15話 うさぎさんと難攻不落なバグだらけダンジョン その3
今回は罠要素結構多めです。
中には人によっておかしく感じる物もあるかも。
【たまにはゲームの裏側で頑張っているプログラマーのことも考えた方がいいんじゃね?】
険しい山の探索は続く。
歩みを進ませる度に、戸惑う一方になる。こういうのは、ゲームでやり続けたダンジョンで慣れてはいるものの、いざ実戦となると歩幅が小さくなるのは何故か。
物体らしき物を足で捉え、いざ見て「なんだただの石ころか」とくだらない錯覚にも陥る。おどかすなよ心臓に悪いわ!
「はぁだる。過労死できるならすぐにでもしたいくらいやわ。」
「先に進んでから、何個か罠に引っかかってしまいましたけど頑張りましょう。きっとゴールは見えてくるはずです!」
「うん、導き手のようなことさらっと言ってるけど、それがフラグでないことを心に留めておくよ」
「それってどういう……。さあ探索を続けますよ!」
後ろからついてくるシホさんを、時々振り返りながら様子見して前進。
狂政が作った莫大な量の、仕掛けに注意しながら原因を突き止めていくのだけれど、その900個以上という計り知れない数は一体どこからそんな量が頭から出てきたのだろうか。
小学生じゃあるまいし。
あいつのことだから、これが普通なのだろうけど非常にダンジョン攻略が億劫だ。“どうしてこうなった”と心の内に留めながらも目の前に集中する。
かれこれ、指で折っても数え切れないほどに渡る罠の道を数時間かけ、辛うじてくぐり抜けた。
耳から語りかけてくる狂政は、私達を導くようにサポートしているわけだが、果たしてその原因となる根源に私達はたどり着けるのだろうか。
なんか晒されそうな企画やっているみたい。動画サイトやらでよくある企画系のあれ。
“自分の元いた世界の住民に、私が作った鬼畜ダンジョンに潜らせてみた結果衝撃の映像www”みたいな。
んなわけあるかいな。もしそれがガチだったら意欲ゼロになるますがそれがなにか?
いやまじで絶対勘弁。
『愛理君それで聞いているのかね?』
「あぁ聞いているよ。で次どっち?」
『そこを右だな。また傾斜面になっているから注意が必要だ』
でも狂政のサポートもあって、スムーズにダンジョンを進むことができた。
不注意な面々もあったが、底に関しては私からは一言も言及しないことにして指示通り進んだ。
すると向こうから気配が。
間私が歩いていると。モンスターが3体ほど出現した。
「…………」
鉄でできた体をバネで繋ぎとめたモンスター。
いや正確にはロボットだと思う。頭部は黒金の球体をしており、腕になんか大きな爆弾を担いでいる。
投げる系のやつか? それとも爆発する自爆マン的なやつなのかこいつは。
図鑑が反応し開き説明が開始。
【爆弾兵 説明:爆弾を模したロボット。担いでいる爆弾をひたすら投げ相手を殲滅する。近年村や町に多大な被害がおよび荒らされた】
名前が露骨すぎてどこからつっこめばいいのやら。
するとその3人組は。
体にあるハッチらしき場所から、何かを吐き出すとみるみるうちにそれが大きくなっていく。
体くらいに大きくなり。
それがなんなのか私は理解した。
明らかに爆弾。
ゲームでよくあるような黒丸に紐がついた爆弾。
大爆発系は反則だって。投げ技をする敵ってチキン系じゃん。かつ私がしめに『爆破オチなんてさいてー』なんて言わないといけないからお決まり的に。
『まずいぞ、そいつは私が楽しいアトラクションを作ろうとした時に開発したモンスターだ。連発で投げてくるから要注意だぞ!』
「「このどこが、アトラクション用だよ! 明らかに殺戮兵器だろこれ」」
『それはノリだ!』
「堂々と高々宣言されてもなぁ……ってどんどん膨らんできたぞ!」
そんなにやばいモンスターなのか。
「着火したなにかを持っていますけど、取りあえず応戦します!」
「ちょっシホさん!」
怖いもの知らずのシホさんは、手に剣と盾を持ちながら戦おうと試みる。
よくみたら妙に武者震いしている。本当は怖がっているなこれは。
私のためにそこまでしてくれるっていい味方を持ったな私。
彼女はピクピクしながらも、手に持つ武器を離そうとせず。
両手で剣を構え、盾の取っ手を二の腕を使い万全な体勢をとる。
見た目はかっこいいんだけどな。空気を読んでここは倒れないことを願わんばかりだ。
爆弾兵は背中に持った、大きな爆弾を私達目がけて飛ばしてくる。シホさんはその爆弾をバットでソフトボールを跳ね返すように斬り裂く!
