番外編 (2) うさぎさんの妹顔出し? その2
【出て早々異世界転移? さり気なく自らネタバレ言っていくスタイル】
「? ……ここは」
謎のワームホールに吸い込まれた私とぴょん吉。
その中が鮮明にうつるとそこは真っ暗な空が辺りを包む虚無な空間であった。
真っ暗と言っても、地球の夜空みたいな青黒い色つきではなくなんというか言うならば完全に無色に近いどちらかというと無彩色。まるで宇宙空間にでもいるかのように暗い。
でも地面はやたらと明るい。
何もない空間なのにテーブルが1つ。そこに置かれている向かい合っている椅子の内1脚に私は腰かけていた。
「どこよここ?」
「ぴょーん」
膝の上に乗せてあるケースを覗いてみるとぴょん吉が辺りを見回していた。
一瞥しながらチラチラと。
「大丈夫よ……って言いたいところだけど本当どこよここ」
心の底でなにか嫌な危機感知センサーが脈打つように注意を促している。
危険信号だこれは!
と。
えぇと本来の趣向がずれているような。気を失っていたからよく思い出せ……。
……あぁそうだ。姉さんの様子を見にマンションに行ったっけ。それであのワームホールに吸い込まれて……。
「なに、このウェブ小説でよくあるテンプレな展開は?」
私もちょくちょくウェブ小説も読んだりする。……なんだっけ長文タイトル系の物だったり、転生云々、転移系のほにゃらら~……だったり。
あんな摩訶不思議な現象……私からしたら超常現象やらオカルト話のように聞こえてくるんだけど……これってそういうことでいいの? フラグ立っちゃった的な?
べ、別に姉さんが興味持っていたから、私も便乗して読んだとかそういう理由づけは…………。
ツンデレ乙ですって? お黙りそれ以上言うなら私がプロアクター使ってあなたのPCをハッキングするわよ!
まあ冗談はさておき。
「えぇと何も喋らないっていうのも……というか誰かいるんでしょ? チキってないで出てきないって!」
虚空を仰ぎ空に向かって大声で呼びかけた。山の頂上で山彦を試すように手を口に添えて。
すると数秒もしないうちにドップラー効果で声が返ってくる。年差の感じる年配の声。
「おぉきたかきたか」
「ふぁ!? なにその光学迷彩!? 椅子からおじいちゃんが!? ……ははーんさてはおじいちゃんあなたは神に仕えし化身か、あるいは呪縛霊かなんかね!」
向かえの椅子から姿が露わになるように、背丈の低いおじいちゃんが姿を現した。
妄想過多な減らず口が聞かなそうなことを言うとおじいちゃんは嘆息をついて。え、私なんか失望すること言った?
「はぁ姉妹揃って変なリアクションするのぉお主は。……なんだお主老人とは話しづらいか?」
「いやいや、うちに孫大好きなおじいちゃんいるしそれぐらい慣れているわよ…………って今さらっと姉妹って言わなかった?」
姉妹?
