140話 うさぎさん、無法な地帯へと赴く? その3
【ちゃんと了承を得たうえで著作物は丁寧に扱おう】
依頼主さんの奥さんにアシッド・シューターを放つと、紫の光が彼女を包み込み、見る見るうちに状態がよくなっていく。顔から黒い帯がなくなり、素顔が見えるようになり意識をはっきりとさせ。
「ここは?」
「……! こ、これは?」
身体がよくなった奥さんを見た依頼主さんは驚きが隠せない表情で彼女をまじまじと見て、近づき軽く肩を揺する。
「だ、大丈夫なのかもう……」
「えぇなんとか。急に意識がはっきりしてきて」
「あぁよかった……本当によかった」
と抱き合う2人。
ぐ。リア充展開は陰キャの私にとっては非常に苦だ。だがムードをぶち壊しするのもよくないのでここは目を瞑って我慢しておく。
「あの……あなたは? とても可愛らしい格好してるけど……あなたが治してくれたの」
私の方に向き直る。
呼ばれた気がしたので私は前に出て彼女に説明をする。
「私は愛理。他の周りにいるのは私の仲間。……私がええと魔法を使ってその病気を治してあげたってわけ」
「そうなの? なんとお礼をしたらいいのか」
するとシホさんが手のひら彼女の方に出して。
「あいいんですよ無理しなくて。大したことではないのでそんな」
「いいや、お礼はするべきだ。さっきは君を疑う目で見てしまったからな何をすれば」
申し訳なさそうにこちらを見つめてくれる依頼主さん。そんな無理をしなくていいって言っているのに辺りから何かを探そうとしているが。
「いや、本当にいいから。冒険者として当たり前のことをしたわけで金目の物が欲しいとか私達は思ってないよ」
手を止めこちらへと。
2人は私の方に向き直ると手を差し出し。
「じゃあこれで……とりあえず握手をお礼代わりとするよ。ああでも報酬金は渡すよ」
私は握手したのち、報酬金をもらい依頼を果たしその民家を出てうーんと背筋を伸ばしリラックス。……あ、そういえば誰か忘れていたような。
「愛理……」
「……ミヤリーさん完っ全に忘れられていましたね」
そうだ、ミヤリーの著作権状態治さないといけなかった!
「すまん、すっかり忘れていた!」
「ああもうこんな姿みっともなくて人様の前歩けないから忘れないでよ!」
眉根を寄せ怒る様子をさせながら私の身体を上下に振り、治すよう急かしてくるミヤリ-。
あ、やば。
急にくしゃみがしたくなった。……む、むせる。
「や、やめ! は、は、は」
ハックショーン!
耐えきられず思わず鼻水を吹くと。
あ、あれ。
何故か眼前に立っていたミヤリーは棺桶と化していた。
「あ、あれ、毒状態は切ったはずなのに」
毒状態のオンオフできるとか書いていなかったっけ。
もしかしてくしゃみは毒無効のオンオフが効かないしようになっていたり? ……マジか全てが万能ではないことに甚だ理解する私。
「……また死んでしまいましたねミヤリーさん」
「え、今何が起こったの? ありのまま今の感想を話すと……気がついたら私は棺桶にいた」
「なんかごめんミヤリー。スーちゃんミヤリーを蘇生させてあげて」
「……合点。ほらミヤリーさん新しい残機ですよそれ!」
ヘマをした私だが、即座にスーちゃんは蘇生魔法をかけミヤリーを蘇生させるのであった。
ていうかマジですっかり存在忘れそうになりかけてたわなんかごめん。
☾ ☾ ☾
「ひとまず……街の人困ってるっぽいし本拠地にきますた」
このまま街から出ても何も問題はないのだが、愛理さんは優しいのでついでにこの街を救ってから帰ることにした私は。え、いやほら寄り道みたいなもの。いや手助け? まあいいや、敵ポリスマンの根城っぽい鉄塔へと近づいて壁の前に立ち、アシッド・シューターを構えて射撃。
咽せそうなくらいの毒が張り付いた後、壁に徐々に侵食していき、壁に穴を開け道を開放してくれる。
「え、やっちゃうの愛理? やっちゃうんだ」
「うんやっちゃう。ここの人めっちゃ困っているっぽいしついでに救うことにした」
「あはは、愛理さんっぽいですね。……ということですのでマックス・ヘルンもう一働きしてください」
「ヒヒーン!」
マックス・ヘルンもやる気上々でいつでも準備満タンといった次第であった。
さて押っ始めようか。
「おっじゃましまーす!」
軽く基地の内部へとキックで侵入して、壁をいくつか破壊する。器物破損? そんなの私知らない。悪党にそんな言われる筋合いはない。
「な、なにごとだ! ……な、なんだお前は」
「えぇとDQNなクソうさぎだよ。ちょいとあんたらうざいんで基地破壊しに来ました」