ズドーン!
シホさんの剣に触れた爆弾は、瞬く間に爆発。
ただでは済まないような爆音だったけど……無事かこれ。
「し、シホさん?」
黒煙が勢いよく渦巻いている中人影すら見えもしない。
ゴホゴホと、目を瞬かせながら周囲を見渡して彼女を探す。左右、上下だめだ煙が深すぎて分からない。
爆発の衝撃によって、数秒視界が塞がれる。おっと目にゴミが。
衝撃とはいえ、さすがこの最強うさぎ装備。
これくらいの凄い衝撃にも動じずかすりもせず。あれさっき、明らかに距離がシホさんとそんなに変わらなかったのになぜ? 巨大な衝撃も耐えられるってこちらも別の意味で吹っ飛んでいるスペックなんですが!
じゃなくて。
私はいいんだ私は。
着ているパーカーが、優れた耐性を持っているからそこまでこちらは神経質に気になる必要はない。
問題はシホさんの方。常人だと大怪我になりかねない爆発だったが。
「シホさん……! シホさん! シ…………ホさん? え」
深い黒い煙が次第に薄れていく。一面が鮮明に映っていくと
目の前にシホさんの姿が。
け、怪我は。
ってあれ。
「シ、シホさん?」
声をかけ無事を確認する私。
だがその不安は、彼女の様子を見た途端消化された。
「あれ? なんともない」
自分の手元を見ながら驚くシホさん。
その目は己の強さを疑うような反応であった。
こっちも驚いているんだけどな。なんだよこの化け物スペック!
こういうのは、異世界系の主人公が『あれ、もしかして俺強くなり過ぎちゃいました⁇』みたいな煽り台詞をいうのがテンプレだと思うが、素でこの耐久とは人の人知越えているだろこの人!
なんと攻撃当たったのにも関わらずシホさんは無傷。耐性半端ねえだろあれ。
ちゃんと爆発したはず。
爆発した。
はずなのにだ。
彼女の体は無傷、意識もしっかりしている。
そういえば出発前に、狂政に強化してもらっていたよな。あれが影響して耐性が格段に上がったとか?
『なるほど、彼女は元々ステータスに恵まれた強さの持ち主だったらしい。今気づいたが、あのまま行かせてもあの爆弾兵の攻撃をものともしなかっただろう。シホ君恐ろしいよ君は』
彼女の強さに感服した狂政は、満足そうに頷く声で語る。
前々から。
空腹以外はハイスペックだと、気付いてはいたがまさかそれほど高い能力の持ち主だったとは愛理さん驚いた。
彼女がどういった人生を、歩んでいたのかはわからないがまず言えることは。
ハイスペックすぎる。
それだけだ。
「なんか知りませんけど、やっ!」
一拍おいたのち、シホさんは一振りする。
爆弾兵はドミノ状に、体をまっ2つに切断され3匹丸ごと崩れていった。
あっさり倒しちゃったんですけど。く、異世界の空腹女は化け物か!
そんな力量があるのなら、少し私に分けてくれよ。
彼女はこちらを振り向いて。
「あの。なんか倒しちゃいましたけど」
「私はシホさんの強さに驚いちゃったよ」
薄目で彼女を見ると、こちらを気にな目つきで視線を向けてくる。
ウェブ小説に出てくるチート主人公が、自分の驚く能力を初めて使ったときのような感想をいわれてもなぁ……言っておきますけどこの作品の主人公一応私なんですが。
はぁどうしたもんか、と返す言葉も見つからず奥へと足を動かすのだった。
☾ ☾ ☾
【ダンジョンには数え切れない罠あるけどこりゃねーわ】
先へ進み引き続き調査。
未だに問題となっている箇所は見つけられず進展なし。
えぇ大丈夫かって? 大丈夫だよだって今は全然。
と。
イキがっていたのも一瞬だった。それはぬか喜びにおわりを迎える。
もう暗黙の了解的なノリで察しがつく。
「どうしたの? シホさん急に立ち止まって」
腹部をすすって腹の音を鳴らす。
「すみません、さっきの戦闘で結構体力使っちゃったみたいです。行く途中までの運動も合わせてですなので先に謝っておきます」
「へ? どゆこと」
はい平常運転ですね。
つうか理解したくないよ。だから消費カロリーがおかしいでしょこの人!
