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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第9章 うさぎさん遙かな高みを目指せ
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番外編 うさぎさんの白い魔法使い、時を超えた出逢い その2

【不思議なことの1つや2つは日常茶飯事ですね】


 全体的に見て白い身なりをした魔法使い。

 大きなローブが特徴的で、手には白い杖を携えています。

 体格は私よりだいぶかけ離れていて、身長差は歴然どうみても一端の大人でした。あと胸が私より大きい。


「……あなたは?」

「あぁ……そうだった」


 私が問いただすと、彼女は仰視させながら何か思い出すような素振りをみせました。

 数分も置かないうちに、即座に私の方へ向き直ると答えに応じます。


「そうですね、私は通りすがりの白い魔法使い。まあここにきたのは少し野暮用で」

「……野暮? それならギルドの人に聞けばいいじゃないですか。……あれそういえばみんなあなたが見えていないように感じますけど」


 私と白い魔法使いさんが話しているというのに、周りにいる冒険者さんはこちらに向きもしません。

 それはおろか存在を認知していないかのような様子で振り返りもしてないです。

 はて。それはまるで私にふりかかった呪いのような作用にも見えなくもないですが……彼女は一体何者か。


 すると私の手を引っ張りなにか訳ありな仕草を示す彼女は、どうも私に話したがっている様子に見えました。

 周りを一度、左右睥睨(へいげい)したのち小さな声で言い出し。


「ちょっと他の人には言いづらいことでして……なににせよ私この時代の人間ではないので……あぁ心配無用です。私自身の能力を使って私は貴女以外には見えないし認知できないようにしているので」

「? ……それはどういう。私にご用事でしょうか」


 イマイチ意図が掴めませんが、どうも引っかかります“この時代の人間ではない”という言葉に。

 注意深くまた横目で辺りの様子を伺っていますが、どうも挙動不審。あの大丈夫です? 顔が焦り気味ですよ。


 見た目に反して落ち着きのない様子は……まるで私似。人のことを悪く言えた筋ではないのですが少々注意深く見過ぎな気がしますね。


「ちょっと一旦場所を変えましょう。……ここで話すと色々まずい内容なので……付き合ってもらえます?」

「あ……はい、それは構いませんけど、どういった内容で?」

「詳しいことはあとで話しますのでひとまずは……ハイレポーション!」

「ちょま!」


 出し抜けに移動魔法を使い出す、白い魔法使いさん。

 何用かは知りませんけど、私の意見を全く聞かずに違う場所に身を移すのでした。


☾ ☾ ☾


「……え、あなたは? そんな」

「信じられない話かもしれませんが、今告げた事は紛れもない真実です」

「……」

「な、なんですかその嘘はやめなさいみたいな顔は」


 場所を変えて数分。

 路地裏にある狭い細道にてふたりでこっそりと話し合います。

 とはいえ、何事かというとどれも信じがたい内容ばかりで頭が悲鳴をあげそうになりました。……時空を超えてやってきたとか、助言をしにきたなどと抜かすのです。

 妄想もいいところですねそんな滑稽な話は。


「……本当に本当なんですか? あなたが時を超えてきたというのは」

「は、はいそうです! ほらあなたと同じ杖を持っているでしょう⁉」

「……まあ確かにあなたの持っている杖は私の杖とそっくりです。……よもやあなたもムゲンダイセキを偽造する一味なのでは?」

「あ、愛理さんじゃあるまいし! やるわけないですよ()()()()()に言うのもあれですけど昔の私ってこんな物分かりの悪い人でした⁉」


 いやそんなこと急に振られても、どう答えろというんですか全く。

 少々慌て気味な彼女は私にへつらうように言葉を重ねては説得を試みますが、愁眉をしかめる度に顔色が怪しくなっていきます。

 大人なんですから、もうちょっと余裕ぶっていてもいいのではとわずか笑いを零しました。

 いい加減信じざるを得ないと感じた私は、呆れてひとつ嘆息を吐き。


「……はぁもう分かりました。分かりましたから……信じますよ貴女の言葉」

「ほ、ほんとうですか?」

「えぇ……薄々気づいていましたからね本当は。だってその杖は私がずっと愛用していた杖ですし。……ほら先端辺りまだイルシィが汚した部分がまだ残っていますしね」


 私の杖の先端部分。薄くはありますが昔イルシィが過ってこの杖をそこに飲み物をかけてしまい汚してしまった箇所があります。……凝視すれば分かるものなんですが……それが彼女の杖にもあるじゃないですか。

