126話 うさぎさん、喧嘩に駆り出される? その3
【お姉ちゃん一撃必殺ちゃんと狙います】
さてじっと動かずに敵の攻撃をひたすら受け続けているサオさんなのだが。
「おらおらどうした! かかってこいよ!」
盾を上手く攻撃手段として活用し、彼女を滅多打ちしている大丈夫かあれ出血とかなるならこの小説R18Gタグに付けることになるけど。
「あのリホちゃん。サオさんめっちゃ血流してるけど大丈夫?」
念の為妹ちゃんに聞いておこう。
チキン乙とかそんなこと言うんじゃねえぞ?
「大丈夫だよ、そういうのはぶしゃーとかどばーとか……安直な表現にすれば多少はケアできると…………思う」
なんで一瞬口ごもったのさ。
まあいいや。某ゲームでも受け流しする技とかよくあるし、あの部類をサオさんは狙っているのかもな。
1つ忠告しておくが、これは愛理さんの1つ予想であって確実性があると問われれば返す言葉が見つからないのでよろしく。
「……それにしても……わざとらしいですよ。あのサオさんの動き。というか微動だに動きませんよ。さっきから」
サオさんの方を見る。
「盾撃……滅多割!」
盾の先端部分を使いサオさんの体へと攻撃。
ツメのような手さばきによって、またサオさんの体はボロボロになっていく。
「ふぅ。受け流すっていうのも案外気が楽……ってわけではないようですね」」
独り言のようにサオさんは敵に向かって、そんな意味深なことを言い出す。
一瞬攻撃した手をぐっと止める敵。
「お、お前何言ってんだ? さっきから反撃してこないと思えば。どうしてこないんだよ」
「こう見えても私は口は硬い方です。ほら……ネタバレとか言うじゃないですか。そこはべらべらと口にしない方がいいと思いまして」
いやそういうのネタバレっていうのかな?
私には、一環のナメプにしか見えないのだが……。
「ネタバレ? 良く分からない言葉だが、こいよなんかつまんないし」
「ふむ。後悔しませんね? 今の言葉に」
すると空気が一瞬静まり返って感じがした。
サオさんアレやるつもりだ。二日の空白空いちゃったけどさ、一寸剣術使う気だよあの人。
ただでさえ運ゲーを持ち込みそうなあの危険な技。一撃斬刀流が如何に運のバフがついているからと言って過信すぎじゃないかあれ。
それほど愛を持って使い続けた……という何よりもの証拠なのだろうか。
敵さんはというと棒立ちして敵の攻撃を待ち。
「行きますよ……一寸剣術 渾身突き!」
敵がノーガード状態の為当然諸に受ける。……彼女の構えた怒涛の一撃は相手の体……。
アソコに直撃してしまった!
「ぐぎゃごう゛ぁらああああああああああ!?」
チーン。
過敏に反応しプルプル震えながら一瞬、うつ伏せの状態で彼女の前で倒れる。
いやそこは男の急所だろ。クリティカルヒットだよ! 多少柔らかめな表現で言っているけどさ、あれ痛いだろ。
「ななななななな、なにをする!! いっってえじゃねええか!!」
「痛いも何もそちらがやってこいと言ったじゃありませんか。今とさっきで言っていること違わないですか?」
なんかマウント取り出してねサオさん。
すぐさまに立ち上がり、立ち向かう敵さん。とうとうサオさんの図に乗った態度に腹を立てる敵さんは。
「愛理さんまずいよ。あの盾練の人絶対お姉ちゃんの強さ分かってないって。闇雲に突っ込もうとしてるけど……あぁもうこれ手遅れね多分」
「こ、今度こそあの技来るみたいよ愛理。でも大丈夫かしら」
しらねーよ。運ゲーは運ゲーの神様のみぞ知るんだぞミヤリー。
敵は硬くなった盾を使い、押し切る構えで彼女に向かって剣のように振るいサオさんの頭を叩き続ける。
それでも微動だにしないサオさんは平然としていて、なにやら狙っている様子をしていた。
「あたたた……。ヤケクソっていうんですっけこういうの。盾練の人って短気な人が多いんですね意外」
「短気だとぉ!? もう一回いってみろよ!」
「はいはい、言ってやりますとも。はい 短気♪ 短気♪」
とサオさんは手をパチパチしながら、相手を挑発する。
煽る煽るぅ。
更に激昂した敵は……サオさんを叩き割るようにして、盾を振り落とそうとする。透かさず危険を感知した私は思わず声が出る。
「サオさんッ!」
その時だった。
横に構えた剣に謎の闘志らしきものを燃やしながら、それを振り払うようにして敵の腹部目がけて解き放つ。
「この時を待っていましたよ。自傷は少し危険がつきものですが、待った甲斐がありましたよ。…………攻撃が仇になりましたね。一寸剣術 倍返しの剣技!」
不透明に無数の巨大な剣が彼女の目の前に現れ出て、猛然とした剣のラッシュが相手を襲う。数え切れないほどの斬撃によって、敵は宙へと上げられ。数秒足らずで数千回の斬撃を受けた後、その場で倒れると、サオさんは背中を見せ剣を上に上げ。
「き、きまったッ!」
2戦目は見事サオさんが勝利を収め、またしてもこちらが有利になる運びとなった。
次は私。さてこのラビット・ブレードの強さをお手並み拝見と行こうか。
☾ ☾ ☾
【一時休戦ってやつ? 息抜きに休憩も大事じゃね?】
時間は昼前。
この大会用に作ったラビット・ブレードを片手に準備を万全にする。
頭の中で、SF映画によく出てきそうな感じのサイバーな物をイメージして作ったけどこれでいいかな。
「本当に大丈夫かこれ?」
見た目はそう……いい。いいのだがちょいと不安がある。というのも感じ的に100均の玩具コーナーによく売られているような物みたいで少々半信半疑。
少し触れただけでぽろっといきそうだけど本当にこれ信じていいのか?