先ほどの移動中、彼女が空腹になることはなかったがなぜにこのタイミングで? メニューを起動させ、時間を見る。
あっ。
時刻はダンジョンを探索してから3時間経っていた。
前に立つシホさんは、そのまま動くのを停止すると。
体から力が抜けていくように正面に倒れ込んだ。
ドスン!
「ぐふっ。腹ぺこ生活って大変ですね……そして改めて実感できますお腹がすくという重罪が!」
「そそそそそそそ、そんなに咎めなくっていいから!」
やっちまった。
そう空腹の時間を迎えたのだ。
直ぐさま私は彼女を起こし介護にうつる。
街で買っておいた、とびっきり美味しいものをシホさんに食べさせた。
「シホさん、美味しいサンドイッチだよ。これで元気になって頼むよ」
「そ、それはありがたいです! さあプリーズです愛理さん」
手から差し出したのは大きなサンドイッチ。
念入り買っていてよかったと一安心。
ファミレスにもしこの人連れて行ったら、絶対たくさんガッツリ食う系の人だよ。あれそういえばこの世界って大食い大会ってあるのかな。
それはそうと困ったもんだ。
そのサンドイッチを一気に頬張り、少々咀嚼する時間をとると飲み込んでシホさんは、活気を取り戻し再び立ち上がる。
「ありがとうございます。これでまた動けますねそれでは行きましょう」
彼女は率先して前に進んだ。機敏に軽快に早歩きと、先ほどの彼女とは別人物なのではないかと少々疑わしく思えてくる。同一人物だよね?
『いつもこんな感じなのか愛理君?』
「これが平常運転なんだけど」
『腹ぺこ美少女シホ……侮れないキャラだな』
「狂政さん、狙って倒れているわけじゃありませんからね」
『シュワッと! 2人に聞こえているということをすっかり忘れていた』
「この馬鹿」
『ば、ばか言うな!』
とくだりを終えてダンジョン攻略を続ける。
☾ ☾ ☾
ダンジョン内、谷間のエリアでは。
変哲もない空虚の道。妙な薄暗さがいかにも強者感漂わせる内装だが。
ある物に目が留まる。
「あれ、なんなの?」
キイイイイイイイイイイイイン。
私達を挟むように、壁際から巨大なチェーンソーカットソーが高速回転しながら現れ、こちらに向けて前方後方共に私達へと距離を縮めてくる。
やばいだろあれ。絶対当たったら怪我ではすまないって!
「ひいいいいいい! 愛理さん助けてください!」
怯えて私の後ろにすがり、ピクピクと震えるシホさん。
体全身を振動させる様子は、まるで携帯のバイブレーションみたいな感じだった。
「大丈夫だって当たらなければ、どうということはないから!」
「み、見捨てないでくださいよぉ」
いてて。
だから力強く握らないで。私プロレスしているわけじゃないからさ!
有名某フリーゲームのマナーモードキャラみたいだな。
あのピアノによる謎解き難しすぎて、最終的にググって攻略した記憶が。
ズルするなって?
わからないものは、わからねえからそこは自重してくれ。
で、そのマナーモードシホさん(仮)が、私の後ろでくっついているわけだが。
そこまでビビらねえよこの私でも。
意外と彼女は怖がりなのかもしれない。
数秒して。
『あれは、埋蔵金を入手した際にしかけたドッキリの罠だ。当たったら即死だぞ』
そんな"上から来るぞ気をつけろ!"みたいなこと言われても。
見れば分かるよ。して立ち直ったお方が約1名。
再起動はっや!
「いつまでも怯えているわけにはいきません! 私は正々堂々と戦士として戦います!」
何も知らないシホさんはそれに無謀にも立ち向かい。猛スピードで前方側のカットソーへと駆けていく。
そして今にも、切られそうな距離で一旦足を止め口を開く。
なぜ止まるあぶねえよ。
「この見たことのない装置は一体? 蹴散らしちゃいますね」
「蹴散らす以前にそれ当たったら死ぬからね!」
無謀にも戦おうとするシホさんに対して私は。
詰め寄り彼女の手を握りしめた。
しかしシホさんは一刺し指を天井に向けながら、にこにこしながら言う。
「大丈夫ですよ愛理さん。こういうのは"作者の意向でギリギリ当たることはなく回避できた"そのようにしてもらえば私は死なないと思いますよ!」
「シホさん、メタ発言は控えようね! 作者もそんないつも都合よくフラグを用意してくれるわけじゃないからさ!」
『大人の事情という最強のスキルもあるぞ。大声で言ってみたらどうだ? もしかしたら綺麗さっぱりデリートしてくれるかもしれないぞ!』
んなこと起きるわけねえだろ!
