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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第9章 うさぎさん遙かな高みを目指せ
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番外編 うさぎさんの白い魔法使い、時を超えた出逢い その1

【手紙はちゃんと返した方が相手も喜びます】


『ステシア殿へ。お元気ですか私とグリモワール卿は相変わらず毎日魔法の研究に没頭しています。さしあたっては……』


 ギルド内にて。

 名残惜しくもその手紙を見つめながら胸を躍らせる気持ちで手紙を読んでいました。

 シホさん達に伝言をひとつ言い残しここに来たんですけどよかったんですかね。……このあいだはゆっくり読む時間がなかったので今という時間を使いギルドに赴いたのですが相変わらず人が多い。

 場所を変えようにもこれといって思い浮かぶ場所はひとつも……畢竟ギルドが一番親しみやすいのでこうしてひとり机で体を伸ばしながら読んでいますが……おぉっと腰が曲がっておばあちゃんみたいになりそうです注意しないと。


 さて続きを。


『その卑猥な話になりますけど、またもやグリモワール卿がオタクシティにてAVを買ったしまったそうで、試しに注意したらその晩魔法の合戦になってしまいました。家具が燃えるやら食料が多少溶けるわで散々な目に……ほんと困ったお方です』


 未だにそのエーブイという物がよく分かりませんが、それは一体なんなんですかね。

 長方形型の色んなボタンがついた機械が、グリモワール様の部屋に置いてありましたけどあれは結局なんだったのでしょうか。 何の用途? 魔法の開発、錬金術? ……思いつく限りのものを思い浮かべるものの想像がつきません。あれは一体。


「……なにやってるんですかあのふたり」


 というかあの装置オタクシティの物でしたか。……あれってどういう物でしたっけ? ちょっと魔法を使って当時の場面を絵にして再現してみせましょうか。


「……ミラージュ」


 軽く指で円形を描くと半透明の反射鏡が映し出されます。

 次第に鏡には絵が描き込まれていき、1枚の絵が鮮明に現れ出ました。

 これは自分の記憶にある一場面を絵(鏡)にして再現する特殊な魔法。……なにか忘れたことがあったときに使うものですが……これはこれは。


 絵にはグリモワール様の部屋が映し出され、その黒い物体に目を細くさせ摘まむようにして拡大。

 凝視でよく観察し。


「……なるほどやはりよくわかりませんねこれは」


 再現したものの結局どんなものか掴めないままでした。

 光る穴の空いた円形の物を入れるみたいですけど。

 こういうのは狂政さんや愛理さんが詳しそうな気がしますけど、まあ今は触れないでおきますか。


『本題に移りますが、グリモワール卿はステシア殿がいなくなりとても惜しんでおります。この間あまりの悲しさゆえに腰を痛め私が治療しましたけど大人しく言おうにも素直に聞いてくれず、よほど貴女を溺愛してたと見受けられます』


 グリモワール様にとって私は孫娘みたいな存在なのでしょうか。


『ですので時間がとれた暁には気軽にお越しください待っています。美味しい料理を作り待っていますから。……追伸、くれぐれも私が貴女の母君リーシエ先輩にはこのことは内密にお願いしてもらうと助かります 信頼なる友 マリィより』


「……はは。元気そうでなによりです。読んでいただけでもあのふたりの様子が目に浮かんできます」


 嬉しさのあまり微笑を浮かべ、自ずと楽しさがこみ上げてきます。

 あの数日のできごとはここに来てからも忘れたことがありません。なぜならあの家は私にとって大切な場所なのですから。

 それは一言で表すのなら親戚……いえ家族のような存在ですかね。同族とはいえ親近感が沸くというか……まあお母さんの師弟みたいな存在ですからそれもあるかもしれません。


……周りが少々うるさいですが、この手紙さえ読めばそんな嫌悪感に駆られることもないです。

 それはそうとよほどこのエーブイのことを母に知られたくないようですけど、やはり気になる今度愛理さんに聞いてみよう。

 手紙を鞄の中に入れ、にこりと笑みを浮かべます。


 サッ。


「? 今誰かに見られていたような」


 ふと外から視線が。

 誰ですかね。他の仲間はともかく私のことって、あまり人に認識しづらくなっているはずですけど誰か来ていたんですか?

