17話 うさぎさんと果敢なるご一行 その1
【ときに思いふけって、今を見るのもいいかもね】
日の射す大草原。
あ、決して笑いの意味を指す方ではないよ。
草花は、風の抵抗を受け勢いよくそよいでいる。
自然豊かな空気がこれがまたおいしい。
あれからこれといって問題事もなく。
平凡な日々を送っていた。というか暇。
小さな討伐クエストを受けつつ、ちょっとした小銭稼ぎも行い実戦を重ね続け体を慣らしていく。
それでもやっぱマジで暇。
やることないと、こんなに退屈に感じるなんて初めてだ。
毎回、ギルドに顔出しても似たようなクエストばかり受けていたので、正直飽きてきた。あくびはでるし骨のある敵も現れない。なんだこの泥作業ゲリラみたいなイベントがあるならそのソースを私に。
ゲームでもあればいいが、さすがにそういう近代物はここにはないので別の案を現在考慮。
オタクシティに行けば、ありそうな品物。しかし、リーベルにはそのような物はございません。色々考えてみたものの、結局名案は浮かばず。
「今日も討伐ですか? この間スライムを2985体倒したじゃないですか」
「あれ、そんなに倒したっけ? ……闇雲に狩っていたから分からなかったよ。だって私達のランクじゃあ高ランクの任務を受ける……ましてや大型モンスターなんて倒すことなんてできるわけないじゃん。……今の私達に残されている手段といえば、こうやってひたすら小銭稼ぎするぐらいだよ」
「た、確かにそうですね。推奨ランクなどたくさんありますし」
シホさんにモンスターでも討伐しに行こうと提案。
因みに、その日に討伐したスライムから成果は得られたかというと結果はなし。1匹1経験値で討伐ついでにドロップアイテムを確認もしたけど、スライムのゼリー(使い道わけわかめ)、やくそう(小回復用のアイテム)で、調べた結果やつからはレアドロップはひとつもないということが判明した。
いや時間返せよ。
そんな話はさておき。
彼女は躊躇いもなくその話にのり、ただいま絶賛モンスター討伐中。
なぜモンスター退治をしているのかというと、それはもちろんレベリング。
RPGでは基本中の基本。能力値が高いとはいえ浮かれてはいけない……。少しの、気の緩みが仇になることも時々あるから一応やっておこうかと。
RTAやTASで速攻クリアする猛者もいるけど、そんなことはせずのんびりとこの世界を攻略していきたいというのが私の現在における方針。
「ラビット・パンチ!」
今、ようやく群がっていたモンスターの群れを私達で一掃。
敵は苦戦を強いられるほどのモンスターではなく、ことごとくと私の強烈なパンチによって倒れていった。
これで約1000体目。もうハイスコア更新かなこれは。
シホさんも、空腹で倒れることはあったものの、その度に私が食料を補給し復活直後の戦いっぷりはというと爽快だった。敵が身動きひとつなく彼女の剣術により決壊、見事な手慣れた剣さばきであった。
数の量がおかしいとか、そういうツッコミはなしで自重してもらいたい。
「ぐあああああああ!」
巨体のモンスターが、私の放った銃弾により全て即死。
改めてみるけど火力がこれえげつない。一撃必殺補正がかかっているのかと、疑いたくなるくらいの高スペックの銃。
もしかしたら、表面上のスペックしか説明には書かれてなくて、実は裏効果のある武器だったり。
よくゲームであるよねそういうの。
特別な計算式が使われており、この技使ったら尋常ではない火力がでるとか……どうなんだろう。
「これで1000体目だね。大丈夫?」
「えぇ大丈夫です。でもちょっと疲れてきたのかも」
シホさんは、膝に手を当てながら息を切らしている。はあはあと吐息をしながら。
生々しい吐息がえr……ゴホンゴホンこれは失礼。
少しどころじゃないように見えるが気のせいか。
剣を地面に突き立て、杖代わりに捕まっているが見るからに相当辛そうだ。
無理なら、遠慮せず言ってくれればいいのに。シホさんって結構我慢強い性格なのかな。
あれ回復アイテム買ったっけな。(ガサゴソとポケットを漁る)
……漁るがひとつも見当たらず。
そういえば、私が全部モンスター倒すこと前提で買わなかった気が。
まずったどうしよう。
買っとけよ数時間前の私。
「それじゃちょっと休憩しようか」
「はい」
モンスター狩りを一旦中断し、敵の湧いてこない安全地帯へ場所を移す。
小さな林内にある、開けた緑地。
静寂とした、物静かな日当たりのいい場所だ。木洩れ日から差し込む僅かな陽光は、自ずと安心感を覚えさせる。
歩いてそんなに遠くないため、最短で安心。
ちょうど見入った場所に辛うじて行き着いたため、そのまま進行方向を変えず突き進んだ。
移動の最中、私は今のステータスを確認する。
……え、歩きスマホみたいにやるな。あぶないって?