耳越しから何言っているんだコイツは。大急ぎで谷間にかかっている橋を突っ走る。
色んな意味でこの小説に、グロテスクな表現は色々とアウトな気がするので。
駆け抜けこのフロアから脱出する試みをした。
得意の跳躍でゼロ距離と迫ったカットソーをジャンプして回避。
回避、回避。
キィィィィィィィィィィン!
回避。……と3回目めっちゃ危なかったぞ。
危う某饅頭になるところだった。
どうでもいいことだけど、このパーカーならアスレチックSランク楽勝でいけるんじゃないか?
言い過ぎかそれは。
引き裂かれる恐怖に怯えつつも、1度たり当たることなくフロアの出口へと到達。
なんとか階段付近までたどり着き死は免れた。
おぉ怖い怖い。
心臓に悪すぎるだろこれ。マジで間一髪。
恐怖のあまりに額から汗がポロリと滴る。
ビビっているな私。息を切らしながら一休憩。
「だ、大丈夫です? すごい息が荒いような」
「き、気のせいだよこういうのは気にしたら負け……っていうか」
「む、無理は禁物ですからね。分かりました愛理さんが落ち着いた具合に進みましょうかね」
休んでいる私に対し、視線を合わせるようにしゃがんでくるシホさんに優しさを感じる。
その笑顔がとても癒やしになり、次第に心拍の鼓動がゆっくりになっていく。
そして胸の高鳴りが収まった具合に再び動きだすのだった。
☾ ☾ ☾
坂道にて。
「なんだここ、一見何もないように見えるが」
勝手にそう思い込んでまた走り出すと。
急に穴が開いて。
急落下! 迂闊だったああああああああああああああ! なんでこんなところにあるんだよ⁉
「へ? うわあああああああああ!」
「愛理さん!」
続くように空いた穴から飛び降りるシホさん。いや飛び込まなくていいから待っていて。待てよ逆そうされたらある意味めんどい。ならこれは得策かと。
ドンッ!
落下で、少々の痛みがはしるものの気になるような、負傷ではなかった。
それは誤り、足下を挫いた軽症あれによく似たもので。
「あれ、痛くねぇな。……パーカーのお陰かこれも」
「いたたた。迂闊でしたまさか落とし穴があるなんて」
「それはよかったね……とそれはそうとシホさん、ひとついいかな? 明らかにさっき高いところから落ちた気がするけど10メートルとかそのあたり? ……私はこの服のお陰でへーきだけどさシホさん大丈夫なの?」
私は、パーカーのお陰で一応ダメージが減らせている。
だがシホさんはというと、この世界に住む異世界特典もなにもらっていないただの人。普通に考えたら、いたたの一言ではすまないと思うが、あれでまさか軽症だとか言うんじゃ。
「え、あれくらい余裕ですよ? だって山岳から下まで一気にジャンプしておりられるくらいですから」
「その……マンガの主人公みたいな答えはさておき、無事ならいいや」
ツッコミどころ多すぎて呆れているのが本音だが!
落ちた場所は先ほどいたフロアへと逆戻りし。
「またなの? はあ」
呆れながらも再び登り、先ほど着いた傾斜面のフロアへとたどり着くと。
……穴が塞がっていた。
マジで、リセット系のクソトラップだったのか? どこかで見たことあるぞこれ。
『あぁそれは、ランダラキアへの洞窟を参考にした鬼畜トラップだ。……ラスダンの風格には丁度よいだろ?』
よくねえよ。
ここであの、某鬼畜ダンジョンの要素を取り入れてきたか。
大人でも苦戦するくらい、難しいダンジョンって聞いたことあるけどそれなの?
あれでしょ。
テストプレイ途中までしかできず、中途半端な段階でゴーサインがでたナンバリング。
つうかそんなもん再現すんな。
「来る人いなくなるだろこれ!」
「なんでさっきの穴塞がっているんですかね」
「あれだよ、見えない床的なやつだよ」
私は一体何を言っているんだろう。
その場しのぎのセリフとしては出来が滑稽。他に説得力のある言い訳あっただろ愛理!
だが彼女は、理解した様子で手の平にぽんと拳を叩くと。
「ま、まさか幻覚を見せられていたとは。侮れませんねこのダンジョン」
そこは怪しいから疑うところなのではシホさん?