 1日おわりに必ず1回は磨いていますし……あれまだとれていなかったんですかなるほどなるほど。

 え、なら魔法でとればいいのではと? ……そこはあまりツッコまないでもらえると助かります、頼みますから詮索しないでください。

……まあそんな汚れが。


 彼女の杖にも、同じ場所、同じ箇所的確な位置についているではありませんか。

 それは明らかに他のなにものでもない、私の杖。

 話の最中に観察していましたが、どうも偽物ではないみたいです。

 もう認めるしかないです。


 そう。彼女は――。






 今から数年後の未来から来た私自身――ステシア・シェスタード・グリモア本人なのでした。






「……それで私、この時代に何用で? どういった経緯で来たのか知りませんけど何かを伝えにきたんですよね?」

「そうですね。ちょっと時を遡る魔法を使ってきたんですけど、私自身にどうしても伝えたいことがありまして」


 自分自身に話すのなんか複雑な気分です。毎日鏡は当然みるのですけど、意思のあるよもや未来の自分自身ときた。昔お母さんが言っていましたけど、世の中不思議なことの1つや2つ起きても不思議ではないと。

 その面妖な境遇に今立たされているんですよお母さん。

 さてまずどのように話せばいいのやら。


「……そ、そのこれ言ったら変だと思われるかもしれませんが……胸大きくなりましたね」

「えぇそうです…………じゃなくて! 確かに大きくなりましたけど別にそれを自慢しにきたわけでは!」

「……分かっていますって。でも自分自身と話すのもなんか戸惑って」

「不思議がるのも無理もないです。この時代の人にとって信じがたいことですから。……私、ここにきたのは3つ。3つのことを知らせに来ました。この先起こることの()()です」


 未来の私は指を3本私に見せてきました。

 3つ? それは一体。

 順を追って耳を傾け聞きます。


「順を追って説明しますね、まずは1つ目。貴女達が今戦おうとしているバイタス……あれはあと1週間後に来ますよ? ……私達の世界では愛理さんがのんびりしすぎて最初は愛理さん以外のメンバーで戦う羽目になりましたが」


 今から1週間後か。

 とすると……あともうちょっとですか。というか未来の私が知らせに来なかった世界だと愛理さん家で呑気していたんでしょうね。彼女なら油断すること十分可能性としてありえますし。


「因みにバイタスは以前より姿をまた変えています。……大きさも段違いです。強化能力は健在ですが短期決戦は難しいかと」

「……ならどうしろと。一度シホさんでさえてこずった相手なのにどうすればいいんですか」

「それを今から言うんですよ。鍵となるのは2つ目です」


 2つ目に勝算がある? あんな何度も再生する敵を倒す方法があると。

 考えを巡らせてもなにも思いつかない。……未来の私はそのバイタスを倒す手段を私に伝えにきたんですかね。


「2つ目。ちょっと前にミヤリーさんと一緒にドラゴンを倒しに行きましたよね?」

「……はい。たしかブラストドラゴンの討伐クエストでした。それがなにか」

「不思議なこと起こりませんでした? ……一瞬“時が飛んだ”現象が発生した……とか?」


 不思議なこと? ……不思議な。

 考えを巡らせ記憶を掘り起こす私。…………あれそういえば。


「……たしか一度ミヤリーさんがピンチに陥ったときでしたか。……急に視界が途切れるような現象が起きて、気がついたら彼女……ミヤリーさんを抱きかかえていました」

「やっぱり……でしたか」


 納得がいったように首をこくりこくりと軽く動かす私。

 合点の仕草を見せると、未来の私は杖を私の方に向けてそっと呟くのでした。


「いいこと教えましょう。私……いえステシア・シェスタード・グリモア。貴女……そのとき無意識にテンプスを使っていますよ」

「……え? それはどういう」


 彼女が言ったことそれは。

 少し前、私がミヤリーさんを救ったあのとき……"あのとき"に私はグリモアの三大魔法の1つテンプスを無意識に使った……そのように述べてきました。

……未来の私……この人は私の遙か先起こることを何かしら知っている。それを告げ……教えに来たんだと再認識した私は、瞠目し息を呑み。

 ゆっくりと問うてみるのでした。


「……その話をもっと詳しくお願いできますか?」

「えぇ勿論。だって他の誰でもない昔の私自身の頼みですから」


 彼女は微笑を浮かべると、順を追ってあの日の出来事を魔法を通し説明するのでした。

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