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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第2章 うさぎさんと近未来的な都市
20/275

16話 うさぎさん達、帰るまでが遠足ですよ

2章の最後になります。

まだまだ愛理の冒険は続きますが今回は果たして。

それではお楽しみ下さい。

【ゲーム内に潜むバグって問題見つけるのが非常に大変だなと思う】


 クソみたいな、ギミックを搭載した罠の数々をくぐり抜け、ようやくダンジョンの頂上へとやってきた。

 ここまでいくつもの、修羅場を潜り抜けてきたか数えきれたものではない、どれほど苦労したか。

 狂政の仕掛けた罠は、どれも油断ならぬものばかりだった。


 時には、巨大な岩が転がってきたりまたある場所では、爆弾を持ったモンスターが湧いてきたり。

 さらに空腹で倒れ込む美人女性戦士。

 ……ってこれシホさんだから罠関係ないじゃん。

 さてさて自分で言うノリツッコミは置いといて、前回の軽いあらすじをごほん。


 開けごまの一言で扉が開き、謎の部屋的な場所へと潜入。

 なんでそんな合い言葉やねんと、色々と言いたいことがあるがそこは大目に見て先へと進む。


 ここまでおKかな。大丈夫?

 え、それはもう分かっているから早く話進めろって?

 そんな急かさなくても大丈夫。文を読むのに制限時間の概念はないから。


 誰に向かって話しているのかはさておき。


「なんか、色んな本置かれていますね」


 部屋の先には、機械がぽつんと1つ置かれていた。

 他には周囲を囲むように置かれた宝箱が置かれている。

 何だろこれ。

 どうぞ取ってくださいと、言わんばかりの配置っぷり。


 その宝箱は後で……。

 って気になる。ちょっと試しに1つ覗いてみよ。

 私はひっそり、端の方に置かれた宝箱を慎重にゆっくりと開けた。


「さて、何が入って…………ちょこれって」


 宝箱にはなんと。

 金目の物が入っていた。


 ……のではなく。


【愛理はとある薄い本を手に入れた!】


 なんであるんだよ。しかもこの本私も知っている。

 ちょうどこの間やっていた、即売会に行った時に見かけたからさ愛理さんよーく覚えているぞ。

 熱烈なファンというわけではないけれど、画力が魅力的でついつい手を付け出したくなる一品でもあった。

 あの時はサークルの方が私を白い目でみてたような気がする。「なんか目くらなやつがいるワロスwww」みたいな視線を送っていた記憶が。そんな与太話はどうでもいいとして。


「なあ狂政、これ何かな」


 声量を落として、耳越しで通話する狂政に向かって怒気を含んだ声で語りかけた。

 質問に対して彼は無言。おいなんか喋れ。

 まあ分かるよ。これは鉄板の"男の子ってこういうの好きなんでしょ?"だろうから。

 親フラなんて立てば、その場で正座させられるオチにだってなるわけだし。きっと今彼の頭上には小サイズの旗があることだろう。


 それは。

 男ならにやっとした顔で見られる“アレ”だった。

 人によっては、不快になるかもしれない物。でも私は、こういうの平気だから何とも思わないけど。

 随分前、妹が違法合法サイトにて、その無断でうpされた大量のPDFファイルをダウンロードしているところお姉ちゃん見ていたんだぞ……ログは全部落としたあとに全部消したみたいだけど(※よい子はこんなクソ妹みたいなマネしないでね)

 中身は美少女系だったらしいけど、金出して買おうぞ妹よ。


 少し話が脱線したが。

 ただいま絶賛周りを一瞥しているシホさんには、絶対これ見られたくないんだが。


 ……いや見られるわけにはいかない。

 どうする仲宮愛理?