「えぇい何を言うか! そんな事言えばお前は著作権にかかり」
と謎の光線を浴びさせてくるが。
「はい無効。悪いけど私にそんな攻撃通用しないよ」
瞬間的に無敵版装甲を作動させ、攻撃を回避した。
レベルもそれなりに伸びているため、今は大体1分前後まで持続させることができる。
追って侵入した仲間達も夥しい数のポリスマンの光線を避けながら蹴散らしていく。
「ほっと! そんなのへでもありません! マックス・ヘルン蹴散らしてください!」
「ヒヒーン!」
マックス・ヘルンに乗ったシホさんは縦横無尽に彼を走らせながら、剣を豪快に振るいながら敵を果敢に押し倒すように攻撃していく。
マックス・ヘルンの尋常ではない突進攻撃はそれはもう常識の範疇を外れているといった感じで、敵は怯えながら悲鳴を上げていた。
「えええええええい! 敵の馬は化け物か!」
「人の……馬を馬鹿にしないでくれませんか!」
音調を少し下げたシホさんの声はその言葉に怒りを感じたのか、そのポリスマンを力強く切り裂く。
やはり愛馬だからシホさんと言えども許しがたい禁句なんだろうなきっと。
「……は! それ……それ!」
スーちゃんは魔法で応戦し、ミヤリーを擁護しながら周りの敵を蹴散らす。
状態異常に耐性を与える魔法の効力を今ミヤリ-は得ているので指名手配状態になることはまずない。
「さっきはとんだヘマをしたけど、二度目はないわよ。漆黒の黒炎斬!」
黒炎の広大な斬撃が雑踏を蹴散らす。 地面には巨大な亀裂が何か所も派手にやり過ぎだお前少しは自重しろ! といいつつ私はこのパーカーの専用武器であるもう一つのラビット・ポイズンソーを片手に取り出す。
取っ手にある引き金のようなボタンを押すと紫の光が発光し発光する刃が回転し始める。
「これが例の電動毒ってやつか。噛みそうな名前だけどやってみるか」
豪快にそのチェーンソーをぶん回しながら敵を切り裂く。一塊目がけて刃を振り払うと一撃で敵の体は丸かじりされたようにえぐられ、毒が侵食した跡の肉体だけがそこに残る。
やっべグロい武器だなこれ。
さすが強烈な毒を持つ最強武器やんけ。
そのままペースを落とさず上層部の方へたどり着くと、最初に会ったポリスマンが待ち構えていた。
「あなたでーすか! 私の計画を破壊しようとしているのは! ……こうなったら私直々この街の全ての人に著作権光線を浴びさせて!」
「はい自爆乙。つまりその物騒な機械破壊しろってことですね……うんじゃ遠慮なく!」
「え」
ポリスマンの後ろにある操作装置のようなピコピコと動いた機械。それがこの街全体に著作権光線を浴びさせている全ての元凶を私達に教えてくれた。……敵が馬鹿で助かった。
私はアシッド・シューターを軽く1発撃つと、もの凄いスピードで溶解し始めもの1つさえのこらずその機械は消滅した。
「ひいいいいいいいいい!? 卑怯でーす! 私の最高傑作が」
「それは駄作というものなんじゃないですか? 愛理さんがそう言って」
「そうとも言う。……悪いことは言わん。ここであのクソみたいな機械になりたいか逃げるか好きな方を選びな!」
と私が脅迫すると。間髪入れず降伏し土下座してくる。
うわ、豆腐メンタルかよこいつ。
「すみませんでした。調子に乗ってこの街征服しようとしていましたすみません」
「はっやどれだけお前弱ぇんだよ。……まあいいよ今後悪さをしないって言うなら見逃してやるよ」
そのように答えると「もうしません」と言った後にそのポリスマンは疾走するがごとく駆け出し街の外へと姿を消していった。
外からブーイングの声が聞こえてくるがあれは彼に向けた嫌みなのだろうきっと。
まあ自業自得だなこりゃ。
「よかったんですか? あんなことして」
「そうよ、仕留めておくべきだったんじゃない?」
なぜ倒さなかったのかと聞いてくる仲間達。
いや一方的に倒すだけだとこっちが悪者みたいじゃん。……だから見逃したと答えると。
「……なるほどやはり愛理さんは心が広いですね。これでこの街ですることは全部終えましたしそろそろ帰りましょうか」
「……だね。私そろそろ腹減ってきたしギルドに報告したらみんなでうまいメシでも食いにいこうか」
シホさん達はふと笑うとそうしましょうと頷いてくる。
街を出る際、私達は盛大に人々から感謝され、手を振りながら見送ってくれた。恥ずかしいやはりこれ何回やっても慣れねえわ。
森を歩いて外に向かう最中今更ながらこう考える。
あれ、これで目標のパーカー12個揃ったんじゃねと。
「対抗策できたかこれ?」