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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第9章 うさぎさん遙かな高みを目指せ
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番外編 うさぎさんの白い魔法使い、時を超えた出逢い その3

【そんなとき不思議なことが起こりました】


 目に映し出されたのは白黒――無色の背景。

 色褪せた景色には見覚えのある箇所が所々あります。


「……ここは?」

「私の魔法で作り出した過去のビジョンです。厳密にはあなたの体験した出来事を魔力に置換してそれを投影した物になりますけど」

「……な、なるほど?」


 少々頭を傾げながらも知ったかぶりをし、うんと頷きました。

 私も知らない魔法です。聞いたことも見たこともない魔法ですが未来ではこんな魔法が多様されているのでしょうか。


 遠巻きに岩陰からひっそりと顔を覗かせてみると、人影が2つ。

 私がいました。

 ブラストドラゴンに捕らえられているミヤリーさんをぼうっとした顔で見る私。……敵は彼女を攻撃しようとしています。

……少し前のことですねこれは。ここまではよく覚えています。ミヤリーさんを必死でなんとか助けようと模索する一方でしたから。


「ここまでは覚えてますよね?」

「……えぇ勿論。あのときは必死でしたからね。……でもその合間のことを全然覚えていないんですよ。……本当に私はあの魔法を使ったんですか?」


 疑るように彼女へ聞き返すとすんなりと返答は秒も経たないに返ってきます。

 こちらに向き直らず向こうの私達の方へ視線が向けられていました。……目が離せない?


「まあそうですよね。人はそのとき起きた事だけを頭の隅に潜ませておく生物です。二者より三者の情報や話が説得力ありますよね……それ以外自分の遭遇していないものに関しては疑うか、信頼難いですから。…………そのあのときあなたに起きたできごとを証明してあげますよここで。ここは真実しか映さないそして記憶は嘘をつかない。なので今から向こうをじっと見ておくといいですよ。あなた()()を」

「? それはどういう……あれ急に」


 唐突に視界に映る物の動き全てが停止し始めました。日差しが、木から落ちていく葉、風……この世界に生きる物全てが止まるかのように不可解な現象がその場で起きて。

 私も当然止まっていますが……数分後。


「……? あれ私が動いてる?」


 自分の体を動かす者がひとつ。

 小さな指を微動だに動かし、徐々に体を慣らしていきそれから視線……瞳孔が動き始めます。

 こ、ここが“時の世界”、頭が追いつかないくらい不思議な現象です。


「その目ではっきりと見るんです。……言い換えるなら蝶が蛹から脱皮するかのように……しかとその目でね」


 すると私は時の中を自由自在に動き出しました。

 私はそれを見て思わず瞠目。止まった時の世界に私自身が軽やかに走っているのです。不思議でままなりません。何故ひとりだけ動けるのかと……想いを巡らせながら。

 そこを自由自在体を動かしながら私が動いている。……無意識のまま大きいブラストドラゴンに杖を向けて。


「………………ッ」


「爆発の魔法……ウルティム・ノヴァが放れましたね。続いてウィンブロードを矮小化させて攻撃しましたよ。あの高さなら時が動いた瞬間、尋常ではない速度の攻撃になるでしょう」


 指で示しながら説明してくれます。

 爆発の魔法をミヤリーさんを掴んでいるブラストドラゴンに向け放ち、斜め上辺りに小さな風の刃を垂直に落ちるように設置します。……確かにあの距離なら…………ってこの世界だと使える者以外は全て停止し、新たに作り出した者でさえ停止物になるんでしょうか。……爆発の魔法でさえ、氷のように即座に固まってしまいます。


「この世界では使用者以外の者と物は全て()となり、新たに作り出したものでさえなにであろうとも停止物……つまり止まった()となる。仮に相手がどんな強固な耐性を持っていたとしても……関係なくこの世界なら攻撃、ダメージを与えることが可能です」


 つまり私以外のものは全てどんな力があろうとも無力ということになるんですか。

 異常なまでの反則っぷり感漂う性能ですが、さすがテンプスと言ったところでしょうか。


 続いて宙で停止物となったミヤリーさんを救い、そして彼女が落としたアイテムも同時に回収……退いて距離をとりました。


「……私は意思のまま動いてるんですか?」

「いいえ、あれは無意識ですね。母から聞いた話ですけど、テンプスという魔法は最初使用すると自分の意思は途絶え、所持者の魔力が体に宿って自動運転に切り替わるみたいです」

「……最初といいましたか? それはどういう」

「あの自動運転は使用する度になくなっていきます。一見難点に見えますけどそうではありません。その魔力が底を尽きた時“使用者は時の世界を認識し時その()の世界に自由に加入できるようになる”そのような仕様になっているんです」


 つまり使っていく度にこの世界を認識できるようになると。

 回数は何回でしょうか。……具体的な回数が分からなければ把握すらできなさそうですけど。


「何回……それは何回やれば認識できるようになるんですか?」

「歴史に関与することになるので、あまり詳しくは言えませんがわからないです。それに無意識にこれは使われるものなので、いつどこで使われるのか答えようがないですよその質問は」


 奥が深いですねやはりテンプスは。

 歴史に関与する……聞いたことがあります……タイムパラドックス。何かしら時間に支障が生まれると少しのことで歴史が変わったり、本来とは違う結末になってしまうと……色々説があるみたいですが……こればかりは仕方ないですね。


「……本当に私が。私、もう少し詳しく……」

「し」


 人差し指を突き立てて抑止する未来の私。片目を瞑りながら何か合図を出し。


「動きますよ“時”が。3、2、1、0……」






――時は再び刻み始めます――






カチ、カチ、カチ、カチ、カチ、カチカチ、カチカチ、カチカチカチカチカチカチカチカチチチチチチチチ……。


 その拍子に爆発しブラストドラゴン達は大打撃。

 あの時同様のできごとが起こりました。……それを皮切れに視点が反転し元いた場所に移され。


「どうでした? 今見たのがあの時私自身に起こった真相」

「……はっ。すみません意識がぼーとして」


 感覚が戻ると多少の汗が出てきます。震え、息などが荒く昂ぶり私の気を狂わせて。

 夢ではないかと疑わしいものが事実になり、整理がつきませんでした。今でも信じられないけれども信じるべきだと自分に言い聞かせながら。

 苦し紛れに悩んでいると……未来の私は私の肩にぽんと手を乗せてきました。

 屈むように顔を覗かせ、囁くような声で。


「大丈夫、ゆっくり息を吸って。……そうそうすーはーすーはー。落ち着いた?」

「……えぇまあ。……そ、それで」

「はい」

「……3つ目というのは?」


 正気を取り戻した私は彼女に顔を合わせ、3つ目の最後の質問をするのでした。


「えぇとね」


 その場から放れ、左右交互回り始めた私は考え出します。あれ何だったかなと考える素振りです。

 直ぐさまに私に向き直ると再び距離を詰めて。


「じゃあ最後の助言を言いますね」

「……はい」


 一体3つ目は何のことだろうと、頭の中で再び思考を回転させながら口が開く合間ギリギリまでに思いを膨らませました。

 魔法のことなのかと、強敵の弱点を言ってくれるのかなど色々候補が頭の中で挙がりましたが。

 未来の私は微笑を浮かべると、杖を再び私に向けて言うのでした。


「愛理さん達、仲間を最後まで信じなさい。掛け替えのない大切な仲間を」


 と。

 それは何かを教えるのではなく……私の背中を押し勇気を促すそんな言葉のように聞こえました。

 顔を少々紅潮させどこか嬉しそうな顔……それはとても艶然たる女性らしさを醸し出しながら。


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