「……そのどこから用意した剣かは知りませんが頑張ってくださいね」
「愛理、1つ忠告しておくけど殺しちゃだめよ?」
いやしねぇよ。というか能力は何もない前提で作っているからなこれ。力強く手に握りしめる武器を凝視し、スーちゃんと横にいるミヤリーはそれをじっと見つめながら言う。
能力も何もつけていない。……じゃないとみんなに"それってずるじゃん"とブーイングの嵐をうけかねない。ここは穏便に済ませるためにもこの武器を使うことにしたのだが。
「因みに愛理さん。人を殺したら一発退場それと以降数か月間戦うことができなくなるよ」
「なにそれ。めっちゃ重罪ってこと?」
「だから参加する人はみんな慎重に戦ってるの。……あ、でも愛理さん待って。……時間が…………」
「へ?」
リホちゃんはなにやら時間を気にしている様子だった。それは何かを案じさせるような様子でいた。
「あ、リホそういえばもうそんな時間ですか。……すみません私1試合がとても長くって」
「いいよいいよ。それに愛理さん達もお腹そろそろ減ってるんじゃない?」
「? 2人共なんの話しているのさ? 私達とこれを見てくれている読者さんにも分かるように説明してどぞ」
出し抜けになんでメシの話がでてくるのだろうか。
確かに急に戦う話になって、だいぶ腹も空いてきたが…………どういうことかな。
と剣練の族長さんが前に出てきて大声で一喝する。
「えぇ……両里の皆さん。区切りのいい時間になりましたので一旦お昼の休憩にしたいと思います。……次の試合は1時間後です。それまでみなさん十分に体を休めておくように」
休憩の合図だった。
あ、そういうことね。
……。
じゃなくて。
「「いや学校の運動会かよおおおおおおおおおおお!??」」
「むむ? 愛理さんウンドウカイってなんですか? 教えてください」
思わずまた大声を出してしまう。
ここは学校の運動会……はたまた体育祭でもやっているのだろうか。……休憩時間がある時点でそれを彷彿とさせる。
まあ、腹が減っては戦はできぬとも言うけどさ……これって万国共通な案件だったの?
「さ、愛理さん、ミヤリーさん、それとステシアさんお父さんのところに行こう。弁当持ってきてるはずだから」
ぐいっ。
またしても彼女の剛力が私の腕を縛る。
だからやめてくれ。一家にして私の体をそんな力で握らないでくれ。
土俵の周りにいた各里の人達は、違う里同士にも関わらず、互いに他愛ない話をしながら食事を摂っていた。
あれ、仲が悪い話どこにいった?
