127話 うさぎさん、決戦場へ? しかし!?
【隙あらばなんとか。理屈なんてこの愛理さんには通じません】
私は少しあったまにきています。
うん、まじで。
少し妥協しようと思ったけど、目の前に立つやろうに非常に怒りを覚え私は服装を変える。
普段は攻撃にはあまり使わないが、これを使って少し相手には痛い目にあっていただくことにする。
剛力特化のパーカー……ストロング・ラビットパーカーにチェンジ。
「ふ、服の色が変わった……だと!? 魔法か何かか!?」
「残念だったな、私の服には種も仕掛けもねーんだよぉ!」
以前のフォームなら固定の武器しか装備できなかったが、ラビット・フュージョンの併用により、それは克服できる。
つまり、今の服装はというと、ストロングにノーマルのパーカーが合わさった姿となっている。よって剣が装備でき、力もかなり上がっているわけだ。
「ぼさっとつったってんじゃねーよごらぁ!」
一振り。
鈍足ながらも、そのとてつもない力の蓄えた剣の攻撃が敵の方面へと振り下ろされる。
「……よっと!」
私の一撃を回避して攻撃を退く。だが。
「ぐ……なんだこれは!? 引力が凄まじい」
地面へと突き刺さった剣は力が高いあまりに、土俵に数か所に渡る亀裂を入れたのち、瓦礫を巻き上げその断片が敵へと降りかかる。
避ける間もなく、幾多の断片が敵へと直撃し前方へと跳ね飛ばす。
おぉなんという馬火力だ。ざまあみやがれ。
私を舐めるからこうなる。……ストロングは速度は遅くあるもののこうして地面に突き刺せば疑似的な遠距離攻撃が可能だ。
剛力を上手く活用した剣術。名付けてストロング・クスラッシュ。
射程は50m前後。……そこまで射程は広くはないもののタイマン戦なら十分な効力を発揮するなこれ。
「そんなの反則だろ! 全身の盾がなかったらまじでやばかったぜ」
「ふん、運のいいやつめ。諸に食らってたら今頃下敷きになっていたかもよ」
着ている全身甲冑が身代わりとなったのか、それとも彼の意思が硬かったのか、彼は再び立ち上がり態勢を立て直した。
してなにやら全身に淡い闘志を身に纏わせ集中を始める。
「……ほう」
「俺の盾術は防御を大幅下げることによって、攻撃と素早さを大幅に上げる力がある! その分受けるダメージは多くなってしまうが……当たらなければ問題ない!」
ゲームでよくあるあの技じゃん。守りを下げて全能力上げるぶっ壊れ技。カイシェンの技だっけ? ……どれだけ上がるか知らないけどいいだろう受けて立とう。
反撃を一度もせず、ひたすら間合いを置きながら、敵の出方を見る。
歓声が渦巻く中、私が次の攻撃に備えようとしたその時だった。
「!? 後ろか」
「遅い!」
一寸。
コンマ秒の隙もなく、敵の姿が一瞬で消えた。敏感に軽く首を後ろの方へすっと向けると襲いかかる敵が前にいた。
私は、ラビット・ブレイド(小)を前に出し、盾の攻撃を受け取る。
「く。……少しはやるみたいだ。……その技多少能力が上がるとかそんな技じゃないみたいだね」
「褒めているのか? ……そんなおもちゃみたいな剣でこの俺の持つ、盾の猛攻に耐えられるか!」
見た目ではまずできなさそうな盾を剣のように振う攻撃。それはこちらから剣を振るう隙を与えないくらいに素早い。……なにこの素早い風のような……いやどちらかというとかまいたちみたいな盾撃? は。
ちょいとまずいかも。
力で勝っても、素早さでは太刀打ちできないよこのパーカー。
盾撃を剣で受ける度に私の体は後ろへと引きずるようにさがっていく。このままだと場外負けだ。
この猛攻を脱出するために受け続けながら策を講じる。
鎧を粉砕パンチで破壊するのがいいか? いやそれだと却って敵を素早さを上げてしまうだけでは。ディスアドになりかねないな。
ん? 粉砕パンチ?
「ほらほらどうした!? 体が追いついてないぞ! このまま。このまま……場外へ押し出してやる。それまでに精々足掻くんだな!」
私は1度瞬きをし。
カキーン!
