128話 うさぎさん、幼い少女を救いに行く その1
【固定イベントは避けられないが世の常(意味深)】
またしても急展開イベントが発生。
リホちゃんが魔王の手下とみられるやつらに誘拐されてしまった。
門番さんが必死で息を漏らしながら族長さんの元へ伝えに来たのだが……まあそりゃ焦るか。
そのことを聞き族長さんは私達の方へ深刻そうな顔を向けてくる。
あ、もうこれお約束のパターンだ。
「愛理さん、すまんがリホを救いに行ってやれないか? そのヨクナリソウは私が妻に渡しておくから……ここのことはこの私に任せて…………そうだ手助けにサオを連れていくといい。少し癖のある子だが愛理さん達の力にはなってくれるはず」
「お父さん。……まあそうですよね1番下の妹であるリホが誘拐されたんですから。ということですので愛理さんお供しますよ」
と決心の決まったサオさんは私の方を向いて足を踏む。
まあ一撃必殺(運ゲー要素あり)があるのは族長さんの言う通り少し……というよりかなり癖があるが、シホさんのいない今、頼るのは彼女しかいない。
聞けば、他に強い里の人間はいないとかどうとか。……よってサオさんが今の私達にとっての火力要員なわけだ。
「……そのサオさんよろしくですよ。補助魔法や攻撃魔法はお任せください」
「できれば私も守ってほしいんだけどねスーちゃん?」
間から割り込むようにスーちゃんの隣にいるミヤリーが彼女の顔を覗き込む。チラチラと。
するとスーちゃんは少し唸るような声を出し睨み付ける。
「な、なによ? そんなこわーい顔してさ」
「ミヤリー、きっとスーちゃんはたまには自分で自分の身を守ろうぜってことを言いたいんだと思うぞ? でしょスーちゃん?」
こくりこくり。
「……毎回あなたが戦闘不能になる度に私の魔力は枯渇するんですよ? あと無防備に突っ込むのは禁止で」
ミヤリーはまずいことを聞いたなと青ざめた顔をする。
お前はいつもスーちゃんに依存しがちだからね。というか今回ばかりは地雷を踏まないでもらえると非常に助かる。
「わ、分かったわよ。 って愛理何その顔? また私が『こいつあと何秒したら棺桶にはいるのかな』とか思ってたりしてそうだけど……あなたに期待されるほど今回の私は馬鹿じゃないからね?」
こいつ私の心を読んで…………。
「さてそこら辺はお前のご想像にお任せしますってことで、んじゃいくぞ」
1度シホさんの顔を行く前に数分と様子を見て、私達は門番さんの情報のあったとある小さな森へと向かうのだった。
行く前までに見た、シホさんの顔はというとお母さんが彼女に薬を飲ませリラックスした様子を私達に見せてくれた。
お母さんはここは私に任せてと非常に張り切っていた。
☾ ☾ ☾
真っ暗な草原。
その漆黒に染まる野原をひたすら進む。門番さんの言われた通りの森へとたどり着くと闇は更に深く深く私達を待ち構えるように待っていた。
率先してサオさんが私より先に1歩踏み出す。
「夜は危険なモンスターがうじゃうじゃ沸いてきますよ。リホが今どこにいるかわかりませんが慎重に進みましょう」
「お、おうふ」
「なにビビってんの愛理」
ぼそっと横からミヤリーが小さな声で私に言ってくる。
あのさ、口より足を動かしてくださーい。ていうかおめえの足のガタガタ震えてるじゃねえか。
「……でもそこまで暗くはないですよ? この前行った森と比べれば」
「せ、せやな」
森の中へと進みかくしてリホちゃんの捜索を私達は開始するのであった。
道中。
中くらいの大きさをした、アリのモンスターと遭遇。
身長は私達の1センチか2センチ違う位の大きさであった。
暗い中、私はぐっと拳を構えて攻撃準備。