こくりこくりと頷く様子で理解する様子をみせるが。
「そ、そだね注意して進もうか」
シホさん、真に受けすぎじゃね。
無知なシホさんは放っておいて、苦労しながらも先へと進んだ。
☾ ☾ ☾
上下がめちゃくちゃになったフロアでは。
「なんか酔いそう」
視点が逆さになっているのでとても見づらい。
でも重力に逆らっているのか。
下に上るという、矛盾した表現がこの道を歩いていると思いつく。つまりあれだ下方向に進んでいる……もう上か下なのか、これはもうわかんねえな。
地球の引力は、大体300分の1(地球の重量の)って学校のどこかの教科書に書いてあった気がする。……なんだっけ重力加速度? ……うーん物理は難しいから、こういうのは妹が詳しそう……愛理さんには無理! チートバグで、音声バグらせ動画見るくらいが嗜みだから、これに関しては詰みです!
私が今歩いている床……というか天井は、普通に地上と同じように動けるんだけれども。
これは酔うだろ。
おっとリバースしそうだ、つうか吐いたものこの場合どうなるんやろ。いやそんなもの、クッソどうでもいいわ。でも所々私達が歩いている方向に、中くらいの岩が浮いているからこの場合かかるんじゃね、あやべ逆に吐く気なくなってきますた。
「こっちが上であっちが下? あっちが上でこっちが下? なんか頭がこんがらがってきました」
『進みづらいアスレチックエリアだ。上下がくちゃくちゃになっているから要注意だぞ』
「もっと加減しやがれ‼」
早く出たいよこのダンジョン。
☾ ☾ ☾
「今度は巨大迷路かよ」
『ふむ、そこは油断しない方がいいぞ』
巨大な迷路エリアにて、めんどくさい道をつき歩きしばらく迷い続け、ようやく出口が見えてきた頃。
「これ何でしょうか?」
なにやら、シホさんが壁際に1か所だけ出っ張りのあるレンガを発見。
……やばいやつじゃねそれって。
「ぽちっ」
「あっ」
私がシホさんに声をかけようとしたころには。
時既に遅し。
地面が震動し始め、巨大な大岩が転がってきた。
「まずい逃げろ!」
またしても私はシホさんの手を引っ張り来た道を戻る。
しかしそこにも大岩が転がってきた。
「挟み撃ちってマジかよ」
「ま、また私なにかやっちゃいましたー?」
「今はいいからねそれ‼ 取りあえず命令に“いのちをだいじに”をつけておいて!」
「? よくわかりませんが、はい! 命がけで駆け抜けます!」
他の道を探そうと色々熟考してみたが。
どの道も大岩が転がり、逃げ道はどこにも残されていなかった。
四方からくるのは巨大な大岩ばかり。きいてねえぞこんなアトラクション! ……のっぺらなんかなりたくねえよ。えぇとなにかなにか考えないと!
「こんちくしょー!」
こうなったらと、乾坤一擲の賭けにでた。まだ低レベルだからといって、できないはずはないと行動にうつしたまで。
ほらあるじゃん、ゲームで〇〇レベル(低レベル)縛りプレイとか。あれを今やっているようなもの。だからそうと思えばこんなもの……おそるに足りんわ!
自棄になった私は掴んでいない方の腕を使い。
その腕に力を込め迫り来る大岩に向かってパンチした。
「ラビットパンチ!」
バリバリバリバリバリバリッッ‼
巨大な岩は木っ端みじんに砕け、瓦礫となって崩れ落ちる。
うせやろ。パンチやっぱぱねえ。
そうして。迫り来る大岩をパンチで粉砕、粉砕、粉砕
のフルコンボで道を強行突破。全ての大岩を壊し、ようやくゴールへとたどり着いた。
…………と思ったら。
「ようやく出られる。……へ?」
「なんか大きな濁流の流れる音が聞こえてきますけど」
そう思っている時期が私にもありました。
向こうをみると。押し寄せる大きな濁流。
次から次へと一体何なんだよ。
『二重罠だ。大岩が全て破壊されたときに作動するようしかけておいた物だな』
「いいだろ!! そんなクソ要素。……というか勿体ぶらないで全部教えろよ!」
『ゲームは自分で攻略方法を見出すのがたしなみだろ? 愛理君こういうときはあれだろう? 『計ったな! 孔明ッ』と言うのが筋ではないのか?』
「……計ったな狂政ッ! ……って何言わせとんねん! 突拍子もなく飛んでくるから心臓に悪ぃんだよ!」
「え、そうですか? 私はそれなりに楽しめていますけど」
例外も中にはいる。はいとんでも体力を持った最強戦士さんが!
