122話 うさぎさん、衝撃の真実を知る? その1
【兄弟あるある姉妹あるある、仲がいいことはとても羨ましい】
夜更け。
すっかり森の中は真っ暗になり、森の奥からは鳥や動物の鳴き声が聞こえてくる。
他の2人は、疲労のせいかもう既に寝落ちしていた。
仲良く一緒に寝ている格好をみると、非常に落ち着く安心感を覚えた。
「仲良く寝ていますね。とてもかわいらしいです」
「あ、そ、そう? 私はまだ眠くないから全然余裕だけど」
2人に目を奪われじーとそちらの方を見ていると、焚き火でなにやら魚を焼いているサオさんが一言声をかけてきた。
彼女もミヤリーとスーちゃんの寝顔をみるとほんわかとした顔をしながら私を見る。
すると焼いている、魚の串3本の中から、1本を手渡し。
「よかったら少し、話しませんか? 私もまだ寝付けませんし 夜食の特製魚焼きでも食べながら……いかがですか?」
「あ、ありがとう。…………うんいいよ夜食って本当はあまりよくないってきくけど、今日は気にしないでおくよ」
私はサオさんと少し、話をした。
話の内容はシホさんの昔の話を独り言のように、焚き火を凝視しながら淡々と私に語りかける。それはまるで何かに思いふけるような様子で。
「シホはですね、昔から剣術の才能に恵まれた持ち主だったんです。お父様の教えたことは教えた直後にすぐ覚えてしまう子で。……繰り返し覚えていく私と違って少し残念な気持ちになったことありますね」
まさかのお姉さんかわいそうに。
ということは嫉妬的なものを、彼女は胸の底でどこかシホさんに抱いていたのかもしれないな。
「シホはいつも私ができなくても『お姉様ならそのうちきっとできますよ』と励ましてくれましたが、結果は出ず結局気づく頃にはシホは私の手が届かないほどの剣士になったんです」
ふと疑問。
剣術とか色々言っているけど、何種類あるのかな。
いくつものバリエーションがあるとか、そんなこと言ってきそうだけど。
「ちょっといいかなサオさん? ……剣術って結局なんなの? シホさんも色々技使うけどさどのくらい種類があるん?」
サオさんは悠長に答え。
「あぁ順を追って説明しますね。私達が住む剣練の里……向かえには盾練の里がありますよね? ……それぞれの里はその里に応じた武器を用いて流派を極めているんです」
サオさんの説明はこうだった。
どうも剣練の里と盾練の里は、剣練の里は剣を流派とする村で剣の技を主に使う人が多い。……そして盾練の里は盾の技を流派としている村で、守りに徹した技を使う人が多いんだとか。
どうしてその2つの里に分かれているのかというと。
「昔は1つの里だったんです。ですがある日剣より盾が強い、盾より剣が強いともめ事になり里で喧嘩が絶えなくなったんですよ。盾の派閥は村を出て行き自分達の村を作り、盾が一番強いことを証明しようと毎回剣練の里に勝負を挑んで争い合う関係になったのです。まあ殺さない程度の言わば喧嘩ですがね」
「まぢで?」
なんてこった。
つまり要約すると。剣が強いのか盾が強いのかそれを証明するために両里は毎回戦いを交えてその強さを証明しようとした。
現代ならアンケート調査やなんかですぐおわるようなことだけど、ここは異世界そんな概念この世界には存在しないだろう。
まあ話す気ないから戦って決着つけようぜ的な? 中世の時代でよくみるような話。至極くだらない内容だけど、殺さない程度だからまだ許せるなこれ。
「未だに定期的に彼らは私達に勝負を仕掛けてきますが、そこまで危険ではありませんよ。行われる際は専用の土俵を設置して勝ち抜き戦で戦いますからね」
まさかのトーナメント式。
ブレイブタウンであったコロシアムみたいなあんな感じなんかね。
「と、話を戻して。……そんな流派なんですが、私達の使う剣術は大きく分けて3つ。剣術。素早い攻撃をメインとする迅速剣術、そして高いスキルが求められる秘伝剣術の3つがあります。私の使う一寸剣術は完全な創作にあたるので数にいれなくていいです」
剣術でも色々あるんだな。
じゃあシホさんがいつも使っているあの高速の斬撃は迅速剣術になるのかな。……この里色々と感慨深い。
「それで、私達姉妹は何不自由なく両親の剣術を教えになる一方ですくすくと育ったわけですが、シホだけはちょっと特殊で、盾練の里の流派も使えるんですよ。……ほら盾の技使えるでしょう?」
あぁ確かに。シホさんすっごい防御技も使えるしね。
「因みにシホが持っている剣あれは私達の里に伝わる上品な剣です。父が代々大事にしてきた物なんですよ」
「じゃあ盾は? 里の人見たけど盾持っている人なんて1人もいなかったよ?」
「あの盾は、盾練の里に伝わる盾です。ある盾練の里の少女をシホが草むらで助け、そのまま里に向かいお礼としてもらったものらしいですよ」
良いことしてもらった大事な物なのかあの盾。
でもそんな仲が悪い関係なのにどうして彼女だけ。……そこがちょっと気がかりだけど。
「本来剣練の里の人間及び盾練の里の人達は両里嫌っているんですけど、シホは助けたことを感謝しているらしく、盾練の里の人達に歓迎されていますね」
「なんかこう、とりあえずシホさんが聖人なのはよーくわかったよ」
「そんなこんなで旅立つ際、私達は別れを惜しみながら見送ったのですが……シホの身にそんなことがあったとは」
