158話 うさぎさん達、気晴らしにキャンプする その1
【仕事が手薄になっても呑気こいたら負けやろ】
この前における二手でクエストを成し遂げてから数日。
なんというかまだ腑に落ちない部分も自分にあり、もう少し骨のあるヤツと戦いたかったと染み染みと感じていた。
「今日も立て込んでいますね、以前より人だかりも増長しているような」
ギルドの方へ赴くと案の定、冒険者が群集を作りながら目的にあったクエストをお探し中。
その様子はまるで、スーパー特売日における、詰め込み放題している様子と酷似していた。遠巻きで見ているが群がりようが甚だしい。
特売でもやっているんですかね、ありゃ戦場だな異世界特有の固有結界でも張られていそうな。
「戦士、魔法使いになにあの大学院みたいな格好してる人は?」
大学生が着ていそうな黒みがかっている制服をきており、頭上には角帽がある。
暇ついでにどんな職業柄の冒険者がいるのか、指差していたが見知らぬものがひとつ。
なんじゃありゃとその人物に目を凝らしながら熟視。
【鑑定師 :本物の有無を見極める職業。戦闘面では非力なのでパーティを組んで行動する者が多い】
うむ、なーほど。あれはよく分からないけど鑑定師という、偽造を見極める職業とAIさんは答えてくれた。
これでムゲンダイセキの本物かどうか見極められるのもいいし……それならいっそ。
【因みに私はそういう鑑定機能は内蔵されているので勧誘するのはご不要かと】
ガタン!
ずっこける。
「……なにやってるんですか愛理さん。急に転んだりして」
「大丈夫? たんこぶはできてないみたいだけど、お、起きて」
「あ、あぁ大丈夫だよ2人共。ちょいと変な地響きがしたもので!」
なんだこの下らない返答は。
二人がなんだか目遭わせながらこそこそと耳打ちで話しているが、ちょっと変な妄想やめてくれないか。
「……そ、その愛理疲れているんじゃない? この間のクエストもあったからきっとその疲労が残っていたのよ。ほ、ほら愛理コレ使ってカジノ行きましょうよ」
と袋から数十枚ほどの金貨を私に見せてくるミヤリー。
おい、ギャンブル治ってなかったんかい。これはまたしつける必要あるかもなぁ。
「いや行かねえよ。絶対それ溶けるに決まってる!」
「え、行かないの? ……ちぇ愛理が行かないなら私も行かない」
そんな拗ねることかぁ? ほら顔に書いてあるぞ私めっちゃ行きたいってさ。
「ミヤリーさん揶揄うのよくないですよ。愛理さんもこれでも必死に考えているんですから。ねぇ愛理さん」
あぁいや、シホさん分かりきったように顔を近づけられても困るだけなんだが。
断言しておくけど、私ノープランよ? 朝間ゲームやっていたら気づけば14時になっていたくらいに時間配分下手くそだし。
でもここは素っ気ない対応で誤魔化しておくとしよう。
「ま、まあね。な、なら受付の方にでも…………ってどれも埋まってるじゃあねえか」
いつも通りにお姉さんにクエストを頼んでもらおうとしたが、どの列も混み合っている。
必死で山積みされた紙を見ながら冒険者の話を聞くお姉さん達。
「今は……そうですね、このクエストと、こういうクエストがあります」
「ですから、この場所は最低Aランク以上の人が2人以上は必要ですって。ひとりでいくなんてすぐ門前払いされますよ?」
「ダンジョンの構造、毎回変わるようなので非常に攻略は困難だと思われますけど」
と各々目的はまばらであった。
後を控えている冒険者達はブーイングを放っているが、はよせえと言いたいのだろう。
……行きたくても行けない状況。困ったな。
「はぁどうしよう。クエスト前提にきたんだけど、早朝早々……あこれダジャレじゃあない、詰みかよ!」
「そうねぇ何か良い策は」
「考えるのはいいけどギャンブルはなしで」
「……」
しばしの沈黙。
黙々と考えにふける私達。