 正直に白状した方がここは身のためか。


 わからぬ。

 頭の中でまた候補を巡らせてみる。


▶正直に白状して弁解する

これ実は売ったら高値で売れるんだぜ? と独善的なことを言う

解読不可能な古文書だよ


 だめだ、どれもよくない案しか思い浮かばない。


「あの愛理さん、どうしたんですか? なんでそんな宝箱を隠すように前に立っているんでしょうか」

「あ、あいやぁ……これはそのぉ」


 時間は待ってくれない。

 シホさん、勘のいいあなたは嫌いだよ。

 刑事ドラマのラストシーンとかでよくありそうな、海の上にある断崖絶壁に立たされているような気分。

 余計な一言で私はちぬ。狂政は、私にしか聞こえない声で問いに答えてくる。


 『すまん、こういうのみんな好きだと思ってな、つい出来心で』


 出来心ねぇ。

 因みになんだが私は設定的にまだ女子高校生なんだぞ!

 "それ"を手に持っている時点でアウトだろこれは。


『本当は男性冒険者が、このダンジョンをクリアしたことを想定しこのような報酬にしたのだが私の不覚だったなこれは』


 もっとまともなものあっただろ。

 強い剣とか、あるいは消費アイテムではない最強の壊れ魔導具やら。

 最後のはないけど、こんなファンタジー感ぶち壊しな物よりはマシだろ。使用したら強力なバフが乗っかるというなら考え方を90度変えてもいいけれど。


 だがそれはそうと。


 このままだと、親フラならぬ、シホフラというとばっちりを受けてしまう。


 そんなことになれば、私の変な印象を彼女に与えしまい好感度も型落ちだ!

 中に収納されていたのはR18の。

 二次元キャラの上半身が、裸で描かれた本が大量に入っていた。

 なんかの即売会かこれ、と勘違いされそうな夥しくある本の数。


 ……。

 何でラストダンジョンに限って場違いなむふふ本が入っているんだよ!

 やむを得まい。こうなったら。


『『ん? 愛理君? 何のつもりなのだ⁉ やメロン! 私の命より大事な本に何をする⁉ その本は即売の激闘の末手に入れた戦利品なんだぞ』』


 大声を飛ばす狂政の声を気にせず、私は躊躇いもなくその宝箱に手を振りかざした。

 私は頭で炎を思い浮かべ、念じて手のひらから燃えたぎる火を生成した。

 その火を宝箱の中へと放り込み、中にあったむふふ本を全て燃やす。

 これで証拠隠滅だね。と愛理さんの大勝利と思いふける間もなく。


『『ぎゃあああああああああああああああああああああああッ!』』


 とち狂ったかのように叫喚をあげる狂政。

 耳に響くからもうちょっとボリューム下げろ。

 でもこの危機を回避するためには、こうするしかないのだよ狂政。

 そんな泣き叫ぶ狂政を無視してことを進める。


「あ、なんでもないよ。中みたんだけど空だったんだよ。……お宝欲しかったんだけどな」


 しらを切る。

 誤魔化す素振りをし、よそ見をして口笛。

 シホさんにその宝箱の中身をみせる。

 中は綺麗さっぱりなくなっており、本の1冊もなかった。

 あるわけがない、この私が自ら全て燃やし尽くしたのだから。


「……本当ですね。残念です」


 泣き止んだ狂政は言いづらそうにも会話に再び参加した。

 なんという鋼の精神。やっぱただ者じゃないなこの総理は。


『…………そこの…………機械に触れてみるがいい…………』


 さっきの威勢はどこにいったのやら。

 涙声になりながらも彼は説明をしてくれる。


〖ふっかつのパスワードを入力して下さい〗


 のウインドウの下に。

 細長い長方形と五十音順に並べられた画面が。

 恐らく某RPG初代のセーブシステムを模した物だろうが。

 よし試しに打ってみよう。


【きょうせいはばか】

〖じゅもんがちがいます〗

【ああああああああああああ】


 適当に打ってみる。

 キーボードの入力なら慣れているぜ。 タイピングサイトで、一時期1位になったことのある愛理さんを舐めるなよ。(後日すぐ抜かれたが)