「あ、そうだサオさん最後に1ついいかな?」
「はい。…………と言いたいところですがもう遅いです。続きは今度にして今日は寝ましょう」
もう少し話したかったんだけど、それなら仕方ないね。
でもシホさん嫌悪な里に対しても優しく手助けしていたとは。さすがといった感じ。
そんな話を聞いているとより一層彼女を早く助けたい気持ちが高ぶってくる。
私は寝転がり、サオさんに背中を見せ。
「お、おやすみ。また明日」
「はいおやすみです。と愛理さん寝る前に1ついいですか」
なんなのさ、すぐ寝ようかと思ったのに。
「私もシホを助けたい気持ちはあります。だって私は彼女の姉ですから。……明日から本筋に触れることになると思いますが、お互い助け合いながら頑張りましょうね」
「お、おうふ!」
私はいつもシホさんにやっているように腕を伸ばし、bのサインを彼女に送る。
はぁシホさん早く起きてくれないかな。サオさんが揃ってからシホさんのお父さん話すとか言ってたけど……どういう。……まあいいかとりあえず今日はもう寝よう。
☾ ☾ ☾
翌日。
1度拠点に戻り、支度を調えると忘れ物がないかチェックしたサオさんは剣練の里に戻るべくスタスタと動く。
森を出て剣練の里へと戻る。
そして門番さんと再び目を合わせ。
「おや、愛理様? サオ様は……は! サオ様お帰りになられましたか」
私の後ろにいるサオさんがひょいと門番さんに顔を出す。
「はいただいま帰りました。話は愛理さんから聞いています。父上がシホの件で話があるとか」
「そうです。どうぞどうぞサオ様、族長様がお待ちです」
と門番さんが道をあけ私達はその中を通る。
サオさんが街の中を歩いていると、みんなから歓迎され彼女は軽く手の平を里の人達に見せる。
「……凄い歓迎されていますねサオさん」
「そりゃそうでしょだってサオさんは族長さんの実姉……長女よ? これくらいの人気があるのは当然よ」
「ま、そうだわな。おっと族長さんの家じゃないか。大声は慎めよミヤリー」
「わ、分かってるわよ」
3人で話す中、サオさんは無言で家の中へと入り、族長さんの部屋へ。
すると扉の開く音を聞き、待っていたリホちゃんと族長さんはこちらを向く。
「おぉサオ帰ってきたか。すまんな急に呼んで」
「いえ、お父様ちょうど昨日で愛理さんの協力もあって目標であった大型モンスター狩り1000体成し遂げました」
その夥しい数を聞いたリホちゃんが「げっ!」という反応を取り驚愕。
小さめなシホさんなだけあってその慌てふためく様子はとても愛嬌があったかわいい。
「え、え、え、えぇえええ!?? せ、せ、1000体!????? リホ姉様いくらなんでも多いんじゃ」
「リホ、剣士とは常に自分に厳しく更なる高みを目指すんですよ?」
「う、うんそれは分かってるけどで頼んでいた物……作ってきてくれた?」
なんのことだろうか。
なるほどわからん。
バタン!
すると出し抜けにサオさんはリホちゃんに向かって正座をし、深々と頭を下げる。
いや急にどうした!?
「すみませんリホ! お姉ちゃんリホが欲しがっていたシホお姉ちゃんの剣作る時間なかったんです!」
聞けばリホちゃんはシホさんに憧れて、シホさんの持っている剣そっくりな木製の剣を作ってくれとサオさんに頼んだらしい。……がそれをすっかり忘れていた彼女はこうして頭を深く、ゴンゴンとつけながら謝り続けている。いやサオさん頭割れない?
「い、いいよいいよ時間がなかったのは分かってるからさ。また今度お願い!」
「そ、そうですか。……そんなことよりお父様一応揃いましたが」
「ふむ、母さんは今シホを看病中だ。……母さんはもう少しでここにくるがその前にまずはサオ話してあげなさい愛理さん達に。シホのことを」
「あのことを? ……それからお父様が話を継ぐ感じですか?」
「あぁ」
なんか重い空気になってるけど……まさかのシリアス展開来ちゃうのこれ?
するとサオさんはこちらに向くように踵を返し。
「愛理さん、ミヤリーさん、スーさん。ということですのでまずは話しておかねばなりません…………あなたの仲間もとい私の妹であるシホのことを」
「? わ、わかった聞かせてシホさんのこと」
表情を沈ませている彼女の様子はとても重い感じが漂っていた。
久々の後書きになりますこんばんは。
さてだいぶ寒い季節になってきましたみなさまいかがお過ごしでしょうか。
最近は鍋料理ばかり作って体を温めてはいるのですが、それにしても寒い。これから更に寒くことを踏まえると地獄のように思えてきます。もし叶うのなら愛理のフレア・ラビットパーカーでも使って体を常時温めたい感じがしまする。
本題に触れますが、サオさんは一言で表すなら一撃必殺、カウンターを主軸とする剣の使い手です。シホさん程の実力ではありませんが、弱くはないです。はい弱くはないです。……ないんですが一撃必殺の技に関しては完全に運ゲーなので、当たるかどうかはあなた次第な技ですから非常に上級者向け技感が否めません。
さて次回ですが、いよいよシホさんの空腹の謎が明らかに? ネタバレは自重しておきますが一言であらわせば『適度な頻度でお願いしますね』ですかね。それは一体。
愛理達の冒険はまだまだ続きます。無事彼女達はシホを助けられるかそれでは!