150話 うさぎさん、二手に分かれて行動する その2
【役割分担は計画的にやってのけよう】
とある森の奥にポツンと佇む階段。
見るからに怪しい雰囲気を出したその下には仄暗いダンジョンが広がっていた。
ボルトにパーカーを変えて周囲は明るくなっているが道は深く続いていた。
「お二人大丈夫ですかね? 無理されてないといいですけど」
「大丈夫じゃない? スーちゃんもついているし安心だって」
話し合いの結果、私の案が通り。
私とシホさんはダンジョンに潜り、スーちゃんとミヤリーは平野の方を探索することになった。
最下層まで潜るというところが、少し面倒くさい気もする。まあ金のためだし多少の危ない橋は渡らなければいけない。
こういうセリフは男いうものなのだがいや今はそんなことどうでもいい。
「おっとなんか仕掛けがある」
暗号式の壁。
四角の壁に6つの窪みがある。数字で1〜6が振られておりいかにも謎解き要素を露わにして。
私こういう謎解き苦手なんだよな。なぞなぞとか頭痛くなってくるし。
「数字が書かれていますね」
「だね、ちょっと試しに数字を触って」
真ん中の5が書かれた窪みを押す。
すると淡い光が一瞬発光し。
「およ、数字が移動した」
「こ、これは」
5を押した位置が1の場所へ。……1の場所が5の位置へと移動する。
あーあなにこの規則性。私数学とかマジで嫌いよ。ナンプレとか頭痛くなる品物だから。
思い出したくないなぁ。数字の入ったノートをひたすら書き込む作業なんてもう2度としたくない。
「ごめん、詰んだ。私こういうの苦手なんだよね。堅苦しい計算とか私苦手でさ」
「あぁこれですか。実はですねこれちょっとした」
シホさんが自信ありげに前に出て、窪みをいじり出す。
5の位置を真ん中へ。1の位置を左下へと順番に彼女は器用に整えていく。
3 4 6
2 5 7
1 9 8
そうすると崩れるようにして壁はなくなっていき、消滅。
え、どういうことなのこれ。
「どうやったの?」
「えぇと盗賊の人に教えてもらったんですけど、5以外を時計回りに下から1、2、3という順番で並べると開けるみたいですよ」
なぜ5だけ……。ん?
今更ながら先ほどの配置をよーく思い出してみる。
真ん中が5、あとは順序数。この配置どこかで見覚えが。
(いやテンキーじゃねえか)
咄嗟に思いついたのはテンキーの配置だった。
テンキーの真ん中5は出っ張りがありそれを真ん中として捉える。そして、その他の数字を左したからシホさんが言っているように1、2、3と揃えていく。
真ん中の5の数字はすなわち5(中央値)は時計の長針もしくは短針に見立てており、それ以外は順番通りに(左下から)並べてくださいという仕掛けであった。
うぅなんか一本取られたような気分。
シホさんてそれなりに頭もいい方なのでは。妹がいたら高笑いされそうで。あぁもう愛理さんは考えるのをやめた。
「し、シホさんすごいね。私計算苦手でさ簡単なやつしか分からないよ」
キッズとかいたら小学生でもできるよなどと揶揄されそうだ。
仕方ねえだろ苦手なものは苦手なんだからさ。
シホさんは鼻で笑うことなく、笑顔で言ってくれる。
「まあ各々得意不得意ありますからね。私は気にしてませんよ」
「シホさんやっぱりあなたは聖人だよ。この世の誰よりも優しい」
少しばかりかだいぶ頭を悩まされたが、彼女のおかげで辛うじて突破。
シホさんいなかったらプッツンして自棄になり壁をぶち壊していたところだろう。
次はこういう計算系の仕掛けじゃなくて猿でもわかるような仕掛けであることを祈るばかりだ。
☾ ☾ ☾
〜一方その頃〜 スーちゃん視点
愛理さんに言われた通りに平野の方に向かいました。
広大な野原を景色にし、巨大な岩々がそびえ立っています。
「……ミヤリーさん注意してくださいね。ここ結構先が尖っている岩がありますから」
「わ、わかったわ。っておわっち!」
崖から野原にかけて下向していきます。足場は凸凹とする岩と先鋭な岩が所々たくさんあります。
ミヤリーさんは私の注意に応じると、目の前にある尖った岩を片足で踏まないよう避けて見せました。
「……だから言ったじゃないですか注意してと」
「仕方ないでしょ。岩だしどれも同じような形にしか見えないわよ」
まあ確かに? 色は同じですけどよく見たら形や形状全く違いますよ。
下っている最中なのですが中枢部にもまだ到達できていません。
見下ろすと、下まで続く崖が見えます。今すぐにでも落ちそうなくらいに場所はとても危険です。
しばらく歩いていると、大きな大岩が。木と同じぐらいの大きさをしており、それが私達の道を塞ぐようにしてあたりには巨大な岩、岩、岩と連なるように待ち構えてました。
他に道はありません。さてどうしましょうか。
「何この岩の数。仕方ないわそーれぇ!」
ミヤリーさんがいつものように両手に持つ剣を交差させ、黒炎のオーラから放たれる剣術を使います。
カーン!
しかしそれは強固でした。彼女の一太刀でも切り裂くには至らず剣を弾くような硬い音が木霊しました。
幾重にも技を繰り出しますが結果は変わらずで、とうとうミヤリーさんはその場で蹲り。
「もうだめよ……おしまいよぉお!!」
と拳を地面に叩きつけながら顔を伏せながら弱音を吐きます。
こういうのを不可抗力というのでは? 彼女が手詰まり状態なので私は前に出てミヤリーさんに言いました。
「……ミヤリーさん下がっていてください。ここは私にお任せを」
「す、スーちゃん! やってくれるの!? もう小さい見た目しておいてかわいいんだから! 好き好き好きよ!」
「んもう! ……わかりましたからしがみつくのやめてくれません? ……魔法が撃てないので」
「あ、ごめんスーちゃん」
切り替えが早くあとは私がやるよう彼女の方に言うと、ミヤリーさんは私の足に食いつくように張り付いてきます。危ないのでと私が注意を促すとものわかりいいように私の後ろに下がりました。
キラキラさせた眼差しは私のプレッシャーを誘い同時に気気まずさを感じさせます。
「……ではいきます」
一度大きく息を吸い、岩との間合いを数センチほど置きました。
今から使用する魔法は、爆発系の魔法です。
近接から使用すれば巻き込まれる恐れもあるので離れた方が無難です。
私は詠唱を始めると、魔法陣と共に岩一面を取り囲むぐらいの光ができあがりました。
準備を整え杖を思いっきり振り払うが如く帽子を支えながら唱え。
「マグナ・ノヴァ!」
巨大な爆発が轟音と共に炸裂し、一面を包み込みました。
その爆発によって岩は、砕かれるように光の中へと包み込まれ消滅。
爆発したあとには黒煙が上がっていました。
「おぉすごいわね。スーちゃん! スーちゃんって魔法使い!?」
「……あの魔法使いなんですけど」
苦笑いしながらも、私とミヤリーさんは下へと下っていき平野を目指すのでした。