〖じゅもんがちがいます〗

『愛理君、私を馬鹿にするのやめてくれないか。……というか私が教えないと分からんだろ。……というか遊ぶな!』


 お遊びはこれくらいにしておこう。


「愛理さんこれ、なんですか?」

「ええとね、暗号みたいなものだよ。ほら謎を解いたら扉が開くじゃない? あれと一緒」


 私の世界で経験したRPGシステムが、この世界と同等かは分からないけど。


「なるほどです。前に1度、冒険者の方と同行していた時謎を解いて古の地図を取ってくるクエストをやったことがあるんですけど、あれと一緒なんですね感じは似ています」


 あれ通じた? エアプ覚悟で言ってみたけど通ちゃうんだこれ! 違う返答が返ってくるかと思っていたけど、これはこれでよしはい閉廷。

 どうやらこの世界でも私の思うRPGシステムとだいたい似ていたようなので、すんなり彼女は中身を理解してくれたみたいだった。

 というか異世界(ここ)の謎解きめっちゃ気になる。今度あったら受けようかな。

 財宝を掘り出して一攫千金できたりして……。いやこれは考え過ぎでしょ妄想おつ私!


『……愛理君言うぞ。いいか』

「おふのこ」


 即答で答え、合い言葉を教えてもらう。

 大丈夫、私記憶力だけはいい方。なのでメモとかは不要。

 あ、でも妹にはちょっと負けてしまうかも……あいつ今どうしているんだろう。

 呪文っていうぐらいだから、真面なものであってくれよと心の中で思う。下ネタを使った文などは気が引けるので打ちたくない。

 許容は……そうだな伏せ字(●とか)を使った物ならまだ行けるぞ私は。


『"レイコちゃんはわたしのかわいいはなよめ"と入力するがいい』


 がたん。

 ずっこける。なんちゅうパスにしているんだ、この人は。出たよオタク特有の俺の嫁宣言するパターン。

 私も人のこと言えないからこういうのもあれだけど。

 今一度立ち上がり仕切り直し。言われた通りそのパスを入力。


【レイコちゃんはわたしのかわいいはなよめ】

〖承認しました〗


 マジでこれなんだね。なんか打って恥ずかしく感じるのは気のせい?

 私の知っているゲームでも、こんなふざけた呪文なんて見たことないけど。

 一部その呪文には、未来予知文が書かれているのではないかと思われる文もあって、それが都市伝説になり、ネット上にその情報が出回って考察動画を出す動画主もたくさんいたけど。


『よし、成功だな、……その画面に表示されている【ダンジョンチェック】の項目を押してくれそれで……問題が分かるはずだ』


 画面上に表示された選択肢の中から、それを選び選択する。

 すると、画面上に【確認中】という画面が表示されしばらくそのまま待つ。

 数分後、ようやく問題点となる部屋を特定し直ちにその場所へと向かった。


「あの場所にそんな所が」

「行きましょうか」


 正直変な罠には散々な目にあったから、もうあんな修羅場進みたくないんだけどな。

 と私がそんなことを考えていると、狂政から朗報を耳にする。


『おっと愛理君、下りもあんな難所を通るのは困難だろ? 私が停止プログラムのスクリプトをこのダンジョンのソースコードに書き込んでおこう』

「それ早く言えよ。……というかお前プログラミングできるのか」

『まあな。暇な時、創作する時間があったんだが自作のギャルゲー開発する為に色んな言語学習したな。だが、完成する前に私は飛び降りてしまいこの世を立ってしまったから、結局未完成に終わってしまったのが心残りだ』


 ちょおま。

 ガチ勢がいるやんここに。


「でもなんで早く言わなかったの? 最初っから停止しとけばこんなに苦労することはなかったのに」


 あんな恐怖のアトラクションをやるのは正直勘弁。

 鬼畜を超えた難所が多く。もうお腹いっぱいですわ。

 実は最初からこうできましたとか、そういう自演不必要な気がする。ていうかしなくていい、こっちは報酬があってこの一件を解決しにきたんだから。

……それがそもそも罠だということは言わないお約束。


『ほら、とりあえず他の人に1回やらせてみたくなるではないか』

「ああね」


 分からなくもない。

 誰かにやってみてもらって「うわこれすげー!」とか言われたいんでしょめっちゃ分かりみ深い。


「それにこれは"大人の事情"っていうものも関与しているわけで」


 メタ発言乙。

 でも言いたいことは大体分かったから良しとしよう。

 というかおい、元大統領さんよ。少しは国のため、政治のことにその知恵を世間に活かすべきでじゃなかったのか?