なんで私達が双子だって知っているの? ストーカー、特定班、新手のオレオレ詐欺とか? ……でもまずこんな場所普通は行けないし……。
そのうち私は考えるのをやめた。
「うむ、なんかあーちゃん……お主の姉の部屋に何か反応があったからちょいとこっちに来られる異次元の穴を作らせてもらった。……聞いた話お主あーちゃんを探しているとな?」
そんなウインクされても……。
「えモラルじゃないそれ? ストーカーなのおじいちゃん?」
「いやいやワシはそんな悪いやつじゃない! ワシは異世界の案内人……という名の存在である神じゃ。お主の姉からは愛情持ってあーちゃんというあだ名を付けられているが」
「それあれ? 動画でよくある『〇〇のあだ名・罵倒集』みたいな? 私もゆったり動画で時々解説動画とか作ってるから今度作ろうかな?」
そううんうんと頷きながら考え込んでいると。
「こらー! 何勝手に人を動画のネタにしようとしとるんじゃ! それでも仲宮愛理の双子の妹か!」
「……やっぱり姉さんのこと知ってるんだ。ごめん悪かったわよ神ちゃん。もう疑い持たないから取り敢えず順追って説明してくれない?」
「まったく。仕方ないのぉでは説明してやろう」
神こと、神ちゃんは自分の務めている役割を説明してくれた。
簡潔的に言うと、異世界の案内人という境遇で本来ランダムで違う世界から順番に彼と立ち合い異世界に転移させてもらうことが可能だそうだ。
なにその乱数? 私ならデバッグ開いて確率弄り発生率を無理矢理上げるけど? まあゲームならだけどね。
姉さんは今異世界で気の行くまま仲間と共に異世界ライフを楽しんでいるみたい。え、ずるい私だけノケ者にするとか私どれだけ姉さんに嫌われているのよ。
「それでそんなに会いたいなら卯乃葉……うのちゃんでいいや、うのちゃんお主を姉のいる異世界へと移してやろう。もちろん異世界特典も付けてやるぞい」
「へぇ~。それじゃ」
と私が願いを言おうとしたそのときだった。
「でもお主はあーちゃんと同じ服が似合うであろう。ほれ……AIちゃんの機能は姉よりは劣るが……お主なら使いこなせるであろう」
神ちゃんが手に持つ杖を一振りすると、目映い光が私の服を包み込み。
私の着る服がうさ耳のパーカーへと変化した。
黒いミニスカにパーカーは純白の白でフードの後ろにはうさぎの耳が付いている。
これ、なんかの罰ゲームかドッキリ? ……姉さんこういう趣味あったの。少しドン引きレベルではあるんですが……まぁかわいいから許そうかわいいは正義。
「なななななによこの服! これで異世界をぶらつけって!? 確かにアキバにこういうコス着ているお姉さんとかいるけどそんな勇気私はないわよ」
「優等生でもそんなに驚くんじゃな。……顔立ちがお主の姉にそっくりじゃがこっちはどちらかというとあーちゃんより恥ずかしがり屋さんかのう?」
誰が恥ずかしがり屋だ!? 私はクラスでは浮いていないし学校の先生とまともに話しているわよ。でも格好が性癖的に受け付けないって……あ、このじーちゃん多少笑みを。
「ま、待たぬか! そんな怖い顔をするな。……見た目に似合わず強力な力を持っとるから!」
「え、そなの?」
自然と強い力に食いついた私は怒りが静まった。
この仲宮卯乃葉は食べ物よりチートが好物である。暇な時は動画サイトに出すチートバグの動画やTASの動画を出すぐらい大好きである。
いやもはや頭の数割がチートのジャンルで埋め付くされていると言っても過言ではない。数日前なんてクソガキ君が図に乗っていたのでハッキングしてデータを破壊してやった(ブロックゲーム)。データ改ざんやら色々私はやらかしている方だけど、私の人生は全てチートで埋め尽くされているのだ。
荒らしたあとの被害者の顔を見下すのが私の楽しみでもある。……改造厨は帰れって? 知らんがな悪いけど私は好き勝手やらせてもらうわよ悪く思わないでよね。
「お主が改造やらチート大好きなことは分かっておるぞ? ならそれに加えて欲しい力の1つや2つをやろうじゃないか」
「それガチ? 私じゃんじゃん使うよ。いいのいいんだね!?」
くどくどと言い少し躊躇いもしたが。
自ずと顔からにやりと口を咎め私の悪知恵が頭を過り、顔が悪人面のようになる。
「ふふ……なら!」
私は異世界特典を2つほど言い神ちゃんから力をもらうのだった。
☾ ☾ ☾
【え、これから始まっちゃう系的な冒険? はい遠慮なしに無双していきますね】
神ちゃんに能力を授かり、異世界に移してもらう準備を整える。
