145話 うさぎさん、集団ミンチなう
【こういう応用もありなんじゃね】
「ふむ、なるほどです」
「……つまり今愛理さんが着ている力があれば余裕ってことですか」
順を追って3人に説明する。
まだ試行も行っていないんだけれどやる価値は十分にある。
ミラクルでは分身中、他フォームには変身できないとのことだったが可能だったりするかも知れないと思ったのでやることにした。
AIさんに聞いてみる。
【はい可能です。マスターラビットパーカーの場合欠点を無視できます】
と画面上に技の名前が表示される。
これが専用の技らしい。
【マスターラビット・ミラージュ:ミラクル・ラビットパーカーの分身能力の強化版。分身を多重に増やせる(各フォームにも変身可能)】
因みに消費魔力は0。
実質消費なしで何発でも撃てる。
「よーしんじゃやるね。驚くなよ マスターラビット・ミラージュ!」
どうせなので声を張り上げて堂々と叫ぶ。
目の前に私のシルエットらしきものがたくさん作られ、形が現れてくる。
「うわぁ愛理がいっぱい」
雑踏を作りながら現れたのはたくさんのノマアサ、ストロング、アシッド。……自分で自分をたくさん拝むのは少しリバースしそうな気分になりそうだが。
私が念じるように指示をだすと四方に散らばるように動き出し、モンスター狩りを始める。
「あとは待つだけ。この場から動かずじっと待っているだけで戦ってくれるはずだよ」
「え、もういいの? ……たくさんのあの愛理達が戦って……ってこれじゃ相手が一方敵に不利なんじゃ……」
ミヤリーはどこか敵を気遣うような視線をする。
うんまあ数の暴力というヤツねこれ。
補足だが、この分身で作った各パーカーは常に100倍のバフが乗っている状態で分身といっても本体と何ら変わらない性能となっているらしい。
つまり柔な攻撃で簡単にやられるような貧弱な分身ではない。……私自体が数百体増えているのと同義語だ。
マップ機能を使えばリアルタイムで各個私の状況を確認できる。
「あれほどの数を増やして効率よく戦わせるとはさすが愛理さんですね。取り敢えずゆっくりここで気を楽にして待っていましょう」
少々仲間が言っているように一方的ではあるが、罪悪感なんて微塵も感じない。
いままでのお返しだと思えば、どうってことはない。
~5分後~
「ごめんちょっと下見に行ってくるわ。大丈夫だと思うけど一応ね」
「いってらー迷わないようにね」
仲間に一言断りをいれ私は単独で動くことにした。
変身時間がどうも1時間らしいのでなら惜しみなく戦おうと考える。
位置も把握済み。
テレポーテーションを使い、1番数が多い場所へと移動する。
「マップは…………げッ全滅0で、相手の残り数159!? あのまだ5分しか経っていないんですが!?」
1時間も経っていないというのに997体いた敵は60分もしない内に、838体も倒されていた。
移動するとアシッド、ノマアサ数百体が巨大な甲虫モンスター達相手に戦っていた。
ノマアサ達は飛び上がり回り込むように迅速な動きで、ラビット・パンチからのラビット・ショットを高速で使う。敵の目はその動きについて行けず回転しながら必至で私達を追っていた。
アシッドはウイルスをばらまいて……1体、また1体と腐敗が徐々に進み体が朽ちていく。
うげぇ。前にアシッドに変身したけど、ウイルスの力はそのとき使わなかった。
被害甚大になることを懸念したのもあるけど、こんなエグい威力だったとは。
体はもうボロボロ。溶けかけのアイスみたいに粘り気が強くなっている。
ドボドボドボドボ……。
「咽せそうになるくらい臭いぞ。おぇ」
現在残り体数51……32……20。もの凄い早さで急激に数が減り。
あっという間にここにいる5体のみとなった。
最後は私が自ら躍り出るように前に出て。
「もういいよ。あとは私がやる」
そう指示すると散らばっていたパーカー達が、集うように私の体に吸収されていく。
目の前にたつ朦朧としている甲虫に。
スカイラビットの力を使い空を飛ぶ。光速技を使って一気に加速させ間合いを詰めて軽い拳を連打。