 言っても、ろくな答えは返ってこなさそうだからあえて言わないけど、……このダンジョンは狂政の思念が具現化してできた、悪魔のようなダンジョンだね。

 だめだコイツやっぱなんとかしないと。


☾ ☾ ☾


【馬鹿総理やりすぎな件で私困るんだが】


 中層部に戻り、その問題部分があろう部屋へと向かった。

 狂政が、罠を停止するスクリプトを実行したお陰でスムーズに行ける。

 こうできるなら早く彼に言うべきだったと今さら思う。

 過ぎ去った時間は戻りはしないのだ。遅かれ早かれだがもう遅い。


「で、この部屋なわけ?」


 先ほどのような機械が置かれており。

 他は何もない。

 むふふな本が詰まった宝箱も。いやない方がいいよ。

 というかその宝箱撤去しろ。


『ふむ、果たして一体何が原因か』


 機械が記していたのは、この部屋に何か異常があるということだった。

 他何ひとつない部屋だが。

 果たして一体何が問題だというのだろうか。


「ありませんね、何も。本当にここが原因の箇所なのでしょうか?」


 周囲を見渡す彼女もどこが問題なのか分からない様子。

 いや何処だよ! いや何処だよ! いや何処だよ!

 大切なことなので3回言いました。

 本当にどこに問題が? 巨大モンスターでもなんでも来やがれ。

 この私が退治してやるんだから。

 私が腕組みをしながら考え事していると、シホさんが下にあったとある物に目をつけた。


「愛理さんこれってなんですか?」


 彼女が指さしたのは、機械の主電源となっているコードだった。


「あぁそれ? 機械の起動部分となる装置だよそれを……つな…………げ?」


 説明しながら、向こうの端に何かがあった。壁に。

 それを見て、その問題となる点全てを理解した。

 あぁこれが原因だったのかと。コードの部分を持ち伝っていき、壁際の方へと近づく。

 よく見ると、プラグ部分が外れている。

 思った通りだな。


「どうしたんですか? このよく分からない細長い穴に何かあるんですか?」

「多分これが原因だと思うよ。……これをこうして……」


 私はプラグ部分をその差し込み口にさす。

 時間を置くと、後ろに置いてある機械が起動し騒音が鳴り出す。


「愛理さん一体どこに……そっちは危険な谷がありますよ」


 来た道を戻ろうと踵を返す私。

 さすれば、そこは先ほど苦戦した谷間の道。

 だがそれは本来、上層部にあるべき仕掛けだと狂政は言っていた。

 部屋を出たその先は。

 凶器のある谷の道……ではなく。


「へ? どうなっているんですか」


 何ひとつない、ごく普通の道に変わっていた。


『ま、まさか』

「……これで片付いたね」


 そう問題はすごく簡単なシンプルな理由だった。

 何故、各フロアのしかけがごちゃごちゃになっていたのか。

 それは誰にでも分かることだったのだ。

 プログラムの知識もいらなければ、機械に関する知識も全く必要ない。


 それは。

 "単にプラグが抜けていた"