いや大丈夫だよ追っ手はいないし私達以外誰もいない。
さて本題に戻ってそれじゃ確認しようか。
画面上に表示されたステータスを確認し、強さを確かめる。
おぉだいぶ上がっているねこれ。
アイリ レベル50
HP 765
魔力 690
攻撃力 977
防御 570
素早さ 990
…………。
インフレって怖くね。
冒険者カードをみると、いつの間にかAランクに昇格しているし。
もう何が何だか。
隣で、ご飯を食べているシホさんが詰め寄り私のカードを見る。
「Aランクにあがったんですか。これなら、今まで行けなかった場所にも多少いけるようになりましたね!」
おっとそれはなんか面白いこと聞いた。
少し気が早いようにも思えるが善は急げ、ということでひとつ彼女にまた提案し。
「シホさんナイス! よし、明日でもなんか行けそうなクエストあったら、それ受けてクエストするついでに寄ってみる?」
「いいですねそれ。 なら帰ったらすぐに明日のご飯をたくさん買っておかないといけませんね」
遠足前のおやつ買いを母親にお願いする小学生みたい。
おやつは300円までとかね。
私の通っていた小中では、思い入れのある学校の恒例イベントだったな。
たけきののどちらにするかを、よく妹と揉めていた気がする。
高校に上がってからは、そういうのできなくなったし非常になつい。
そういえば、私以外の人のステータス見ることってできるのかな。
するとメッセージウインドウが表示される。……おっとびっくった。せめて前触れかなにかしようよDQN禁止!
えぇとなになに。
【可能です】
という短文。
あなたAI明らかに持っているよね……。めっちゃ高性能じゃないですか。
人の心読めるんかーい! 私一言も口に出してないんだけど全てお見通しってわけか。
でも頻繁にしつこく何度も出てくるような感じではないっぽい。
【AI:私、オレオレ詐欺みたいなしつこい人とは違いますからね! 歴とした善良なAIですから(-_-;)】
おっと懐かしの顔文字じゃないか! わかった……良いAIだということは分かったから。だからそんな顔しないでくれよ。
なるほど。
というわけでシホさんには悪いけどちょっと拝見。
ステータスのUIを開いたまま、彼女の方にそれを向ける。
すると、何かを感知し画面が切り替わった。おぉすげぇ能力値覗けるとか有能じゃん!
どんな感じかな?
シホ レベル35
HP 350
魔力 50
攻撃力 259
防御 156
素早さ 135
上々な感じだね。
これが普通の冒険者(戦士)のステータスというのなら、私は果たして一体。
格差が酷すぎてなんか申し訳なさそうな気がするけど、別に気にすることないか。
さらに下には……
カップ……
ちょ待て待て待て待てぇ!
何もそこまで覗きたいとか思っていないわ! だめこれ以上は彼女のプライバシーを侵害することになる。はい閉じて閉廷!
