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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第10章 うさぎさん達の頂上決戦
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167話 うさぎさんのDQNな1日 その4

【小さいからって油断したら負けだと思う】


 森を探索し始めてから数分。

 スーちゃんに教えられたとおりに箒で空を飛びながら木々の道を進んでいく。

 木の間からは木洩れ日が差し込み少々眩しい。


「おっと……子供の頃の夢が実現したとはいえ、これコントロールするのすげー難しいんだけど!」

「……そのうち慣れますよ大丈夫。と愛理さんひとつ指摘しておきますけどあなたまだ低いじゃないですか」

「う、うるせえ! 学校でよく言われていたけどさこういうのは個人差ってものがあるんだよ!」


 コンプレックスである身長のことを言われ少々集中が途切る。直線上に進んでいた箒がゆらゆらと。

 一言感想を答えるとだ、少しでも集中を乱したりするとコントロールが偏り思い通りの方向に進んでくれない。

 操作し始めて慣れてきたのだが難しいものである。

 えぇとスーちゃんなんて言ってたっけ? 『魔力を箒に流し込んで身に任すまま乗ると操れるようになる』と教えてくれた気が。

 要するにあれ、車で例えるガソリン魔力がそれを担いハンドルが自分自身みたいな感じ……だと思う。


 おっと気にぶつかりそうになった! 瞬間的な反射神経で緊急回避。樹頭から木の葉が風によって掠められ地面へと落ちる。

 不注意だった。……つうか私まだ免許もなにも持っていないんだよな、いなつーかそんな年齢じゃあねえし……元いた世界だと察にお世話になりそうなことだが異世界だからセーフ。

 先に進んでいたスーちゃんが私を気にして1度止まってくれる。首を傾けて視線をこちらの方に。


「……集中力を乱さないように注意してくださいね。魔力は持ち主と同調していますから……ぼーとして集中を切らしでもしたら効力は消えてしまいますので注意を」

「それ先に言ってよ。……因みにさふざけて飛ぶ魔法使いっているの? あと自分以外の人が乗りでもしたらどうなるんだ?」


 飛びながら思ったこと。

 そんな不審者も中にはいるんじゃねと。テレビで煽り運転をして周りに迷惑を掛けていたやからも度々見かけたがここはどうなるのだろうという質問。

 するとスーちゃんは飛びながら答えて。


「……ひとつめの返答をしますね。まあいます」


 いるんかい!


「ま?」

「えぇもちろん。魔法使いだって全員善人っていうわけでは……あ、これダジャレではないですよ。……ふざけて揺れ動きながら後方の人の道を妨げたり急に立ち止まって文句を言ってきたり」


 世界が変わっても逸脱するアホは山ほどいるということか。

 妹が言っていたが、大体こういうのはストレスが生じて云々と、万国共通で一安心いやよくねえ。

 魔法使いにも色々と……。


「……ふたつめは自分以外の魔力を感知すると、魔力は反応しません。つまり他の人は飛べないです。操れるのは自分自身ということになります」

「セキュリティ万全やんけ。じゃあ盗人には狙われないわけだ」

「……それがそうとも無理矢理魔力を上書きして自分のものにして使う人も……」


 あ、だめだこりゃ。

 半々といった感じで捕られたら捕り返すみたいな習わしがあるのかこの世界には。

 いや人の物捕ったらドロボー! みんな異世界に行っても犯罪だけはやめようぜ。これ愛理さんとの約束な。


「魔法使いも色々大変だな。……? スーちゃん」


 スーちゃんは遽然としてゆっくり地上に降りた。静音とした足音を立てて無音か区別がつかないくらいの度合い。

 木陰に隠れて向こうを垣間見る。追いかけて私もゆっくりと降りて彼女の後ろへと回る。


「どうしたの? 急に降りて……あれは」

「……ブラック・スネークですね。猛毒がとても強いモンスターです。ざっと5匹……魔法で探知してみましたが四方にもう5匹います」

「えぇと…………ほんとだ」


 禍々しい濃い紫色をした小型の蛇モンスター。

 スーちゃんに便乗し、私もマップ機能で周囲を確認したが、数ある茂みの中にブラック・スネークがもう5匹隠れている。

 なんで紫なのにブラックっていうかって? ……知らんがな私は生物学専攻じゃね……って私ってなんの分野が得意なんだろう。ゲームかわからんぬ。とりまデータを確認。


【ブラック・スネーク 解説:カリ10倍の毒性を持つ猛毒種の蛇モンスター。上に避難しているからと断していると口から時速200km越えの毒玉を飛ばし、おまけに10m越えのジャンプ力もあるので死にたくなかったら気を抜くな】


 まーたあたおかなモンスターが沸きおった。

 うーむ毒かぁ。アシッドで対抗して正面突破で戦うべきか?