するとサオさんが横に手を振り払って私の行く手を拒んだ。
ん? どうしたんだろう。
「ここは私にお任せを」
サオさんは身構えて、目を瞑り精神統一を始めた。
一撃斬刀流による、閃疾速斬の構えだあれは。
ブレのない、先の読めない彼女の姿勢に目を奪われ、そのまま観戦。
「ッ! 一寸剣術 閃疾速斬!」
鞘から剣が抜かれたとき高々にそう宣言し、彼女は渾身の一撃をその大アリ相手に振り放つ。
そして……肝心の手応えはというと。
ぐっ。
「……? しゃあ!!」
「なに!? しまった私としたことが……こういうときに限って攻撃を外してしまうなんて不覚」
サオさんは運ゲーの神様に恵まれなかったせいか、彼女の技はその大アリに霞む程度の攻撃に終わってしまい、一撃を外してしまう。
大アリは尖った歯を鳴らしながら体躯に合わないスピードで彼女へと襲いかかる。
「……ッ! くっあぶない」
間一髪で即座剣を前に出し攻撃をその剣で受け止めた。……力量はほぼ互角。やや押され気味ではあるものの彼女は命一杯の力を振り絞り、前へ押し出そうとする。
「ち、力が!」
「……サオさん!」
危険を感じたスーちゃんが、手に持つ杖を前に出し呪文を唱える。
「……カチル!」
「? これは防御を上げる魔法……ですね? ありがとうございますこれなら!」
優勢になったのか、サオさんは大アリをどんどん押していき……振り払い一斬り。
「ごがあああああああああ!?」
隙を突いた斜めの斬りがそのアリへと入れられる。
痛みに苦しむそのアリは悲鳴をあげ苦しみだす。その隙をつきミヤリーは漆黒の剣を横斬るようにしかける。
「がら空きよ! たああああああああああぁ!」
アリは彼女によって振り払われ壁にある木へと衝突する。
「私の出番だな。あとは」
腕をぐいぐいと回転させて拳に力を入れる。
「うりゃあ! 10倍ラビット・パーンチ!」
風前の灯火ともいえるその大アリに10倍のラビットパンチを放った。
躱されることもなく、そのまま手応えのあるいい音が反響し。
「ぐげおわあああああああ!」
その大アリは抵抗力もなく、必死に腕をあげようとしながら力尽きた。
ふう、あんな大アリ初めて見た。大した強さじゃないけどサオさんが苦戦するくらいだから相当なモンスターだろう。知らんけど。
彼女は先ほど、運に恵まれずに一撃技が決まらなかったがそれでもよく持ちこたえてくれた。スーちゃんの魔法のおかげではあるのだが、それでも私から見たら人並み外れた力のように見えた。
やはりシホさん一家って力量ぱねえな。
戦闘がおわると。
「助かりました。ステシアさん、ミヤリーさんあと愛理さんも」
「いやいや大したことないよ。 急にデカいアリが出てくるものだからビックリした」
「……でも強かったですねあのアリモンスター。最初出たときは炎の魔法で攻撃を避けましたが」
最初見たのはスーちゃんである。
なにやら少し向こうに物陰があるといい、火の魔法を放つとそのアリモンスターはいた。それで私が拳を交えながらサオさんが横で剣を払いながら応戦し、力を合わせそのモンスターと戦ったわけだけど。
「因みにあれよりもっと強いモンスターはこの森にうじゃうじゃいますよ? 枝分かれしてる道も何か所かあります」
「うわっ……まぢ?」
「えぇ。でもこの森結構深くありましてね、ときに強いモンスター達が群れを作りながら襲ってきたりします」
集団ミンチってやつじゃねそれ。
これが動画のタグとかでよく見る……数の暴力ってやつか。詰みモンスターが何体も出てくるということも視野に入れるとなると、先が思いやられるなぁ。
そんなことを思いながら、私は仲間と共にリホちゃんの捜索を続けるのであった。