と私の指示通りに、彼女のステータスバーが閉じ元通りになる。
危ない、もう少しで私に変な疑惑を持たれるところだったじゃあないか。
「どうしたんですか? 愛理さんじーと私の目なんか見て」
「あいやなんでもないよ。そういえばシホさん前から気になっていたんだけど」
1つ気になっていたことがある。
それは。
「シホさん、その武器と防具どこで買った物なの? 見た感じリーベルにはない上品な物みたいだけど」
「あぁこれですね」
傍に置いてあった剣と盾を持ち、私に見せてくる。
リーベルの武器屋全部見て回りはしたけれど。
シホさんが持っているような、剣と盾はどこにも見当たらなかった。
重厚感のありそうな、一見大剣と間違えそうな極太な剣。
盾は……。これはラウンドシールドだっけ? ほらあるじゃんあの丸っこい盾。黒か灰色が基調となっており、黄色のラインが全体に駆け巡るように描かれている。
報酬かの経由で入手した可能性も0ではないと思うが。
入手経路どうしたんだろうね気になり。
彼女は、その2つの武器を撫でるようにすすると語り出した。
故郷を懐かしむような表情をしながら。
「これはですね、私が故郷からこのリーベルに旅立つ際に父からもらった武器なんです」
シホさんのオトン何者よ。
ただならぬ強者感。
「父曰く、『辛いことがあってもこれを見ながらたまにお父さん達のことを思い出してくれ』と言われたんです。なのでこれを持っているだけで、両親の存在を身近で感じられるというか」
ええ話じゃないか。
離れていても心は1つだぜ的な情は心躍らされるものがある。
そういうの嫌いじゃないわ。
「これを持っているだけで勇気が湧いてくるんです。……だから今日まで冒険者を私はやってこられたんだと思います」
シホさんの故郷がどんな街? なのか、私には分からないが恵まれたいい家族だと近くで感じられた。
離れていても、途絶えない絆がそこにある。シホさんはそれを大事にしようと、ずっとこの武器一式を付けているんだ。それはとても尊敬でき憧れもする。
「シホさんって何人家族?」
「5人ですね。父母、妹、姉、私を含めて5人です。ですが姉は最強の冒険者になると言って家を飛び出したきり帰ってないです」
結構多いなおい。
私、一応別居で暮らしている妹がいるんだけど、シホさんには姉もいるのかこりゃ負けた。
私は長女で一番上。彼女の家族と違ってその上はいない。羨ましいなもし私に上の姉がいたらなぁ!
ちなみに、私レズでもシスコンでもねえからな?
シホ姉の修行の旅に出たという話が、今自分の中でめっちゃ気になるランキング第1位。
一体なにがあったんだってんだ。
家庭崩壊? それは考えづらいな。
そのようであれば、呑気にシホさんがこうして旅に出られる……ことはまずないと思うし。
飛び出していった姉の行方は如何に。続報が流れてきたらぜひとも聞きたい。
「私なんて4人だよ、私含めてね」
厳密には6人。
祖父母を合わせるとね。
おじいちゃんの家に行くと、いつも私をかわいがるように寄り添いきてくれたんだけど。
居候している妹には、凄い目で睨まれていたけれど。
「愛理さん意外と普通なんですね」
笑みを浮かべながら笑うシホさん。
普通ねぇ。
普通とは一体なんだろう。困惑。
「そうかな、でも1人でいる時間が多かったよ」
ずっと学校行かず、ゲームばかりしていたんだけどね。
親フラが立つこともなければ、面倒ごとに巻き込まれることもない。
そういうのは、自宅警備員とかいうかもだけど気にしたら負けだと思っている。
やりたい放題だぜ……!
といつも自分に言い聞かせていた記憶もある。
「でも1人って正直羨ましいですよ。うちなんていつも帰ったら騒いでいる一家ですから」
毎日戦場なんですねわかります。
そうして一時の時間のあと。
時間も良い頃合いに、動こうとシホさんに声をかけた。
「お腹も膨れたことだし、それそろ行動再開しようか。この先の森になんかとても強いモンスターの声がするんだけど」
パーカーの機能によって遠くの音や声が聞こえる。
向こうの森の方角から低音のなにやらうなり声。
なにまでははっきりとは分からないけど大物の予感。
これは行ってみる価値大ありだね。
「耳いいですね。それでは行きましょうか」
シホさんが立ち上がろうとしたその時だった。
☾ ☾ ☾
【しつこいやつは嫌われるけど、しつこくて憎めないやつは話が別】
猛スピードで、こちらの方に土煙を上げ向かってくるモンスターが1匹。豪快な物音を起こしながらする疾走は騒音そのものだった。……う、うるせぇ。
ほどなくして、やつは通りすぎていく……のではなくこちらの方へと接近してくる。
なぜに。
数分も経たない内に私達の目の前で立ち止まった。
え、急になんなの?