私の周囲には大きな魔法陣が貼られ、瞬く間に光っている。
「んじゃうのちゃん。無事姉と再会できることを心から願っておるよ。時々夢の中で顔を出すかもしれないからそのときはよろしくのぉ」
「夢独占っていうのはちょっと癪だけど……まあいいわありがと」
翌日寝相が悪くなりそうではあるけど、大丈夫……ではあるかな。私にはこの強化されたプロアクターMAXがある。はは見せてもらおうか異世界の実力というものを。
「ぴょん……」
「ぴょん吉? どうしたの体震えさせて。……大丈夫よ私がちゃんと付いているから。あとご主人様にも会えるかも知れないわよ」
「ぴょん? ぴょーん!!」
落ち込み怖がっているぴょん吉を励ますとケースの中でぴょん吉は跳ね暴れ回る。
元気なことはいいけど、途中で迷子にならないで欲しいけど。
「準備整ったぞい。……そのうさぎちゃんも一緒にいくのかの?」
「うん、私の大事な家族だから。それにぴょん吉は姉さんが大好きだから」
実は私も大好きだからとか、絶対に言いふらさないなぜなら恥ずかしいから。
「了解じゃ! それでは送るぞそい!」
神ちゃんが何やら魔法らしきものを唱えると私の体は宙に昇っていき、神々しい光のベールに包まれ視界が真っ白になった。
~中大陸~ブレイブタウン付近
「ん? うーん?」
鳥のさえずりが聞こえてくる大きな原野が辺りを占め緑地が広がっている。
端の方にある群がる木の下で目が覚めると跳ねるように起き上がり。
「ひょいっと」
軽く宙返り。
「ぴょん!」
ケースの中のぴょん吉も無事だ。
「異世界来ちゃったみたいねぴょん吉。大丈夫よそんなにちらちら見なくて私もまだ情報が追いついていないから」
でここはどこだろうか。
向こう側にはスチームパンク系の大きな機械都市が見えるけど……あそこでも行ってみようかな。
その前にステータスでも確認しよう。
卯乃葉 レベル5
HP25
魔力36
攻撃48
防御32
素早さ60
うさぎに因んで素早さは高いのね。
でもここにいるモンスターは。あ、そうだAIさんがあるって聞いたわね。ちょっと起動させてみようかしら。
スマホで喋るように呼び出してみる。
「ハロー……AIさん!」
【……よくこそ卯乃葉様。異世界へようこそ】
と下に色々なUIが表示される。メールからステータス、道具から色々。
メニューよねこれゲームでもこういう物はあるけれど、なんか実家のような安心感みたいな高揚がある。
「じゃあ一応挨拶しとこうかしら……こんにちは異世界」
シーン。
しかし何も起こらない。
当然か。
ちょっとメタな発言になっちゃうけど、先行登場として私の能力少しみんなに見せようかしら。
能力ボタンをポチッと。
「ぴょん?」
「あれ?」
ポチポチ。
ポチポチポチ。
空のBUTTONみたいに反応なし。……あれなんで。
「なんでなの? まさか釣られた!?」
と嘆くように体を上下に振っていると。
AIさんが反応してくれる。
「え?」
【お気の毒ですが卯乃葉様、読者のネタばらしになるので今は見せられないです。あと今回で卯乃葉様の登場は一旦お預けで次出るのは当分先になるそうですよ】
「まぢなの?」
【まぢです】
「うっそおおおおおおおおおおおおお!!」
どうやら私の登場はまだ早かった模様。
え、続き見せろやって? ……今はちょっと諸事情で無理らしいお察して。
「はぁ仕方ないわねぇ。……まぁいいや近くのあの機械的な街にでも行って情報収集でもしようかな。……読者さんにはそう……見せられないけど」
あのとき言えなかった事を言うんだと私は姉との再会をここで願いながら、新しく踏み出した異世界の地を私はぴょん吉と踏む。
限りなく広いこの世界を。
……これが仲宮卯乃葉における異世界生活の始まりであった。
そして太陽にグッドサインを向け姉だと思って言う。
「待ってなさい姉さん。ぜえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇったいに見つけてあげるんだからね!」
私は次の街に向けて歩みを進めるのであった。
あけましておめでとうございます。
とちょっとした番外編、愛理の妹である卯乃葉と彼女のペットであるうさぎのぴょん吉の話でした。
彼女がもらった二つの能力とは? まだ先の話になるのですがちゃんと知らず知らずで異世界を回っています。姉との再会を求めて。
本格的な登場は時間がかかりそうですができるだけ早く登場させたい気持ちはあります。
果たして妹卯乃葉は姉と無事に再会できるのか? ではでは。