。
そんな私を誰かがキャッチした。鳥か何かに捕まえられたのではないかと、いや私を捕らえて調理とかカニバリズムもいいところだ。ぜってえ不味いからそれだけは願いたくもない。
が、清らかな聞き覚えのある声に、その美声を聞いた私は我に返る。この声は。
「大丈夫ですか? 愛理さん」
長髪の揺れる可憐な彼女の髪が、一際輝いて見えた。
そう、私がよく知っている。
いつも腹ぺこで迷惑掛けているけれど、頼りがいのある頼もしい私の仲間。
音を弱く張り上げながらも私は答え。
「…………遅いよ全く」
彼女――シホさんにそう言って。
笑みを浮かべながら彼女は。
「約束通り、戻ってきましたよ」
地に降り立つと、こちらへ駆けてくるスーちゃんの声が。
必死でこちらを心配しながら寄ってくる姿が私の前に写る。朦朧として意識がはっきりとしないが、彼女が体を必死に揺らしてくる感じだけは伝わってきたゆさゆさと。
ごめんねスーちゃん私が油断していたせいであなたに心配をかけてさ。
「……愛理さん! 愛理さん! しっかりしてください……手当てをしますから」
必死に駆け寄るスーちゃんをよそに、私はシホさんの方を見た。声を出すことさえ今は困難っていうのにそれも気にせずに背中を見せる彼女に語りかけた。シホさんは両手に持つ武器を握りしめながら敵と対峙。
私は意識が続いている内に、今出せる精一杯の声を出して彼女に問いかける。
「………………空…………腹は大丈夫? 倒れちゃわ…………ない?」
でも彼女は余裕だった。こちらの声にきょとんと反応させ首だけを私の方に傾ける。
どんな返事が返ってくるのかと期待を寄せていた。またふざけたような答えをしてくるのか、あるいはいつまで寝ているかと少々茶化してくるかの2択が。
すると普段と変わらない表情をしながら、口元を歪ませ艶然と微笑む顔つきでけろりと答えてくれた。
「……私のことは気にせず今はお休みなさって下さい。……大丈夫スーさんと私でなんとかしますから」
徐々に視界が閉じる。ゲームでいう主人公がバトルに負けて目の前が真っ暗になるようなそんな感じ。敗北ってこんな感じなんですかね。と少々悔やみを残しつつ私の意識はだいぶ遠くなっていく。
死んでしまうのかな私。チート云々の前に図に乗り使いこないでいたら、それはもう死亡フラグを立てる悪党と同義語な気がする。今は死ぬかどうかは気にせずにあとの事はシホさん達に任せようかな。
失う寸前。シホさんの一言が聞こえる。ぼそりと呟く声が。
「借りは返しますよ愛理さん」
ったく何こんな時に言っているんだか。でも後のことは任せるとして今はしばらくの休息を。
それを最後に私は気を失うのであった。
ったくしくじったじゃないかこんチクショーめ。
でも後のことは頼んだよシホさん。情けないこんなうさぎさんのお願いだから。
颯爽と奇跡の復活に駆け寄るシホさんです。
どうもです。金曜日に出せなかったので今日1本投稿しました。
愛理は油断しましたが、バトンタッチしたシホさんはどう戦うのか。
次回はシホさん視点で話が進むためご配慮お願いします。
来週も頑張って投稿していくつもりですのでみなさまよろしくです。
過去の話は校正などを踏まえて休日を使ってやるつもりですのでよかったらその辺のよろしくですよ。
おそらく次でゴリマッチョ君戦完結だと思います((汗




