149話 うさぎさん、二手に分かれて行動する その1
【求人票の詳細を見る際、ブラックかホワイトの区別をするにはコツがいる】
ギルドに顔を出すと、いつも通りに冒険者達がクエストの掲示板を見張る。
群集を作りながら各々にあったものをとり手にとる。
「あーあ、冒険者ニキ精が出ますなぁ」
「……クエスト受けないと1枚も稼げませんからね。我々冒険者にとって休む時間はあまりないですよ。……気がついたら袋の中には金貨の1枚も入っていなかったり」
「すみませんスーさん、私みなさんと会う前そんな貧しい生活送っていました」
間に入るようにシホさんが乗っかってくる。
あそうそう。困窮な生活を余儀なくされていたよな。腹ペコ云々以下略はさておきこの冒険者の中に彼女の被害にあった人も。
決して彼女を悪く言っているわけではない。私が言いたいのは“お気の毒に運がなかったねぇ”みたいな意味合い。
でもさ、スーちゃんそれ就業中のやつに言ってみろよ。はぁとか冷めたような返答しか返ってこないぞ多分。
「100年前とかは、パーティにいた魔法使いが全部こういうのはやってくれたわよ」
「そのときお前何やってたんだ」
100年前のこの世界についても非常に気になるんだけど、ミヤリーって昔は今と変わらないほどのドジっ子だったのかね。
それはさておき、委嘱するって私はちょいとするの嫌なんだよねTPOだけど。
借り作りとかフェアじゃない。いつかの金返せやゴラァ〜!みたいなことを言われ胸ぐらを掴まれたりして……。おぉ怖い怖い。
因みにさAIさん、時間を遡ることってできるかな。
ループ物だと首を傾げる内容が押し問答で繰り広げられるができたりは……。
【ダメです。歴史などに支障が出たりするおそれがあるので】
で、ですよねぇ。タイムパラドックスは色々理論があるけど、正直そうなるくらいなら自重するべきだな。
とミヤリーの話に戻し。
「ギャンブルでスロットしてたわよ。膨大な掛け金したけど全部飛んじゃったけど」
「おいおいお前、ゲームでもフラグ立てるんじゃあないよ。というか少しは手伝う気持ちにはならなかったの?」
「何言ってるのよ。私よくわかんなかったし、でもいつもちゃんとしたクエスト拾っていてくれたわよ?」
これ例の黒歴史というやつなのでは。
少しはその魔法使いさんのことを考えてあげてよ。
「……まだ混んでいますね。誰か取りに行ける方は」
すると即座に挙手する人が。安定のシホさんだった。
「はい! 私がこの中だと身長が1番高いのでここはお任せを……!」
と早足で駆け出していくシホさん。
〜数分後〜
「ぐ……私としたことが。軽く見ていました」
人混みの中からボコボコな状態になったシホさんが帰ってきた。
手元には何も持っておらず手ぶら。
「……シホさんならあれぐらいの人混みでも平気なのでは?」
「そうですけど、私が力出してしまうとみなさん大怪我してしまいますので敢えて加減しました。まあその結果他の人に押され追い出されたんですけど」
やはりこの人はいい人だ。
人のことを気遣って……それはそうと無茶しやがって。
「んまあ私がこうなったら取りに行くよ。体小さいしね」
と切り出すと、ギルドのお姉さんが向こうから。
「ステシアさん! ステシアさんはおられますか? お手紙が届いていますよ。ステシアさんステシアさん……」
口に手を当てながら大声でコールするギルドのお姉さん。
ステシアって恐らくスーちゃん以外この街にいないよね。……でも存在を忘れる呪いがあるからこれは。
「……そうか宛先が書いてあるから私の名前わかったんですね。……すみません愛理さんちょっと行ってきます」
「あ、うん行ってら〜」
するとスーちゃんは手紙を取りにギルドのお姉さんへ。
「い、行っちゃいましたね」
「んだね。でもどうして彼女のこと認識できたのかな」