「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!! マスター・ラビット・パーンチ!!」
猛然とした止めどない強力なパンチ5000発の後にトドメの拳一発。モンスターは粉微塵にその場で爆散。
続いて襲いかかった2体の甲虫相手にも。
「マスター・ラビット・ブレイク!」
傾斜した巨大な剣による斬撃により、モンスターの胴体はまっ2つに切断され液体がまばらに緑地へと散乱する。あまり力は入れていないはずなのにこの威力。
現に攻撃している私自身も驚き、これが私なのかと力を疑いたくなっていた。
今度の敵は空中から拳で叩き潰し、そのまま滅多打ちにするように殴り体を歪曲とした原型を留めない体へと変わっていく。おぉ拳のクレーターが100個以上はあるぞこれ。
「仕上げだよどーん!」
片手を回転させながら放ったパンチで最後の1体に拳を当て、瞬間移動で頭部へと回り両手を合わせ叩き落とし。
「マスター・ラビット・カノン!」
強化された強大な必殺技によってそいつの体を消し飛ばした。
☾ ☾ ☾
帰る頃には時間が過ぎ、パーカーの色は通常のノマアサに戻っていた。
戻るのが億劫だったのでテレポ、テレポと連発するように使い短時間でリーベルへと帰還した。
して帰って早々ギルドで仲間と共に食事を摂りながら話す。
「私達が戦ったのって最初辺りだったわね」
「えぇ。後半は愛理さんが敵を完膚無きまで倒していましたよね。……正直いって凄すぎます」
「シホさんはその気になればもっとすごいんじゃあないの?」
シホさんなら私の想像を絶するような隠し玉持っていそうな気がする。
顔を綻ばせ微笑を浮かべ。
「いえいえそんなことは。……言っておきますけど私はあれでまだ本気じゃないですからね」
「……愛理さん愛理さん、私曰くシホさんは他のどの戦士よりも強いと思いますはい」
するとスーちゃんは食事中に身を乗り出し、顔を近づけてくる。
憮然と私は……彼女の食べるサラダに目がいく。……なぜか人参とブロッコリーを皿のは端側に寄せている。……あ、これ嫌いなやつじゃね。
「スーちゃん……近い近いそれと……」
指摘しようとしたら敏感に反応したシホさんがスーちゃんを注意し。
「スーさん? 好き嫌いしていると大きくなるところも大きくなりませんよ?」
なにさらっと視点をスーちゃんの小さな胸に固定しているのさ! ってスーちゃんも胸を隠すような格好で恥ずかしがっているけど……やめろそのシチュエーション! 私は貧乳でもどんなキャラでも大丈夫。……私も少し下品なこと言っているけど……気にしてないからね大丈夫だよ!?
「……ど、何処見ていってるんですかぁ!? こう見えても育ち盛り。シホさんの大きな胸……大きな胸……むn」
思い切った言動が彼女シホさんの胸を言いながら言おうとしたものの、あまりのその大きさに驚愕し気が沈むスーちゃん。あ、嫉妬しちゃっている。
私の隣に座るミヤリーがパクパクと頬張りながら、咀嚼音を立てながら言う。おいお前まず飲み込んでから言えよ。
「くちゃくちゃ……スーちゃんくちゃくちゃ……ちゃんと好き嫌い言わず食べないと立派な魔法使いになれないかもよくちゃくちゃ」
「……えぇとお母さんの本には【教えてお母さんの旅の心得1054 好き嫌いをしない魔法使いこそ立派な魔法使いになる近道】とあります……ふむふむなら頑張って食べようかな」
怖ず怖ずと嫌いそうな人参を口に運ぼうとするスーちゃん。
パク。
踏ん張るように目を瞑って食べる彼女の顔はとても愛嬌があった。
え、偉いな。私なんておばあちゃんの作った蒸しナスとか全然食えなかったんだけど……異世界の子って案外気が強い? ※妹知恵袋:姉さんの単なる思い込みよこれは。昔から好き嫌い多いから
「まあ今日も一働きしたし、帰ったら私が狂政から借りてきたゲームをみんなで一緒にしよう」
「え、本当ですか??」
「ふん、今度はヘマしないわよ」
その夜。みんながそのゲームにはまり過ぎて、オールしてしまったとことをここで言い添えておく。