……どうやら私達に何か用があるみたいだ。
来るなら来い。煮るなり焼くなり!
って定番のセリフを吐こうとしたがやめた。主人公が言うべきセリフではない気がするし。
牛ような獣人の姿をしている獣。鼻から息を吐きながら呼吸を整えるそのモンスター。
…………なんかどこかで見たような気が。
「久しぶりだモぉな。 探したモぉよ」
「……てめぇ誰どす?」
思わずふざけた言葉が口からでた。
……いやガチで覚えてねえぞ誰だてめぇ。
「「ふざけるなモぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼ あれだけモぉをモぉを遠くまで飛ばしておいてなんだモぉその態度は! 忘れたとは言わせないモぉよ!」」
相手はカンカンに怒っていた。なにやら私に恨みがある様子。
私前になんか悪いことしたっけ?
隣からシホさんが、私の服を引っ張ってきて小声で耳打ちしてきた。
「ほら……愛理さんあのモンスター。前に愛理さんが遠くまで飛ばした、猛獣先輩なんじゃないですか?」
「あ、そうか」
思い出した猛獣先輩だ。
この独特な語尾と威勢がなによりもの特徴だ。
遠くまで飛ばしたあのとき戦った猛獣先輩か。相当強めのパンチで飛ばしたのによく私達を見つけられたなぁ。というかどうやって場所突き止めたんだよこいつ⁉
……危うく忘れかけていたわ。 なんかすまん。
「あぁあいつか。ありがとシホさん思い出したよ、忘れかけてた」
挑発するように少し煽ってみる。
こちらの方を思い出したこと理解したその猛獣先輩は。
「やっと思い出したモぉか? あの日からモぉはお前を倒すために故郷に帰らず、修行の旅に出たモぉ。……それで旅をしている中でモぉはお前を倒すとっておきを取得したモ。…………さああのときのうさ耳女! ここでモぉと再戦するモぉよ!」
待ってくれる優しい心の持ち主の獣人。
本当なら、無理矢理襲いたい気持ちがあったかもしれないけど、ここは気を配ってくれたのだろうか。
なんと優しいのだろう。
私はてっきり某ゲームに出てくるボスみたいに――――――。
「隙あり!」
と奇襲を仕掛けてくるのかと思ったが意外と武人肌?
正々堂々戦う主義なモンスターかよお前。
どうも、ゲス行為する気はこれひとつもする気はないようだ。
やってきてもまたパンチでぶん殴るけど。
「愛理さんやめた方がいいですよ。どうしますか」
「大丈夫だよ。こんなやつは差っていうものをこいつに教えてあげないと」
路地裏の、不良と喧嘩するようなノリで、私はその勝負を受けることにした。
この際だから言っておくけど、私はこう見えても暴力を振る舞ったことなんて今まで一度もないからね本当だよ。
信じてください。なんでもしますから。
「ちょっと愛理さん!」
そして私は彼のゼロ距離に立ち。
というか懲りないね。相当あの日のことを根に持っているみたいだけど。
そういえば、この猛獣先輩の親父さん『こいつが帰ってきたら叱っておく』とか言っていたけど、こいつはそのまま修行しに帰っていないとほざいてたな。
えすると。
この人の親父さんこいつにまだ叱ることができてないじゃあないか。
あのさ、せめて置き手紙ぐらいしようぜ。心配の“し”の字も気にしないのこいつはさぁ。
……なんか親父さんかわいそう。
無駄な勝負はやめて帰ってやれよ。
呆れてくる感情がこみ上げると嘆息が無意識にひとつ漏れた。
「はぁ……馬鹿のひとつ覚えか(蚊の鳴くような声で)」
「ん? 今何か言ったモぉ? ……覚悟はできたモぉ?」
「ただの空耳だよ。いいよ~はよかかって来いよ」
私は手で探り寄せながら、かかってくるように挑発する。
あとなんか目力入れながらなんか力んでいるけど。
一体何が始まるんだ。
「あ、あれれれれふぁ? な、なにかすごく地が揺れていますけど!」
風が激しく揺れ大地が震える。
そして目の前にいる猛獣先輩は、中腰になりながら腕を引いて力溜めし始めた。
次第に彼の体から謎のオーラが溢れ、彼の地毛が……薄茶から金色に変化。
……どこかで見たことあるぞこれ。