とそれな。
でもおもんないぞこのクソゲー!(難易度的に)
幸い濁流は、迷路内だけ流れる仕様になっていたお陰で。
「穴が見えた! ぬおおおおおおおお!」
「あ、愛理さんん⁉」
迷路の壁をよじ登り、塀の上へと浮上。
塀を足場代わりにして歩きづらくはあるものの、綱渡りのようにしてせっせと進む。
『考えたなさすが愛理君だはっは!』
甲高い声が耳から聞こえてくる。笑うなうるせえよ。
濁流の道を辛うじて脱出し事なきを得た。
☾ ☾ ☾
苦難を乗り越え、ようやく最上階へとやってきた。
修羅場の連続、裏ダンジョン並に長いその進路は私の脳裏を強く刺激し、気づけば体は疲弊しきっていた。もうやめてくれ愛理さんのHPはもう既に0だぜ?
「はあはあ散々な目にあった」
『愛理君大丈夫か? クイックセーブかオートセーブしたか? レポートは小まめに書くんだぞ!』
ゲームの基本中の基本だが。
そんな要素、この世界には微塵もありません多分。
「大丈夫なはずねえだろ! つうかねえだろそんなのガチのゲームほんへじゃないんだからさ! こんなの私以外の人がやっても大パンレベルだよ!」
ここまでくるのに他散々な目にあった。
生まれてこんなに動いたのいつ以来だろうか。
小学校のころシャトルランを走って以来だと思う。
……確かあの時先生にいっぱい走れたとか、褒められたこともあったけど。
他の私より、記録が上なヤツがいてそのときイラってしたもある。
『すまん私の調整ミスでこんなことに……報酬は倍にするから許してくれ』
それは嬉しい話だけど。
帰る時もあんな面倒くさい、トラップだらけの道を歩かないと行けないわけでしょ?
めんどくさ。
なんとかして簡約できないかな。
例えばテレポート地点があったりさ。
でもあともう少しだし、頑張ってみよう。
目の前には、何やら封印されていそうな厳重で鎖で縛り付けられた大扉。
なんだこの先、魔王か何かいるのか。
そういえば、この世界に魔王とか大魔王っているのかな、いるとすれば1度会って手合わせ願いたい。
ちょっとした腕試しとしてね。
でも"この世界の半分をやろう"とか言ってこないよね?
はいみんなのトラウマ。そんなことはさておき。
「厳重そうな扉ですね」
「これってどうやったら開くの?」
『愛理君、君なら分かるだろ、“あれ”を言うんだよ』
いや知らねえし。“あれ”ってなんだよ。
というかこのダンジョン。
色んなゲームや、作品の要素てんこ盛りにしたクソダンジョンだから。
情報処理が追いつかねえわ。
なに? まだそんな物があるというの?
とりあえずある言葉が脳裏に浮かんだのでそれを言ってみることにした。
そう誰でも知っている、古の言葉を。
「それってさ……“開けごま!”とか?」
ズズズッ。
「え」
その一言で扉が開き、道が解放される。
安直すぎじゃね。
浅知恵で思いついた適当な言葉だったが、まさかこれが合い言葉だったとは。
『どうせこの異世界にすむ人々はその言葉は知らんからな。……で私の世界に伝わるこの言葉にしたのだよ』
「まあでも開いたことですし、先に行きましょうか手がかりあるかもしれませんよ」
シホさんのその言葉に導かれるように最深部の部屋へと入る。
本当なんでもありだな。このダンジョン。
読んでくださりありがとうございました。
どんな罠を作ろうかと考えてみましたが、結構悩みました。あれでもこれなんか書いてて楽しいわとここの中で思いつつ3人の会話を上手く成立させつつダンジョンに潜らせたわけですが。
狂政の作ったこのダンジョン実は冒険者の間でまだ知れ渡っていないダンジョンでして、いつかその鬼畜さをこの世界に広める為このような難しさにした、そんな設定です。
彼ながらいつか名をはせ知名度のある有名なダンジョンにしたいのが本音ですはい。
さて次回はいよいよダンジョン大詰めです。長々と愛理達は初心者ながらも鬼畜ダンジョンに潜ったわけですが問題点は果たして一体なんなのか。そして愛理達は無事生還できるのか。まあ強いんでまず死ぬことはありませんけどね。
では次またお会いしましょうではでは。