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留年になったので異世界生活することにしました  作者: 萌えがみ
第9章 うさぎさん遙かな高みを目指せ
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156話 うさぎさん、二手に分かれて行動する その8

【非常用の電気はちゃんと使おうね】


 シホさんに便乗し、私はサイドテーブルから本を片手に取り読書に浸る。

 古い書物ではあるが、ちゃんと言語に対応しAIさんが自動的に翻訳を行なってくれた。

 私小説っていうの? 自分について語る小説みたいなあれ。そういう系の本ばかりだからイマイチピンと内容を飲み込めない。


「なんだよ『変態に関する哲学』って。これただの馬鹿な語りしてるクソ長作文じゃねえか」


『変態とは変態である、そう変態は変態でも……』


「ってこれ」


 読み進める度、私の思う変態と本書に書かれている変態は別の意味だと理解した。

 よもやこれは、人に関する変態ではなく──。


『完全変態と不完全変態は……蛹化するかしないの違いで……』


 いや、昆虫の方の変態かーい!

 くどいように人のことを最初書いてあったけど、それは単なる尺稼ぎで本書は昆虫の関する──完全変態と不完全変態について書かれていた小説であった。

 勘違いにも程があるだろ、なら昆虫なら昆虫って書けよ人のことばかりこの作者語っているから勘違いしたじゃねえか。


「違う変態じゃん。くだんね他のやつにしよっと」


 まんまと騙されたぜ。

 他にもこれだと思う、本を片手にまた読み始めるがどれも面白そうな物は見当たらずで、ただ単にくだらないことが書かれている小説が多かった。

 昔の人ってこんなどうでもいい話をよく書けたものだなあ。よほど暇だったのかね。


「どうです? そちらの方なにかありましたか?」


 無我夢中本を読んでいると、後ろからシホさんがこちらの方を向いて聞いてくる。

 彼女はというと、手元を見る感じ収穫はなし。


「ううん、なーんにもない。本の中身はすごくどうでもいいことばかり書いてあったし」

「そうですかこちらもです。花弁らしき残骸が散らばっていたのですが……少し残念な気がします」


 ダンジョンではそういうのよくあるよな。

 気になる部屋入ったら、ろくな物のひとつもなかったり実は予め仕掛けられていたトラップだったりね。

 見渡す感じ、宝箱……はあるが箱は開いた状態。近寄って期待無しに確認してみるが。


「……やっぱねえ。まあ知ってたけど!」

「相当年層がやはり経っているようですね。昔はさっき思った通り宿屋、もしくは避難場所として昔の冒険者さん達が使っていた施設なのかもしれません」


 うーん。だったらここはかつて地下に作られていた通りや街だったのかな。

 シェルターみたいに施設が予め設けてあったということは文化があったということになる。

 何かしらの理由で街が滅び、モンスターが住み着くようになりいつしかダンジョンに。

 まあどの世界にも言えることはただひとつ。時代の流れには逆らえない理屈が成り立ちそうだ。


「皮肉だねぇ。それじゃあさっさと先に進もうか」

「はい……って今気づいたんですけど天井にもランプついていますよ」

「あ、ホントだ。引き糸も付いている。……うんということは」


 電気工学はさっぱりだが。

 私はここで閃いた。

 疑似的に通電するように電気を作ればいいんじゃねと。

 私は天井のランプに向かって電気を放つ。


「ほい! あ、点いた」


 ボルトの電気をそのランプに向かって放つと、一瞬ではあるものの光った。

 どうも電気としての機能はまだ息しているらしい。


「シホさんちょっといいこと思いついた」

「思いついたってなにを? そんななんの変哲もない壁に立ったりなんかして」

「まあ見てなさいな」


 端のほうにあるごく普通の壁。

 特に意匠もない平等でなめらかな壁である。だからこそこれに利用価値があると私は思った。


 壁に向かって作り出す能力を使う。

 すると、小型の長方形型のくぼみが出現する。……形状の中に横棒が左右に入った穴が上下左右合計4つほど。

 そうコンセントだ。


「な、なんですかこれは。見慣れぬ物ですが」

「後は主電源を少し弄って修復」