 だけだったからだ。なんやこのオチは。

 そうして問題を解決した私達は、道中何ごともなく。狂政の元へと帰り報酬を貰いに帰るのであった。



☾ ☾ ☾



【人はみな、誰だって失敗する 馬鹿総理もそれは一緒】


「すまん!」


 勢いよく、その場に座り込み土下座をする元大統領様。

 みなさん、見てください。

 これがかつて税金を2次元グッズに費やし、首相の座を強制的に下ろされた人の現在です。

 悪かったことは反省してくれているんだろうけど、そんなに申し訳なく思わなくてもいいんだけど。

 シホさんが小声で私の耳に向かって問いかけてくる。

 なんだろう。


「愛理さん、あれなんですか。……あの座りながら謝る格好見たことないんですが」


 これまた知らない感じか。

 シホさんは、日本の文化はおろか私の世界すら守備範囲外。

 故にこのように座り、謝るやり方を見ることなんて初めてなのだろう。

 私は快く土下座の事を略言ながらも、彼女に説明してあげた。


「あれはね、土下座っていうんだよ」

「ドゲザ? ……不思議な座り方ですね」

「私の故郷に伝わる古の技だよ」


 ちょっと違うような気がするけど。


「なるほど、これはまたひとつ勉強になりました。ありがとうございます」


 感謝されているのかなこれ。

 でも興味津々と聞いてくれているから大丈夫か。

 さて一方の元大統領さんは。


「こんな些細なミスに気づかなかった自分が情けないすまぬ」


 トラップに色々と手こずらされたけど、個人的にはそれなりに楽しめたけどね。

 最初は、帰ったらぶん殴ろうとも考えていたけどその気力も消え伏せた。

……こいつは確かに、馬鹿だけど決して悪いヤツじゃない。


 根はいい善人で、困っていたら私達を助けてくれる頼れる人だ。

 だから憎みたくても憎めない私としてはそんな。

 1人の友人としてみてもいいと思っている。一応頼れる大人の友達という名目で、これを機に交流を深めても悪い気はしない。

 そっと彼の方に近づいてしゃがんで手を差し伸ばす。


「顔あげなよ。怒ったりしないから」

「愛理君……?」

「失敗は誰にでもあるでしょ? それにお前にその顔は似合わないよ」


 涙を拭き私の手を握ると、彼は立ち上がりいつもの口ぶりで対応してくれた。


「すまなかったな! 君のその一言で元気がでたぞ!」

「切り替えはっやっっ! ……でも馬鹿が治ってよかったよ。元大統領さん」

「だから馬鹿はやめろって言っているだろう。……まあ君には色々やって貰ったし、これから何か困ったことがあったら私を頼ってもいいんだぞ」


 そんなの考え込む必要もなかった。

 こいつは、これから私達にとって必要不可欠な存在になるだろうと確信した。

 持ちつ持たれつって言うしね。それに私も彼の大切なむふふ本を、燃やしてしまったと悪いと反省している。

 私達を強化してもらったのにも関わらず。彼にこんな惨めなことをしたままだと、私が悪人扱いされるかもしれないし。悪うさぎなんて言われたら不名誉だしね。


「おK! じゃあこれからどーんと頼るからな元大統領」


 ぐっと握手して手を取り合う。


「おう勿論だ。いつでもこい」

「なんかいい感じだったので、口を挟めませんでしたが感激です」

「シホ君、君もだ今日から君も私の友だ! だからなんか武器が欲しかったら私に頼むがいい」


 シホさんに近づく狂政は彼女の肩に手を置き、「がはは!」と笑った。


「あ、ありがとうございます。狂政さんこれから色々とお願いしますね」


 少し戸惑い気味な彼女だが、なんか嬉しそうな様子。

 そして私は。


「ところで……狂政」


 彼の背中の方に立って凄まじいオーラを放つ。


「なんだね」


 こちらの方を振り返って、目と目を合わせる。

 私の方が背低いから正確には「合わせた」とは言わないかもだけど。


「これはよ」


 私は手でbの形を作り、「お金ちょーだい」のジェスチャーを送る。

 金だ、金受け取らずにはいられない!


