129話 うさぎさん、幼い少女を救いに行く その2
【隣人にDQNなことをするときはよくよく考えよう】
森の道を進んでリホちゃんの行方を捜す。
道中強いモンスターとすれ違いながらも、仲間と協力し突破。
付き添ってくれている、サオさんはというと相変わらず一撃技ばかり使ってはいるが、時々外したり……運がよければ敵を一撃で葬るという玄人な荒技を披露する。無論運がつきものではあるが。
先ほどは攻撃を1回掠めてしまったが、あれ以降はと言うと。
「ふう。決まりましたねまた」
目の前で倒れ込む大型のモンスター。
抜いた剣を再び鞘へと収めると、呆然と眺める私達の方を振り返った。
「またよ。またまたあの一撃で粉砕するロマン技が炸裂したわよ?」
「……これで大体10回くらいですね。最初のミスとは一体なんだったのか」
「でも、運だし。そう運」
かれこれ10回戦闘を交えた。
出てきたモンスターを最初は私達が攻撃し、応戦し少し経った辺りでサオさんは渾身の大技を披露した。カウンター技が3回。一撃必殺技が6回あと1回は受け流して攻撃を倍に返す系の技。いずれも一撃で敵を倒し彼女の圧巻だった。
あれ私達の存在って。
だが、一向にリホちゃんの囚われている場所は見当たらず、少し手詰まり状態。
「困りましたね。思いつく限りの場所は一通り回ったんですが……どこにもいませんでしたね。あの愛理さん何か良い案思いつきませんか?」
「なぜ私に振る? ……まあいいやうーんと」
こうなればあれを使うしかあるまい。
便利ツール、ラビット・ナビ。はい起動。
目を瞑ると、森の全体図が映しだされた。結構広めで隔てのある道がわんさかある。
拡大やスライドなど色々試して彼女らしい点を探る。
……すると少し開けた場所に木の穴蔵? らしい場所が見つかる。近辺に赤い点が1つそして青い点が1つ。これかな。
「みんな、少し向こうに開けた場所があるみたいだよ。どうやらそこにリホちゃんらしい人がいるみたいだけど」
「不思議な能力で場所が分かるのですか? それを早く言ってくださいよこうしている間にもリホは」
「リホちゃんなら大丈夫じゃない? だってあんなに力強いし」
「まあそれはそうですけどね、魔王の手下か誰だか知りませんけど敵は強者侮れないですよ」
はて、ゲームとかでよく聞く魔王の手下がお出になっているようだが、実力は…………想像できないな。
よくある、洗脳系のモンスターだったり敵を詰ませてトラウマにさせてしまうようなモンスターが序盤ではよく出てくるが。
「じゃいこうか。リホちゃんがその魔王の手下にやられる前に私達が助けないとだね」
頭の中でリホちゃんのことを心配しつつも私はその場所を頼りに前へと進んだ。
☾ ☾ ☾
「ここか。なーんか物騒な扉ついてるけどさ……」
「あの愛理!? 急にそのハンマーなんか取り出してどうするの? こういうのってルールってものがあるんじゃない?」
「んなもん知るか。ここは"私ルール"ってことで強行突破でぶち破る」
大きな木カブの真ん中には大きな鉄扉が付けられていた。
扉を開けようとしたものの鍵がかけられていて、普通に開けるのは無理があった。
まーた当てもなくひたすら夜道を彷徨うのはなんか滑稽。ということで。
私はストロングへとチェンジし、ラビット・ハンマーを手に持ちそれを渾身の力で粉砕した。
「ゴラァ! リホちゃんを返しやがれこの野郎!」
バコォ!!
強固な鉄扉は私の攻撃によって、木っ端微塵に粉砕される。
「ふぁ!? 誰だお前へーんなうさぎの服着やがって何様だ?」
急に目に飛び込んできたのは……二足歩行をした悪魔のモンスターだった。突起した耳が特徴的だが強いのかこいつは。
「おめえがリホちゃんを誘拐したアホだな? リホちゃんは…………あいた」
「リ……リホ!」
中を見回すと木の柱に紐で固く縛られたリホちゃんの姿があった。
口もしゃべられないように布で止めてある。苦しそうだ。
「へ! 俺はデビル! 魔王様に言われて子供をさらうよう命じられここにきた。ちょうど村に幼い女が歩いていたからとっ捕まえてここまで運んできたってわけよ」
「ゲスだなお前。でさらってどうする気なの?」
「無論配下において毎日魔王様の膝枕にしてもらうことだ! 魔王様は幼い子が大好きだからな」
いやこの世界の魔王様ただのロリコンかよ!!