 ランプの切れている箇所も能力を使い修復する。コンセントが刺さるようにプラグ型の形状に変える。これでちゃんと通電するはず。

 天井を見る限り、ランプの配線は外の廊下へと続いている感じ。ここを直せば辺りは明るくなるはずだ。


 改造したランプのプラグを差し込み口に挿す。ランプに付いている引き糸を再び引く。


 パカ。


「! ひ、光りましたよ! しかも廊下も……な、なんですかそれは」

「まあちょっとした未来的な電気道具だよ」


 この部屋のランプを先頭とし、外にあるランプも順番に点灯していく。

 お、すげー雑だけど思いの外上手くいったぞ。

 異世界の人には少し、説明が難しいものではあるけど私の思い通りに動いてくれてよかった。

 やはりこの能力すげー反則だなぁ。


「……どうやらこの電気、このダンジョン全体に通ずる照明だったみたいですね。視野が開けたことですしいきましょうか」

「おう、これならモンスターに怯える必要はないな」


 洞窟に光が戻ると、私とシホさんは下へと階層を降りていくのだった。


☾ ☾ ☾


 ~15F~


 下までというか最下層まで照明が続いていた。

 モンスターの数もそこまで多くなく、数も少数と言ったところ。

 ボルトの機能が意を成さなくなったので、ノマアサにチェンジ。

 ストラップに付けてある銃を挟持(きょうじ)させ、シホさんと遠くを垣間見て先へと進む。


「そんなギリギリな位置にすがってどうしたんですか? サオ姉さんじゃあるまいし」

「え、私サオさんみたいに見えた? ……ってサオさんもこんなことするんだ」


 やはりこの世界に銃という物は存在しないみたいだな。レトロな銃はマケット銃とかそこら辺は知っているけど、あれっていつの物だっけ? 自分の中で海外版の火縄銃と勝手に決めつけているけど……まあいいや。


「様子を伺っているんだよ。迂闊に突っ込んだりしたら地雷踏みそうだしね」

「注意を怠らない。さすが愛理さんですね、私に出来ないこと平然として、そこにシビれ憧れます」

「ほ、褒めるのは後でいくらでもいいからさ、お、なんかいる」


 前方に3匹。


「あれはデビルですね。守りの方低いですが攻撃と素早さはずば抜けで高いです」


【デビル 解説:小型の下級悪魔モンスター。普段何組かで行動している。1人で戦うと非常に危険】


 集団ミンチするヤツだこれ。

 でもそこまで強くはなさそうだし……あ、これフラグじゃあない。

 取り敢えず照準を定めて。


 二足歩行の悪魔モンスター3体へ矛先を向けた。

 相手はこちらに気づいていないようだから今がチャンス。


「シホさん、もし私がヘマしたら遠慮なしに突っ込んで行っていいよ。私は移動しながら狙い撃つ」

「了解です……先に攻撃仕掛けていいでしょうか?」

「そうきたか。よし隙を突いて狙い撃つからよろしくね」

「合点!」


 と少々本来の目的とは少しずれたが、彼女が率先して前に出ようとしたので阻むことをやめた。

 彼女は戦闘に関しては安心できる強さだし任せておける。


「では行って参ります。たああああああああ!」


 シホさんは果敢にデビル3体に向かって剣を鞘から抜いて攻撃を仕掛ける。

 軽快で油断も隙も見せない凜々しい動きがデビルの間を開かせた。


「ケケ!!」


 奇声と共に3匹は彼女を一点に攻撃を仕掛ける。

 追い切れない速さ、それは風と見間違えるかのような素早い動きで。

 だが彼女は動じなかった。焦り1つ見せない仕草。

 そして一寸の攻撃が1匹のデビルを捉え。


「そこぉ!」

「ケケ……」


 なんとデビルの素早い攻撃を、まるで見えているかのように手で掴み抑止させてみせた。

 え、全く動き見えなかったんだけどなに? 1コマ跨ぐ間に一体何が。

 私はそのうちに前へ、前へと前進して身を乗り出す。


「ケケッ!!」

「へっようやく気づいたかよウスノロ」


 こちらの存在に気づいたデビルは私に攻撃。

 瞬時にラビット・ライフルを構えて発砲させ攻撃。


「ラビット・ショット!」

「ケケー!」


 私の撃った火球はデビル1匹を仕留め遠くへと跳ね飛ばす。まずは1匹。

 残す2匹相手に私達は慎重に策を練ながら次の一手を考え動くのだった。


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