某格闘マンガみたいじゃあないか完全に。
変身がおわると、悠々と余裕そうな表情でにやりと笑い。
はあ。強くなると図に乗るタイプのやつだよこれ。
「さあさっさとやろうぜ!」
おまけに口調が変わっているし。
猛獣先輩改め、スーパー猛獣先輩は勢いよく空高くまで飛び私との距離を取った。
なんてジャンプ力なんだと多少驚いた。ほんと多少ね。
そして両腕に力を込め、私目がけてもう突進。
バトル漫画の撮影会かなこれ。
「うさ耳女! 俺の一撃受けてみろたああああああ!」
精が入っていますな彼。
突進してくる彼に対して私は。
「へ?」
……一瞬の隙をついて彼の背後に瞬間移動。
どうやら、素早さが上がりすぎてしまったせいで、自然と習得してしまったらしい。
先ほど瞬間移動できたらいいなと念じたところ、AIから声が聞こえ素早さが一定値を超えたので使えますのメッセージが。
ならこれはちょうどいい。試運転になるだろうと私はにやりと笑った。
思い切って、彼の期待に応えるようにこの技を使ったまでだ。
そして驚いて、こちらの方を目を丸くしながら振り向く猛獣先輩。
戦意消失か言葉を失い、小声で顔から多量の汗を流しながら呟き。
「……あのすみません。今日のところは……出直して」
と命乞いをしようと、今更言うが私は思いとどまることは全くせず。
悪い、私の辞書に手加減って言葉は存在しないんだ。まあ時と場合にもよるけどさ。
それはそれとして。
「だが断る。また出直してこい!」
渾身のこもった目一杯の力を込め、必殺のラビットパンチ(必殺技と決めたわけではない)をぶつけた。
「やめ、やめ、ゆるしてくださああああああい!」
「そんな甘っチョロな力でこの私に勝てると思っているのか! ラビットパンチ」
「ぎゃああああああああ!!」
ぽつんと、軽くその拳が触れた瞬間。
猛獣先輩はまた遙か遠くへ飛んで行き。飛んでいく様は、まるでロケットのようだった。
軽く、手加減したつもりがこのような馬鹿火力とは、我ながら恐ろしい力だなやっぱり。
事が済んだ私に手を振りながら駆け寄ってくるシホさん。
「大丈夫ですか、愛理さん? というかあの猛獣先輩、また愛理さんの攻撃によってどこか遠くへと飛んで行きましたけど」
「うん、またどこか行っちゃったけどきっと大丈夫だよ」
だって体は頑丈らしいからね、その猛獣先輩は。
少々、力を入れた程度の死なない度合いに留めたが、大丈夫かあいつ。
町の人に食料として回収されステーキにされてなければいいけど。
「ならよかったです。では今度こそいきましょうか」
「うん、れっつごー」
そして今日1日モンスター狩りに専念し、私達は着々力を付けるのだった。
というか、あの猛獣先輩。またやってきたりは……。
……。
……。
……。
するかもな。
まあその度に、蹴散らしてやればいいか。
そうすればそのうち諦めて故郷の森に帰ってくれるかもしれないしね。
☾ ☾ ☾
一方。その頃飛ばされた猛獣先輩は。
1人遠く飛ばされた彼は、断崖絶壁に生える木の枝に釣らされながら己の未熟さを悔いていた。
「ちくしょおおおおおおおおおお! なぜなんだああああああ!」
1人夜暗の空に佇む月を見ながら、阿鼻叫喚の声を上げる。
すると数匹のフクロウが彼を嘲笑うように鳴く。
「お、おい語り手! 余計なことぺちゃくくちゃしゃべんじゃねええ!」※三視点の語り手側に向かって話しかけています。
あの私一応語り手なんですが、語り手側がこの世界に干渉することは……。
「うるせえよ! あいつのうさ耳女……名前も聞かず飛ばされちまったけど、また再戦してやるぞ」
して、無謀ながらも彼は彼女のリベンジに再び萌えるのだった。
「わざと誤字るな! ところであいつの名前この際だから教えてくれないか?」
わかりましたよ。
仕方ないですね、本当はネタバレ的によろしくないと思いますが。
「んなのどうでもいいだろ! あるだろ自然と名前を覚えた的な。だからはよ、言えよ語り手。そうしたら後は無視してやる」
仲宮 愛理ですよ。 いいですかこれで?