「いいぞぉ! 愛理君さあ受け取るがいい我が神の恵みを」


 潔くこれは大袋に詰まった袋を私に手渡してくれた。

 ジャリジャリ。

 ごっそりたくさん入っているやんけ。

 袋の尋常ではない膨らみようといい、重量感も偽りもない正規の報酬金だな。

 どことなく不安そうに心配するシホさんは。


「あの……愛理さんよだれめっちゃ垂れてますよ」


 それから3人で少し、彼が作ったゲームを沢山やらせてもらい。

 切りのいい時間になったところでお暇した。

 屋敷を後にする際、彼は満足そうな顔で手を振ってくれた。


☾ ☾ ☾


 街に帰る途中。

 辺りはすっかり真っ暗で。

 夜暗の空には綺麗な満月が、辺りを照らしながら顔を出していた。

 空には星々が散りばめられ、綺麗な夜の空を彩る。

 シホさんが、また空腹でぶっ倒れそうだったので途中、焚き火を作って食事を摂っていた。


「また行きましょうね。いい方でしたね狂政さん」

「うん、悪いヤツじゃないし頼りがいありそうだし、なんかあったら遠慮なく寄ろう」


 過信し過ぎかもしれないが大丈夫なはず。


「明日はどこいきましょうか?」

「無理してない? 大丈夫?」


 夜風が私達の身を掠める。

 涼しい風がこんなにも心地よく感じるのはいつ以来だろうか。長らく部屋に引きこもっていたから忘れていた気がする。


「大丈夫です、それに」


 彼女はまた笑う。

 いつも迷惑ばかり掛けるけど、私にとって信頼できる最高のパートナーだから。

 それにシホさん1人じゃ、やはり心配だし放っておけない。


「愛理さんと一緒なら、どこ行ったって楽しいですから」


 私はにやっと笑い。


「ありがとうシホさん、でもそんなに期待しないでよ?」

「全然期待しますよ~」

「~~~ッ‼」


 顔を俯きながらも照れくさそうに答える。

 天邪鬼と来たか。シホさん言うようになったね。


「んもう、愛理さんそんな照れくさそうにしなくても。……結構シャイですねあなたは」

「そうだよ、私は少し恥ずかしがり屋でね……だから正直なところシホさんみたいな人が一番理想形のキャラだったりする」

「え、それはどういうことですか?」


 まったくどこでそんな言葉を覚えたんだか。

 別に嘘言っているわけではないよ。本音を言ったまでのことであり、私の求めていたもの――魅力を彼女は持っている。そんな気がする。

 まあそこがシホさんらしくていいけど。


「もう遅いね、今日は寝てまた明日にしよ続きはさ」

「そうですね……ふわあ。それじゃ寝ましょうか。おやすみなさい愛理さん」

「お休みシホさん」


 そう2人で言い交わし、焚き火を消すと眠りについた。

 悪くないな異世界生活。色んな事あったけど、前いた世界より今が全然楽しい。

 これからどんなことがあるか、少し期待を寄せたりする自分がいる。

 まあやってみないと分からないさ。何事も経験は大事最初の歩一歩が大事だから。

 私はそのように心の底で呟くと眠りについた。


☾ ☾ ☾


「ぐがああああああああ。ぐがああああああああ!」

「だからうるさいよ! シホさん」


 シホさんの寝相の悪さで中々寝付けなかったけど。

 私の留年から始まった異世界生活はまだ始まったばかりだ。良くも悪くも。

見て下さりありがとうございます。

今週も休まず平日毎週投稿できました。

あと評価をくださった皆様ありがとうございます。

正直こんなに評価をもらえるとは思わなかったので、皆様には感謝でいっぱいです。

来週からもまた、愛理達の冒険を書いていくので応援の都度よろしくお願いします。

さて今回は2次元大好きな少し頭のネジが外れた(少しどころではないと思う)異世界に転生した総理の話でしたがいかがだったでしょうか。彼は馬鹿ですがそれでも優しい面を持ち合わせているので今後愛理の手助けとなる主要人物となっていきますので彼には大いに活躍の場を設けたいですね。

さて次はひょっとすると新キャラが登場するかもです。新しい仲間を出すかもしれないので来週また待って下さるとありがたく思います。どんなキャラなのかは話が近くなった頃にでもちょっとだけ。最後になりましたが今週も読んで下さったみなさま本当にありがとうございました。それでは来週もお願いしますではでは。

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