 気のせいかも。今はそんなことどうでもいいと思った私は。


「……返事の手紙書いた方がいいですよね。……なんにも書かずこのまま音信不通なんてグリモアの魔法使いとして恥ずかしいですからね…………よし」


 意を決して手紙の売れているギルド内商用郵便へ近寄り声をかけます。


「あ、あの~」


 中くらいの声を出しているはずなのですが、声は一向に届かずといった感じで復唱して何度も返事がくるまで声をかけ続けました。

……何回目でしょうか。数回目でようやく私のことを認知してくれたギルドのお姉さんは喫驚し、私に何用かと応対。


 すると私は手紙の用紙を買いたいとせがんだところ、元になる手紙を手渡してくれました。……代金を払い1枚購入。

 これでようやく書けますね。


 用事がおわると元の席に座り、私は信頼なるお師匠様ふたり宛てにペンを走らせました。

 それから数分後。


「……あとは」


 天井を仰視させ、文を連想させます。

 こうじゃない、ああじゃないと迷走しながら。無礼粗相がないように的確なメッセージを。

 と思いつつも。


「……いざ書こうとすると難しいですね。手紙って……授業でも少しやったことありますけど実践となると難易度は神級魔術師並に難しくなりますね……えぇと」


 神級魔術師は言い過ぎかもしれませんがやはり難しい。

 こうなるぐらいだったら旅立ちの前にお母さんに教えてもらうべきだった。

 お母さんからもらった本を引用しようにも……。


「……だめです。これ全部“旅の心得”だけじゃないですか。……ひとつくらいためになる知識を教えてくれても」


 まあためになることはたくさん書いてあるんですけど、もう少し基本的な事もあればと……今度お母さんに手紙書いて送ってもらおうかな。

 ここはひとまず帰ってみんなにどのように書いて送るか相談した方がいいですかね。……いやだめだめそれだと立派な魔法使いには。

 一瞬仲間への甘えが頭に過りました。


 ミヤリーさんはともかく愛理さん、シホさん辺りはこういうの得意そうなのでやってもらうのは手段としてありかもしれませんが、自分でやらないと意味がないと思います。

 頑張って書いてみせますよお母さん。


 またまた数分後。

 長時間書き続けているせいか睡魔が私を襲ってきます。


「ふわぁ~。……さすがに少し疲れたなぁ」


 腕を一旦伸ばして体を伸ばします。

 イタタ……結構凝っていますね。グリモワール様ではあるまいし、腰を痛めないよう注意しないと。


「……うぅやはり長時間の手紙は体にきますね……うぅ睡魔が…………でもここで寝たら最強の魔法使いへの道………………道が」


 そのまま私は気づくと寝てしまい、意識が遠のきました。

 集中しすぎたのもあり、私の疲れは臨界点を超え……こうなるならもう少し勉強しとくべきだった。

 すーすーと眠り始めてどれぐらい経っただろうか。

 あれから意識はどこかへいったように感じましたけど……なにやら足音が聞こえてきました。


「? ……これは」


 明らかにこちらに迫ってくる足音。

 歩一歩ゆっくりと音は近づいてきました。思わず片目を開け状況を確認します。

 そこには。


「……ねえそこのあなた」

「?」


 なにやら大人びた女性の声が聞こえてきました。

 足元だけ見ていますが……なぜか私と同じブーツを履いています。ですが少しサイズは大きめでした。


 勇気を振り絞り、もう片方の目を開け、下目線に向けられた視点を徐々に上方に持っていくと。

 思わぬ相貌が私の前に現れました。

 それは形似……私に似通った部分を彷彿とさせ思わず瞠目。


「やあ白い天才魔法使いさん。お目覚めはいかがですか?」


 それは私に身長は違えども、大人びた様子をだす自分似の白髪を持つ魔法使いさんでした。


「驚かせちゃいました? ……ちょっとお尋ねしたいことがあって」

「? ……あなたは一体」


 私は少し首を傾げふと思うのでした。

 この謎の魔法使いは果たして何者かと。

 

 

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