「愛理っていうのか待っていろよ愛理! 今度はけちょんけちょんに蹴散らしてやるからな」
無視するということはいいということなんですかね。
……それでは気を改めまして再び語らせてもらいます。
こうして、無謀ながらもリベンジに燃える猛獣先輩は、再び彼女を倒す為修行に打ち込むのであった。
「無謀言うな」
すみません。
【猛獣先輩は『ドMなバトルファイター』の称号を習得しました!】
「「さりげなく変な称号つけるんじゃねええええええ!!」」
☾ ☾ ☾
【手助けは大切、でも無理に受ける必要はないかな】
翌日。
行ける場所が増えたので、クエストついでに予定通りその町へと寄ることにした。
聞けば、水の都がある美しい街なんだとか。
その近くまで歩みを進め。
山のふもとを抜けると、その水の都が顔を見せてきた。
清い水の流れる音が、耳を伝って聞こえてくる。
なんだかこの音を聞いていると、無性に喉が渇いてくるな。
「あれが水の都と名高い美しい街マリン・タウンらしいです。もう少しです頑張りましょう」
なんだろう、私の感じ的なにやら不吉な。
嫌な予感がするんだけれど、この胸騒ぎは一体これは何なのだろうか。
決して、このラビット・パーカーにそんな能力が備わっている訳ではなく、単なる私の“勘”である。
でもときに思う。
良い予想は外れて悪い予想は的中する。
これは一体どんな前触れか。まあ良いことばかり起こるものじゃないと。
神からのありがたい言葉なのかもしれないけど。
……そんな変な事を心の中で考え事していると。
またもや。
「ちょっとそこの君!」
急に、全身鎧に高級そうな剣と盾を持った冒険者が現れた。
「……どうされたんですか? すごく息切らしていますけど大丈夫ですか」
疲れ果てながらも、やせ我慢気味に強がる彼は答える。
「大丈夫さ、……この程度! 私は勇者をやっている冒険者。あることからこの世界を脅かす魔王を討伐する為仲間を集めながら旅をしているのだがちょっと話いいかな」
ほら、やっぱりこういう面倒事に巻き込まれるんじゃん。
あーあめんどくせえ。
読んでくださりありがとうございます。
一週間今週も始まりましたね。
世間では先週からGWが始まり、長い休暇の期間に入っているらしいですが皆様どうお過ごしでしょうか。
ですが中には中にはGWも頑張る社会人の皆様や部活動で頑張る学生の方々もおられると思いますのでその方々にお疲れ様の一言を送りたいと思います。「GW中に関わらずお疲れ様です」
そんな日々の忙しい事をこの小説を読みながら発散させて頂ければいいなと思っています。
完全に浄化できるかは分かりませんが、気休め程度に読んでくださればありがたく存じます。
今週はGWということもあり、頑張って2話分毎日書いていこうかなと考えてもいますので、よろしければ楽しみに待ってくださると嬉しいです。
それでは皆様次にまたお会いしましょうではでは。