「な! な! なんだと!?」
周りの注目が、私へと集中する。
一瞬の隙を突くことができた私は、ラビット・ブレイドを力強く突き出し、高速の攻撃をようやく受け止めることができた。
「ようやく捉えたよ。……最近強いヤツと戦っていなかったから少しは楽しめたよ」
「ば、ばかにしてるのかお前」
「いいや、骨があると言ってるんだよお前に」
彼は再び攻撃しようとするが。
私はその一瞬の攻撃を見切って襲いくる盾に向かって剣を突き出す。
「その攻撃はもう私には通じない。……残念だったね私よくよく観察して攻略方を見出すヤツだから。……ストロング・ラビットスラッシュ!」
更にその盾に粉砕パンチの効力を付与させねじこむ。
これは水一杯の風船に、そのままずっと水を流し込む……そんな感じ。
つまりは。
「ななななにーーーーー!? 俺の……俺の盾がああああああああああ!?」
「あ、忘れてたもういっちょ」
当然耐えられなくなり、盾は木っ端微塵に砕ける。
ダメ押しに相手が気を取られている隙に片方の盾も食らわせてやった。これも破壊。
相手の手には武器1つ残されておらず、その場で起きたことを理解出来ず呆然と立ち尽くしていた。
例えればそう。
ソシャゲでガチャにて爆死した廃課金者のような顔色だ。……ふっウケるわ。
こんな素早い攻撃なんぞゲームでゴミのように見てきた。倒せないなら戦いの中でその弱点を見つけ出し攻略する。……それがゲーマーだ。
こんな安っぽいラッシュの攻撃なんぞカップ麺ができるぐらいで、弱点なんぞ見つけられるわ。
様子見でパターンを色々分析したけど、よく見たら穴が見え見えだった。一撃ごとに僅かながら攻撃できる隙間があるし、ちゃんと見れば片手で受け止められるほどの攻撃だったということに。
粉砕パンチで発想を閃き、隙を突いて剣に技の効力を付与させ受け止めてそのまま流し込んでしまえば相手を詰ませることできるんじゃねと。
「確かに悪い技ではなかったよ。でもそんな隙だらけの攻撃に屈するほど私は馬鹿じゃない。……出直してきやがれ……ストロング・ラビットスラッシュ」
「へ? ぐああああああああああぁ!?」
中くらいに力を加減させた小さい剣の振り払いは、彼の身に直撃し力の反発によって場外へ。……苦労したんだぞ? 力の加減。
抵抗もなく、そのまま広間の場所へと直下しうつ伏せの状態でクレーターを作って気絶。
それを凝視し、私は言う。
「へ。無理しやがって」
おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!
勝利の喝采。
決着に勝利がついて両里の人々は私にエールを送ってくれた。
愛理! 愛理と言った少し恥ずかしい合唱が。
みんなの所へとボソボソと戻ると、私を囲むように寄ってきてくれる。
「凄いよ愛理さん。あんな素早い攻撃を避けて逆転しちゃうなんて」
「たまたまだよ」
「ふむ、見事です。さすがシホの仲間ですね関心関心」
シホ姉妹は私を大いに褒め称え羨ましがる目線をこちらへと送る。
あのたいしたことやってないんですけど。これは一環のゲーマーの感っていうかうむむ。
すぐ横に控えるミヤリーとスーちゃんは。
「圧巻だったわね、いつもながら」
「……毎回そんなふしぎなこと起こしてばかりですよね愛理さん。そこがすごいのですが」
無碍。
もう慣れてしまっているせいか喜びもしない反応。いや少しは褒めろや。
「2人共、褒めているのか、それとも馬鹿にしてるのかはっきりさせてよ」
いつもの圧勝。
これがよくある俺TUEEEEEなものだろうか。
なんだろう、言い換えるなら私が強いんじゃなくて単にこのパーカーが強いだけでは。
言い換えるね、これはうさぎTUEEEEEEEE。はいここテスト重要ね。
☾ ☾ ☾
大会も一通り終わり閉会式が行われた。
各々が大会の感想を述べ、自分の実力を表明し単調に話す。
当然私もその例外に漏れず。
「えぇあのその……単純にこれは力の暴力っていうかなんというか……なんかすんません」
と歯切りの悪いコメントを壇上の上で頭をかきながら表明する。あぁ恥ずかしい人前に立つのってこんなに恥ずかしいっけ。学校であまり前に出たことないんだけど…………。
ブーイングの嵐が出るかと思ったが。
パチパチ。
の拍手の音が。
え、マジで? なにも考えずに述べただけなんだけど。
それに敬意を持つ感じで両里の人達は私を褒め称え。
「えぇそれではみなさん今回もお疲れさまでした。……夕食は後ほど用意していますので今しばらくお待ちください」