「どうしよっか。一応前に出て戦おっか?」

「……だめですよ愛理さん、あの蛇ただでさえ……」

「分かってるよ。あれでしょジャンプ力とすげー速い毒玉飛ばしてくるってやつでしょ?」

「え、えぇそうですけど……策は…………あ、そうか愛理さんはあの服がありましたね」


 察しのいいスーちゃんは私のやろうとしていたことを瞬時に把握する。

 やはり彼女は頭が切れる。

 つーことでパーカーチェンジ。……アシッド。


「……でも毒に毒は無意味なのでは?」

「まあまあ私といえども毒耐性持っているのはこの服ぐらいだからね。技を使わなければ問題なし」

「……もし毒におかされたら……」

「うん治す治す……光速のごとく駆け寄ってあげる」


 作戦も大体練られたので行動に移る。


「……いいですか? 私がストリプを前方の敵にかけます。……愛理さんはそのブラック・スネークを自慢の力で葬ってください」

「おk。スーちゃん後隠れているブラック・スネークの処理は頼めるかな? さすがに違う場所にいるとなると」

「……心配には及びません私を誰だと」

「最強魔法使いを目指す白い魔法使いでしょ? 分かってる分かってる任せたよ」

「……(にこり) 頼みましたよストリプ!」


 彼女の魔法により、前方にいるブラック・スネークの動きが止まる。

 かけ声に合わせて小刻みに走りながら詰め寄る。


「おりゃ! 食らいやがれ」


 身動きが取れない間に5匹丸ごとパンチを放つ。


「しゃあああああああ!」


 ストリプが切れると矛先は私の方に向けられた。

 私は身構えて相手の様子を伺う。


「どうした? 来ねえのかやるなら早くこいよ」


 挑発して攻撃を誘う。

 前方。

 一斉に口を開くと毒玉の連射攻撃が私を襲う。

 数十発もの弾が私の衣服に付着し、パーカーを一瞬で毒まみれにする。


「へ……効かねえな」


 元々このパーカーは毒の効力が備わっているため毒は完全無効化。それは反って私の能力値をあげるものとなり。


「とりゃ! とりゃとりゃとりゃとりゃ!」


 攻撃のバフが乗った素のラビット・パンチがブラック・スネークの体を全て貫いた。彼らの体は輪切りにされたように転がっていく。当たり前だが能力は一切使っていない。……敵の毒を逆に利用して力に変えたそういった度合い。

 でも力はノマアサと大して差はない。あまり使い慣れないパーカーだからか少々ベトベトするが私は平気だ。


「……隠れても無駄ですよフレイニグスト!」


 後方で彼女は隠れている敵の位置を捉えると、杖を仰ぐようにして振り上げた。

 すると灼熱の迸るような紅蓮の炎が彼女へ巨大な火の玉を作るように集まる。

 これはいつも使っている炎魔法の応用だろうか。

 規模がでかいのでおそらくは究極魔法。それにしてもやはり彼女の魔法はどれも非常に頼りがいのあるものばかりだな。


 引力に逆らいながらも、小さな体で操っているとは思えない力量で杖を振るう。

 すると、5分割するように火の玉が散け四方にある茂みへと散らばっていく。


ブボォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!


 5つの火の玉が各個の茂みに当たると巨大な火柱が5つほど建った。

 その中からは苦しみもがくブラック・スネークの声。……やったかこれで?

 火の柱が収まったと同時に彼女の方に駆け寄り……。

 すると1つだけ茂みが微かに揺れ動いた。サッサと。先ほどスーちゃんが放った場所の一部だ。

 中心の奥あたり。


「スーちゃん! 大丈夫?」

「……一匹逃がしてしまいましたか」


 スーちゃんはある方向にある茂みを凝視していた。……さきほど揺れ動いた場所からである。

 どうやら不覚にも1匹だけ素早く動いたみたいだ。

 マップ機能にも微かに反応が未だにある、スーちゃんの視線はそちらに固定されている。


「……素早いですね。あともうちょっとだったんですが」

「どうする? 追いかける……私はスーちゃんに任せるよ」

「……最強魔法使いを目指す身として尻尾を巻いて逃げるなど私はしませんよ。……行きましょう愛理さん最後の1匹を仕留めますよ!」

「よし、とことん付き合うぜスーちゃん!」


 残すブラック・スネークを追尾して行方を捜し。

 引き続き森を進んでいくのであった。

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