141話 うさぎさん、ちょいと馬小屋を作る
今回は新人のマックス・ヘルンに因んだお話です。
【世話するならちゃんと面倒見ないとね】
遡ることムホウタウンの一件前日。
普段の冒険者家業に戻ったわけだが一点だけ問題点が。
「マックス・ヘルンの馬小屋どうしましょう」
「あ、やべすまんシホさん視野に入ってなかったわ」
シホさんの愛馬マックス・ヘルンの小屋を用意しなければならなかった。
それまでどうしていたかというと、豪邸の外にあるかぎ爪状をした箇所に彼を留め、そこにずっと休ませていたわけだが。
因みにリーベルにも共有の馬小屋はあったものの、彼女が可愛そうと言っていたので預けていない。
もう既にマックス・ヘルンはすっかり私達のメンツの仲間入りを果たしたわけだし馬小屋をどうこうすることすらすっかり忘れていた。
「ひとまず木材取りに行きましょう」
「行くってどこに」
そうして彼女と一緒に向かったのが近くにある森。
最初の頃はよくここでシホさんとモンスター狩りに行ったわけだが、今更だけど何をするんだ。
「ほいと」
「え、うそやん」
シホさんは近くにあった数十メートルはありそうな木を、片手ですっぽ抜いた。
あれマンガやアニメの世界なんこれ? 重いとか言わずに平然と抜いちゃったよこの子。
「何驚いてるんですか、これくらい普通ですよ。昔姉さんと山で巨人の住処を一緒に片付けていたくらいですから」
「もしかして、家だったり持てちゃったりする?」
嘘でしょ。まさかうちの豪邸もそんな平然な顔で言っちゃったり……。
「できますよ」
ガタン!
「と言っても私達の住んでいる豪邸はさすがに無理ですが。小さな民家なら普通に持てますよ?」
3匹の子豚に出てくるオオカミさんがこれを聞いたらどんな反応を取るだろうか。……絶対面食らった顔するだろこれ。
私はとんでもない仲間をやはり持ってしまったらしい。いや頼もしい頼もしいけど、どこか末恐ろしい気分。レベル1のキャラが最初の雑魚モン倒してなんらかのバグが発生してレベルが一気にカンストするくらいに今驚いています。
戦闘民族かなシホさんは。
「シホさんはまるで童話に出てくる人物級にすごく感じるよ」
シホさんは瞠目し。
「ドウワ? なんですかそれ聞いたことないモンスターですけど……まさか新種?」
「いや忘れて。まあ昔話みたいなものだから……私も負けてらんないストロングっと」
彼女ばかりにおいしいところを持っていかれまいと、私はストロングにチェンジして持ち前の強力を使いでかい木を抜く。
……重い重い。どうやったらこんなの普通に抜けるんだよと彼女に問いたい。でもまともな返答の1つや2つも返ってきそうにないので思いとどまった。
数分経過。山積みできるくらいの量に渡る木を引っこ抜き、一区切りつく。
今更だけどミヤリーとスーちゃんは家でお留守番中。
疲れが溜まってどうとかって言っていたから今日は休ませている。
「ふうこんなものでしょうか」
「で、これどうやって切るの? 職人……いや匠先生にでも頼んだりするのこれから?」
彼女は首を横に振り。
愛用の剣を鞘から抜き。え、まさか……すげえそのまさかだけど!
「こうするんですよ!」
交差する連続斬擊を使い、一瞬にして1か所にに纏まっていた木の塊は彼女の手によって木材に変えられた。
いやハイスペックわろぉぉぉ! 大工さんも顔負けの能力だよ!
「マンガかアニメそれ以上の経験を私は今体験しているのかも」
私は無限収納ボックスにその木材を仕舞うと、早々にマックス・ヘルンの待つ我が家へと帰宅するのであった。
☾ ☾ ☾
みんなはなんかペット飼っていたりする? 実はここに来る前飼っていたことあるんだよね。……そううさぎ。名前ぴょんぴょん跳ねるからぴょん吉って言うんだけどさ。
まあ理由あって妹に飼育係は任せることにしたわけだが。
何が言いたいかというと、ずばり……ちゃんとペットは責任持って育てようぜってこと。昆虫だったら外国産を手放したりしちゃ駄目だよ? 罰金になるから。
※妹の知恵袋:特定外来生物法と言うわね。特定外来生物(日本産ではない虫)を手放したりすると、3年以下の懲役か300万円以下の罰金を背負うことになるから絶対にやっちゃだめ。
まあそんなこんなでペットの飼育なんて久しぶり……というか馬なんて初めてなんだけど、私にもできるかな。
木材を取り出してポンと。
「それでどうしましょうか。今から作ろうとすると日が暮れますよ」
「任せておけ。……裏に空いてるスペースあったよね? ちょっと大きめの。そこを使って牧場みたいにしようと思う。マックス・ヘルンもそれでおK?」
「ヒヒーン!」
嬉しそうに叫んでくれるマックス・ヘルン。
是非頼むということですか。……分かったぜマックス・ヘルン愛理さんに任せろ。私が不動産よりも優秀なうさぎってことを見せてやろう。
と言い思いつつ、スペースのある緑地へ。
能力を使って念じ。
牧場みたいな広場がいい。藁草が置ける場所も作っておいて。あとマックス・ヘルンの遊べる物もそこに作っておいて。
すると目の前に置いてあった木材が全部消化され。
「こ、これは」
広範囲の馬の広間が作られた。……奥に日向防止用の馬小屋も設置されており環境は充実。ジャンプ台や色んな遊ぶ小道具も設置されているので非常に快適さがある。
「ヒヒーン!」
「どうだいお客さん。これなら文句なしだぜ☆」
とマックス・ヘルンにグッドサインをすると、彼は非常に喜んで柵を跳び越え、ジャンプ台を飛び越えながら遊び出す。めっちゃ気に入っているやんけ。
「あ、気に入ったみたいですね。マックス・ヘルン! よかったですねでもはしゃぎ過ぎて壊さないようにしてくださいね~」
「まあ直せるんだけど。……気に入ってもらえてよかった。それで藁草とかどうするのさどこで取ってくるとか分からないし」
「あぁ街の通りに専用のお店があるので大丈夫です。……確か銀貨1枚で買えたハズです」
「おぉなら安心だね。……元気に走ってくれれば私は嬉しいよ」
私は大声でマックス・ヘルンに呼びかけて言う。
「これからよろしく頼むなマックス・ヘルン! シホさんもそうだけど私達も守ってくれよぉ~!」
「ヒヒーン! ブルルルル」
マックス・ヘルンは1度立ち止まると、尻尾を振り分かったという仕草を私達にみせてきた。
「いい戦力が増えましたね。あ、もうそろそろお昼です何食べましょうか」
「そうだな。ギルドが無難というわけで2人を呼びに行こう」
新しい戦力マックス・ヘルンを手に入れた私達は、冒険者家業に励むのであった。