「で、どうしても返さないって言うの? んなら表出ろよ私と戦え。もし私が勝ったらその子は返してもらうよ」
「あ……愛理さん大丈夫なんですか? 相手はとても強そうですけど」
「……大丈夫ですここは愛理さんに任せてもらいましょう。ああ見えて愛理さんは誰にも負けませんから」
少し馬鹿にされたようにも聞こえたが気に留めないでおく。
すると、そのデビルとかいうヤツは鼻で笑い。
「ふッ! このデビル様に喧嘩を売るとは! いいだろうその勝負受けて立つ! ……後悔してもしらんぞ?」
デビルに勝負を挑んだ。
パーカーはストロングで勝負……と行きたいところだがつまんなくなりそうなのでノマアサで勝負。銃は使わず物理でのタイマンだ。
仲間は見守り役で私の勝負を見ておくよう言った。
「さていっちょ始めますかせーの……」
と動こうとしたとき闇の突風が吹いてくる。
ヤツの技か。視界が見えづらくなり敵を見失ってしまう。
横から切り裂く攻撃が押し寄せる。
「いって!」
攻撃を終えると、そのツメは暗黒の空間へとひっこんで姿を消す。
どうやらこの闇の空間。相手にとって絶好のフィールドらしいな。
次はどこからだと予測しながら耳で音を聞く。……右からワンステップ毎に踏む音が聞こえてくる……タッタッタと。
その音を聞いてくるであろう攻撃に備え右に向かってストレートパンチ。
「馬鹿め! 本物はこっちだ!」
「ぐぶ!」
どうやら先ほどの音はフェイントらしい。
幻聴を作り出し、私が先ほど聞いていたのはただの幻。実際に攻撃が飛んできたのは左。つまり反対方向だった。
ちぇ。紛らわしい攻撃だぜ。
その場にじっとしているのも危ないので。
「よし、ならこれはどうだ! ラビット・カノン!」
飛び上がって、高火力の砲弾ラビットカノンを放つ。鬱陶しい闇の空間をこれで消し飛ばしてやろうと考えたが。
「あちゃだめか。全く効いてねえし」
「ふははは! そんな攻撃で俺の暗黒空間を消せるか! このままずっとちまちまお前をいたぶって地に跪かせてやる!」
「死亡フラグ……乙。と言いたいところだけど、そう悠長なこと言ってられねえな今回ばかりは」
無敵板装甲を起動させてもいいが、あれは数秒しか持たない。よって持続時間はあまりよくない。
さてどうしたものか。
「仕方ない、これを……まだ数は少ないけど試す価値はあるか」
私はある物を取り出した……。それは狂政からもらった強化アイテムらしき物。そうラビット・ガジェットである。
12個のパーカーがあってようやく真価を発揮するみたいだが、さて今使ったらどうなるだろうか。
考える暇もなかったので私はガジェットのボタンをポチッと軽く押した。
【エクストラ・ラビット・パーカーチェンジ!! ピピピ……】
音声がなるとパーカーが一瞬瞬くように光り。……姿が変わ…………。
「あれ」
一瞬変わりはした。したけれども直ぐさま前のパーカーへと戻ってしまう。
やはり狂政の言った通り12個のパーカーが揃わないと無理みたいだね。
やっちまった感あるなこれ。
だが微かな希望が私に届いたのか、はたまたうさぎさんの偶然なのか知らないが。
「手に盾らしきものが…………ってなにこのリンゴの模様をしたデカい盾は」
【ラビット・M・マンサナシールド 解説:とある装備の専用武器である盾。細かな詳細は不明だがもしかしたら不思議なこと起こるかも?】
「いや、そんな気分次第でやるみたいなこと言われても! せめて1つぐらい能力晒せよ! つーか盾があるってことは剣も…………おっと重てぇ」
リンゴの色赤が乗った模様をする大きな盾。尖った先端、末端は尖った感じの形状となっているが果たしてこれでどうやって戦えばいいのか。
私はその盾を身構えながら、次の敵の出方を伺うのだった。
どうでもいいけどこのミドルネーム的な間の名前であるMってなんだろう。