と言い残しシホさんのお父さんは下がって姿を消す。
どうやらこの日は両里のみんなで食事を摂ることにしているらしい。
現在午後4時。
閉会式が終わったあと、緑地で長いテーブルを並べられる光景を見ながら私はリラックスしていた。
するとみんなが寄ってきて。
「こんなところにおられましたか。どこに行かれたかと思いましたが」
「愛理疲れたの? ならそうと言いなさいよ急にいなくなるからビックリしちゃったわよ」
「……その盾練の族長さんが剣練の族長さんにヨクナリソウを預かったみたいなので呼びにきました」
「あ、ほんと? なら善は急げということでいかないとだね」
どうやらシホさんの特効薬、ヨクナリソウが無事届いたから私を呼びにきたみたいだ。
ミヤリーとスーちゃんは先ほどよりほんわかとした表情をし、なにやら嬉しそうだ。
もうすぐまたシホさんと冒険できる。そんな気持ちでうずうずしているのだろう。まあ私も嬉しいんだけど。
そうして族長さんの所へと戻ると。
☾ ☾ ☾
「おや、これはどうも」
見慣れない顔が1つ。
盾の紋章のついた服装をしている。……あ、盾練の族長さんだ。開会式でちょこっと見ただけなんだけど少し小太りしているおじさんだった。
「おかえり愛理さん。今は私の友……盾練の族長さんが愛理君に顔合わせしたいということで来ている」
「はい、聞きました。私の親友の娘さんがとても悪い病におかされているとか。あなた方はシホさんの仲間だと聞きました……その為ならばと思いこれをぜひとも渡したくここに参りました」
手には金色に光る薬草がある。……薬草なのに暖かな光を放っておりそれはどこか優しい光のように思えた。
どうやらこれがヨクナリソウなのだろう。
私にそれを譲渡してきて、一礼して述べる。
「とても愛らしいお格好ですね。可愛らしいだけでなくとても力も実力もあるとは。あなたの戦いぶりを見てより一層これを渡したくなりました……どうかこれをお使い親友の娘さんを元気にさせてください」
「ありがとうございます」
私もお礼を言い受け取る。
【愛理はヨクナリソウを手に入れた!】
これでシホさんが私達のところにようやく……。
盾練の族長さんは食事の準備があると言い残し、シホさんの家からでていく。
やはり普段は仲がいいとかそんな間柄なのだろう。
「やったわね愛理。さてシホの部屋へ行きましょう。お母さんも待っているみたいだし」
「……シホさん起きたらどんな反応とるんでしょうね。またお腹空いたと言ってきそうです」
確かにそれはあり得る。
「私も早く妹の元気な姿を見たいです。そうですよねリ……………………ホ?」
ピッピッピ。
横にはリホちゃんの姿がなかった。
そういえばさっきから彼女の姿が見当たらなかったけど……どこいった?
「サオ? リホは……一緒じゃなかったのか? ここにも戻ってきてないぞ」
「? それはどういうことですかお父さん」
そのときだった。
ドン!
「族長! 族長!」
「!? ど、どうしたんだそんな慌てた顔をして」
「リホ様が……リホ様が」
なにやら嫌な予感。
扉を荒々しく開けてきたのは、剣練の門番さん。息をはぁはぁと切らしながらなにやら慌てている様子。一体何があったのだろうか。
「落ち着け。リホが……リホがどうしたというのだ?」
「………………リホ様が……さらわれました魔王と見られる手下のモンスターに」
「なんだと!?」
門番さんからの通達それは。
魔王の手下にリホちゃんが誘拐されたという緊急事態であった。
唐突の誘拐イベント発生です。
こんばんは。最近少し疲れ気味ですがみなさんどのようにお過ごしでしょうか。
12月に入り、今年もあと少し。気を落とさず自分のペースで小説を書けたらいいなと思っている所存です。
余談ですが来年は卯年らしいですね。本小説の主体であるうさぎのパーカーに相まってこれは偶然か? など思っている自分がここにいます。
早いですが年明けに愛理からラビット・パンチお見舞いされそうですが、頑張って小説は書きます。なるべくペースは落とさずに。
さて唐突の魔王軍の手下襲来。とはいうものの本筋に絡んでくるようなラスボス的な立ち位置ではありません(現状)
今の段階ではちょっとしたサブポジションの立ち場にしていますので、愛理の真の宿敵……にはならないです。
リホがさらわれてしまいましたが、愛理達は一体どのような対応をとるのか続きは来週にて。
そしてシホは愛理達の元に帰ってくるのか……果たして。愛理の冒険はまだまだ続きますでは。