「あれじゃない? 手紙って宛先が書いてあるから」
あーなる。
そういうことか。それなら彼女の名前だけなら分かるはずだ。
手紙には必ずしも宛先の名前は表面に必ず分かるよう書いてあるしね。彼女の名前が呼ばれたはずだこれが。
……スーちゃんは手紙を片手に持つお姉さんに必死で声をかけている。なのに側にいる彼女に気づかず相変わらずこの呪いは健在の模様。
するとようやく彼女の存在に気づいたお姉さんは驚嘆してその手紙を渡した。
空気が薄い人より空気がやっぱり薄いのかな、彼女って。
でも私達はちゃんと認識できているけど、この差は一体。そこは気にしたら負けということにし。
「あ、帰ってきますよ?」
小幅で歩き開封した手紙を読みながらこちらの方に帰ってくる。
まじまじと目を泳がせながら。
「……帰りました。私の大切な人からでした」
「大切な人? お母さんとか」
しかしスーちゃんは首を横に振り。
「……いえいえ、旅の最中出会った偉大なお方です。魔法がとてもお得意な方です」
人のことを詮索するのは良くないが、ふふとスーちゃんはその手紙を見ながら欣喜としていた。頬を赤らめている顔はとても愛嬌があった。
何か嬉しいことに違いないだろう。
「……ところで愛理さん、ギルドのお姉さんからついでにこんなクエストの用紙をもらいました。……場所が二つに別れているようですが」
ナイスチョイスだスーちゃん! えぇとなになに?
スーちゃんが持ってきたクエストは場所が全く異なる場所2か所を指定したモンスター討伐の物だった。
「え、まぢ? というかここ全く逆方向にあるじゃん平野と地下にあるダンジョンねぇ」
最初の場所はごく普通の平野なのだが、問題はもう片方。
全く別方向にある、かつ奥深い森にあるダンジョン。仕掛けやギミックもたくさんあるようで難易度もそれなりに高い。
1日でみんなと一緒に行動しようとすれば、カラスが鳴く……つまり日が暮れる。
「うーんどうしようかねえ」
外に出て家へと帰りじっくり甚だ考える。
他の誰かに渡すのもいいかもしれないが。
「スーちゃん移動魔法でなんとかならないかな」
「……この位置だと場所が不特定になるので、使うのは非常に危険です……魔力も道中相当使うことも頭に入れると……やはり1日では無理そうです」
シホさんは。
「マックス・ヘルンがもう1匹いたらいいんですけどね。さすがにこれは」
天下最強の馬マックス・ヘルンの速さを持ってしてもこれは無理ゲーとのこと。
期間に定めはないのだが、それなりに報酬も大きい。
大金貨50枚だってよ奥さん。……太っ腹な依頼主だ。
どうせなら1日でクエストを達成したいのだが、さてどのようにして策を取ろうか。
愚考な考えは控えたいな。
例えば、森の一面焼け野原にしたり……これから毎日森を焼こうぜ。
はたまた月を落とすとか……いやSF作品見過ぎだこれは単に。
すると頭から閃きとなる雫がポタリと降ってくる。
「あ」
「? どうしたんですか愛理さん?」
私の何か思いついたような表情を見て、仲間一同こちらを瞠目させながら覗き見る。
待て待て慌てなさんな。と私は手の平を前に出す。
「ちょいとさ、戦力は多少落ちてしまうけど」
「勿体ぶらないでいいなさいよ。愛理が何か思いつくってことは何か得策に違いないわ」
狂信じゃあないかミヤリーさん。
そう言われると余計プレッシャーが。
私が思いついたのは。
単純で、シンプルなごく普通な考え。
危険を避けたりする際する正当……かは分からないけど悪くはない方法だと思う。
それはズバリ。
テーブルをパンと叩いて確言し。
「二手に分かれて行動しよう。分担はこれから決めるから詳しく話すよ!」
私が考案したのは1つ。
二手に分かれて、各々役割をするそんな案を仲間に願い出るのだった。
粗削りながらも出た私の作戦。さあて上手くいくかな。
いやつうかいけいってくれないと困るよマジで。