ひとまず外の空気を吸うため外に出る。……心境は変わらず唸る声しか聞こえない。
「……あ、そうだ」
と開口一番に頭上にの電球が点いたような閃き反応したのは、スーちゃんだった。
「……暇なんで山でも行ってみませんか? 色んな美味しい物がとれるらしいので」
「山ねえ。凶悪なモンスターでないならおふのこ。ふたりはどうよ?」
間を置かずふたりはうんと首肯してみせる。
オッケーのサインだ。
このまま山に直行するのは傍からみたら、無謀のように思えてくるかもしれないが私のツール無限収納ボックスがあれば事足りる。
「そ、それじゃあ、ある程度必需品を買い集めてその山に向かうとしますか」
かくしてクエストの受注は本日取りやめにし、提案された山へと赴くことにするのであった。
☾ ☾ ☾
街中で山に必要な物を買い集めた。
テントは以前に私が作っているから問題なし、緊急用の道具や戦闘用のアイテムの購入を済ませいざ山へと。
移動手段はスーちゃんの移動魔法。
緑豊かな自然の山が目前に高々とそびえ鎮座する。
おぉでかいでかい。
「でかいなあの山」
「……なんでも色んな山菜が多いことで有名な山らしいです。中には非常にレアな食材も」
「スーちゃんヨダレでてるからね」
歩きながらスーちゃんが説明してくれる。
日本ではお高い松茸とかも大量に採れたりするのかな。
そういや外国の松茸はある程度時間が経過しているから安く売り出しているんだとか。
※妹知恵袋: 海外の松茸は採取してからある程度日数、つまり時間が経過していて香りや食感が落ちているわ。松茸が高いのは人工栽培ができないことや、年々アカマツ林が減っているなど理由は様々。
「……言い忘れていましたがみなさん、くれぐれもキノコを採る際は必ず私に一言断ってくださいね」
「え、どうして?」
「どうして……ってミヤリーさんそれくらいわかりますよ、そう私だって」
「ど、どゆこと」
山を知らないにわかが言うセリフを吐く棺桶娘。おいこら触らない方がいいぞ危険そうな物はとくにだ。
スーちゃんはそのことに最善の注意を促すよう訴えているわけだ。……幼いながらもやはりこの子偉いなぁやっぱり用心は大事だよね。
「……毒キノコ知らないんですか。食べたら死にますよ……ってミヤリーさんは大丈夫でしたね。蘇生すればすぐ治りますし」
「いっそのことわざと蘇らせず棺桶に眠らせるのもひとつの手かもしれないぜ?」
「……ほほうその手が」
「「ちょちょちょちょちょ‼ ちょっと待てぇぇ‼ 人を死体人形みたいな言い方言わないでちょーだい」」
あ、切れたぞこいつ。
本のジョークで言ったつもりがどうして真に受けるのか……はぁ困ったなぁ。
「なによ愛理肩をくすめて。……まさか私を見殺しにする気じゃ」
「うせえよ。さっきのはジョークだって軽めの。……でもさひとつ言っておくよちゃんと山道は注意しながら人の話をちゃんと聞いて動くこと。 いいね?」
「…………う、うんわかったわよ。それじゃスーちゃん何かあったら聞くわね」
なんかこう、また自爆特攻しそうなミヤリーが気になってしょうがないが、至って素直に聞き入れてくれた。
色んな山菜がある、その言葉に胸を躍らせながら私達は歩く。美味しい食材を求めて。
あ、飯テロの作品に路線変更とかないからね、それだけは理解してくれ。
呑気そうに私達が山の付近を歩いていると1本の看板が。うん? これは。
『⚠注意 バーサークベアーにはご注意を。命が惜しいなら慎重に戦うか逃げましょう』
いやもうこの1文から嫌なにおいがプンプンする。
名前からヤバ目なイメージ。く、熊かぁ。
首をはねられた事例をテレビでよく聞くが凶暴な生物だぜあれは。
時速40キロぐらいで走り、その噛む力はなんと人間の約7.5倍にも及ぶ……殺傷力高くて草。
そんな熊に怖ず怖ずと震えながら山へと登るのであった。