147話 うさぎさん達のとある1日 その1
ようやく最新話出せました。
とある日のクエストの様子を描いています。
【ひとまずレベリング甚だレベリングなう】
クエストを受注しとある草原へ。
ある素早しっこい敵を10匹ほど倒せとのことだが、もの影らしき物は見当たらず。
戦ぐ風を受けながら、歩一歩仲間と共に茫漠とした地を踏みしめていた。
「……反応はありませんね。……ラットというネズミのモンスターらしいですが私が見たところ確認はできません」
スーちゃんがなにやら魔法で杖から波打つ光を発しながら敵の出所を探っている。……インヴェスという探知する魔法らしい。
広範囲の魔力波を周囲に発し、探している物(有機・無機)を見つける。探している対象物がこの範囲にいた場合杖が激しく点滅し、方向を示し位置を的確に教えてくれる探索にはうってつけの魔法である。
私の使うラビット・ナビと酷似した性質の魔法だが、こちらは1回出会ったり入手している物でないと使用できない。例えば未入手アイテムなどに対しては使えない。
まあぶっちゃけた話ナビを調整版といったところ。
「そのインヴァスって探す魔法なんですよね? ……1度見た物じゃないといけないと?」
「……えぇそうです。因みに障害物だと魔力を弾いてしまうので前に岩があったりすると関知できません。……上級魔法ならこの有無問わず使えるのですが」
要はアンテナやWi-Fiみたいなものなのか? すなわち障害物が目の前にあると電波が違う方向へと反射してしまうということ。
この上位互換系ならって……あるのかい。
「スーちゃんでも的確な位置を捉えるには限度があるとそう言いたいのね?」
「うーん困りましたね……マックス・ヘルンは何か分かります?」
馬に乗るシホさんが愛馬マックス・ヘルンに顔を覗かせ聞く。
そういえば馬の嗅覚って人間の1000倍くらいあるって言われているらしいですよ奥さん。1度仲良くなると嬉しそうに寄り添ってくれるんだとか。
うさぎだと大体人間の10倍……Oh完敗だぜマックス・ヘルン。
主の声を聞いてマックス・ヘルンはシホさんの方に頭を向け鼻息を吐き。
「ヒヒーン……」
「馬でも敵の位置は掴めないみたいですね。この子鼻は別段いいんですけどね」
おま、もしかしてゾウより鼻いいとか言うんじゃあないだろうな? ……でもそんなマックス・ヘルンでもわかんねえか。こりゃ……。
「……? これは」
スーちゃんが遽然として睥睨。彼女の杖が激しく発光している。
インヴァスが反応している?
「……みなさん! どこからかこっちに向かってきます!」
急な声の張り上げに応じ、私達はすっと互いに身を寄せ合うように各個武器を身構える。
パーカーの高性能な聴覚によって約数百メートルから飛びかかってくる、音が1、2……いや5匹といる。
方向は……。
「スーちゃん! あぶない! ガトリング・ラビット・パンチ!」
スーちゃんとミヤリーの前の方に出て、私は連続でラビット・パンチを放つ。
止めどなく軽めのパンチを幾重にも繰り出す。
ドドドドドドドドドドドドッ!!
その方向には空中で丁度中ぐらいのサイズをしたネズミ達と目が合った。
私達の大体下半身ぐらいの大きさしかない奴らだった。
「よし、決まったわ! ……? って居なくなってる!」
が、俊敏な動きを活かし敵は散けるように果敢に避けて見せた。
1匹たりとも仕留められず、攻撃した後には静寂さが草原に広がる。
「ち、すばやっしこいヤツだ」
「でも私はみましたよ。灰色をした中くらいのネズミでした」
「……そうですか? あまりの速さゆえ姿を捉えることができませんでしたが」
ひとまずスーちゃんとミヤリーを攻撃から守ることはできた。
だが一体どこに隠れた? 攻撃した後目で追う暇がなく見失ってしまったが。
「シホさんどこに隠れたか場所わかる?」
「任せてください。記憶力が良い方なのでお任せを。……あの大きな岩の隙間辺りです」
彼女はスーちゃん達の立っていた方向側の向こうにある、いくつもある大岩を指さした。
積み石となっている巨大な岩には数センチくらいの大きさをした薄暗い穴が見えた。
目算だが、拳が1つ塞がるくらいの狭い隙間で、明確に場所を捉えることはできなさそう。
「あんな隙間に? ……ちょっと愛理ソウガンキョウってやつこの前出してくれたじゃない。あれ貸して」
「ほいよ」
ある物をミヤリーに手渡す。
ラビット・ガジェットの機能の1つである、ラビット・バイナキラー。倍率制限なし、数千メートル先の物までしっかりとぼかさず捉えることができる。
随分前には撮影に使ったが今回は用途が違う。
「どうなんか見える?」
双眼鏡を見回すミヤリーに声を掛ける。
「…………」
黙々と唸るような声を出しながら、私の質問に応じず左傾、右傾を見ては拡大しじっくりと観察しているようだが。
その彼女の様子はさながら風呂をのぞき見る……ごほんごほん。バードウォッチングでもしているかのような冒険家のようだった。
しばらくしてバイナキラーを手渡し。
「うーん。隙間とかみたけどね、暗すぎて見えないのよ」
「底は相当深い……ですか」
位置を掴むことはできなかったようだ。
でも確かな確証だが、恐らくあの隙間のどこかに何匹か隠れている。
ラビット・ナビで確認してみたが。
ヘイ! AIさんラビット・ナビを起動させて!
と某スマホナビのように語りかけると、どこからともなくナビが起動。
あれそういえばいつの間にか目瞑らなくても、自然と開くようになったがこれもアプデの影響だろうか?
まあ気にしたら負けってことで確認確認。
あの岩と連なるようにラットの点が重なっており、位置が特定できない。
小動物特有の体をフル活用とした動かし方と見られる。
ち、味なまねしやがって
と私は歯を噛みながら悔やみながらもマップを見つめる。
双眼鏡でも駄目、ナビでも駄目、スーちゃんの魔法でもノーか。
こうなると他の対策が練られないので私は頼りになる相棒の方に顔を向け。
「どうしたんですか? 深刻そうな顔して」
「すまんシホさん、少しまた頼まれてくれない?」
馬に乗るシホさんの方を見つめると、私の困り果てた表情に弱音で視線を向ける。
この状況を打開するには彼女の力が必要不可欠。頼みの綱を今般も頼むことにする。
その言葉を待っていた!
と言いたそうな表情で彼女は、親指を立てサムズアップし応諾させ顔を綻ばせる。
先頭を彼女に託し仲間と共に作戦を練るのであった。