「……あのサオさん。みなさんなにごともなかったように、違う里同士の人と団欒として話していますけど、仲が悪いのではなかったんですか?」
「あぁそれですか」
人混みを歩く最中、スーちゃんがサオさんに聞いてくる。
存在が薄い彼女に対して、ここの人は彼女の声を聞いてくれるか正直心配だったが思いの外サオさんの耳には彼女の声が耳に入ったみたいだ。
存在を認知してくれないの基準がイマイチよく分からないけど……まあこれが自然っぽくってなんかいい。
「あれは一言で言うと演出ですね」
「……へ?」
「そうでもしないといけない習わしがこの決戦の日になるとやるよう言われてましてね、みなさん無理してああやって張り合っているのです」
「普段はみんなあんな風に仲いいんだよ? でもこの日だけはお祝いごとみたいになっていてね。だからさっきは喧嘩しているように見えていたわけだよ」
早い話、ハロウィンの『お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ!』みたいなあれかな。
そうかこの決戦はガチのリアルファイト……ではなく、みんな祭りを盛り上げようと必死に演技しているわけか。
そうなら早く言ってくれよ。
「リホちゃん、みんな盛り上げるのに必死なのね」
「でしょ? 私のおじいちゃんの時代のときに、和解したらしいんだけど、当初の名残を残すため一環の行事にして、こういう演出をするように言ったとか」
「仲が悪いとは一体。まあ仲がいいのが1番だしね」
ようやく人混みを抜けた。
そこには開けた場所に布テントで覆われた大きな休憩スペースが見えてきた。中に入るとそこには。
「お、愛理さんお疲れ。腹減っているだろう? これを食って午後の後半戦頑張ってくれ」
「族長さん、めっちゃ豪華なものを……」
「因みにこれは妻の手料理だ。どうだ美味しそうだろう?」
「お父さん帰りました。……ってお母さんまたたくさん豪華な物を」
弁当らしき物がズラリと布床の下にズラリと並べてあった。貧相な人間には手が出せない豪華な品々の数々。マンガでよく見るような、マンガ肉がたくさんあるけど……これ実在したのかなら食お。
私達は体の力を抜き床に座ると、今朝のようにシホさん一家と昼食をとりながら会話をする。
とはいうものの、肝心の調理人のお母さんはシホさんの看病で里に戻ったらしいけど。
「それにしてもだ。シホも愛理さん達に毎日囲まれてさぞ嬉しかろう。父親としては嬉しい限りだよ。まあ空腹があることは大目に見てくれ、シホも悪気があったわけではない。……全ては私の注意があまり行き届いていなかったのだ」
「いや、誰のせいでもないよ。話変わりますけどそれでシホさんを治す薬結局はその危険な場所にいかないとダメな感じですか?」
結局そこ気にしちゃうんだよな。
ずっとスリープモードだったら私ちょっと心配。
できればまた、シホさんと色んな場所を仲間達と冒険したいんだけどな。
「うむ、先ほど盾練の族長に話を通したのだが、それがあったのだよ。入手困難な万能薬"ヨクナリソウ"が」
なにその安直な名前。
「よ、ヨクナリソウ? それがシホさんを治す特効薬かなにかなの?」
「ですです。ヨクナリソウは知らない人が聞くと半信半疑かもしれません。ですがその薬草はどんな悪い状態だろうが、呪い、病気なんでも治せちゃいます。剣練の強者がそこへ足を運んでも入手は困難だったというのに」
ダジャレか何かだと思ったのは口にしないでおく。
そのヨクナリソウがあれば、シホさんの腹ぺこの呪い? を解くことができるみたいだが。
「盾練の族長によれば、余っているから大会が無事終わったら渡してやると言ってきた。彼とは昔から仲がよくてな。すんなりと許可してくれた」
「よかったわね愛理これでシホがまた……。うぅ」
急に涙を流すような仕草をしだすミヤリー。
「でもいいですか? そういう貴重なものもらって。なんか迷惑かけてそうな感じ、しますけど」
「滅相もないです愛理さん。このサオ妹が助かれば貴重な物の1つや2つ渡してあげられます。ですよねお父さん?」
「無論。それに元気なシホの姿をまた私達は見たいからな」
「うん、だからね愛理さん、シホお姉ちゃんにそのヨクナリソウあげて。遠慮はいらないから」
「分かった。ありがとう」
☾ ☾ ☾
時間は過ぎ午後。
再び外へとでると土俵を中心に人が集まっていた。
パーカーはノマアサ。ストロングでもいいけど、それだとこっちが一方的に虐めているように思えるのでこっちにした。
片手には用意したラビット・ブレイド(小)。さてお手並み拝見といこうか。
相手は、全身盾の鎧を身に纏った青年。鈍重な見た目のフルアーマーだけど、動き辛くないのそれ。
手に持つ物も盾。……盾しかない。
「おうおう変な服を着たうさぎの女! お前がどれぐらい強いかはしらないが、痛い目見たくなかったら今のうちに降参した方がいいぜ?」
はぁ何こいつ。調子こきすぎだろ。
ムカ。
ちょいと腹立ったわ。少々怒りのこもった口調で私は拳に力を込めながら答えた。どうしよう殴りたいんですがそれは。
「あぁそうかい。ならその言葉そっくりそのまま返してやるよ。痛い目見たくなかったら……舐めない方が身のためだぞ?」
「ふん、まあいいだろう。どうせ大したことはない。教えてやるそのふざけた格好じゃ俺には勝てないってことをなッ!」
カーン。
戦いの合図がなり、本日最後の勝負である、私の戦いが始まるのであった。